家族信託と遺留分潜脱の問題点 無効後の処理まで弁護士が解説
- 誠 大石

- 2月6日
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更新日:2 日前
家族信託と遺留分潜脱の問題点 無効後の処理まで弁護士が解説
家族信託は、高齢の親の財産管理や、亡くなった後の財産の承継方法を柔軟に設計できる仕組みとして広く知られるようになりました。神奈川県でも、相続対策の一環として家族信託を検討する方は少なくありません。もっとも、家族信託は便利な制度である一方、使い方を誤ると相続人間の深刻な紛争を招くことがあります。
その典型が、「家族信託で特定の子に財産を寄せたが、これは遺留分逃れではないか」という問題です。実際、相続開始後に、他の相続人が「この信託は遺留分制度を潜脱する目的で設定されたものだから無効だ」と主張する場面があります。相続対策として信託を設計したつもりでも、その内容によっては、信託の一部が公序良俗違反として無効と判断される可能性があります。
しかも、実務上重要なのは、無効になるかどうかだけではありません。仮に無効とされたとして、その後、信託財産は当然に相続財産へ戻るのか、受託者名義の不動産はどう処理するのか、受益権や残余財産帰属権利者の扱いはどうなるのか、といった「後処理」の問題が残ります。この点まで丁寧に理解しておかなければ、家族信託をめぐる紛争の全体像は見えてきません。
そこで本記事では、東京地裁平成30年9月12日判決を軸に、遺留分潜脱目的の家族信託がどのような場合に無効となり得るのか、全部無効と一部無効の違い、さらに無効後の財産処理や遺留分侵害額請求との関係まで、実務の視点から整理していきます。
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1 家族信託は遺留分対策になるのか
まず前提として、家族信託を使えば遺留分の問題を避けられる、と単純に考えるのは危険です。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に保障された最低限の相続利益をいいます。被相続人には、自己の財産を自由に処分する権限がありますが、それでも一定の近親者については、まったく財産を受け取れないという事態を避けるため、法律上の保護が与えられています。現在の民法では、遺留分が侵害された場合、遺留分権利者は、侵害した相手方に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができます。
一方、家族信託は、委託者が受託者に財産を託し、その管理・運用・処分を任せ、受益者がその利益を受ける仕組みです。遺言と比べて設計の自由度が高く、認知症対策や不動産管理、複数世代にわたる承継設計などに向いています。そのため、「遺言よりも柔軟に財産承継を設計できるなら、遺留分にも対抗できるのではないか」と考える方が出てきます。
しかし、家族信託は魔法の道具ではありません。確かに、信託の仕組みを使うことで、形式上は相続開始時点で被相続人名義の財産を減らすことができます。けれども、そのことから直ちに「遺留分対策として有効」とはいえません。信託設定の目的や内容によっては、遺留分制度を実質的に骨抜きにするものとして問題視されるからです。
特に注意しなければならないのは、信託の経済的合理性が乏しいにもかかわらず、特定の相続人を厚遇し、他の相続人の取り分を実質的に失わせるような設計です。そのような場合には、「財産管理や承継のための信託」ではなく、「遺留分制度を潜脱するための信託」と評価されるおそれがあります。
つまり、家族信託は適法に用いれば有用な制度ですが、「家族信託=遺留分対策になる」と考えるのは誤りです。むしろ、遺留分に配慮しないまま信託を設計すると、相続開始後に信託の有効性そのものが争われるリスクがあります。
2 遺留分潜脱目的の家族信託は無効になるのか
この問題を考えるうえで重要なのが、東京地裁平成30年9月12日判決です。この裁判例は、家族信託が遺留分制度を潜脱する目的でされた場合に、公序良俗違反により無効となり得ることを示したものとして、実務上大きな意味を持っています。
民法90条は、公の秩序または善良の風俗に反する法律行為は無効とすると定めています。家族信託そのものは法律上認められた制度ですが、その利用の仕方が著しく不当であり、相続法上の保護制度を不当に害するような場合には、公序良俗違反が問題になります。
この判決で裁判所が注目したのは、信託契約の形式ではなく、その実質です。すなわち、信託財産とされた各財産が、どのような目的で組み込まれ、そこからどのような経済的利益の分配が予定されていたのかを丁寧に見ています。その結果、信託契約全体を一括して無効とするのではなく、問題のある部分のみを切り出して無効と判断しました。
ここで大切なのは、「遺留分を侵害する結果が生じたから直ちに無効」というわけではないことです。相続対策には、結果として特定の相続人が多くの利益を得る設計もあり得ます。しかし、それだけで公序良俗違反になるわけではありません。問題となるのは、遺留分制度を実質的に回避すること自体が主たる狙いであり、しかもそのために組み込まれた財産について独立した合理性が見いだしにくい場合です。
したがって、無効になるかどうかの判断では、単に「他の相続人が不満を持っているか」ではなく、信託設定の目的、財産の性質、信託期間中における利益配分の有無、委託者の生活や管理上の必要性などが総合的に検討されることになります。
3 東京地裁平成30年9月12日判決のポイント
この判決では、信託財産が大きく三つに区分され、それぞれについて信託に組み込む合理性が異なるものとして検討されました。
一つは納税資金確保のための不動産、二つ目は賃貸不動産や金銭のように信託期間中に経済的利益を生み出す財産、三つ目は自宅やほぼ無価値の土地など、経済的利益の分配が予定されていない財産です。
裁判所は、このうち三つ目の財産について、信託財産に組み込む合理的理由に乏しく、遺留分制度を潜脱する意図が強く認められるとして、その部分の信託を公序良俗違反により無効と判断しました。他方で、他の財産部分については、一定の経済合理性や管理目的が認められるとして、直ちに無効とはしませんでした。
この判断の意味は非常に大きいといえます。なぜなら、家族信託が問題になる場合でも、契約全体が常に全面的に無効になるわけではなく、財産ごとに切り分けて検討される可能性があることを明らかにしたからです。
実務上ありがちなのは、「信託が遺留分潜脱目的なら、契約全体が全部無効になるのではないか」という理解です。しかし、判例の考え方に沿えば、そう単純ではありません。信託契約の中に、適法で合理的な目的をもつ部分と、潜脱目的が強く表れている部分とが混在している場合には、問題のある部分のみが無効となり、残りは有効に存続し得ます。
この「部分無効・残部有効」という構造を正確に理解しておかないと、その後の遺留分侵害額請求や登記処理の説明が曖昧になってしまいます。
4 「部分無効」とは何か
部分無効とは、法律行為の一部に無効原因があっても、その部分だけを切り離すことができ、残部について独立して有効性を維持できる場合に、その無効を一部にとどめる考え方です。
家族信託にこれをあてはめると、信託財産全体が一体不可分ではなく、それぞれの財産について信託に組み込む意味や効果を個別に検討できるときは、問題のある財産部分だけを無効とし、残りの信託部分を有効に存続させることが可能になります。
東京地裁判決で問題となったのは、経済的利益の分配が想定されない不動産部分でした。たとえば、賃貸不動産であれば、信託期間中に賃料収入が生じ、受益者に利益が分配されるという設計に一定の合理性があります。納税資金を確保するための不動産や金銭についても、目的との関連性を説明しやすいでしょう。
これに対し、居住用不動産やほとんど価値のない土地を、経済的利益の分配設計もないまま信託に組み込み、しかも最終的に特定の者へ承継させるだけの内容になっていると、その部分は財産管理の必要というより、他の相続人の遺留分を弱めるために使われたと見られやすくなります。
ここで誤解してはいけないのは、「自宅を信託に入れると常に危険」ということではない点です。たとえば、認知症対策として自宅の管理・処分権限を受託者に持たせる合理的必要があり、受益者の生活保障や換価の可能性も含めた設計になっているなら、十分に正当化できる場合があります。問題は、あくまで個別具体的な設計内容です。
実務での見極めとしては、次のような観点が重要です。すなわち、その財産を信託に入れることで、委託者の生前管理や死後承継にどのような実益があるのか、信託期間中に誰がどのような利益を受けるのか、その財産をあえて信託化しなければならない理由があるのか、という点です。これらの説明が弱い場合、潜脱目的を疑われやすくなります。
5 無効部分と有効部分で、その後の処理はどう変わるのか
部分無効と判断された場合、次に問題となるのが、その後の財産処理です。ここは実務上、もっとも誤解が多い場面の一つです。
まず、無効とされた部分については、そもそもその範囲では有効な信託関係が成立していなかったことになります。理屈のうえでは、その財産は最初から受託者に適法に移転していない、または少なくとも信託財産として有効に分離されていないという評価になります。そのため、委託者死亡後であれば、その財産は委託者の相続財産として扱うべき方向になります。
もっとも、現実には受託者名義への所有権移転登記がされていたり、信託口口座で金銭管理がされていたりすることがあります。この場合、理論上「相続財産に属する」といっても、自動的に名義や管理状態が戻るわけではありません。実際には、受託者から相続財産側への返還・移転手続が必要になります。
不動産であれば、受託者名義になっている登記をどう戻すかが問題になります。合意で処理できるなら、無効を前提とする所有権移転登記や更正登記等の方法を検討することになりますが、当事者間に争いがあれば、訴訟で所有権確認や移転登記手続請求を行う必要が出てきます。どの登記原因を用いるかは、具体的な契約条項、登記の経過、判決内容によって変わるため、形式的に一律には決まりません。
金銭や預貯金についても同様です。信託財産として分別管理されていたとしても、その部分が無効であれば、受託者がそのまま保持し続ける法的根拠は失われます。したがって、相続財産として帰属すべき者に対する返還が問題になります。ただ、すでに支出や処分がされている場合には、不当利得返還や損害賠償に近い整理を検討しなければならないこともあります。
つまり、「無効になれば相続財産に戻る」という表現は方向性としては正しいものの、実務では、返還請求、名義回復、登記是正、精算処理という具体的な手続を踏まなければ解決しません。この点を軽く考えると、判決を得ても実際の財産回復が進まないという事態になり得ます。
6 受益権・残余財産帰属権利者の扱い
無効後の処理を考えるうえで、受益権や残余財産帰属権利者の扱いにも注意が必要です。
家族信託では、受益者が信託から生じる経済的利益を受け取る立場にあり、信託終了時には残余財産帰属権利者が最終的な財産帰属先として定められていることが一般的です。ところが、部分無効が認められると、その無効部分については、前提となる信託財産自体の帰属が否定されるため、その財産に対応する受益権や残余財産帰属の定めも当然には機能しなくなります。
たとえば、ある不動産部分が潜脱目的により無効とされた場合、その不動産について信託から利益を受けるはずだった受益権の内容も、その部分については支えを失います。残余財産帰属権利者についても、あくまで有効な信託財産が存在することを前提とする地位ですから、無効部分について当然に権利取得することはできません。
他方で、信託の残部が有効である以上、他の有効な信託財産部分に対応する受益権や残余財産帰属の定めは、そのまま維持される可能性があります。ここでも、全部が一括して消えるわけではなく、あくまで無効部分と有効部分を分けて考える必要があります。
実務で難しいのは、信託契約書が必ずしも「各財産ごとの受益内容」を明確に分けていない場合です。財産全体から生じる利益を包括的に受益者へ帰属させている設計だと、どの部分が無効となったときに、どの範囲で受益権内容を修正すべきかが争点になり得ます。そのため、設計段階では、財産ごとの目的や利益構造を明確にしておくことが、紛争予防の観点からも重要です。
7 有効な信託部分について遺留分侵害額請求は何を対象にするのか
家族信託をめぐる遺留分の問題で、もう一つ重要なのが、「何を対象に遺留分侵害額請求を行うのか」という論点です。
東京地裁平成30年9月12日判決は、信託における遺留分減殺の対象は、信託財産そのものではなく、受益権であるとの考え方を示しました。現行法は遺留分侵害額請求を金銭債権として構成していますが、その基礎にある発想として、信託が有効に成立している以上、もはや外形上の財産の帰属主体は受託者であり、相続人や受益者が取得している実質的利益は受益権に表れている、という理解が背景にあります。
したがって、信託の有効部分については、「信託財産である不動産をそのまま相続財産とみる」のではなく、「その不動産等から生じる利益を受ける受益権の価値」を遺留分算定や侵害額請求の対象として把握することになります。
この点は実務上とても重要です。たとえば、賃貸不動産が有効に信託され、特定の子が受益者になっている場合、他の相続人は、その不動産自体の返還を当然に求めるのではなく、まず受益権の価値を踏まえて遺留分侵害額を算定し、その侵害額に相当する金銭の支払を請求することになる、という整理が基本になります。
もちろん、受益権の評価は簡単ではありません。信託財産の種類、収益性、信託期間、給付内容、処分権限の有無などによって価値は変わります。特に不動産を信託財産とする場合には、単純な固定資産評価額や時価だけでなく、そこからどのような収益が得られるのか、いつまで受益が続くのかといった事情も考慮しなければなりません。
8 遺留分侵害額請求までの流れ
遺留分潜脱目的の信託が疑われる場合、実務ではおおむね次のような流れで検討が進みます。
第一に、相続開始後、信託契約書、登記事項証明書、信託目録、受益者の定め、残余財産帰属権利者の定め、信託財産の管理状況などを確認します。ここで重要なのは、信託財産全体を一括りに見るのではなく、各財産について信託に組み込まれた趣旨と経済的意味を整理することです。
第二に、どの財産部分に潜脱目的が強く表れているのかを検討します。経済的利益の分配が予定されていないか、財産管理上の合理性が乏しいか、他の相続人の遺留分を意図的に弱める設計になっていないか、といった観点から、無効主張の対象となる部分を絞り込みます。
第三に、無効部分については、通常の相続財産または贈与財産に近いものとして、遺留分算定の基礎財産に組み込みます。他方、有効部分については、相続開始時に存在する受益権の価額を基礎財産に加算する形で評価することになります。
第四に、その基礎財産額を前提として、各遺留分権利者の総体的遺留分、個別的遺留分、すでに取得している相続財産等を踏まえた侵害額を計算します。そして、侵害額の限度で、受益権取得者その他の負担者に対し、金銭支払を求めることになります。
現行法では、かつての遺留分減殺請求のように物権的な返還を当然に求める構造ではなく、基本的には金銭請求です。そのため、「信託が有効な部分」と「無効な部分」とで、求めるべき法的手段が異なります。無効部分については財産の帰属自体を争い、有効部分については受益権の価値を基準に侵害額を請求する、という整理が必要です。
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9 「無効部分は当然に相続財産へ戻る」と簡単に言い切れない理由
裁判所がある信託財産部分を無効と判断したとしても、それだけで役所や法務局、金融機関が自動的に処理してくれるわけではありません。現実の権利関係は、名義、占有、管理口座、第三者との関係などを通じて動いています。そのため、無効の判断を現実の財産状態に反映させるには、追加の法的・実務的対応が必要です。
不動産については、受託者名義のまま放置すれば、相続人間の遺産分割や売却に支障が生じます。金融資産についても、信託口口座で管理されたままでは、誰がどこまで払戻しを受けられるのかが不明確になります。さらに、受託者がすでに信託目的に従って支出を行っていた場合、その支出が有効か無効か、精算の要否なども検討しなければなりません。
また、信託終了後の残余財産帰属権利者に財産が移ってしまっているケースでは、受託者だけでなく、最終帰属先との関係も問題になります。こうした事情からすると、「無効だから当然に戻る」という表現は、理論上の結論としてはともかく、手続面では不十分です。実務家としては、返還請求の相手方、登記・名義回復の方法、処分済み財産の追跡可能性まで見据えて対応する必要があります。
10 適法な信託設計と違法な遺留分潜脱の線引き
では、どのような家族信託であれば適法で、どこからが危険なのでしょうか。
まず重要なのは、信託設定に合理的な目的があることです。たとえば、認知症対策として不動産の管理・売却を円滑にする必要がある、障害のある子の生活保障のため継続的な給付を行いたい、収益不動産の管理を一元化したい、といった目的には十分な実質があります。このような場合、結果として特定の家族が多く利益を受けるとしても、直ちに遺留分潜脱とは評価されません。
次に、信託財産の選び方と受益設計に一貫性があることも大切です。管理対象とする意味のある財産を選び、その財産から生じる利益の帰属先を明確にし、委託者の生活や死後の承継方針との整合性が取れていれば、信託の実質は説明しやすくなります。
反対に危険なのは、財産管理上の必要が薄いのに、相続財産の大部分を信託へ移し、他の相続人には実質的利益がほとんど及ばない設計です。特に、収益も管理目的も乏しい財産まで包括的に信託へ入れ、最終的に一人の相続人へ集中的に帰属させるような形は、潜脱目的を疑われやすいといえます。
さらに、遺留分にまったく配慮しない設計も紛争の火種になります。家族信託は遺言と異なり、柔軟に設計できるからこそ、他の相続人の不満が大きくなりやすい面があります。したがって、あらかじめ遺留分の試算を行い、必要に応じて他の相続人への代償措置や遺言との組合せを検討することが重要です。
神奈川県でも、相続対策として家族信託を希望される方は多いですが、実際には「信託契約書を作れば安心」というものではありません。どの財産を入れるのか、誰を受益者にするのか、遺言とどう整合させるのか、他の相続人への説明をどうするのかまで含めて設計しなければ、後の紛争予防にはつながりません。
11 神奈川県で家族信託と遺留分トラブルを防ぐために
家族信託は、使い方を誤らなければ非常に有効な制度です。しかし、遺留分との関係を軽視すると、かえって相続紛争を複雑化させてしまいます。
神奈川県でも、都市部の収益不動産、郊外の自宅不動産、親族間で承継をめぐる考え方が異なるケースなど、家族信託が向いている事案は多くあります。他方で、不動産の価値が高い地域では、誰にどの財産を寄せるかがそのまま紛争の大きさに直結しやすいという特徴もあります。そのため、相続対策として家族信託を用いるなら、単に契約書を作るだけでなく、遺留分を含む全体設計を行うことが欠かせません。
具体的には、まず信託の目的を明確にし、その目的に照らして本当に必要な財産だけを信託に入れること、次に受益者・残余財産帰属権利者の設定が偏りすぎていないかを検討すること、そして遺留分を侵害する可能性がある場合には、遺言、生命保険、代償措置、事前の家族説明などを組み合わせて調整を図ることが大切です。
すでに家族信託を設定していて不安がある方、あるいは相続開始後に「これは遺留分逃れではないか」と疑問を持っている方は、早い段階で契約書や登記関係書類を持参し、相続に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。争点の立て方を誤ると、本来主張できたはずの無効や侵害額請求の論点が十分に活かせなくなるからです。
12 まとめ
家族信託が遺留分を潜脱する目的で用いられた場合、その信託は公序良俗違反により無効となり得ます。そして実務上重要なのは、必ずしも信託全体が全部無効になるのではなく、問題のある財産部分だけが無効とされ、残りは有効に存続することがある、という点です。
東京地裁平成30年9月12日判決は、この「部分無効・残部有効」という考え方を具体的に示した判決として、家族信託実務に大きな示唆を与えています。とりわけ、経済的利益の分配が予定されず、遺留分潜脱以外の合理性が乏しい財産部分は、危険性が高いといわなければなりません。
また、無効となった後も、問題はそこで終わりではありません。信託財産が当然に相続財産へ戻ると単純に考えるのではなく、受託者からの返還、登記名義の是正、受益権や残余財産帰属権利者の扱い、さらに有効部分については受益権を対象とする遺留分侵害額請求まで見据えて処理を考える必要があります。
家族信託は、適切に設計すれば有用な制度です。しかし、「家族信託なら遺留分を避けられる」と短絡すると、かえって紛争の火種を残します。神奈川県で家族信託の設計や見直し、あるいは遺留分をめぐる相続トラブルへの対応を検討されている方は、信託の有効性だけでなく、無効後の処理まで含めて見通しを立てられる弁護士に相談することが重要です。
以上、家族信託と遺留分潜脱の問題点 無効後の処理まで弁護士が解説でした。
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弁護士 大石誠
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