遺留分侵害額請求の内容証明の書き方|文例・送る相手・注意点を弁護士が解説
- 誠 大石

- 3月3日
- 読了時間: 10分
更新日:8 時間前
遺留分侵害額請求の内容証明の書き方|文例・送る相手・注意点を弁護士が解説
相続が始まったあと、遺言や生前贈与の内容を見て「自分の取り分がほとんどないのではないか」と感じても、すぐに遺産の全体像や正確な金額まで把握できるとは限りません。それでも、遺留分の問題ではのんびりしていられません。相続の開始と遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知ってから1年という期間制限があるため、まずは請求の意思表示をきちんと残すことが大切です。
そのときによく使われるのが、内容証明郵便です。もっとも、書式サイトの文例をそのまま写せば足りるとは限りません。実際には、誰に送るのか、何をどこまで書くのか、金額が未確定でも足りるのか、相手が受け取らないときはどうするのか、といった点で迷う方が多いところです。
この記事では、遺留分侵害額請求の内容証明について、最低限押さえるべき記載事項、送る相手の考え方、文例、送付後の動きまで、実務に沿ってわかりやすく解説します。
なお、この記事は令和元年7月1日以降に開始した相続を前提にしています。
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遺留分侵害額請求で内容証明を送る目的
遺留分侵害額請求で内容証明を送る最大の目的は、相手に対して「私は遺留分を請求します」という意思を、後で争われにくい形で残すことにあります。遺留分の請求は、まず相手方に対する意思表示が重要です。家庭裁判所に調停を申し立てれば足りると思われがちですが、それだけでは相手に対する意思表示にならないと案内されています。したがって、まずは相手に対して請求の意思を明確に伝える必要があります。
ここで普通郵便ではなく内容証明郵便がよく使われるのは、いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を差し出したかを後で示しやすいからです。配達証明を付ければ、配達された事実も残しやすくなります。
もちろん、内容証明郵便だから自動的に請求が認められるわけではありませんが、少なくとも「請求の意思表示をした」という点の証拠化には大きな意味があります。
遺留分侵害額請求の内容証明は何を書けば足りる?
まず重要なのは、内容証明に完璧な計算書や詳細な財産目録が必ずしも必要ではないという点です。相談の現場でも、「まだ預金額がわからない」「不動産の評価が決まっていない」「生前贈与の資料がそろっていない」という段階で、期限だけが迫っていることは珍しくありません。そのような場合でも、請求の意思表示として必要な内容を押さえれば、まず通知を出す意味があります。
最低限、内容証明には次の事項を入れておきたいところです。
1 差出人と受取人を特定できるよう、双方の氏名と住所です。
2 被相続人の氏名です。
3 被相続人の相続に関して、自分が遺留分侵害額請求権を行使するという意思です。
4 誰に対する請求なのかがわかることです。
5 作成日付です。
実務上、特に大切なのは、「遺留分侵害額請求をする」という文言をはっきり入れることです。単に「話し合いたい」「説明を求める」「納得できない」と書いただけでは、権利行使の意思表示としては弱くなります。逆に、まだ具体的金額が不明であっても、遺留分侵害額請求権を行使する意思が明確であれば、時効対策として意味を持つ場面があります。
また、遺産の内容や侵害額を細かく特定できない段階でも、直ちに通知できないとは限りません。むしろ、期限が近いときは、金額の確定や資料収集を待ち過ぎないことが重要です。ただし、事案によっては、遺言により特定の相続人が多くの財産を取得したこと、生前贈与があったと考えていることなど、前提事情を簡潔に補足した方が誤解を防げることもあります。
普通郵便ではなく内容証明郵便がおすすめな理由
遺留分の内容証明を考える方の中には、「普通郵便でも送れば足りるのではないか」と疑問を持つ方がいます。たしかに、理屈の上では、請求の意思表示それ自体は内容証明郵便でなければ無効というわけではありません。しかし、普通郵便は、あとで相手から「そんな手紙は見ていない」「その内容の文書は受け取っていない」と言われたときに、立証が難しくなりがちです。
これに対し、内容証明郵便は、差し出した文面そのものを記録として残しやすく、配達証明を付ければ配達の事実も示しやすくなります。遺留分侵害額請求では、期限内に権利行使の意思表示をしたかどうかが後で問題になることがあるため、普通郵便よりも内容証明郵便の方が実務上安心です。
さらに、内容証明郵便には、相手に「正式な請求が来た」と受け止めさせやすいという面もあります。感情的に対立している案件ほど、最初の通知をあいまいにすると、その後の交渉がかえって長引くことがあります。最初に冷静な文面で正式な通知を出しておくことで、交渉の土台を整えやすくなります。
内容証明は誰に送るべきか
送付先は非常に重要です。遺留分侵害額請求は、相続人全員に何となく送ればよいものではありません。基本的には、遺留分を侵害する利益を受けた相手に送ることになります。
たとえば、遺言によって長男がほとんどの遺産を取得したのであれば、その長男が主な送付先になります。この場合、長男は受遺者として位置づけられることがあります。これに対し、生前に特定の子へ多額の贈与がされていたのであれば、その贈与を受けた人、すなわち受贈者が問題になります。
実際には、遺言による取得と生前贈与の両方が絡んでいることもあり、誰にどこまで請求を向けるべきかは一見してわからないことがあります。そのため、相続関係、遺言書、贈与の有無を踏まえて、請求対象者を整理することが大切です。送付先の判断を誤ると、肝心の相手に意思表示が届いていなかったという事態にもなりかねません。
遺留分侵害額請求の内容証明の文例
以下では、実際に使いやすいよう、基本形とケース別の文例を挙げます。もっとも、そのまま使えばよいというものではなく、氏名、続柄、対象者、事実関係は必ず自分の案件に合わせて修正してください。
①基本形の文例(公正証書遺言がある場合)
通知書
被相続人○○の公正証書遺言(●法務局所属 公証人●作成 令和●年第●号)は、私の遺留分が侵害されていると考えておりますので、貴殿に対して、本書面をもって遺留分侵害額請求をいたします。
具体的な侵害額及びその算定の前提となる遺産の内容、評価額、贈与の有無等については、必要な資料を確認のうえ、別途協議させていただきます。
令和○年○月○日
住所
氏名
この基本形のよいところは、まず期限内に請求の意思を明確に示せる点です。まだ金額が固まっていない案件では、無理に数字を書き込むより、このように権利行使の意思を中心にまとめた方が安全なことがあります。
②生前贈与が問題となる場合の文例
通知書
私は、被相続人○○の相続につき、貴殿が被相続人から生前贈与を受けたことにより、私の遺留分が侵害されていると考えております。
よって、貴殿に対し、本書面をもって遺留分侵害額請求権を行使します。
具体的な贈与の内容、金額、時期及びこれらを踏まえた侵害額については、関係資料を確認のうえ、別途協議を求めます。
令和○年○月○日
住所
氏名
生前贈与が疑われる案件では、贈与の詳細がすぐにわからないことも多くあります。その場合でも、請求の意思表示を先に行い、その後に通帳、登記事項証明書、贈与契約書の有無などを確認していく流れが現実的です。
③金額まで特定できた場合の文例
通知書
被相続人○○の公正証書遺言(●法務局所属 公証人●作成 令和●年第●号)は、私の遺留分が侵害されていると考えておりますので、貴殿に対して、本書面をもって遺留分侵害額請求をいたします。
なお、現時点で把握している資料に基づき算定した結果、私の遺留分侵害額は金○○○万円と考えておりますので、貴殿に対し同額の支払を請求いたします。
令和○年○月○日
住所
氏名
④自筆の遺言書の場合
通知書
被相続人〇〇が作成した、令和○年○月○日付け自筆証書遺言の遺言内容は私の遺留分を侵害しております。
よって、私は、貴殿に対し、本書面をもって遺留分侵害額請求権を行使します。
令和○年○月○日
住所
氏名
内容証明を書くときの注意点
まず避けたいのは、感情的な表現です。「あなたが財産を独り占めした」「絶対に許さない」などと書いても、法的にはほとんど意味がありません。それよりも、被相続人、相手方、自分、そして遺留分侵害額請求を行使する意思を淡々と示す方が、後の交渉でも有利です。
次に、わからない事実を断定しすぎないことです。生前贈与を疑っていても、資料がない段階で断定的に書くと、かえって争点を増やします。「生前贈与があったと考えている」「確認できた範囲では」など、事実関係に応じた表現を選ぶべきです。
また、具体的金額を書けるなら書いてよいのですが、無理に確定的な金額を書く必要はありません。あとで前提資料が変わることもあるため、不確かな数字を強く打ち出すより、まず権利行使の意思を確実に示す方が優先されることがあります。
相手が受け取らない、反応しない場合はどうするか
内容証明を送っても、相手が素直に話し合いに応じるとは限りません。受取拒否をされたり、配達されても返答がないことは珍しくありません。しかし、その時点で諦める必要はありません。まずは差出記録、配達証明、返送の有無を確認し、通知の経過を残しておくことが大切です。
そのうえで、次に進めたいのは資料収集です。具体的には、戸籍、遺言書、不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金の資料、証券関係資料、生前贈与の痕跡がわかる通帳や振込記録などです。請求の通知を出したあとは、侵害額の算定に必要な情報を集め、協議、調停、訴訟のどの段階に進むべきかを見極めることになります。
相手が無視しているからといって、こちらも放置してしまうのが最も危険です。通知を出したあとに証拠の整理を進め、必要に応じて早めに調停や訴訟を見据えた対応に切り替えることが重要です。
まとめ
遺留分侵害額請求の内容証明でいちばん大切なのは、期限内に、相手に対して、遺留分侵害額請求権を行使する意思を明確に示すことです。具体的な金額や遺産の詳細がまだわからなくても、直ちに通知できる場面は少なくありません。むしろ、資料が全部そろうまで待っているうちに1年が過ぎてしまう方が深刻です。
また、送る相手は誰でもよいわけではなく、受遺者や受贈者など、遺留分を侵害する利益を受けた相手を見極める必要があります。普通郵便ではなく内容証明郵便を使うのは、請求の意思表示を証拠として残しやすくするためです。そして、送ったあとこそ、遺言書、預金資料、不動産資料、生前贈与の資料などを集め、次の手続につなげることが大切になります。
ご自身の事案で、誰に送るべきか迷う、どこまで書けばよいかわからない、金額が未確定で不安という場合には、通知文の作成段階から弁護士に相談することをおすすめします。特に横浜で相続案件を抱えている方は、地域の実務も踏まえて、早い段階で方針を整理しておくと、その後の交渉や調停が進めやすくなります。
以上、遺留分侵害額請求の内容証明の書き方|文例・送る相手・注意点を弁護士が解説でした。
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弁護士 大石誠
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