top of page

遺留分侵害額請求とは?請求できる人と期限をわかりやすく解説

  • 執筆者の写真: 誠 大石
    誠 大石
  • 3月2日
  • 読了時間: 10分

更新日:17 時間前

はじめに

「遺留分侵害額請求」という言葉を、遺言書を見て初めて耳にした方も多いと思います。

「遺言で自分だけ財産をもらえないと書かれていた」「兄だけに全財産を渡す遺言が出てきた」——そういった場面で、弁護士や司法書士から「遺留分の請求ができるかもしれません」と言われ、このページにたどり着いた方もいるかもしれません。

この記事では、遺留分侵害額請求の基本をできる限り丁寧に解説します。制度の概要から、請求できる人の範囲、遺留分の割合と計算の考え方、期限(時効)、そして手続きの大まかな流れまで、全体像がつかめるように構成しています。

「難しい法律の話より、自分はどうすればいいのか」——その入口になることを目指した記事です。


1. 遺留分侵害額請求とは何か

「遺留分」という権利の意味

まず「遺留分」から説明します。

日本の民法では、亡くなった人(被相続人)は原則として自分の財産を遺言で自由に配分できます。「全財産を長男に渡す」「愛人に全部遺贈する」という遺言も、法律上は一定の効力を持ちます。

しかし、それでは配偶者や子どもが遺言一枚で財産を一切もらえなくなってしまう場合が生じます。そこで民法は、一定の相続人に対して「最低限の取り分」を保障しています。これが遺留分です。

遺留分とは、被相続人の意思(遺言・生前贈与)にかかわらず、特定の相続人が取り戻せる最低限の財産の取り分のことです。


「遺留分侵害額請求」とは

遺留分が侵害されていると分かったとき、その侵害された分に相当する金銭の支払いを求める手続きが「遺留分侵害額請求」です。

2019年(令和元年)7月1日に施行された改正民法によって、現在は「金銭の支払いを求める請求権」として整理されています。改正前は「遺留分減殺請求」と呼ばれ、財産そのもの(不動産や株式など)の返還を求める制度でした。しかし、現物の返還を求めると財産が複数人の共有状態になり、後の処分や管理が複雑になるという問題がありました。

改正後は、「財産そのものを返せ」ではなく「侵害額に相当するお金を払え」という形になり、実務が大きく簡略化されました。事業承継や不動産相続においても、共有関係の発生を防げるため、受け取る側・払う側の双方にとってわかりやすい制度になっています。


【ポイントまとめ】遺留分侵害額請求の位置づけ

・遺言や生前贈与で自分の「最低限の取り分(遺留分)」が侵害された場合に使える権利

・侵害された金額相当の「お金の支払い」を請求するもの(財産の返還ではない)

・2019年改正により「遺留分減殺請求」から現在の名称に変わった

・請求しなければ権利は消える。自動的にはもらえない


2. 遺留分侵害額請求ができる人(遺留分権利者)

対象者の範囲

遺留分侵害額請求ができるのは、すべての相続人ではありません。民法上、以下の人に限られています。

相続人の種類

遺留分の有無

配偶者(婚姻関係にある夫・妻)

あり

子(代襲相続人である孫なども含む)

あり

直系尊属(父母・祖父母など)

あり(子がいない場合)

兄弟姉妹・甥姪

なし


最も誤解が多いのが「兄弟姉妹には遺留分がない」という点です。兄弟が遺言で財産を一切もらえないとされていても、遺留分侵害額請求はできません。

また、内縁の配偶者(婚姻届を出していないパートナー)も遺留分権利者には含まれません。法律上の婚姻関係が要件になります。


代襲相続人も請求できる

子が被相続人より先に亡くなっていた場合、その子(被相続人から見ると孫)が「代襲相続人」として相続人の立場を引き継ぎます。この代襲相続人にも遺留分は認められます。


相続放棄をした人は請求できない

相続放棄をすると、最初から相続人でなかったものとして扱われます。したがって、相続放棄をした後に遺留分侵害額請求をすることはできません。

ただし、遺留分の「放棄」と「相続放棄」は別物です。遺留分だけを相続開始前に家庭裁判所の許可を得て放棄することもできますが、相続放棄と違い、相続財産の取得自体はできます。この点は混同しやすいので注意が必要です。


3. 遺留分の割合と計算の考え方

遺留分の割合(総体的遺留分)

遺留分の割合は、相続人の構成によって変わります。

相続人の構成

遺留分の割合(相続財産全体に対して)

配偶者のみ

1/2

子のみ

1/2

配偶者と子

1/2(配偶者1/4・子1/4)

直系尊属のみ(子がいない)

1/3

配偶者と直系尊属

1/2(配偶者1/3・直系尊属1/6)

兄弟姉妹(のみ)

なし


上記の割合はあくまで「相続財産全体に対する遺留分」です。複数の相続人がいる場合は、各人の法定相続分でさらに按分します。たとえば子が2人いる場合、子全体で1/2、1人あたりは1/4となります。


遺留分の計算の基礎となる財産

遺留分の額を計算するための出発点は、「遺留分算定の基礎となる財産」の確定です。これは単純に「相続開始時の財産」ではなく、以下のものを加算・減算して算出します。


【遺留分算定の基礎財産の計算式】

相続開始時の財産の価額

+ 相続開始前1年以内の贈与(原則)

+ 当事者双方が遺留分を害することを知ってなされた贈与(期間制限なし)

+ 相続人に対する10年以内の特別受益に当たる贈与

- 相続開始時の債務の全額

= 遺留分算定の基礎財産


計算で特に問題になりやすいのが「生前贈与」の扱いです。被相続人が亡くなる前に特定の相続人や第三者へ財産を渡していた場合、それを遺留分の計算に含めるかどうかで金額が大きく変わります。また、不動産が含まれる場合は「いつの時点の価額で計算するか」も争点になります。

こうした計算には専門的な判断が必要です。弁護士に相談する際も、生前贈与の有無や不動産の有無を伝えると、より正確な見通しを得やすくなります。


遺留分侵害額の計算(侵害されている金額)

請求できる金額(遺留分侵害額)は、以下の式で求めます。


【遺留分侵害額の計算式】

遺留分算定の基礎財産 × 遺留分の割合(例:子1人なら1/2)

- 自分がすでに取得した相続財産の価額

- 自分が受けた特別受益(生前贈与など)の額

+ 自分が負担する相続債務の額

= 遺留分侵害額(これが請求できる金額)


「計算してみたら侵害額がゼロだった」というケースもあります。すでに生前贈与をたっぷりもらっていた場合や、相続財産がほとんどない場合などです。計算前から請求できる前提で動くと後でギャップが生じることがあるため、まずは専門家に概算を確認することをおすすめします。


☆遺留分侵害額の計算はこちらへ。遺留分侵害額簡易計算機



4. 請求の期限(時効)——先延ばしが最大の敵

2つの期限

遺留分侵害額請求には、2つの期限があります。この期限を過ぎると、一切請求できなくなります。

期限の種類

内容

短期消滅時効(1年)

相続の開始と遺留分が侵害されていることを「知った時」から1年間

除斥期間(10年)

相続開始から10年間(知らなかった場合でも消滅)


注意すべきは、短期の1年の起算点が「相続開始(死亡)を知った日」ではなく、「相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った日」だという点です。

実務では、「いつ知ったか」が争点になることがあります。遺言書の開示を受けた日、生前贈与を把握した日——こうした「知った日」を裏付ける記録(通知書・メモ・遺言書の謄本を受け取った日付など)を残しておくことが重要です。


「とりあえず請求の意思表示だけ」でも時効は止まる

時効を止めるためには、正確な計算が済んでいなくても「遺留分侵害額を請求する」という意思表示をすれば足ります。内容証明郵便を送る方法が一般的ですが、口頭でも法律上は有効です(ただし証拠として残りにくいため、書面が推奨されます)。

計算に時間をかけているうちに期限が来てしまう——これが実務で最もよくある失敗パターンです。「金額は後で詰める、まず請求の意思を表示する」という順番が基本です。


【横浜の実務でよく見る落とし穴】

「四十九日が終わってから動こう」→ その間も時効は進行しています

「相手が落ち着いたら話し合おう」→ 1年はあっという間に来ます

「計算が終わってから内容証明を送ろう」→ まず意思表示だけでも先に行う



5. 手続きの大まかな流れ

遺留分侵害額請求の流れは、おおむね以下のステップで進みます。ただし、相手の対応や財産の状況によって大きく変わることがあります。


STEP 1|相続財産・生前贈与の全体像を把握する

遺言書の内容、相続財産の構成(不動産・預貯金・有価証券など)、生前贈与の有無を整理します。すべてを把握できていなくても構いません。「当たり」をつける段階です。


STEP 2|遺留分侵害額の概算を確認する

弁護士と一緒に概算額を計算します。この段階で「侵害額がほぼゼロ」とわかるケースもあります。無料相談を活用するとよいでしょう。


STEP 3|請求の意思表示(内容証明郵便)

内容証明郵便で相手方(受遺者・受贈者)に「遺留分侵害額を請求する」旨を伝えます。金額が確定していなくても意思表示だけ先に送ることが重要です。


STEP 4|当事者間での協議(話し合い)

内容証明を受けた相手が応じる場合は、金額・支払方法・期限を協議します。合意できれば合意書を作成して終了です。


STEP 5|調停・訴訟(話し合いがまとまらない場合)

協議がまとまらない場合は、家庭裁判所での調停に移行します。遺留分侵害額請求の訴訟を提起する場合は、原則として調停前置(調停を先に試みること)が必要です。調停でも解決しない場合は審判・訴訟へと進みます。



6. 弁護士に相談するタイミング

遺留分侵害額請求は、すべてのケースで弁護士が必要というわけではありません。ただし、以下に1つでも当てはまる場合は早めの相談をおすすめします。


【早めに弁護士に相談すべきサイン】

□ 期限(1年)まで時間がない、または「いつ知ったか」が曖昧

□ 相手が話し合いを拒否している、または無視している

□ 相続財産に不動産が含まれている

□ 生前贈与や特別受益が絡んでいる

□ 相手方が複数いて、利害関係がバラバラ

□ 財産の全体像がよくわからない

□ 感情的な対立が深い、または家族関係を壊したくない


「自分はどのケースに当てはまるか」の判断自体が難しいこともあります。一度弁護士に相談して全体像を把握してから、自分で動くかどうかを決めることも一つの方法です。


7. まとめ|今日から動けること

この記事では、遺留分侵害額請求について以下の内容を解説しました。

項目

要点

制度の概要

遺留分が侵害された場合に金銭の支払いを求める権利(2019年改正後は金銭請求に一本化)

請求できる人

配偶者・子(代襲相続人含む)・直系尊属。兄弟姉妹はできない

遺留分の割合

直系卑属または配偶者がいる場合は1/2、直系尊属のみなら1/3

計算の基礎

相続時財産+生前贈与-債務。不動産・株式は評価方法が争点になりやすい

期限

知った日から1年(最長10年)。先延ばしは禁物

手続きの流れ

全体把握→概算確認→内容証明→協議→調停・訴訟


制度の概要がわかったら、次は「自分のケースで実際にどう動くか」を考える段階です。


【次のステップ:実践編記事へ】

「期限・請求の順番・回収可能性」を実務視点で解説した記事はこちらをご参照ください。


横浜で遺留分のご相談は大石誠へ

弁護士大石誠は、相続・遺留分分野に注力し、横浜・神奈川エリアの案件を多数扱っています。遺言内容への疑問、生前贈与の扱い、期限が迫っているケースなど、まずはお気軽にご相談ください。


以上、遺留分侵害額請求とは?請求できる人と期限をわかりやすく解説でした。


弁護士 大石誠

横浜市中区日本大通17番地JPR横浜日本大通ビル10階 横浜平和法律事務所

【今すぐ相談予約をする】

電話:〔045-663-2294

横浜の弁護士が解説|人身傷害保険の死亡保険金は相続財産に含まれる?

関連記事


bottom of page