遺言書の頻繁な書き換えが招くリスクとは?
遺言書は、遺言者が自由に作成・変更できるものですが、短期間のうちに何度も書き換えることには注意が必要です。特に、遺言内容が頻繁に変わると、相続人同士の争いを招く可能性があります。
例えば、ある相続人に有利な内容から別の相続人に有利な内容へ変更された場合、「なぜ遺言が変わったのか?」という疑念が生じ、結果として遺言の有効性をめぐる裁判(遺言無効確認請求)が発生することもあります。また、遺言者が高齢である場合、判断能力に問題があったのではないかと疑われるケースも少なくありません。
実際、神奈川県内でも、遺言書の変更をめぐるトラブルは増えています。相続人間の争いが長期化すれば、相続手続きが進まず、財産の分配にも大きな影響を及ぼします。こうしたリスクを回避するためには、遺言書を慎重に管理し、変更する際には適切な対策を講じることが重要です。
本記事では、「遺言書の頻繁な書き換えは危険?神奈川県で遺言トラブルを防ぐ方法」と題して、遺言書を頻繁に書き換えることによる具体的なリスクと、それを防ぐためのポイントについて詳しく解説します。
遺言書の頻繁な変更が招く3つのリスク
遺言書は、遺言者が自分の意思を反映させるための重要な書類ですが、短期間で何度も書き換えると、さまざまな問題が発生する可能性があります。
ここでは、遺言書を頻繁に変更することで生じる3つのリスクについて、具体例を交えて解説します。
① 遺言無効確認請求による争いが発生する可能性
遺言書の内容が大きく変わると、相続人の中には「本当に遺言者の意思だったのか?」と疑念を抱く人が出てきます。特に、前の遺言書で財産を受け取る予定だった人が、最新の遺言書で除外されていた場合、その人が「遺言は無効だ」と主張し、裁判(遺言無効確認請求)を起こすケースが多くあります。
具体例:神奈川県内の遺言トラブル
神奈川県内のある家庭で、父親(遺言者)が最初の遺言書では長男に家を相続させると書いていました。しかし、その後、次男の家族と同居を始めたことで遺言を変更し、次男に家を相続させる内容に書き換えました。その数カ月後、さらに遺言を変更し、今度は長女に家を譲るとしたのです。
これに対し、長男は「父が意思をしっかり持っていたとは思えない。次男や長女が影響を与えたのではないか?」と主張し、遺言無効確認請求の裁判を起こしました。この結果、裁判では遺言者の意思能力が争点となり、長期間にわたる相続トラブルに発展しました。
このように、頻繁な遺言の書き換えは、相続人に不信感を抱かせ、最終的に裁判に発展するリスクを高めるのです。
② 相続人同士の対立が深まる
遺言が頻繁に書き換えられると、相続人の間で「遺言者が本当に自分の意思で変更したのか?」という疑念が生まれます。特に、ある相続人に有利な内容に変わった場合、他の相続人は「誰かが遺言者を操作したのではないか?」と疑い、対立が深まります。
具体例:変更のたびに相続人の不満が増したケース
神奈川県内のある女性(遺言者)は、最初の遺言書では全財産を二人の息子で均等に分けるとしていました。しかし、介護をしてくれた長男に感謝の気持ちを示したいと思い、遺言を変更し「長男に多めに財産を譲る」としました。
ところが、その後、長男と意見が合わなくなり、次男に多く財産を譲る内容に再び変更。その後、長男が和解を申し出たため、再び長男へ多くの財産を譲る内容に変更しました。
この結果、遺言がコロコロと変わることに不信感を抱いた次男が、「長男が母に圧力をかけたのでは?」と疑い、親族間で対立が激化。遺言の有効性が争われる事態に発展しました。
このように、遺言の変更が頻繁になると、相続人の間で疑念が生まれ、最終的には家庭内の争いにつながる可能性が高まります。
③ 遺言者の意思能力が疑われるリスク
遺言者が高齢である場合、頻繁な遺言書の変更は「本当に判断能力があったのか?」と疑われる原因になります。特に、認知症の診断を受けていた場合、変更後の遺言が無効と判断される可能性が高くなります。
具体例:認知症を理由に遺言が無効とされたケース
神奈川県のある高齢者(85歳)が遺言書を作成し、長男にすべての財産を譲るとしました。しかし、その後、親族の勧めで再び遺言を作成し、今度は三男に財産を分ける内容に変更。その2年後、三男の主張によりさらに遺言を変更し、ほとんどの財産を三男に渡す内容になりました。
この遺言を不服とした長男が「父は認知症が進んでいたはず」と裁判を起こし、医師の診断記録や介護施設の記録を調査したところ、遺言を変更した時期に認知機能の低下が進んでいたことが判明しました。その結果、裁判所は「遺言の変更時点で意思能力が不十分だった」と判断し、最終的な遺言書は無効とされました。
このように、高齢者が頻繁に遺言書を変更すると、判断能力が問題視され、遺言の無効リスクが高まることがあるのです。
遺言書は自由に変更できますが、頻繁な変更は ①遺言無効確認請求のリスク、②相続人間の対立、③意思能力を疑われるリスク を生み出す可能性があります。遺言を変更する際は、十分な対策を講じることが重要です。
遺言無効の争いを防ぐための対策
遺言書の頻繁な書き換えが、相続人間の対立や裁判を招くリスクがあることを前章で解説しました。
では、遺言の有効性を確保し、トラブルを防ぐためにはどのような対策が必要なのでしょうか?
ここでは、実際のトラブル事例を踏まえながら、効果的な対策を3つ紹介します。
① 付言事項で変更の理由を明記する
遺言の書き換えを行う際、「なぜ変更したのか」を明記しておくことが重要です。 これにより、相続人が変更の理由を理解しやすくなり、不信感や疑念を抱くリスクを減らすことができます。
具体例:付言事項が争いを防いだケース
神奈川県内のある男性(80歳)は、最初の遺言書で長男・次男に均等に財産を分けると記載していました。しかし、その後、介護をしてくれた長男に感謝の気持ちを込め、長男に多めの財産を譲るよう遺言を変更しました。
この変更に際し、付言事項として「長男は私の介護を献身的に支えてくれた。感謝の気持ちを込めて、財産の大部分を長男に相続させることとする」と明記しました。
遺言書の内容が変更されたことで、次男は一時的に不満を抱いたものの、「父の意思が明確である」と納得し、遺言の有効性が争われることはありませんでした。
ポイント
・付言事項には「なぜ変更したのか?」を具体的に記載する・「感謝の気持ち」「経済的な事情」など、変更の背景を明確にする・相続人が納得しやすい言葉で書く
② 公正証書遺言を活用する
自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、筆跡や内容の信ぴょう性が疑われるリスクがあります。そのため、頻繁に遺言を変更する場合は、公証人の立ち会いのもとで作成する 「公正証書遺言」 を利用すると安心です。
具体例:自筆証書遺言が無効とされたケース
神奈川県のある高齢男性(85歳)は、自宅で自筆証書遺言を作成し、次男に全財産を譲る内容に変更しました。しかし、長男は「父は認知症だった」と主張し、裁判で遺言の無効を訴えました。
裁判では、遺言作成当時の筆跡が以前の遺言と異なっていること、医師の診断記録で認知症が進行していたことが指摘され、結果として遺言は無効と判断されました。
一方、公正証書遺言であれば、公証人が本人の意思を確認し、証人2名の立ち会いのもとで作成されるため、「遺言の真正性」が担保されます。 そのため、無効を主張することが難しく、相続トラブルを大幅に減らすことができます。
ポイント
・公正証書遺言は全国の公証役場で作成できる・公証人が遺言者の意思を確認するため、無効を主張されにくい・神奈川県内の公証役場を利用して作成可能(横浜、川崎、藤沢など)
③ 弁護士に相談しながら慎重に変更する
遺言書の変更をする際、弁護士に相談することで法的に有効な形で遺言を残すことができます。 特に、高齢者の場合は判断能力が問題視されやすいため、変更の際には弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。
具体例:弁護士が関与して遺言の有効性を確保したケース
神奈川県在住の女性(78歳)は、最初の遺言で2人の子どもに財産を均等に分けると記載していました。しかし、その後、次男が事業で経済的に困窮していることを考慮し、「次男により多くの財産を譲る」と内容を変更しました。
このとき、弁護士に相談し、変更の経緯を記録し、医師の診断書を取得するなどの証拠を確保しながら遺言を作成しました。 その結果、長男が遺言の無効を主張することなく、スムーズに相続手続きが進みました。
神奈川県で遺言トラブルを防ぐためにできること
遺言書の頻繁な変更によるトラブルを防ぐためには、地域の専門家や公的機関を活用することが重要です。
神奈川県には、遺言や相続に関する相談ができる窓口が複数あり、適切に利用すれば遺言の有効性を確保し、相続争いを未然に防ぐことができます。
① 神奈川県内の弁護士に相談する
遺言の変更を考えている場合は、相続問題に強い弁護士に相談するのが最も確実な方法です。 弁護士は、遺言書の作成・変更を法的にサポートし、将来の無効リスクを回避するためのアドバイスを提供します。
具体例:弁護士が関与してトラブルを回避したケース
横浜市在住の男性(82歳)は、2人の息子に平等に財産を分ける遺言書を作成していましたが、その後、長男が介護を献身的に行っていることから、長男に多めに相続させる内容に変更しました。
しかし、次男が納得しない可能性があったため、弁護士に依頼し、公正証書遺言として作成。さらに、変更の理由を明記した付言事項も記載しました。 その結果、遺言の有効性が強化され、次男も納得し、相続手続きが円滑に進みました。
神奈川県で相続に強い弁護士を探すには?
・神奈川県弁護士会の法律相談センター(横浜・川崎・厚木などに拠点あり)
・各市町村の無料法律相談会(横浜市、川崎市、相模原市などで定期開催)
・インターネットで「神奈川県 相続弁護士」と検索し、評判の良い法律事務所を探す
② 公証役場を活用して公正証書遺言を作成する
神奈川県内には複数の公証役場があり、公正証書遺言の作成が可能です。 公証人が関与することで、遺言の真正性が確保され、無効主張をされるリスクが低くなります。
(神奈川県内の公証役場の一覧はこちら)
公証役場では、事前に予約をすれば遺言内容の相談が可能です。また、弁護士と連携して遺言書を作成することで、より確実な内容にすることができます。
遺言書の変更は慎重に行い、争いを未然に防ごう
遺言書は、相続を円滑に進めるための重要な手段ですが、短期間で頻繁に変更すると、相続人同士の対立や裁判(遺言無効確認請求)を招くリスク があります。
本記事のポイント
✅ 遺言書を頻繁に変更すると、以下の3つのリスクが発生する
遺言無効確認請求の可能性 → 相続人が「無効だ」と主張し、裁判に発展するケースがある
相続人同士の対立 → 遺言の変更が繰り返されると、不信感が生まれ、争いの原因になる
遺言者の意思能力が疑われる → 高齢者の場合、「認知症だったのでは?」と無効を主張される可能性がある
✅ 遺言トラブルを防ぐための3つの対策
付言事項で変更の理由を明記する → 変更の経緯を説明し、相続人が納得しやすくする
公正証書遺言を活用する → 公証人が関与することで、遺言の有効性を確保する
弁護士に相談する → 法的に適切な遺言を作成し、証拠を残しておく
✅ 神奈川県で遺言トラブルを防ぐ方法
・相続に強い弁護士に相談し、適切な遺言を作成する
・公証役場を活用し、公正証書遺言を作成する
・無料相談窓口を活用し、遺言や相続の基礎知識を学ぶ
遺言書の変更は慎重に行い、相続人が納得できる形を整えることが大切です。 弁護士や公証人のサポートを活用しながら、適切な遺言を残しましょう。
弁護士 大石誠
横浜市中区日本大通17番地JPR横浜日本大通ビル10階 横浜平和法律事務所
【今すぐ相談予約をする】
電話:〔045-663-2294〕
LINE:こちらから

合わせて読む関連記事