横浜の弁護士が教える!遺言書に記載のない財産の行方と対策
- 誠 大石

- 2024年12月8日
- 読了時間: 14分
更新日:8月28日
はじめに
「うちの親、遺言書を残してくれてたから安心…と思っていたのに、実は一部の財産が記載されていなかったんです。」
これは、横浜で実際に相続相談を受けたご家族の言葉です。
相続の場面で「遺言書があるから安心」と考える方は多いですが、意外にも「一部の財産が書かれていなかった」というケースは珍しくありません。たとえば、後から発見された預金口座、遺言書作成後に取得した不動産、さらには被相続人自身が把握していなかった隠れた財産など…。
こうした「遺言書に記載されていない財産」があった場合、相続手続きはどうなるのでしょうか?相続人同士での話し合いが必要になることもあり、思わぬトラブルにつながる可能性もあります。
「横浜の弁護士が教える!遺言書に記載のない財産の行方と対策」
この記事では、横浜で多くの相続相談を受けてきた弁護士の立場から、「遺言書に記載漏れがあったときの対応方法」や「スムーズに手続きを進めるためのポイント」について、わかりやすく解説していきます。
横浜で相続を控えている方、あるいは将来に備えておきたいという方にとって、実務的にも心構えとしても役立つ内容です。ぜひ最後までお読みください。
遺言書に記載のない財産の基本知識
遺言書は、被相続人(亡くなった方)の意思を反映する大切な文書です。
しかし、どれほど丁寧に作成された遺言書であっても、すべての財産が記載されているとは限りません。遺言書に記載のない財産、いわゆる「記載漏れ財産」があった場合、原則として相続人全員で話し合って分ける必要があります。
記載漏れの財産にはさまざまなパターンがあり、その扱いも一筋縄ではいきません。特に横浜のように不動産価格が高く、多様な財産が存在する地域では、専門的な判断が求められることも少なくありません。
では、具体的にどのような財産が「記載漏れ」とされるのでしょうか?
●記載漏れ財産の主な例(不動産・預金・保険など)
記載漏れとなる財産には、以下のようなものがあります。
・遺言書作成後に取得した財産
例:遺言書作成後に購入した不動産、新たに開設された預金口座
・把握していなかった財産
例:被相続人が存在を認識していなかった保険金、未払い給与、休眠口座
・意図的に記載されなかった財産
例:相続人同士でのトラブルを避けるために、特定の財産について言及しなかった場合
こうした財産は遺言書に記載がないため、遺言の効力が及びません。つまり、誰にどう分配するかは、法定相続人全員での「遺産分割協議」によって決める必要があります。
●遺言書が優先される範囲と限界
誤解されがちですが、遺言書の効力は「記載されている内容」にしか及びません。たとえば、「Aの土地は長男に相続させる」と書かれていれば、その土地に関する遺志は尊重されますが、それ以外の財産には影響を及ぼさないのです。
つまり、遺言書に記載のない財産については、たとえ被相続人が「暗黙の了解であの財産も長男に…」と思っていても、それを法的に主張することは困難です。
そのため、遺言書を作成する際には、財産の全体像を把握したうえで記載漏れがないように配慮することが大切です。仮に記載漏れがあった場合には、相続人全員が協力してスムーズな話し合いを進める必要があります。
横浜で遺言書に記載のない財産を分ける方法
遺言書に記載されていない財産が見つかった場合、まず行うべきは「遺産分割協議」です。これは、法定相続人全員で財産の分け方について話し合い、合意に達する必要がある手続きです。
横浜のように相続人が市外・県外に分散しているケースでは、協議の調整自体が難航することもあります。以下に、スムーズに進めるためのステップを弁護士の視点から解説します。
● 相続財産の調査と記載漏れの洗い出し
まずは、被相続人が残したすべての財産を洗い出します。これを「相続財産調査」と呼びます。
確認すべき主なポイントは次のとおりです。
- 金融機関の口座(複数ある場合も)
- 不動産の登記簿
- 保険契約(加入の有無や受取人の指定)
- 証券・株式などの資産
- 借金や未払い金の有無
横浜市内の不動産については、法務局で登記簿謄本を取得し、所有者や権利関係を確認するのが一般的です。忘れられがちな預金や株式も、金融機関に残高証明書を請求することで特定できます。
● 協議の進行と遺産分割協議書の作成方法
財産が明らかになったら、相続人全員で協議を行います。この際、相続分や希望を尊重しつつ、公平な分け方を話し合う必要があります。
合意が成立した場合は、「遺産分割協議書」を作成します。これは法的効力を持つ重要な書類であり、以下のような内容が記載されます。
- 相続人全員の署名・押印
- 各財産の分配内容(誰が何を相続するか)
- 不動産登記や金融資産の名義変更に必要な情報
この書類がなければ、不動産の登記変更や預金の解約ができないため、必ず作成しておきましょう。
● 意見が対立した場合の調停・審判の流れ
協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることができます。
調停では、裁判所の調停委員が中立的な立場で双方の意見を聞き取り、合意形成を支援します。それでも意見が一致しない場合には、「審判」に移行し、裁判官が最終的な判断を下します。
弁護士が代理人として関与することで、法的な主張を整理し、冷静な話し合いを実現することが可能です。感情的な対立が起きやすい相続では、第三者の専門家が入ることで円滑に進むケースが多くあります。
遺言執行者がいても記載漏れには注意
遺言書の中で「遺言執行者」が指定されている場合、その人物は遺言内容を実現するための重要な役割を担います。たとえば、不動産の名義変更、預貯金の解約、特定の財産の分配など、手続きを実際に進めるのが遺言執行者です。
ただし、遺言書に記載されていない財産については、遺言執行者の権限が及ばない点に注意が必要です。
● 遺言執行者の役割と権限の限界
遺言執行者の権限は、基本的に「遺言書に書かれた範囲」に限られます。たとえば、「自宅を長女に相続させる」「A銀行の預金を次男に」などと書かれていれば、そのとおりに実行するのが遺言執行者の仕事です。
しかし、遺言書に一切記載のない財産(たとえば、新たに発見された株式や保険金など)については、遺言執行者が単独で処理することはできません。そのため、相続人全員で協議を行い、分配方法を決める必要があります。
● 相続人の合意が必要なケース
たとえ遺言執行者がいても、記載漏れ財産の分配には、法定相続人全員の合意が必要です。仮に一部の相続人だけで話を進めてしまうと、後から異議が出たり、協議のやり直しが必要になる可能性もあります。
また、横浜のような都市部では、地価の高い不動産や複数の銀行口座、証券などが絡むケースも多く、相続財産の範囲が複雑になりがちです。そうした場面では、弁護士などの専門家が間に入り、法的に適切かつ公平な手続きをサポートすることが重要になります。
「遺言執行者がいるから安心」と思い込まず、記載漏れ財産があれば改めて協議を行い、適切に処理する意識が求められます。
横浜の弁護士が教えるトラブルを防ぐための対策
トラブルを未然に防ぐには、以下のような具体的な対策が有効です。
生前対策の実施
財産目録の作成
被相続人が生前に全財産をリスト化し、遺言書に反映させることで記載漏れを防げます。
目録には以下のような項目を記載するとよいでしょう。
- 銀行口座(支店名、口座番号)
- 不動産(土地・建物の所在地、登記情報)
- 株式・投資信託などの金融資産
- 生命保険の契約内容
- 借入金・負債
また、財産状況は時間とともに変化します。新たに不動産を購入したり、口座を開設したりすることもあるため、目録は定期的に見直すことが大切です。
遺言書の作成サポート
弁護士が遺言書作成を支援し、法的効力を確認することで抜け漏れを防ぎます。また、将来の遺産(相続財産)の変動に備えて、遺言書に柔軟な表現を用いることが重要です。
弁護士による遺言書の作成サポートの重要性
遺言書は法的要件を満たしていなければ無効になるおそれがあります。また、「誰に、何を、どう渡すか」の表現が曖昧だと、後々の解釈を巡って相続人間で争いが起こることもあります。
そのため、遺言書の作成は専門家である弁護士に依頼するのが安心です。
特に横浜では、高額な不動産が関係するケースが多く、財産の分割には慎重な検討が必要です。弁護士であれば、相続税や民法の知識をふまえて、トラブルを未然に防ぐ内容で遺言書を作成できます。
さらに、将来的に財産が増減することを見越して、柔軟な表現を盛り込むことも可能です。たとえば「すべての金融資産は○○に相続させる」といった包括的な記載は、個別の漏れを防ぐ効果があります。
事前の準備によって、「遺言書に記載されていない財産が見つかったらどうしよう…」という不安は大きく軽減されます。つかったらどうしよう…」という不安は大きく軽減されます。
横浜での具体的な事例紹介
事例1: 遺言書に記載のない不動産の問題
横浜市内にお住まいだった被相続人が、生前に作成した遺言書には「自宅不動産を長男に相続させる」と明記されていました。しかし、他に所有していた市内の小規模なアパートについては記載がなく、存在自体を知らない相続人もいたのです。
このアパートが発見された後、長男は「親はこの物件も自分に任せたかったはず」と主張。一方、他の兄弟は「遺言書に書いていないのだから法定相続分で分けるべき」と反発しました。
結局、家庭裁判所での調停を経て、アパートを売却し、売却益を法定相続分に従って分けることで決着しましたが、話し合いには半年以上を要しました。遺言書の記載漏れが、兄弟間の信頼関係に影を落とした一例です。
事例2: 預貯金の記載漏れ
別のケースでは、横浜市内の金融機関にある預金口座が遺言書に記載されておらず、相続人の一人が勝手に解約して使ってしまったというトラブルが発生しました。
遺言書には主に不動産や株式の分配が記されており、預金については一切言及されていませんでした。そのため、相続人全員の合意が必要でしたが、話し合いをせずに一部の相続人が行動したことで、他の相続人が法的手続きに訴える結果となりました。
このような場合、金融機関に対して払い戻し手続きの停止を依頼し、家庭裁判所での調停を通じて最終的には分配が見直されましたが、相続手続き全体に大きな遅れが出てしまいました。
両事例とも、記載漏れ財産の存在がトラブルの引き金になっており、事前の備えと専門家の関与がいかに大切かを示しています。
遺言書に記載のない財産を放置するとどうなる?
遺言書に記載のない財産を適切に処理せず放置すると、法的・実務的なトラブルが発生する可能性が高まります。財産の凍結や相続人間の対立が起きるだけでなく、未処理の財産が経済的損失を招くこともあります。
主なリスク
財産の凍結
銀行は、口座名義人の死亡を確認すると、その口座を凍結します。この凍結された口座は、遺産分割協議書が提出されるまで引き出しができません。遺言書に記載されていない場合、分配方法を決定するための協議が長引けば、生活費や葬儀費用の捻出に影響を及ぼします。
遺言書に記載がない不動産は相続人全員の共有名義となり、売却や賃貸などの処分には全員の同意が必要です。この状態では、活用できないまま維持費(固定資産税など)だけが発生する場合があります。
相続人間の対立
法定相続分に基づく分配が基本となりますが、特定の財産(例えば自宅や事業用資産)を巡って相続人の間で優先権を主張することが一般的です。これにより感情的な対立が深まり、話し合いが難航するケースも少なくありません。
財産価値の減少
処理が遅れることで、不動産の管理不足や市場価値の下落、株式の評価損などが発生する可能性があります。これにより、相続人全員が受け取るべき財産の総額が減少するリスクがあります。
対応策
財産を速やかにリストアップし、相続人全員で話し合いを進めることが重要です。専門家のサポートを受けることで、これらのリスクを回避できます。
まとめと結論
遺言書があっても、そこにすべての財産が記載されていなければ、相続手続きはスムーズには進みません。記載漏れ財産をめぐる相続人間の対立、金融機関での凍結、手続きの長期化など、現実的なリスクが潜んでいます。
特に横浜のように都市部で財産の種類や金額が多様な地域では、こうしたトラブルが発生しやすくなります。
円滑な相続を実現するためには、以下のポイントが重要です。
- 財産目録の作成と定期的な見直し:漏れなく、正確な遺言書作成の基盤になります。
- 法的に有効な遺言書の作成:弁護士のサポートを受けることで、将来の相続リスクを最小限に。
- 記載漏れ財産の発見後は、速やかに協議・合意形成を行う:専門家を交えた冷静な対応が効果的です。
また、記載漏れが発覚した時点で感情的な対立に発展させないためにも、初期対応が重要です。「どのように分けるか」だけでなく、「なぜそうしたいのか」という背景を共有することで、合意形成はスムーズになります。
万が一、協議が難航しても、横浜には相続問題に精通した法律の専門家が多数います。早めの相談で、トラブルを最小限に抑え、家族全員が納得できる相続を目指しましょう。
よくある質問とその答え
Q. 遺言書に記載のない財産はどう扱われますか?
A. 原則として記載がない財産は、相続人全員で遺産分割協議を行い、法定相続分や協議による分配が必要です。遺言書に記載された財産はその指示に従いますが、記載が漏れた財産(新しく発見された預金・不動産など)の扱いは、遺言がない部分として通常の相続手続きを行います。
Q. たとえば具体的にはどんな例ですか?
A. 被相続人が書き忘れた不動産、認識していなかった預貯金、遺言作成後に取得した資産などが該当します。これらは、全相続人が法定相続分または話し合いで分配します。分割協議が難航する場合は家庭裁判所の調停・審判を利用できます。
Q. 遺言書に「記載のない財産は○○へ」という記載がある場合は?
A. その規定が優先され、遺言通りに財産が移転します。「記載のない財産はすべて長男が相続する」などの予備的条項があれば、協議の必要なく指定相続人が取得できます。
Q. 対策として何を心がけるべき?
A. 遺言作成時に全財産を調査・網羅し、予備的条項を明記すること、専門家に相談することが望ましいです。漏れがあると相続トラブルの原因になるため、遺言書作成段階で財産一覧や「記載外財産の取り扱い」条項を加えるのが推奨されます。
このように、遺言書に記載がない財産は、法定相続もしくは相続人間の協議で決めることになり、トラブル防止には具体的・包括的な遺言書作成が有効です。
Q. 遺言にない財産が見つかったとき遺産分割協議で争いになりやすい理由は?
A. ①法定相続分をめぐる主張の対立、②財産の分割困難さや評価方法、③相続人間の感情的・人間関係的対立が重なるためです。
記載のない財産は誰がどの割合で取得するか、相続人全員の合意が必要です。その際「法定相続分で割り切れない」「過去の生前贈与や寄与、生活状況などの主張が対立」しやすいのが現実です。
財産が現金ではなく不動産中心の場合、その「売却・現物分割・共有・代償分割」など分配方法に納得できず、具体的な割振りや価格評価にも意見が分かれる傾向があります。
相続人同士に確執や過去のわだかまり、家族構成の複雑さ(再婚家庭・兄弟姉妹間の関係希薄など)が絡むと、感情面でも協議がまとまりにくくなります。
横浜の弁護士に相談する理由とお問い合わせ方法
遺言書に記載のない財産が発覚した場合、法的手続きや相続人間の調整が必要となります。こうした場面で頼れるのが、相続問題に詳しい弁護士の存在です。
特に横浜で相続が発生する場合には、地域事情を理解し、適切な対応ができる地元の弁護士に相談することが、円滑な解決への近道となります。
●横浜の弁護士に相談するメリット
【1】地域事情に精通
横浜市内や周辺地域の不動産評価や相続人の分布など、地域特有の事情に詳しいため、的確な助言と手続きのサポートが可能です。
【2】複雑な財産構成にも対応
不動産・株式・保険など、財産の種類が多様なケースにも、法的観点から整理・アドバイスが受けられます。
【3】感情的な対立を回避
相続人同士の感情的なやり取りを避け、冷静に協議を進めるための「第三者」として調整役を担います。
【4】調停・審判の代理対応
調停や審判になった場合でも、書類作成・出廷を含め、全面的に代理人として対応してもらえるため安心です。
●お問い合わせ方法
横浜で相続に強い弁護士を探すには、以下の方法があります。
- 神奈川県弁護士会の法律相談窓口:公式サイトから予約可能。相続分野の得意な弁護士を紹介してもらえます。
- 地域の法律事務所の初回無料相談:横浜市内には、相続に注力している事務所も多く、気軽に相談できる体制が整っています。
- 法テラスの利用:経済的に不安がある方は、法テラスを通じて無料または低額で弁護士の援助を受けることも可能です。
「もしかして記載漏れかも?」と不安を感じた時点で、まずは専門家に相談することが大切です。初動が早ければ早いほど、問題は小さく、スムーズに解決できる可能性が高まります。
弁護士 大石誠
横浜市中区日本大通17番地JPR横浜日本大通ビル10階 横浜平和法律事務所
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この記事は、2025年8月20日に更新をしました

