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配偶者居住権で遺留分はどう変わる?横浜の弁護士が評価と争点を解説

  • 執筆者の写真: 誠 大石
    誠 大石
  • 1月10日
  • 読了時間: 15分

配偶者居住権で遺留分はどう変わる?横浜の弁護士が評価と争点を解説

相続のご相談の中でも、近年とくに増えているのが、「後妻を自宅に住まわせたいが、前妻の子の遺留分はどうなるのか」「自宅を妻に残したいが、ほかの相続人との公平はどう考えればよいのか」という悩みです。とくに、再婚家庭で自宅が遺産の中心になっているケースでは、感情面の対立と法律上の論点が重なり、相続人同士の話し合いが難航しやすい傾向があります。


こうした場面でよく検討されるのが、配偶者居住権です。もっとも、配偶者居住権は、単に「配偶者がそのまま住み続けられる制度」というだけではありません。大事なのは、配偶者居住権が財産的価値を持つ権利であり、相続では金銭的に評価されるという点です。したがって、配偶者居住権を設定すれば、遺産分割の内容だけでなく、ほかの相続人の取り分の見え方や遺留分の計算にも影響が及びます。


とくに、「後妻には住み続けてほしいが、前妻の子にも最低限の取り分はある」「自宅しか大きな財産がなく、預貯金では調整しきれない」といったケースでは、配偶者居住権が紛争の予防に役立つこともあれば、かえって新たな争点を生むこともあります。制度の名前だけを知っていても、実際にどのような場面で使うべきか、どこで揉めやすいのかまで理解していないと、相続開始後に「こんなはずではなかった」となりかねません。


この記事では、横浜で相続案件を扱う弁護士の視点から、配偶者居住権があると遺留分がどう変わるのか、評価はどのように考えるのか、再婚家庭や自宅中心の相続で何が争点になりやすいのかを、できるだけわかりやすく解説します。


配偶者居住権があると遺留分はどう変わる?

配偶者居住権は「無償で住み続ける権利」ではなく財産的価値を持つ

まず押さえておきたいのは、配偶者居住権は「ただで住める権利」ではないということです。確かに、配偶者居住権が設定されれば、配偶者は建物に住み続けることができます。しかし、法律上はそれだけではなく、その居住の利益自体が一つの財産的価値を持つものとして扱われます。


この点を誤解していると、「妻は住むだけだから、実際には大きな財産をもらっていないのではないか」「子どもが所有権を取るなら、それで公平なのではないか」と考えてしまいがちです。けれども、相続の場面では、住み続ける利益そのものが経済的価値を持つ以上、配偶者が何も取得していないことにはなりません。配偶者は、現金や預貯金ではない形であっても、価値ある財産を取得していることになるのです。


このため、配偶者居住権を設定した相続では、誰が何を相続したのかを建物の名義だけで見ることはできません。見た目は「所有権は子」「居住は妻」という単純な形でも、法的には、配偶者は配偶者居住権という財産を取得し、子は配偶者居住権の負担が付いた所有権を取得したと評価されます。ここを理解することが、遺留分との関係を考える出発点になります。


配偶者居住権と負担付所有権に分かれることで相続人の取り分はどう見えるか

配偶者居住権が設定されると、自宅は実質的に二つの価値に分かれます。一つは、配偶者が住み続ける利益としての「配偶者居住権」です。もう一つは、その権利が付いた状態で残る「負担付所有権」です。


通常の相続であれば、自宅の評価額をそのまま一つの財産として考えます。しかし、配偶者居住権を使うと、自宅全体の価値をそのまま誰か一人が取得するのではなく、居住する権利の価値と、将来完全な所有権として回復する部分の価値に分けて考えることになります。その結果、配偶者は「住み続ける利益の価値」を取得し、子などほかの相続人は「現在すぐに自由に使えない所有権」を取得する形になります。


ここで重要なのは、負担付所有権は通常の所有権より価値が下がるという点です。たとえば、子が自宅の名義を取得したとしても、配偶者居住権が付いていれば、すぐに自分で住むことも、自由に売却して活用することも難しくなります。市場での処分可能性や実質的な利用価値が制約されるため、単純に「家を相続したのだから得をしている」とは言い切れません。


この構造が、遺産分割の公平感や遺留分の計算に大きく影響します。配偶者から見ると、住み慣れた家に住み続けられる安心があります。他方で、子から見ると、名義は自分でも自由に使えない不動産を持つことになり、しかも場合によっては遺留分侵害額請求の問題まで絡んでくるため、不満が生じやすくなります。


遺留分の計算で配偶者居住権が問題になる理由

遺留分は、一定の相続人に最低限保障された取り分です。被相続人が遺言で自由に財産を配分できるとしても、兄弟姉妹を除く一定の相続人には、なお法律上保護される持分があります。そして、現在の遺留分制度では、侵害がある場合、原則として金銭での請求が問題になります。


配偶者居住権が遺留分の場面で難しくなるのは、自宅の価値をそのまま丸ごと見るのではなく、「配偶者居住権の価値」と「負担付所有権の価値」に分けて検討しなければならないからです。つまり、遺産の中に自宅があるとしても、誰がどの価値を取得したのかを丁寧に見ないと、実際に遺留分が侵害されているのかどうかが判断しにくいのです。


たとえば、被相続人が「妻には配偶者居住権を取得させ、子には家の所有権を相続させる」と遺言した場合、一見すると妻と子がそれぞれ財産を取得しており、公平そうに見えることがあります。しかし、実際には、配偶者居住権の評価額が高く、負担付所有権の評価額が低くなることもありますし、その逆の見え方になることもあります。どちらがより大きな価値を取得したのかは、評価方法や前提事情によってかなり変わります。


そのため、遺留分の問題は、「誰が家をもらったか」ではなく、「どの価値をいくらとして取得したのか」という評価の問題に移っていきます。とくに、自宅以外に目立った財産がない相続では、この評価の違いがそのまま遺留分侵害額の有無や金額の差として表れやすくなります。


配偶者居住権の評価とは?相続・遺留分で押さえるべき基本

配偶者居住権の評価が必要になる場面

配偶者居住権の評価が問題になる代表的な場面は、相続税の申告、遺産分割、そして遺留分の検討です。とくに遺産分割や遺留分の場面では、「誰がどれだけの価値を取得したのか」を比較する必要があるため、配偶者居住権を金額に置き換えて考える作業が避けられません。


もっとも、読者の方の中には、「住む権利に値段を付けるのはイメージしにくい」と感じる方も多いと思います。ですが、実際には、自宅に終身または一定期間住み続けられる利益は、家賃負担を免れる利益や、居住の安定を確保できる利益として、経済的価値を持つと考えられています。そのため、制度上も税務上も、配偶者居住権は評価の対象とされています。


そして、この評価が必要になるのは、単に税金のためだけではありません。遺言を作る段階でも、「妻には住み続けてもらいたいが、子の遺留分との関係は大丈夫か」「子に不満が出ないように全体の配分をどう設計するか」を考えるには、配偶者居住権の価値をある程度見積もる必要があります。つまり、配偶者居住権の評価は、相続開始後の争いを解くためだけでなく、相続開始前の設計にも直結する論点です。


建物・土地の所有権をそのまま見る場合との違い

配偶者居住権がない場合、自宅不動産は基本的に土地建物を一体の資産として把握し、その評価額を前提に相続分や遺留分を考えます。これに対し、配偶者居住権がある場合には、自宅の価値を分解して考える必要があります。配偶者が取得するのは、建物に住み続ける権利と、その敷地を使う利益です。他方で、ほかの相続人が取得するのは、その権利の負担が付いた建物や敷地の所有権です。


この違いは、理屈のうえだけの問題ではありません。実務では、相続人の納得感に大きく影響します。自宅を丸ごと一人が取得する場合は、評価額のイメージが比較的共有しやすいのに対し、配偶者居住権を使う場合は、「配偶者は本当にいくら得ているのか」「子が取得する負担付所有権はどのくらいの価値なのか」が直感的に分かりにくくなります。そのため、説明が不十分なまま話を進めると、「実際より少なく見積もられているのではないか」「逆に有利に計算されているのではないか」といった不信感が生まれやすくなります。


とくに再婚家庭では、もともと相続人同士に心理的な距離があることも少なくありません。そこで自宅の価値が分解されると、単なる数字の問題にとどまらず、「誰を優先しているのか」という感情的な受け止め方にもつながりやすくなります。


評価方法に幅があり前提数値が争いになりやすい理由

配偶者居住権の評価では、一般に、建物や土地の価値、配偶者の年齢や平均余命、権利の存続期間、法定利率など、いくつもの要素が関係します。つまり、単純に「家の価格の半分」などと機械的に決められるものではありません。


このため、実務では、どの評価額を基礎にするのか、どの時点の不動産価値を前提とするのか、税務上の考え方をそのまま使うのか、それとも遺産分割や遺留分の文脈に応じて別の見方をするのかが争点になりやすくなります。数字のように見えて、実際には前提の置き方によって結論がかなり変わる分野だということです。


さらに、負担付所有権は、通常の所有権と比べて売却しにくく、担保価値も下がりやすいと考えられます。そうすると、名目上の評価額だけでなく、実質的な換価可能性をどう見るのかも問題になります。前妻の子の立場からすれば、「家の名義をもらったといわれても、実際には自由に使えないし、現金化もしにくい」という不満が出やすい一方、後妻の立場からすれば、「住む場所の確保は生活そのものに関わる重大な利益であり、軽く見るべきではない」ということになります。


このように、配偶者居住権の評価は、単なる計算ではなく、相続人それぞれの生活事情や財産の使い道とも結びついているため、遺留分の前提数値そのものが争いになりやすいのです。


横浜で多い自宅中心の相続で配偶者居住権が問題になるケース

自宅しか大きな財産がない相続で起きやすい対立

横浜でも、不動産価格が比較的高く、自宅が遺産の大半を占める相続は珍しくありません。預貯金がそれほど多くなく、主な財産が自宅だけというケースでは、配偶者居住権を使うかどうかで相続人の利害が大きく分かれます。


たとえば、夫が亡くなり、相続人が後妻と前妻の子である場合に、「後妻にはそのまま自宅に住み続けてもらいたい」という希望は自然です。しかし、自宅しか大きな財産がないと、前妻の子からすれば、自分の法的な取り分が不動産の名義や将来価値としてしか残らず、現金での回収が難しくなることがあります。しかも、遺留分侵害額請求は原則として金銭請求の問題になるため、請求を受けた側に支払原資がなければ、結局は売却や借入れの検討を迫られることもあります。


この点が、配偶者居住権をめぐる実務上の苦しさです。制度の趣旨は配偶者の居住保護にありますが、遺産が自宅に偏っていると、ほかの相続人との調整が難しくなり、制度が予定しているほどきれいには収まらないことがあります。


横浜の持ち家相続で検討したい遺産分割の進め方

自宅中心の相続では、最初から「家を誰の名義にするか」だけで話を進めると行き詰まりやすくなります。大事なのは、配偶者の居住確保、ほかの相続人の経済的利益、将来の売却可能性という三つの視点を同時に見ることです。


たとえば、配偶者居住権を設定して配偶者の生活基盤を守るのであれば、その分、預貯金や保険金など別の財産で子の不満を和らげられないかを検討する必要があります。逆に、ほかに調整財産が乏しいのであれば、安易に配偶者居住権を使うより、自宅の処分や住み替えも含めて現実的な選択肢を考えた方が、結果として紛争を小さくできる場合もあります。


横浜のように不動産の価格帯や流動性が地域によってかなり異なるエリアでは、同じ「自宅相続」でも、売却しやすい物件か、賃貸活用が見込めるか、建替えや共有解消が現実的かによって、相続人の受け止め方も変わってきます。机上の評価額だけでなく、その不動産が実際にどう動かせるのかを踏まえることが重要です。


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後妻と前妻の子がいる再婚家庭で揉めやすい争点

後妻の居住を守りたい場合に配偶者居住権が使われる場面

再婚家庭で配偶者居住権が検討される典型例は、「現在の妻には住み続けてもらいたいが、自宅の名義そのものは最終的に子に承継させたい」という場面です。被相続人としては、今の配偶者の生活を守りつつ、先々では自分の子に財産を残したいという意向を持つことが多く、その調整手段として配偶者居住権は非常に魅力的に映ります。


たしかに、この制度は、そのような希望に合致しやすい面があります。配偶者は住まいを失わずに済み、子は将来的に完全な所有権を回復できるため、一見すると双方の利益を調整しやすいように見えます。遺言でも使いやすく、遺産分割の選択肢としても有用です。


しかし、実際には、制度があることと、円満に機能することは別問題です。相続人間の関係が良好で、財産全体のバランスも取れているケースならよいのですが、もともと感情的なわだかまりがある場合には、配偶者居住権の設定が「後妻を優遇するための仕組み」と受け止められ、かえって対立を深めることがあります。


前妻の子からみた不満はどこに生じやすいか

前妻の子の立場からすると、配偶者居住権が付いた自宅を相続することには複雑な思いが生じやすいものです。まず、自分が名義を取得しても、すぐに使用も売却もできないため、財産を受け取った実感を持ちにくいという問題があります。次に、遺言や分割案の内容によっては、後妻の利益が大きく、こちらの取り分が実質的に圧縮されているように感じることがあります。


さらに、遺留分の場面では、「本当にその評価でいいのか」という不満が出やすくなります。配偶者居住権の価値が高く見積もられれば、その分だけ後妻の取得額が大きくなり、前妻の子としては不利に感じます。他方で、負担付所有権が高く見積もられれば、今度は後妻から「自分の居住利益が軽く評価されている」と反発されることがあります。どちらにしても、評価の問題が感情的対立の受け皿になりやすいのです。


遺留分侵害額の計算で対立しやすいポイント

再婚家庭での遺留分トラブルでは、どの財産を誰が取得したかよりも、その価値をどうみるかが核心になります。とくに争いになりやすいのは、配偶者居住権の評価額、負担付所有権の評価額、自宅以外の財産で調整可能かどうか、そして最終的に金銭を誰がどのように支払うのかという点です。


現実には、前妻の子が「遺留分が侵害されている」と考えても、後妻や負担付所有権を取得した相続人に十分な現金がないことがあります。そうすると、請求そのものより、支払方法や支払時期の調整が大きな問題になります。制度上の権利の有無と、実際に払えるかどうかは別の問題だからです。


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配偶者居住権は紛争予防になる場合と新たな火種になる場合

紛争予防として機能しやすいケース

配偶者居住権が有効に働きやすいのは、第一に、配偶者の居住確保が最優先課題であることが相続人全員の共通理解になっているケースです。第二に、自宅以外にも預貯金などの調整財産があり、ほかの相続人の不満を一定程度和らげられるケースです。第三に、相続人同士の関係が比較的良好で、数字の説明に対する納得が得やすいケースです。


このような場合には、配偶者居住権は「住む権利」と「将来の所有権承継」を分けて考えられるため、自宅を売らずに済ませながら、長期的な承継も見据えた柔軟な解決につながります。


かえって争いが激しくなりやすいケース

反対に、配偶者居住権が火種になりやすいのは、再婚家庭で感情的対立が強い場合、自宅以外にほとんど財産がない場合、将来その家を売却・建替え・活用したいという希望がほかの相続人にある場合です。


こうしたケースでは、配偶者居住権が「配偶者の保護」ではなく、「ほかの相続人の利用を長く縛る仕組み」と受け止められることがあります。しかも、遺留分は金銭請求の問題として残るため、権利関係を整理しただけでは紛争が終わらないことも少なくありません。


遺留分トラブルを防ぐために相続開始前にできること

遺言書作成時に配偶者居住権と遺留分をセットで考える

配偶者居住権を本当に有効に使いたいのであれば、相続が始まってからではなく、遺言書を作る段階で遺留分との関係まで見据えて設計することが大切です。「妻を住まわせたい」という希望だけで制度を選ぶのではなく、その結果、子の遺留分にどの程度影響するのか、現金での調整余地があるのかまで検討しておく必要があります。


不動産評価を早めに確認しておく重要性

また、自宅不動産の価値を大まかにでも把握しておくことが重要です。相続人の頭の中にある「家の価値」はかなり食い違うことが多く、それが感情的対立の原因になります。事前に不動産価値や財産構成を確認しておけば、制度選択の判断材料が増え、相続開始後の混乱を抑えやすくなります。


配偶者居住権と遺留分で悩んだら横浜の弁護士に相談を

配偶者居住権は、高齢の配偶者の生活を守るために有効な制度です。しかし、その価値は金銭的に評価され、遺留分や遺産分割に影響します。とくに、後妻と前妻の子がいる再婚家庭、自宅しか大きな財産がない相続では、制度を使うことで争いを防げることもあれば、逆に新たな対立を生むこともあります。


大切なのは、「制度があるから使う」のではなく、自宅の価値、ほかの財産とのバランス、家族関係、将来の住み替えや売却の可能性まで含めて、その家庭に合った設計を考えることです。相続開始前の遺言作成の段階でも、相続開始後の遺産分割や遺留分対応の段階でも、早い段階で全体像を整理することが解決への近道になります。


横浜で、配偶者居住権を使うべきか迷っている方、後妻と前妻の子の間で公平な相続設計を考えたい方、遺留分を請求される可能性が気になっている方は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。制度の説明だけでなく、実際にどこが争点になりやすいのか、どのように調整すれば紛争を大きくしないで済むのかまで見据えて検討することが重要です。


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以上、配偶者居住権で遺留分はどう変わる?横浜の弁護士が評価と争点を解説でした。


弁護士 大石誠

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