神奈川の弁護士が解説 少数株式買取業者と非弁行為の注意点
- 誠 大石

- 2 日前
- 読了時間: 11分
はじめに
非上場会社の少数株式をめぐるトラブルでは、株式買取業者から突然連絡が入ったり、少数株主が「今のうちに売った方がよい」と勧められたりすることがあります。一見すると、株式の処分に困っている株主にとっては便利な仕組みに見えるかもしれません。
しかし、譲渡制限株式の買取りを業として行う業者の中には、少数株主から低額で株式を買い取り、その後に会社や指定買取人に対して高額での買取りを求め、差額を利益とするビジネスモデルを採るケースがあります。このような仕組みは、弁護士法73条との関係で「非弁行為」が問題になることがあります。
近時の裁判例でも、株式買取業者によるこうしたスキームが違法・無効と評価された事例が公表されています。神奈川の中小企業や同族会社、そして少数株主にとっても、決して他人事ではありません。
この記事では、「神奈川の弁護士が解説 少数株式買取業者と非弁行為の注意点」と題して、神奈川の弁護士の視点から、少数株式買取業者の仕組み、非弁行為が問題となる理由、近時の裁判例、そして実務上の注意点を分かりやすく解説します。
少数株式買取業者とは何か
少数株式買取業者とは、主に非上場会社の少数株主が保有する株式を買い取り、その後に会社側との交渉や法的手続を通じて利益を得ようとする事業者をいいます。
特に問題となりやすいのが、譲渡制限株式です。譲渡制限株式は、自由に第三者へ売却できるわけではなく、会社の承認が必要になるのが通常です。もっとも、会社法上は、譲渡承認請求や、会社が承認しない場合の買取りに関する仕組みが設けられており、少数株主側にも一定の出口が用意されています。
この制度自体は、譲渡制限株式を持つ株主の利益を守るためのものです。しかし、業者がこの制度を利用し、株主から安く買い取った株式について会社や指定買取人に高値で買い取らせることを反復継続して行うと、単なる投資や通常の株式取引とは異なる問題が生じます。
会社側から見れば、好ましくない第三者が株主として関与してくるおそれがあります。少数株主側から見れば、本来知り得たはずの実質的な株価や法的選択肢を十分に知らされないまま、不利な価格で売却してしまう危険があります。
非弁行為とは何か 弁護士法73条の基本
非弁行為というと、一般には弁護士でない者が報酬目的で法律事務を扱う行為を指します。今回のテーマで特に重要なのは、弁護士法73条です。
弁護士法73条は、他人の権利を譲り受けて、その権利を訴訟、調停、和解その他の手段で実行することを業として行うことを禁止しています。要するに、他人の紛争性のある権利を買い取り、その解決や回収によって利益を上げることを、一定の場合に禁じている規定です。
もっとも、形式的に権利を譲り受けた行為がすべて違法になるわけではありません。最高裁平成14年1月22日判決は、みだりに訴訟を誘発するなどの弊害がなく、社会的経済的に正当な業務の範囲内にあると認められる場合には、弁護士法73条違反にならない余地があると示しました。
そのため、実務では、
・実質的に他人の法律事件へ介入しているのか
・利益の取り方が適正か
・社会的に正当な業務といえるか
・少数株主保護や会社の秩序を害していないか
といった点が重視されます。
株式買取業者が非弁行為とされた裁判例
近時公表されている解説によれば、株式買取業者のスキームを非弁行為と評価した裁判例として、平成26年2月27日判決と、大阪高裁令和6年7月12日判決が実務上注目されています。
平成26年2月27日判決のポイント
公開されている事務所サイト等によれば、この事案では、株式買取業者が譲渡制限のある非上場株式について、主に発行会社との価格交渉がまとまらなかった少数株主から株式を買い取り、その後に会社や指定買取人へ実質価格ベースでの買取りを求め、差額を利益とするビジネスを行っていたとされています。
紹介されている判断の骨子によれば、裁判所は、形式的には株式の譲受けであっても、実態としては少数株主の法律的紛争に介入し、その成果に応じて利益を得る構造に着目し、弁護士法73条違反の非弁行為に当たると評価したとされています。
また、最高裁平成14年判決が示した「社会的経済的に正当な業務の範囲内」にも当たらないとして、当該ビジネスを違法・無効と判断した事例として紹介されています。
大阪高裁令和6年7月12日判決のポイント
さらに、公開解説で大きく取り上げられているのが、大阪高裁令和6年7月12日判決です。
この判決では、譲渡制限株式を少数株主から買い取った業者が、発行会社に対して譲渡承認請求や売買価格決定の申立てを行い、その差額で利益を得るスキームが問題となりました。公表されている解説では、業者は実質的な株価を認識しながら、売主である少数株主にはそれを告げず、相当低額で買い取っていたことなどが認定されたと紹介されています。
そのうえで、形式的には権利譲受けの形をとっていても、実質は少数株主の法律事件に介入し、その解決結果に応じて利益を得る構造であること、しかも利益配分や情報提供の面でも公正さを欠くことなどから、社会的経済的に正当な業務とはいえず、弁護士法73条に違反すると判断されたと解説されています。
さらに重要なのは、単に業者の行為が問題視されたにとどまらず、株式譲受行為自体が無効と判断された点です。公開解説では、この高裁判断は最高裁でも維持されたと紹介されています。
2つの裁判例から見える共通点
これらの裁判例から見えてくる共通点は明確です。
第一に、裁判所は「形式」よりも「実態」を見ています。株式を買い取るという外形だけではなく、その後に何をするつもりだったのか、どのように利益を得ていたのかまで踏み込んで評価しています。
第二に、少数株主への情報提供の有無が重要です。業者が実質価値を認識しながら、その情報を売主に十分伝えずに著しく低い価格で買い取っていたのであれば、公正な取引とはいえません。
第三に、会社側との紛争や価格決定手続を織り込んだビジネスである点です。単なる投資目的の取得ではなく、会社との法的対立や手続を前提とした差額ビジネスである場合、弁護士法73条違反の問題が生じやすくなります。
神奈川の会社経営者・少数株主が注意したいポイント
神奈川でも、非上場会社、同族会社、オーナー企業では、株式の分散や少数株主対応が長年の経営課題になっていることがあります。そのため、株式買取業者の問題は、首都圏の企業実務として十分に起こり得るテーマです。
神奈川の非上場会社で起こり得る典型的な場面
たとえば、過去に親族へ分散した株式がそのまま残っているケース、創業メンバーや元役員が少数株式を持ち続けているケース、相続によって株主構成が複雑になっているケースでは、第三者による株式取得が問題化しやすくなります。
こうした状況で、会社側と少数株主の間に不信感があると、業者が入り込む余地が生まれます。特に、当事者同士の話合いが進んでいない場合には、「すぐに現金化できる」「面倒な交渉を代わりにやる」といった勧誘が魅力的に見えてしまうことがあります。
株式買取業者から連絡を受けたときの確認事項
少数株主として業者から連絡を受けた場合には、次の点を必ず確認する必要があります。
・提示価格はどのような根拠で算定されたのか
・会社との交渉や価格決定手続を前提にしていないか
・自分以外にどのような利益を誰が得るのか
・会社法上の手続や代替手段について十分な説明があるか
・契約後に自分の権利がどうなるのか
「買い取ってもらえるなら助かる」と感じても、その価格が適正かどうか、そもそもそのスキームが有効かどうかは別問題です。少なくとも、契約書に署名する前に、会社法と弁護士法の双方に詳しい弁護士へ相談すべきです。
会社側が譲渡承認請求を受けた場合の対応
会社側にとっても、安易な対応は危険です。譲渡承認請求が来たときには、定款の定め、株主名簿の状況、承認機関、通知期間、指定買取人の要否など、会社法上の手続を正確に確認しなければなりません。
対応を誤ると、望ましくない第三者が株主となるリスクや、高額な価格での買取りを迫られるリスクが生じます。感情的に拒否するのではなく、手続面・評価面・訴訟リスクの三つを整理した上で方針を決めることが重要です。
弁護士が解説 少数株式買取業者への対応方法
少数株主が取るべき対応
少数株主としては、まず「本当に今売るべきか」を見直すことが大切です。譲渡制限株式は扱いが難しい一方で、会社法上の手続や交渉の余地があります。業者からの初回提案だけで判断せず、株価評価の考え方や他の選択肢を把握することが必要です。
また、業者が示す説明内容をそのまま前提にしないことも重要です。適正価格、価格決定手続の見通し、会社との関係、契約が無効と評価されるリスクなど、法的な見立てによって結論が変わることがあります。
会社側が取るべき対応
会社側は、業者からの接触があった段階で、少数株主対応を後回しにしないことが重要です。定款の整備、株主構成の把握、過去の経緯の整理、株価算定の準備など、平時からできることは少なくありません。
また、実際に請求が届いた場合には、期限管理が極めて重要です。社内だけで判断すると、手続ミスや証拠不足が生じやすいため、早期に弁護士へ相談して対応方針を固めるべきです。
交渉・手続対応を弁護士に依頼するメリット
少数株式買取業者の問題は、単なる契約問題ではありません。会社法、弁護士法、株価評価、交渉戦略が複雑に絡みます。そのため、早い段階から弁護士が関与することで、法的リスクの見極め、証拠の確保、相手方対応の一本化が可能になります。
特に、神奈川の企業や株主にとっては、地域での継続的な相談体制を持つ弁護士へ依頼することで、顧問対応や他の経営課題も含めて総合的に助言を受けやすくなります。
神奈川で少数株式や非弁トラブルを弁護士に相談するメリット
神奈川の自社株の相続では、オーナー企業、家族経営、事業承継準備中の会社に関する相談が少なくありません。そのなかで、少数株主対応や譲渡制限株式の問題は、経営権や支配権にも直結するテーマです。
地域の弁護士へ早めに相談するメリットは、単に法令の一般論を聞けることだけではありません。株主構成、会社の規模、親族関係、既存の対立状況などを踏まえて、実際に動ける対応策まで整理しやすい点にあります。
少数株主の側でも、会社との関係を完全に壊さずに解決を図りたいのか、適正価格を重視したいのか、将来の相続や事業承継も見据えて動きたいのかによって、取るべき手段は異なります。だからこそ、早めの法律相談が重要です。
よくある質問
Q 株式買取業者に売却した株式は必ず無効になりますか?
必ず無効になるとは限りません。最終的には、契約の内容、業者のビジネス実態、情報提供の有無、権利行使の予定など、個別事情に応じて判断されます。ただし、近時の裁判例では、実態として差額利益を目的に法的手続を利用するスキームが強く問題視されています。
Q 少数株主が適正価格を知らずに売却した場合はどうなりますか?
事案によっては、契約の有効性そのものや、説明義務違反、不法行為などが問題となる可能性があります。売却後でも検討余地が残ることがありますので、契約書ややり取りの記録を持参して弁護士へ相談することが重要です。
Q 会社は株式買取業者からの請求を拒否できますか
一律にはいえません。会社法上の手続に従って判断する必要があります。感覚的に拒否してよい問題ではなく、承認の可否、指定買取人の要否、価格決定手続の見通しなどを踏まえて、法的に適切な対応を検討しなければなりません。
Q 神奈川の会社でも早めに弁護士へ相談すべきですか
はい。少数株式の問題は、初動を誤ると長期化しやすく、経営権や対外的な信用にも影響します。少しでも業者の介入が見えた段階で、早めに相談することをおすすめします。
まとめ 神奈川で少数株式買取業者に関する問題が起きたら早めの対応を
少数株式買取業者のスキームは、場合によっては弁護士法73条違反の非弁行為として問題となります。公開されている近時の裁判例でも、実態として少数株主の法律事件に介入し、差額利益を得るビジネスが違法・無効と評価された事例が紹介されています。
神奈川の会社経営者や少数株主にとっても、こうした問題は十分に現実的です。業者から連絡を受けた場合には、その場で判断せず、契約前の段階で法的リスクを確認することが重要です。
少数株式、譲渡制限株式、株式買取業者、非弁行為の問題で不安がある場合は、会社法と企業法務に詳しい弁護士へ早めに相談してください。初動の判断が、その後の交渉や紛争対応を大きく左右します。
神奈川で少数株式・非弁行為の相談を弁護士にするなら
次のようなお悩みがある場合は、早めのご相談をおすすめします。
・株式買取業者から突然連絡が来た
・少数株主が業者へ売却しようとしている
・譲渡承認請求への対応に困っている
・適正株価の考え方を整理したい
・経営権への影響を最小限に抑えたい
ご相談の際は、定款、株主名簿、相手方から届いた通知書、契約書案、これまでのやり取りが分かる資料をご用意いただくと、より具体的な助言が可能です。
少数株式や譲渡制限株式をめぐる問題は、放置すると複雑化しやすい分野です。神奈川で会社側・株主側いずれの立場でもお困りの際は、早めに弁護士へご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別事案に対する法的意見ではありません。具体的な事案については、資料を確認のうえ個別に判断する必要があります。
『止まった相続を終わらせる弁護士』大石誠
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