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【2026年改正予定】神奈川県で注目される成年後見制度の新たな仕組み

  • 執筆者の写真: 誠 大石
    誠 大石
  • 6 日前
  • 読了時間: 13分

はじめに

「成年後見制度は、一度使うと一生続く」「後見が付くと、本人は何も決められなくなる」――。

こうしたイメージから、成年後見制度の利用をためらっている方は、神奈川県内でも少なくありません。相続や不動産の問題が目前に迫っていても、「制度に縛られるのが怖い」という理由で、相談自体を先送りにしてしまうケースも多く見られます。


しかし、2026年に予定されている成年後見制度の改正は、この“固定観念”を大きく覆す内容となっています。法務省の法制審議会が取りまとめた要綱案では、成年後見を「終身・包括・代行決定」の制度から、「必要なときに、必要な範囲だけ使う支援制度」へと転換する方向性が明確に示されました。


具体的には、①後見・保佐・補助という三類型を見直し、本人の状況に応じて権限を個別に設計する仕組みへの転換、②原則として途中終了を可能とする終身制の見直し、③本人同意を重視し、自己決定権を最大限尊重する考え方の導入、④後見人交代を柔軟に行える仕組みの整備――といった、大きな制度変更が検討されています。


これらの改正は、相続や不動産売却、施設入所といった実務の現場に直接影響します。特に神奈川県では、不動産を含む相続案件が多く、成年後見の関与が避けられない場面も少なくありません。制度改正を正しく理解していないと、「不要な後見を続けてしまう」「本来は本人が決められるはずのことまで代理されてしまう」といった事態にもなりかねません。


本記事では、「【2026年改正予定】神奈川県で注目される成年後見制度の新たな仕組み

」と題して、弁護士の視点から、改正案のポイントと、相続や不動産処分など実務で何が変わり得るのかを、できるだけ具体的に整理します。


成年後見制度の現行ルールと限界

成年後見制度は、判断能力が低下した方の財産管理や契約行為を支えるための仕組みで、現行法では本人の判断能力の程度に応じて、次の三類型に分かれています。


・後見:判断能力を欠く常況にある方が対象

・保佐:判断能力が著しく不十分な方が対象

・補助:判断能力が不十分な方が対象


このうち「後見」は、後見人に包括的な代理権(原則として広範囲に代理できる権限)と取消権が与えられるのが特徴です。いっぽう「保佐」では、重要な法律行為について同意が必要となる同意権が中心で、個別の申立て等により代理権が付与される場合があります。「補助」はさらに限定的で、原則として同意権・代理権は自動付与されず、申立てで必要な範囲を指定して付与する仕組みです。


現行制度は、判断能力の程度を基準に分類し、類型ごとに権限の基本パッケージを設定することで、制度運用を分かりやすくしてきました。しかし、運用が積み上がる中で、構造的な限界が指摘されるようになります。改正議論の核心は、まさにこの「分かりやすさ」と引き換えに生じた弊害をどう是正するかにあります。


(1)「終身制」になりやすい

現行制度では、一度開始すると、原則として本人の判断能力が回復しない限り、終了が難しいのが実務上の現実です。たとえば脳卒中後の一時的な判断能力低下、生活環境の整備、支援体制の充実などで“後見ほどの保護が不要”になったとしても、制度の終了は簡単ではありません。その結果、「使い始めると戻れない」という不安が、制度利用をためらう要因になってきました。


(2)本人の意思が反映されにくい場面がある

後見・保佐の開始では、本人の同意が要件ではありません。本人が「制度は使いたくない」と感じていても、家庭裁判所の判断で開始され得る構造です。さらに、後見類型では包括的な代理権が付与されるため、本人が本来は自分で決めたい領域まで、実務上は後見人が手続きを進める場面が生じやすく、自己決定との緊張関係が指摘されてきました。


(3)後見人交代が難しい

後見人の解任は、法律上「不正な行為」「著しい不行跡」「その他後見の任務に適さない事由」などに限定されるため、本人と後見人の相性が悪い、信頼関係が崩れた、専門性が合わないといった理由だけでは、交代が進みにくい傾向があります。神奈川県内でも、親族後見を選んだものの、相続や不動産管理が絡んで親族間対立が深まり、結果として後見業務そのものが停滞してしまうケースは珍しくありません。


これらの課題を踏まえ、改正案は「本人の意思・必要性に合わせて、権限や期間を設計し直す」方向に舵を切ろうとしています。次章では、その中核となる“オーダーメード型”の考え方(制度の一元化・権限の個別化)を、相続・不動産の現場を想定しながら解説します。


2026年改正の最大のポイント「オーダーメード型後見」

今回の成年後見制度改正案において、最も本質的な転換点といえるのが、「後見・保佐・補助」という三類型を前提とした仕組みを見直し、個別事案ごとに必要な権限を設計する、いわゆる「オーダーメード型」への転換です。


現行制度では、判断能力の程度を入口として類型が決まり、その類型に応じて、あらかじめ用意された権限のパッケージが付与されます。後見であれば包括的代理権、保佐であれば同意権が自動的に付く、という考え方です。この仕組みは運用の簡便さという利点がある一方で、「本当にそこまでの権限が必要なのか」という疑問が常につきまとってきました。


改正案では、判断能力の程度による三分法を廃止し、対象者を「判断能力が不十分である者」として一元化します。そのうえで、代理権や同意権は包括的に付与するのではなく、「どの行為について、どの範囲で必要か」を個別に検討し、家庭裁判所が付与する仕組みへと改める方向が示されています。


具体的には、相続、預貯金管理、不動産処分、施設入所契約など、生活や財産に関わる行為を細分化し、その中から本人にとって必要不可欠なものだけを選択するイメージです。本人の同意が可能な場合には、その同意を前提として権限内容を決定し、同意が難しい場合でも、必要最小限にとどめることが強く意識されています。


この変更は、「成年後見=すべてを任せる制度」から、「本人の判断を支援しつつ、足りない部分だけを補う制度」への思想転換を意味します。本人が自分で決められる領域を最大限残し、後見人はあくまで補助的・限定的な役割を担うという位置づけが、制度設計の中心に据えられたといえるでしょう。


実務的には、弁護士や司法書士が関与する場面で、申立書の内容が大きく変わる可能性があります。従来のように「後見相当」「保佐相当」と類型を前提に整理するのではなく、「なぜこの権限が必要なのか」「この権限がなければどのような不利益が生じるのか」を、個別具体的に説明する力がより重要になります。


神奈川県の相続実務で想定される具体的ケース

オーダーメード型後見の影響が最も顕著に現れるのが、相続や不動産を含む財産処分の場面です。神奈川県内でも、相続財産に自宅不動産が含まれるケースは非常に多く、成年後見との関係は避けて通れません。


現行制度では、被後見人が相続人となった場合、後見人は包括的代理権に基づき、遺産分割協議全体を代理できます。不動産の売却についても、家庭裁判所の許可を得れば、後見人が一括して手続きを進めることが可能です。


しかし改正後は、「遺産分割協議」「不動産の処分」という行為ごとに、代理権が明示的に付与されているかを確認する必要が生じます。仮に、預貯金管理の代理権のみが付与されている場合、不動産売却を進めるには、改めて家庭裁判所に権限付与の申立てを行わなければなりません。


一見すると煩雑に見えますが、この仕組みは、本人にとって本当に必要な行為かどうかを、都度立ち止まって検証するためのものです。例えば「不動産は売却せず、賃貸に出したい」「相続分の放棄も選択肢として検討したい」といった本人の意向がある場合、包括代理よりも柔軟に反映しやすくなります。


神奈川県では、地価や不動産価値が高い地域も多く、不動産処分の判断は本人の生活や資産形成に直結します。オーダーメード型後見では、こうした重要局面ごとに、本人の意思確認と専門家の関与が強く求められるようになるでしょう。


終身制廃止と「途中終了」が可能になる影響

改正案の第二の柱が、「成年後見は原則として一生続くもの」という前提を見直し、途中で終了できる制度を導入する点です。これは、利用者や家族が長年抱いてきた不安を大きく軽減する可能性があります。


現行制度では、成年後見を終了するためには、原則として本人の判断能力が回復したことを立証する必要があります。しかし、判断能力の評価は医学的・法的にハードルが高く、実務上は「ほぼ終了できない制度」と受け止められてきました。


改正案では、判断能力の回復に限らず、「保護の必要性が失われたかどうか」を基準に、家庭裁判所が終了を判断できる方向が検討されています。たとえば、支援体制が整った、家族によるサポートが安定した、当初予定していた手続がすべて完了した、といった事情も考慮され得ます。


これにより、脳梗塞後の一時的な判断能力低下、手術・治療期間中の限定的な支援など、「期間限定の後見利用」が現実的な選択肢となります。成年後見を“最後の手段”ではなく、“必要な時に使って、不要になればやめられる制度”へと位置づけ直す効果は非常に大きいといえるでしょう。


本人同意の原則化と自己決定権の尊重

改正案の中でも、実務への影響が特に大きいのが「本人同意の原則化」です。現行制度では、後見・保佐の開始に本人の同意は必須ではなく、本人が制度利用に消極的、あるいは拒否的であっても、家庭裁判所の判断で開始される可能性があります。この点が、自己決定権を過度に制限しているとの批判を受けてきました。


改正案では、法定後見の開始にあたり、原則として本人の同意を要件とする方向性が示されています。ここで重要なのは、「完全な同意主義」ではなく、段階的・柔軟な設計が検討されている点です。本人が明確に異議を述べている場合には、原則として後見開始は認められない一方で、「事理弁識能力を欠く常況にある者」については、例外的に同意を要しないとする案も議論されています。


実務上の難点は、「同意できる能力」と「判断能力」が必ずしも一致しない点にあります。判断能力が低下していても、自分の生活や支援について一定の意向を示せる方は少なくありません。その意向をどの程度まで尊重すべきか、どのように記録・評価するかが、今後の運用上の重要課題になります。


弁護士実務では、成年後見の申立前に、本人の意思を丁寧に聴き取るプロセスがこれまで以上に重視されます。「なぜ後見を嫌がるのか」「どこまでなら支援を受け入れられるのか」といった点を掘り下げ、単なる形式的同意ではなく、本人の価値観や選好を把握する姿勢が不可欠です。


また、すでに後見が開始されているケースでも、本人が「制度をやめたい」と明確に意思表示している場合、通常は保護の必要性が失われたと評価できるとする考え方も示されています。これは、現行制度における「判断能力回復」という厳格な終了要件からの大きな転換であり、本人の意思を中心に据える姿勢がより明確になった点といえるでしょう。


後見人交代がしやすくなる新ルール

改正案のもう一つの重要な柱が、後見人交代の円滑化です。現行制度では、後見人の解任事由が法律上限定列挙されており、家庭裁判所も慎重な姿勢を取る傾向が強いため、実務上は「交代が非常に難しい」という印象が定着しています。


とりわけ問題となりやすいのが、親族後見人と被後見人との関係悪化です。不正行為や職務放棄とまではいえないものの、価値観の違い、感情的対立、相続をめぐる利害衝突などにより、後見業務が円滑に進まなくなるケースは少なくありません。しかし現行法では、こうした事情だけでは解任理由に該当しにくいのが実情です。


改正案では、解任事由に「本人の利益のために特に必要な場合」を追加することが検討されています。これにより、信頼関係が破綻している場合や、後見人の専門性が本人のニーズに合わなくなった場合なども、交代を認めやすくなります。


例えば、当初は日常的な財産管理が中心だったため親族後見で足りていたものの、後に不動産売却や相続税対策が必要になった場合、専門職後見人への交代がより柔軟に認められる可能性があります。これは、後見人を「固定的な存在」ではなく、「本人の状況に応じて選び直せる支援者」と位置づけ直す発想といえるでしょう。


任意後見制度はどう変わるのか

成年後見制度の見直しは、法定後見だけでなく、任意後見制度にも及んでいます。特に注目されているのが、任意後見監督人制度の在り方です。


現行制度では、任意後見契約が発効すると、必ず家庭裁判所が任意後見監督人を選任します。多くの場合、弁護士や司法書士が選ばれ、その報酬が継続的に発生します。このコスト負担が、任意後見利用の大きなハードルになってきました。


改正案では、現行通り必須とする案に加え、事案に応じて家庭裁判所が柔軟に判断する案、さらには監督人を置かず家庭裁判所が直接監督する案など、複数案が併記されています。費用負担の軽減と本人保護をどう両立させるかが、今後の議論の焦点です。


神奈川県内でも、任意後見と家族信託、見守り契約を組み合わせた終活設計への関心は高まっており、制度改正の方向性次第では、任意後見の利用が一段と広がる可能性があります。


弁護士の視点から見る改正の実務的影響

今回の改正は、相続・終活を扱う弁護士実務に大きな変化をもたらします。まず、成年後見申立前の段階で、本人の意思確認と同意能力の評価に、より多くの時間と専門性が求められるようになります。


後見開始後も、権限内容が細分化されるため、「今、この行為は代理できるのか」という確認作業が不可欠です。相続手続、不動産処分、税務申告など、それぞれについて権限の有無を把握し、必要に応じて家庭裁判所へ追加申立てを行う体制が必要になります。


また、途中終了や後見人交代が現実的な選択肢になることで、状況変化に応じた柔軟な見直し提案ができるようになります。成年後見だけに依存せず、任意後見、家族信託、死後事務委任などを組み合わせた総合的な提案力が、弁護士に一層求められるでしょう。


神奈川県で成年後見を検討する方へ

神奈川県で成年後見を検討する際には、「今すぐ後見が必要か」「期間限定で足りるのか」「他の制度と組み合わせる余地はないか」を整理することが重要です。改正後は、成年後見がより柔軟な制度になる一方、設計を誤ると手続が煩雑になる可能性もあります。


早い段階で専門家に相談し、本人の意思や家族関係、財産状況を踏まえた選択をすることが、将来のトラブル回避につながります。


まとめ:成年後見制度改正を正しく理解するために

2026年の成年後見制度改正は、24年ぶりの根本的な制度転換です。三類型の見直し、終身制の廃止、本人同意の原則化、後見人交代の柔軟化――いずれも、本人の自己決定権を中心に据えた発想への転換を示しています。


成年後見は「必要なときに、必要な分だけ使う支援」へと変わろうとしています。神奈川県で相続や終活を考える方にとって、この改正を正しく理解し、適切な制度設計を行うことが、これからの安心につながるといえるでしょう。


弁護士 大石誠

横浜市中区日本大通17番地JPR横浜日本大通ビル10階 横浜平和法律事務所

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参考

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