遺産の範囲で争いが起きたらどうする?神奈川県の弁護士が解説
- 誠 大石

- 1 日前
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更新日:3 時間前
はじめに
相続の相談では、「誰が相続人か」「どう分けるか」と並んで、「そもそも何が遺産なのか」で手続きが止まることが少なくありません。預貯金はあるけれど名義預金ではないかと言われている。不動産は被相続人名義だが、実際には共有財産ではないかと争われている。事業用資産や貸付金について、被相続人個人のものなのか会社のものなのか意見が分かれている。このような場面では、分け方の議論に入る前の段階で相続が止まります。
遺産分割は、何を分けるのかが定まって初めて進められます。対象財産が定まらなければ、具体的な分割案を作ることができません。さらに、誰が相続人なのか、各相続人の立場や持分に争いがあると、そもそも誰を当事者として話し合えばよいのかも定まりません。こうした「前提が決まらない相続」は、相続人だけで何とかしようとしても前に進みにくいのが実情です。
神奈川県でも、実家の土地建物、賃貸不動産、家業に関係する資産、親族名義の預金などをめぐって、遺産の範囲が争いになるケースがあります。相続人同士の関係が悪化していると、資料の開示が進まず、「何が遺産か分からないまま時間だけが過ぎる」という状態にもなりがちです。
もっとも、ここで大切なのは、遺産の範囲で争いが起きたからといって、すぐに全面的な対立だと決めつけないことです。止まっていない相続、つまり、戸籍や財産資料を集めながら税理士・行政書士・司法書士の力を借りて進められる相続であれば、わざわざ弁護士に相談しなくてもよい場面はあります。他方で、遺産の範囲そのものが争いになり、自走できないくらいまで止まってしまった案件は、弁護士が解決するしかありません。
相続の目的は、誰かに勝つことではありません。止まった相続を終わらせることです。止まった相続を終わらせることは、家族の不信、財産の停滞、次世代への先送りに区切りをつけ、人生を前に進めることでもあります。
この記事では、「遺産の範囲で争いが起きたらどうする?神奈川県の弁護士が解説」と題して、遺産の範囲で争いが起きると相続がなぜ止まるのか、どのように整理し、どの段階で弁護士が必要になるのかを、神奈川県の相続実務を意識しながら分かりやすく解説します。
遺産の範囲の争いとは何か
遺産分割というと、「誰がどれだけ相続するか」を決める話だと思われがちです。しかし、実務ではその前に、「分ける対象が何か」を固める必要があります。これが遺産の範囲の問題です。
たとえば、被相続人名義の預金があっても、その原資が別の相続人のお金だった、あるいは実質的にその相続人が管理していた、という主張が出ることがあります。これがいわゆる名義預金の問題です。また、不動産が被相続人単独名義であっても、購入資金の負担関係や過去の経緯から、実質的には共有財産ではないかが争われることもあります。さらに、生前にすでに贈与された財産なのか、それともなお遺産として扱うべきなのかで意見が分かれることもあります。
このように、遺産の範囲の争いとは、「その財産が遺産分割の対象に入るのか、入らないのか」をめぐる争いです。ここが固まらない限り、どの財産を誰が取得するのかという本題には入れません。分割案を作ろうとしても、相手から「その財産はそもそも遺産ではない」と言われれば、話はそこで止まります。
神奈川県の相続では、不動産が絡むことでこの問題が深刻化しやすい傾向があります。実家の土地建物、親族が使っている収益不動産、共有状態のまま放置された物件など、金額が大きく管理も必要な財産ほど、「それが本当に遺産なのか」の争いが相続全体を止める原因になります。
なぜ遺産の範囲の争いで相続が止まるのか
①実体法上の前提が未確定だと対象財産を特定できない
遺産分割協議や遺産分割調停は、分ける対象があることを前提に進みます。ところが、ある財産が被相続人の所有か、それとも他人の所有かについて争いがあると、その財産を当然に分割対象へ入れることができません。
たとえば、被相続人名義の建物であっても、相続人の一人が「これは自分が資金を出して建てたもので、名義だけ親だった」と主張する場合があります。このとき、残りの相続人が「いや、被相続人の遺産だ」と主張しても、前提がぶつかっている以上、そのまま遺産分割の土台には乗せにくくなります。何が遺産であるかが確定しない以上、どのような分け方が公平かも判断できないからです。
②事実基礎と評価がそろわないと具体案を作れない
仮に「その財産は遺産に入りそうだ」という感触があっても、資料が十分に出てこない、評価額に大きな開きがある、といった問題で具体的な分割案を作れないことがあります。不動産の査定額が相続人ごとに違う、非上場株式の価値評価で争いがある、預金の出入りについて説明がつかない、といったケースです。
遺産分割は、抽象的な不満ではなく、最終的には「誰が何を取るか」という形に落とし込まなければなりません。そのためには、財産の内容と価値について最低限の共通理解が必要です。資料非開示や評価対立があると、そもそも提案の土台ができず、協議が進みません。
■遺産分割協議書にサインしない相続人がいる場合の対処法
遺産の範囲の争いでよくある具体例
①名義預金が問題になるケース
親名義の預金が見つかったとしても、そのすべてが当然に遺産になるとは限りません。たとえば、子が実質的に管理していたお金を親名義口座に入れていた、事業資金や生活費の出入りが混在していた、という事情があると、「これは被相続人の財産なのか」が争点になります。
もっとも、名義預金だと主張する側にも、きちんとした裏付けが必要です。単に「自分のお金だったはずだ」と言うだけでは足りず、入出金履歴、資金の出どころ、管理状況などを丁寧に見ていく必要があります。ここが曖昧なままだと、相続人同士の不信感だけが膨らみます。
②不動産の帰属や共有関係が争いになるケース
神奈川県では、不動産が絡む相続相談が非常に多いです。被相続人名義の自宅、賃貸マンション、月極駐車場用地、親族が事業に使っている建物など、金額が大きい財産ほど争いの中心になりやすい傾向があります。
たとえば、登記名義は被相続人でも、購入資金の一部を同居していた相続人が出していた、建替費用を別の相続人が負担していた、親族間で黙示の了解があった、といった事情があると、形式的な名義だけでは整理できないことがあります。その結果、「これは遺産全体の中に入れて分けるべきだ」「いや、持分や帰属自体が別問題だ」と意見が割れます。
■相続不動産があると遺産分割が止まりやすい理由と対処
③生前贈与済みか、なお遺産かで争うケース
被相続人が生前に財産を渡していたかどうか、どこまで確定的に移転していたのかが問題になることもあります。口頭では「あげる」と言われていた、通帳を預けられていた、長年管理を任されていた、という事情だけで、直ちに遺産から外れるとは限りません。他方で、実際に贈与契約や移転手続が済んでいるなら、遺産分割の対象に入らない方向で整理すべき場合もあります。
ここで問題なのは、家族の中では「もう本人のものだと思っていた」という感覚があっても、法的には整理が未了ということが珍しくない点です。その感覚のズレが、相続開始後に表面化します。
④事業用資産や親族会社との関係が争いになるケース
被相続人が個人事業を営んでいた、あるいは親族会社に深く関わっていた場合、個人の財産と事業・会社の財産が混在しやすくなります。会社のために個人口座を使っていた、個人所有の不動産を事業に使っていた、貸付金なのか立替金なのか判然としない、というケースです。
この種の案件は、税務資料、会計資料、契約書、通帳などを見る必要があるため、一般的な相続よりも格段に整理が難しくなります。税理士が関与すべき場面もありますが、帰属そのものが争いになると、最終的には弁護士の対応が必要になります。
非訟手続と訴訟手続の違いから生じる「待ち」の構造
相続が止まる大きな理由の一つが、手続の役割分担です。遺産分割調停や審判は、家庭裁判所で行う家事事件の手続です。一方で、遺産の範囲や相続人資格など、前提問題の一部は、別の訴訟手続で確定させる必要があることがあります。
ここが実務上の非常に重要なポイントです。遺産分割調停は万能ではありません。たとえば、ある財産が被相続人の所有か他人の所有かに争いがある場合、原則として、その所有関係自体は民事訴訟で確定させるべき問題になります。同じように、戸籍の記載が真実と異なる、養子縁組や婚姻の有効無効に争いがある、といった相続人資格に関わる問題も、遺産分割の前に別途の人事訴訟や家事調停等で整理すべき場合があります。
つまり、家裁の遺産分割手続の中で「全部まとめて決めてもらえる」とは限らないのです。前提問題について当事者間で合意ができなければ、先にその点を訴訟などで解決し、その結果を待ってから遺産分割へ戻る、という二段構造になります。この「待ち」の時間が、相続を長引かせます。
遺産分割調停で話し合いがまとまらなければ、通常は審判へ移るのが原則です。しかし、前提問題が解決していない場合には、調停を終了させて先行訴訟を求める扱いになることもあります。ここを理解せずに「とにかく家裁へ行けば全部進むはずだ」と考えると、期待とのギャップでかえって混乱しやすくなります。
家事事件特有の全員参加要件と、相続が止まる場面
遺産分割は、相続人全員が関係する手続です。誰が相続人かが確定していない、あるいは一部相続人が参加しない、参加できないという状況では、任意の遺産分割協議は成立しにくくなります。
たとえば、相続人の一人が「そもそもあの人は相続人ではない」と主張している場合、誰を入れて協議すべきかで最初から意見が割れます。また、相続人の一部が資料を持っているのに開示しない、調整に応じない、所在は分かるが協議に出てこない、というだけでも、任意協議は簡単に止まります。
もちろん、実務上は調停申立てによって前へ進めることができる場合があります。ただ、それは「任意の話し合いがもう限界である」という意味でもあります。全員参加が必要な手続だからこそ、一部の相続人が動かないだけで、相続全体が止まりやすいのです。
神奈川県でも、県内不動産の管理や相続登記の対応が必要なのに、当事者の一部が非協力的で、何年も整理できないケースがあります。令和6年4月1日から相続登記の申請義務化が始まっている以上、不動産を含む相続を「そのうち」と放置するリスクは以前より大きくなっています。
■そもそも相続人と連絡が取れない場合の対処法
事実関係や資料がそろわない場合の対応
①まず基礎資料を集める
遺産の範囲の争いでは、感覚や記憶ではなく、資料が重要です。戸籍、登記事項証明書、固定資産税関係資料、通帳や取引履歴、証券資料、契約書、借用書、確定申告書、会社関係資料など、争点に応じて基礎資料を集めます。
ここで重要なのは、「後で必要になりそうなもの」を早い段階から押さえることです。相続開始直後は資料が見つけやすくても、時間がたつと散逸しやすくなります。特に被相続人が事業をしていた場合や、複数の金融機関を使っていた場合は、初動が遅れるほど整理が難しくなります。
②何が争点かを言語化する
遺産の範囲の争いは、全体がごちゃごちゃしやすいです。「あの預金」「あの土地」「あの会社関係のお金」と言い合っているだけでは進みません。争点ごとに、「帰属の争いなのか」「評価の争いなのか」「相続人資格の争いなのか」を切り分ける必要があります。
たとえば、預金については帰属が争点、不動産については評価が争点、相続人の一人については資格が争点、というように整理できれば、どこから交渉し、どこは訴訟を視野に入れるべきかが見えてきます。止まった相続を動かすには、まず整理の言葉を持つことが大切です。
③資料非開示には手続を見据えて対応する
相続人の一人が資料を持っているのに出さない、あるいは曖昧な説明しかしないということは珍しくありません。この場合、単に「見せてください」と頼み続けるだけでは限界があります。弁護士が入ることで、何が必要資料で、何のために必要で、出さないとどう手続が進むのかを整理したうえで求めることができます。
資料が出ないままでも進められる論点と、資料がなければ進まない論点を区別することも重要です。全部が出そろうまで完全に停止するのではなく、先に整理できる部分から進める判断が必要になることもあります。
■資料を出さす印鑑も押してくれない相続人への対応はこちらで解説
④評価対立は専門家の力も使う
不動産や非上場株式などは、評価で意見が割れやすい財産です。この場合、相続人の主観だけで決めようとしてもまとまりません。査定書、不動産鑑定、会計資料などをもとに、一定の客観性を持たせることが必要です。
もっとも、評価の問題であれば税理士や不動産専門家の関与が有効な場面もあります。ただし、その評価を前提に交渉し、手続に乗せ、最終的に相続を終わらせるのは別の仕事です。そこまで止まっているなら、弁護士の役割が大きくなります。
自走できる相続と、弁護士が必要な相続の違い
相続のご相談では、「最初から弁護士でないとだめですか」と聞かれることがあります。答えは、案件によります。
止まっていない相続、つまり、相続人資格や遺産の範囲に大きな争いがなく、必要資料も集まり、相続人間の協力もある程度得られているなら、税理士・行政書士・司法書士の力を借りて進められることがあります。税務申告、書類作成、相続登記など、それぞれの専門家が役割を果たせる場面です。
一方で、遺産の範囲が争いになっている、相続人資格に疑義がある、資料が出てこない、相手方が交渉に応じない、遺産分割と訴訟の切り分けが必要、という状態まで来ているなら、自走は難しいです。こうした案件は、もはや「書類をそろえれば進む相続」ではなく、「争点を整理し、必要な手続を選び、止まった案件を終わらせる相続」だからです。
ここで弁護士が果たす役割は、ただ相手と争うことではありません。何が家裁で処理でき、何を先に訴訟で確定させるべきかを見極め、順番を誤らずに進めることです。止まった相続を終わらせるには、その見通しが必要です。
■長期間放置した相続で遺産を整理する方法はこちらで解説
神奈川県で遺産の範囲の争いが起きたときの進め方
神奈川県で遺産の範囲が争いになったとき、まず必要なのは、感情論から離れて「争点の地図」を作ることです。何が問題なのかを曖昧なままにすると、全員が不満だけを抱えて、具体的な前進がなくなります。
まず、戸籍と財産資料の収集、相続人の確定、対象財産の仮整理を行います。この時点で、税理士や司法書士が関与したほうがよい部分も見えてきます。
次に、争点を分類します。帰属の問題なのか、評価の問題なのか、相続人資格の問題なのか、あるいは単に感情的な対立で止まっているだけなのかを見極めます。この整理によって、任意協議でいけるのか、調停に進むのか、先行訴訟が必要なのかが変わります。
さらに、順番を決めます。全部を一気に解決しようとすると、かえって止まります。先に訴訟で確定すべき論点があるならそこから進める。逆に、評価や分け方の話し合いでまとまる余地があるなら、先にその部分を詰める。この順番の設計が重要です。
最後に、必要に応じて調停・訴訟・審判を視野に入れます。相続人の一部が参加しない、争点が整理できない、任意協議が限界、という状況なら、いつまでも私的な話し合いだけにこだわるべきではありません。止まった相続は、手続に乗せて前に進める必要があります。
弁護士に相談するメリット
遺産の範囲の争いは、相続問題の中でも比較的難しい類型です。なぜなら、「何をどう分けるか」という本題の前に、「何が遺産か」「誰が当事者か」という前提そのものが争いになっているからです。
弁護士に相談するメリットは、まず争点整理です。感情的に混ざり合った不満を、帰属、評価、資格、持分、手続の順番といった法的な論点に整理できます。これだけでも、相続が前に進むことがあります。
次に、証拠収集と見通しの提示です。どの資料が必要か、どの程度の裏付けが必要か、どこまでは話し合いで、どこからは訴訟かを判断できます。非訟手続と訴訟手続の役割分担を踏まえて進められることは、大きな意味があります。
そして何より、目的を見失いにくくなります。相続で感情が高ぶると、「相手を言い負かしたい」という方向に流れがちです。しかし、本当に必要なのは、止まった相続を終わらせることです。家族の不信、財産の停滞、次世代への先送りに区切りをつけるには、終わらせるための手続選択が必要です。
まとめ 遺産の範囲の争いは早めの整理が重要
遺産の範囲で争いが起きると、相続は簡単に止まります。なぜなら、何を分けるのか、誰と話し合うのか、その前提自体が定まらないからです。名義預金、不動産の帰属、共有関係、相続人資格、持分、資料非開示、評価対立。どれも、分割方法の議論に入る前に整理が必要な論点です。
この種の争いでは、家庭裁判所の遺産分割手続だけで全部が解決するとは限りません。前提問題については、別途の人事訴訟や民事訴訟で確定を要することがあり、その結果待ちになることがあります。だからこそ、「なぜ止まっているのか」を正確に見極めることが重要です。
止まっていない相続なら、税理士・行政書士・司法書士の力を借りながら進められることがあります。しかし、自走できないくらいまで止まってしまった相続は、弁護士が解決するしかありません。
目的は、勝つことではなく、終わらせることです。神奈川県で遺産の範囲の争いが原因で相続が止まっているなら、早い段階で弁護士に相談し、争点と手続の順番を整理することが、解決への最短ルートになります。
神奈川県で遺産の範囲の争いにお困りの方へ
・何が遺産に含まれるのか分からず、相続の話し合いが進まない
・名義預金、不動産の帰属、共有関係で相続人の意見が割れている
・相続人資格や持分にも疑問があり、当事者の範囲が定まらない
・資料がそろわず、遺産分割調停に進むべきか迷っている
・調停だけでよいのか、先に訴訟が必要なのか分からない
・神奈川県内の不動産相続も含めて、止まった相続を早く整理したい
このような場合は、相続問題に対応する弁護士へ早めに相談することが重要です。止まった相続を終わらせるには、誰かに勝つための議論ではなく、争点を整理し、必要な手続を選び、順番どおりに前へ進めることが必要です。
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相談前に準備しておくと、話がスムーズになるもの
以下が手元にある範囲で構いません。資料が揃っていなくても、相談は可能です。
☐ 被相続人の戸籍謄本・除籍謄本(相続人の確定のため)
☐ 連絡の取れない相続人の最後の住所・連絡先(分かる範囲で)
☐ これまでの連絡を試みた経緯(手紙・電話・メール等)
☐ 遺産の概要(特に不動産・預金口座)
☐ 相続開始からの経過年数
※資料が揃っていない場合も、相談の中で一緒に確認していきます。
『止まった相続を終わらせる弁護士』大石誠
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