不動産があると遺産分割はなぜ止まる?神奈川県の弁護士が解説
- 誠 大石

- 5 日前
- 読了時間: 16分
はじめに
相続財産に不動産が含まれていると、預貯金中心の相続に比べて、遺産分割が止まりやすくなります。神奈川県でも、実家、賃貸物件、共有持分のある土地建物などをめぐって、相続人同士の話し合いが長期化するケースは少なくありません。
その理由は、単に「不動産は金額が大きいから揉める」というだけではありません。不動産相続が止まる主な原因は、大きく分けると三つあります。
①評価額と分け方をめぐる利害対立
②不動産が本当に遺産に含まれるのか、誰の権利なのかといった前提問題が未整理
③不動産共有そのものが将来の紛争を生みやすく、構造的に合意しにくい
しかも、不動産は単なる資産ではありません。実家であれば家族の記憶が詰まっていますし、賃貸物件であれば将来の収益源でもあります。事業用不動産であれば、生活基盤そのものに関わります。そのため、相続人それぞれの思いや事情が強くぶつかりやすく、金銭のように単純には分けられません。
もっとも、すべての不動産相続で最初から弁護士が必要というわけではありません。止まっていない相続、つまり、資料がそろっていて、相続人間の大きな争いもなく、税理士・行政書士・司法書士の力を借りながら進められる相続であれば、わざわざ弁護士に相談しなくてもよい場面はあります。
他方で、不動産の評価、分け方、権利関係、共有関係の整理ができず、自走できないくらいまで止まってしまった案件は、弁護士が解決するしかありません。
相続の目的は、誰かに勝つことではなく、終わらせることです。止まった相続を終わらせることは、家族の不信、財産の停滞、次世代への先送りに区切りをつけることでもあります。
この記事では、不動産があると遺産分割がなぜ止まりやすいのかを、神奈川県での相続実務も意識しながら、弁護士の視点で分かりやすく解説します。
不動産があると遺産分割が止まりやすいのはなぜか
預貯金であれば、金額が確定しやすく、分け方も比較的明確です。たとえば、3000万円の預金があれば、法定相続分や合意内容に応じて数字で分けやすいという特徴があります。
しかし、不動産はそうはいきません。
まず、一つの不動産について「いくらと評価するのか」が簡単には決まりません。次に、「誰が取得するのか」「売るのか」「住み続けるのか」「共有にするのか」といった分け方の選択でも利害が鋭く対立します。さらに、その不動産が本当に被相続人の遺産なのか、共有者に第三者がいるのではないか、登記名義と実体がずれていないかといった前提問題が潜んでいることもあります。
つまり、不動産相続は、単に分け方の問題ではなく、評価、利用、権利関係、手続の順番まで含めて整理しなければ進まないのです。
神奈川県でも、横浜市や川崎市の都市部の不動産、湘南エリアの自宅、県央や県西地域の土地建物など、地域によって事情は異なっても、「不動産があることで遺産分割が止まる」という構造自体は共通しています。
理由1 不動産の評価額が決まらず遺産分割が止まる
評価基準が複数あり、どれを使うかで結論が変わる
不動産の評価で最初につまずきやすいのは、「何を基準に評価するのか」が一つではないことです。
固定資産税評価額、路線価、公示価格、不動産会社の査定額、実際の売却見込み価格など、複数の指標があり、それぞれ数字が違うことは珍しくありません。
相続人の中に、その不動産を取得したい人がいれば、代償金の負担を抑えるために低めの評価を望みやすくなります。逆に、不動産そのものはいらず、現金で取り分を受けたい人は、高めの評価を主張しやすくなります。
こうして、「高く評価したい側」と「低く評価したい側」に分かれ、査定書を出し合っても折り合いがつかず、話し合いが止まります。
売却前提か保有前提かで認識が食い違う
同じ不動産でも、「すぐ売るつもりなのか」「今後も住み続けるのか」「賃貸として保有するのか」で、相続人が考える適正価格は変わります。
売却前提で考える相続人は、実勢価格や売却見込み価格を重視します。これに対して、自宅として利用する前提の相続人は、過度に高い評価を避けたいと考えがちです。
この認識のズレは、単なる数字の対立ではありません。
「何のための評価か」という前提自体が一致していないため、議論が長引きやすいのです。評価論争が長引けば、代償分割の金額も、売却するかどうかの判断も決まらず、結果として相続全体が止まります。
評価の争いは感情論に変わりやすい
不動産評価の対立は、途中から「数字の話」ではなく「不公平感の話」になりがちです。
取得したい相続人は「実際にはそんな高値では売れない」と主張し、現金を求める相続人は「安く評価して得をしようとしている」と感じます。ここで感情的な不信が強まると、評価の資料をいくら出しても前進しにくくなります。
このような場合、税理士や不動産業者の査定、場合によっては鑑定を用いて客観性を高めることは有効です。ただし、客観資料があれば必ず解決するわけではありません。最終的には、その評価を前提にどう分けるかという交渉と手続の問題になります。
理由2 不動産の分け方が決まらず話し合いが進まない
現物分割・代償分割・換価分割・共有維持で利害が分かれる
不動産相続では、評価額が決まっても、次に「どう分けるか」で止まることがよくあります。
代表的な分け方としては、現物分割、代償分割、換価分割、共有維持があります。
現物分割は、土地を分筆するなどして物理的に分ける方法です。しかし、場所や形状によっては実現が難しく、分けることで価値が下がることもあります。
代償分割は、一人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払う方法です。実務では使いやすい方法ですが、取得者に支払能力が必要です。
換価分割は、不動産を売却して現金化し、その代金を分ける方法です。公平感は出やすい一方、住み続けたい相続人がいると強い抵抗が生じます。
共有維持は、ひとまず共有のまま持ち続ける方法です。一見すると折衷案に見えますが、将来の管理、売却、修繕、固定資産税負担などで新たな紛争の種になりやすく、実務上は慎重に考えるべきです。
住み続けたい相続人と現金で取り分を欲しい相続人が対立する
最も典型的なのは、実家に住み続けたい相続人と、現金で自分の取り分を受けたい相続人との対立です。
同居してきた相続人にとっては、実家は生活の場であり、思い出のある家でもあります。一方、別居している相続人からすれば、「その人だけが不動産を使い続けるのは不公平だ」と感じやすくなります。
ここでは、法律上の相続分だけでなく、長年の同居、介護、生活費負担など、過去の家族関係まで持ち込まれやすくなります。結果として、不動産の分け方が、過去の感情の精算の場になってしまうのです。
すぐ売りたい相続人と保有したい相続人が対立する
賃貸物件や収益不動産では、「今すぐ売却して現金化したい相続人」と、「賃料収入を得ながら保有したい相続人」が対立しやすくなります。
売却したい側は、管理の手間や将来の価格下落リスクを気にします。保有したい側は、安定収益や値上がりの可能性を重視します。
こうした対立は、どちらかが明らかに間違っているわけではありません。どちらにも合理性があるため、かえって譲歩が難しくなります。結果として、「売る・売らない」が決まらず、遺産分割が膠着します。
■遺産分割協議書にサインしない相続を解消する方法はこちらで解説
共有は安易な解決策に見えて、実は止まりやすい
話し合いがまとまらないとき、「とりあえず共有でいいのでは」と言われることがあります。しかし、共有は解決ではなく、問題の先送りになりやすいです。
共有にすると、将来売却したいときや建替えたいとき、修繕費を負担するときなどに、再び全員の合意や調整が必要になります。相続人の代が変われば、さらに権利関係が複雑になります。
実務上、相続後の不動産共有は紛争の温床になりやすいため、安易に選ぶべきではありません。だからこそ、「共有を避けたい相続人」と「今は共有でよいと考える相続人」とで意見がぶつかり、話が止まります。
理由3 不動産の権利関係や前提問題が未整理だと遺産分割は進められない
登記名義と実体がずれていることがある
不動産相続でさらに厄介なのは、登記名義があるからといって、当然に遺産分割の対象になるとは限らないことです。
たとえば、名義は被相続人でも、実際には子が資金を出して購入したという主張がされることがあります。逆に、名義は子でも、実質的には被相続人の出捐によるもので、遺産に含めるべきではないかが問題になることもあります。
このような場合、そもそもその不動産が遺産なのかどうかが争点になります。ここが未解決のままでは、遺産分割協議の対象に入れるべきかどうかさえ決められません。つまり、分け方の問題以前に、土台が崩れている状態です。
遺産の範囲の争いは、家裁手続だけで完結しないことがある
遺産分割調停は、何をどう分けるかを話し合うための手続です。しかし、不動産が被相続人の所有かどうか、他人の所有ではないかという争いは、遺産分割の前提問題です。
この種の問題は、当事者間で合意できない場合、先に民事訴訟などで確定させる必要があることがあります。
そのため、相続人としては「家庭裁判所に行けば全部まとめて進むはず」と思っていても、実際には前提問題があるために、まず別の訴訟で決着をつけるよう求められることがあります。これが、不動産相続が実務上「止まる」と感じられる大きな理由の一つです。
■遺産の範囲で争いが起きた場合にはどうすべき?と感じたからこちらの解説記事も参照
相続人の範囲や遺言の有効性が絡むこともある
不動産そのものの権利関係だけでなく、誰が相続人なのか、遺言が有効なのかといった問題が絡むと、さらに複雑になります。
たとえば、遺言で不動産の帰属が指定されているが、その遺言の効力自体に争いがある場合、前提が固まらないままでは遺産分割の話し合いは進みません。
このように、不動産相続が止まる背景には、不動産単体の評価や分け方だけでなく、前提問題の未整理という構造的な原因があります。
共有物分割と遺産分割が交錯するとさらに複雑になる
相続開始前から第三者共有者がいる不動産は要注意
不動産が被相続人単独名義ならまだ整理しやすい面がありますが、相続開始前から第三者と共有になっている不動産では、問題が一段と複雑になります。
たとえば、被相続人が第三者と土地を共有していた、あるいは被相続人の持分の一部に第三者の権利関係がある、といったケースです。
この場合、不動産には「相続人同士の遺産共有持分」と「第三者が持つ通常の共有持分」が併存することになります。すると、相続人間だけの話し合いでは、共有関係全体を解消できません。
遺産分割だけでは第三者との共有関係を整理できない
相続人の間では、「この土地は長男が取る」「その代わり代償金を払う」といった話し合いができるかもしれません。しかし、第三者共有者は遺産分割の当事者ではありません。
そのため、第三者を含めた共有関係全体を整理するには、遺産分割とは別の手続が必要になることがあります。
実務上ここで重要なのが、共有物分割と遺産分割の二段構造です。
遺産共有持分と他の共有持分が併存している場合、まず共有物分割訴訟によって共有関係全体を解消し、その結果として相続人側に配分された財産や金銭を、改めて遺産分割の対象として整理する、という流れが問題になります。
先に共有物分割訴訟の帰趨を見ないと遺産分割が詰められない
この二段構造があるため、相続人同士でどれだけ話し合っても、第三者との共有関係が整理されない限り、最終的な遺産分割案を固められない場面があります。
つまり、「まず共有物分割でどうなるか」を見ないと、遺産分割そのものを詰められないのです。
このような案件では、相続人から見ると、まさに相続が止まっているように感じられます。実際には何もしていないのではなく、必要な手続の順番上、先に進めるべき訴訟の結果待ちになっているのです。
不動産の利用状況が感情的対立を強めることもある
実家は金銭以上に象徴性が大きい
不動産相続が難しい理由は、法的・実務的な問題だけではありません。実家は単なる換金可能な資産ではなく、家族の歴史や記憶を背負った存在です。
そのため、「誰が住み続けるのか」という問題は、「誰が親のそばにいたのか」「誰が介護したのか」「誰が家を守ってきたのか」という感情と結びつきやすくなります。
すると、相続人それぞれが、不動産の帰属を経済合理性だけで考えられなくなります。ここが預貯金と決定的に違うところです。
賃貸物件や事業用不動産では将来の収益が絡む
賃貸中の物件や事業用不動産では、「今ある資産価値」だけでなく、「これから生む収益」も争点になります。
一方は「今売って現金化すべきだ」と考え、他方は「持っていれば賃料収入が入る」と考えます。ここには投資判断の違いもあり、単純な公平論では片付かない問題です。
感情が強いほど、当事者だけでの調整は難しくなる
不動産相続では、過去の家族関係が表面化しやすくなります。介護負担、同居の有無、親との距離感、扶養の実情などが、「この家を誰が取るべきか」という議論に入り込んできます。
その結果、本来は評価や分け方の調整で済むはずの問題が、感情的対立に引きずられて解決しにくくなります。
こうなると、当事者だけで冷静な話し合いを続けるのは難しくなります。法律問題として整理し直し、必要なら調停や訴訟を見据えて進めることが必要になります。
■遺産分割協議書に印鑑を押してくれない場合の対応はこちらで解説
調停・審判と訴訟の関係から不動産相続が止まることがある
遺産分割調停で解決できる問題と、訴訟が必要な問題は違う
不動産相続が止まる理由の一つに、手続の役割分担があります。
遺産分割調停では、遺産として分けるべき財産を確定し、評価額や分割方法について話し合いを進めます。しかし、前提問題に争いがある場合には、調停だけで解決できないことがあります。
たとえば、不動産の所有権帰属、遺産の範囲、相続人の範囲、遺言の有効性などは、内容によっては先に訴訟で決着をつけるべき問題になります。
この場合、家裁手続がそのまま審判に進むとは限らず、前提問題の解決が先になります。
訴訟の結論待ちになると、実務感覚として相続は止まる
相続人の立場からすると、「何年も調停が進まない」「訴訟の結果待ちになっている」という状況は、相続が止まっているのと同じように感じられます。
特に不動産に関する所有権や登記関係の紛争は、訴訟適合性が高いため、まず遺産確認訴訟や共有物分割訴訟などが必要になることがあります。
その間、固定資産税の負担や管理の問題は現実に生じ続けます。不動産が空き家化していれば、管理リスクも高まります。つまり、法的には手続が進んでいても、生活実感としては止まっているのです。
相続登記の問題も放置できない
不動産相続が長引くと、相続登記の問題も無視できません。現在は相続登記の申請が義務化されているため、遺産分割がすぐにまとまらない場合でも、何もせず放置することは得策ではありません。
最終的な分け方が決まっていなくても、状況に応じて相続人申告登記などを検討しながら、将来の不利益を減らす視点が必要です。
自走できる相続と弁護士が必要な相続の違い
不動産が含まれる相続でも、資料がそろい、評価や分け方について相続人の大きな対立がなく、登記や税務対応を中心に進められる段階であれば、税理士・行政書士・司法書士の力を借りながら進められることがあります。
このような「止まっていない相続」は、必ずしも最初から弁護士でなければ進められないわけではありません。
しかし、不動産の評価額で折り合えない、住み続けるか売るかで対立している、共有をどう解消するか決まらない、そもそも遺産に含まれるかが争いになっている、第三者共有者がいて共有物分割訴訟まで見据えなければならない、という状態まで来ているなら、それはすでに自走できない相続です。
この段階では、必要なのは書類作成だけではありません。争点整理、証拠収集、交渉、調停、場合によっては訴訟まで見通した対応が必要です。止まってしまった不動産相続は、弁護士が解決するしかありません。
■相続人と連絡が取れない、取れなくなってしまったというときの処方箋
神奈川県で不動産相続が止まったときの進め方
神奈川県で不動産相続が止まったときに、まずすべきことは、「どこで止まっているのか」を切り分けることです。
評価で止まっているのか。
分け方で止まっているのか。
権利関係や遺産の範囲で止まっているのか。
共有関係の整理で止まっているのか。
この整理ができないままでは、何を先にすべきか判断できません。
次に、協議で進められる問題と、訴訟を要する問題を見極めます。
評価や代償金の調整であれば、資料や査定をもとに交渉や調停で進められる余地があります。
他方で、不動産の所有権帰属や第三者との共有関係の整理は、訴訟を先行させるべき場合があります。
そして、手続の順番を誤らないことが重要です。
相続問題は、全部を一度に片付けようとすると、かえって止まりやすくなります。先に訴訟で前提問題を確定すべき案件なのか、先に調停で分割方法の話し合いをすべき案件なのかを見極める必要があります。
まとめ 不動産がある相続は早めの整理が重要
不動産があると遺産分割が止まりやすいのは、評価額が一つに決まらず、分け方で利害が対立し、権利関係や共有関係の前提問題も絡みやすいからです。
特に不動産は、実家や収益物件、事業基盤としての意味を持つため、金銭以上に感情がぶつかりやすく、相続人同士だけの話し合いではまとまりにくい傾向があります。
止まっていない相続であれば、税理士・行政書士・司法書士の力を借りながら進められることもあります。
しかし、不動産の評価、分け方、遺産性、共有関係、第三者との関係まで争いになり、自走できないくらいまで止まってしまった案件は、弁護士が解決するしかありません。
相続の目的は、勝つことではなく、終わらせることです。
止まった相続を終わらせることは、家族の不信、財産の停滞、次世代への先送りに区切りをつけることです。
神奈川県で不動産相続が進まずお困りなら、早い段階で争点を整理し、必要な手続を見極めることが、結果として最も早い解決につながります。
■私の相続はまだ自分で頑張れる?止まってしまった?簡易診断はこちらへ
神奈川県で不動産相続にお困りの方へ
・不動産の評価額がまとまらず、遺産分割が進まない
・実家に住み続けたい相続人と、売却して現金化したい相続人が対立している
・共有のままにするか、解消するかで意見が割れている
・その不動産が本当に遺産に含まれるのか争いになっている
・第三者共有者がいて、相続人同士の協議だけでは整理できない
・調停に進むべきか、先に訴訟が必要か分からない
・神奈川県で止まった不動産相続を早く終わらせたい
このような場合は、相続問題に対応する弁護士へ早めにご相談ください。
不動産相続は、放置するほど複雑になりやすい分野です。止まった相続を終わらせるために、今の争点と手続の順番を整理することから始めましょう。
以上、不動産があると遺産分割はなぜ止まる?神奈川県の弁護士が解説でした。
『止まった相続を終わらせる弁護士』大石誠
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