はじめに
親族と絶縁している場合、相続権に影響があるのかと疑問に思う方は多いでしょう。特に、兄弟姉妹との関係が断絶している場合や、長年連絡を取っていない相続人がいると、相続手続きがスムーズに進まない可能性があります。
結論から言うと、日本の法律では「絶縁」という制度はなく、相続人の資格を失うことはありません。つまり、どれだけ長期間疎遠であっても、法的には相続権が認められます。
ただし、絶縁した相続人と遺産を分割することに抵抗がある場合、相続争いが発生するリスクが高まります。実際、横浜でも親族間の相続トラブルが頻繁に発生しており、遺産分割協議が難航するケースは少なくありません。
本記事では、「絶縁していても相続権があるのか?」という疑問に対し、横浜の弁護士が詳しく解説します。また、絶縁した相続人に遺産を渡さない方法や、円滑に相続手続きを進めるためのポイントについてもご紹介します。
絶縁していても相続権はあるのか?
相続において、「絶縁しているから相続権はない」と考える方も多いですが、実際にはそうではありません。家族関係がどれほど悪化していても、法的には相続権を持ち続けることになります。
被相続人の子どもの相続権とは?
法律上、親が亡くなると、その子どもは 第1順位の相続人 として相続権を持ちます(民法887条)。この権利は、親子関係が法的に認められている限り、変わることはありません。
具体例:横浜市在住のAさん(80歳)が亡くなり、2人の息子(BさんとCさん)が相続人となったケース
Bさん(長男) はAさんと良好な関係を維持し、日常的に介護も行っていた
Cさん(次男) は20年前に家を出て以降、Aさんとは一切連絡を取らず、家族とも疎遠だった
Bさんは「Cは家族を捨てたのだから、相続権を放棄すべきだ」と主張しましたが、法的には Cさんにも相続権がある ため、遺産分割協議に参加する必要がありました。
このように、長期間絶縁していたとしても、相続権がなくなることはありません。そのため、相続人全員で協議を行う必要があります。
絶縁した相続人に遺産を渡さない方法
「絶縁状態の相続人に遺産を渡したくない」と考える場合、以下のような方法を検討できます。
① 遺言書の作成(遺留分に注意)
被相続人(親)が 生前に遺言書を作成する ことで、特定の相続人への遺産配分を調整できます。ただし、子どもには 遺留分(最低限保証される相続分)が認められているため、遺言で完全に相続権を奪うことはできません(民法1046条)。
具体例:
Aさんは、介護をしてくれたBさんに多くの財産を残したいと考え、遺言書で「全財産をBに相続させる」と記載した
しかし、Cさんには法定相続分の 1/2(遺留分として 1/4)が認められるため、Cさんが遺留分侵害額請求をすると、BさんはCさんに相当額を支払わなければならなかった
そのため、「遺留分に配慮した遺言書」を作成し、無用なトラブルを避けることが重要です。
② 相続人廃除
「相続人廃除」とは、 特定の相続人から法的に相続権を奪う制度 です。被相続人が 家庭裁判所に申し立てを行うか、遺言で廃除を指定する ことで適用されます。
適用条件:
被相続人への虐待があった
被相続人への重大な侮辱があった
著しい非行があった
具体例:
Cさんは、Aさんに対して暴力をふるい、過去に警察沙汰になったことがあった
Aさんは「Cには一切の遺産を渡したくない」と考え、生前に裁判所に申し立てを行い、Cの相続権を廃除した
これにより、Cは法的に相続権を失い、Bが単独で相続することが可能になった
ただし、Cさんに子どもがいる場合、その子どもが代襲相続する ため、完全にCの家系を排除することはできません。
③ 相続欠格
「相続欠格」は、 法律上当然に相続権が失われるケース であり、裁判所の手続きを経ずに相続権を失います。
該当するケース:
被相続人を殺害、または殺害しようとした
遺言を偽造・破棄・隠匿した
詐欺や脅迫により遺言作成を妨げた
具体例:
Cさんが、Aさんの遺言を偽造しようとしたことが発覚
相続欠格が適用され、Cは法的に相続権を失った
このように、相続欠格は特定の重大な行為により、自動的に相続権が失われる仕組みです。
まとめ|絶縁状態でも相続権は消えない
法律上、「絶縁」という制度はなく、疎遠でも相続権は失われない
遺言書 を作成することで、特定の相続人に遺産を渡さない工夫が可能
相続人廃除 や 相続欠格 を活用すれば、相続権を奪うこともできる
ただし、完全に排除することは難しく、遺留分などの問題がある
「絶縁しているから相続できない」とは限らないため、事前に弁護士に相談して対策を講じることが重要です。
絶縁中の相続人との間で起こり得る相続争い
家族間の関係が悪化している場合、相続手続きはスムーズに進まないことが多く、トラブルに発展するケースも少なくありません。
絶縁中の相続人がいる場合、以下のような紛争が生じる可能性があります。
遺産の割合でもめる
相続人同士が疎遠になっていると、話し合いが難航しやすくなります。特に、介護や親の世話をしていた相続人が「自分の貢献を考慮して、より多くの遺産を受け取るべきだ」と主張することが多いです。
具体例:横浜市在住のDさん(75歳)が亡くなり、3人の子ども(Eさん・Fさん・Gさん)が相続人となったケース
Eさん(長女) は親と同居し、数年間にわたり介護をしていた
Fさん(次女) は数年前に結婚し、親とはほどほどの関係を維持していた
Gさん(長男) は10年以上前に家を出ており、親の介護にも関与せず絶縁状態
Eさんは「私が親の面倒を見ていたのだから、遺産の大半をもらうのが当然」と主張。
しかし、法律上は 原則として3人で平等に相続 するため、Gさんにも同じ相続権がある。
Gさんも「自分にも当然の権利がある」と主張し、話し合いが進まなくなった。
このように、遺産の分配をめぐる意見の対立が相続争いの火種になりやすいです。
遺産を勝手に処分される
相続手続きが終わる前に、ある相続人が遺産を勝手に処分してしまうケースもあります。これは 「相続財産の使い込み」 にあたり、トラブルの原因になります。
具体例:
Gさんが、Dさんの遺産の一部である銀行預金を勝手に引き出して使ってしまった
不動産が遺産に含まれていたが、Fさんが「自分の持分だから」と勝手に売却し、他の相続人に相談しなかった
遺産は 遺産分割協議が完了するまで相続人全員の共有財産 であるため、勝手に処分すると 法的責任(不当利得返還請求など) を問われる可能性があります。
連絡先がわからず遺産分割協議ができない
絶縁状態が長引くと、相続人の連絡先が不明になることがあります。特に、海外に移住したり、引っ越しを繰り返している相続人がいると、相続手続きを進めることが困難になります。
具体例:
Gさんは10年以上前に家を出た後、海外で暮らしており、現住所が不明
遺産分割協議には相続人全員の参加が必要だが、Gさんと連絡が取れず進められない
このような場合、住民票や戸籍の附票を取得することで相手の所在を調べることができます。また海外在住の場合、外務省に弁護士会を通じて照会をするという方法もあります。
しかし、それでも連絡が取れない場合は 不在者財産管理人の選任 を家庭裁判所に申し立てる必要があります。
遺産分割調停・審判により手続きが長期化する
遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所の調停や審判を利用することになります。しかし、これには時間と費用がかかるため、相続手続きが長期化しやすいです。
具体例:
E、F、Gさんが遺産分割協議で合意できず、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てた
調停では、裁判官や調停委員が仲介して話し合いを進めたが、最終的に合意に至らず、不成立に
その結果、遺産分割審判へと移行し、最終的な判断は裁判官に委ねられることになった
調停・審判に進むと、解決までに1年以上かかることもあり、相続人の負担が大きくなる ことが多いです。
まとめ|絶縁状態の相続人がいるとトラブルが発生しやすい
遺産の分配割合 をめぐる対立が起こりやすい
相続人が 勝手に遺産を処分 するリスクがある
連絡が取れない相続人 がいると、手続きが滞る
遺産分割協議がまとまらず、調停・審判で長期化 することもある
円滑な相続を実現するためには、絶縁中の相続人がいても適切な手続きを踏むことが重要です。
絶縁中の相続人がいる場合の相続手続きの進め方
絶縁状態の相続人がいると、遺産分割協議がスムーズに進まないことが多いです。しかし、相続手続きは相続人全員で行う必要があるため、適切な対応が求められます。ここでは、具体的な手続きをケース別に解説します。
相手の所在がわかっている場合
絶縁していたとしても、相続人の住所や連絡先が分かっている場合は、まずは適切な方法で連絡を取る必要があります。
1. 手紙・電話・メールで連絡する
まずは、手紙や電話、メールなどを通じて親が亡くなったことを伝え、遺産分割協議への参加を求めましょう。
具体例:横浜市在住のHさん(82歳)が亡くなり、長男Iさんと次男Jさんが相続人になったケース
IさんはHさんと同居し、介護をしていた
Jさんは10年前に家を出て以来、家族とは絶縁状態だった
IさんはJさんの住所を知っていたため、手紙を送って遺産分割協議の参加を求めた
Jさんがすぐに応じれば問題ありませんが、感情的な対立がある場合、無視される可能性もあります。その場合は、弁護士を代理人に立てることを検討しましょう。
2. 弁護士を通じて交渉する
相手が連絡を拒否する場合、弁護士を通じて交渉するのが有効です。弁護士から 内容証明郵便 を送ることで、法的なプレッシャーをかけることができます。
メリット:
感情的な対立を避けられる
相手が無視しづらくなる
法的な手続きをスムーズに進められる
具体例:JさんがIさんからの連絡を無視したため、Iさんは弁護士に依頼し、弁護士から 遺産分割協議への参加を求める通知書 を送った。これにより、Jさんが対応せざるを得なくなった。
相手の所在がわからない場合
相続人の所在が不明な場合、そのままでは遺産分割協議を進めることができません。以下の方法で対応しましょう。
1. 住民票・戸籍の附票を取得して所在を調査
相続人の最新の住所を調べるため、役所で住民票や戸籍の附票を取得することができます。
具体例:Jさんが10年前に引っ越しており、IさんはJさんの現住所を知らなかった。しかし、Jさんの戸籍の附票を役所で取得することで、最新の住所を特定できた。
2. 不在者財産管理人の選任(家庭裁判所に申し立て)
住民票を調べても相続人の所在が不明な場合、家庭裁判所に 不在者財産管理人 を選任してもらい、代理で遺産分割協議を進めることができます。
具体例:Jさんの所在がどうしても分からなかったため、Iさんは家庭裁判所に 不在者財産管理人の選任を申し立て、管理人がJさんの代わりに遺産分割協議に参加した。
3. 失踪宣告の申し立て(7年以上生死不明の場合)
相続人が 7年以上生死不明 の場合、家庭裁判所に 失踪宣告 を申し立てることで、法律上「死亡」とみなされ、遺産分割協議を進めることができます(民法30条)。
具体例:Jさんは15年前に失踪し、誰も居場所を知らなかった。Iさんは家庭裁判所に 失踪宣告の申し立て を行い、Jさんが法律上「死亡」とみなされたことで、遺産分割協議を進めることができた。
遺産分割調停・審判を活用する
相続人同士での話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に 遺産分割調停 を申し立てることができます。調停では、裁判官や調停委員が間に入り、公平な解決を図ります。
具体例:
IさんとJさんは遺産の分配で対立し、話し合いがまとまらなかった
Iさんが家庭裁判所に 遺産分割調停を申し立て、裁判所が間に入って調整
Jさんがどうしても合意しないため、最終的に 遺産分割審判 に移行し、裁判官が遺産分割の方法を決定
まとめ|絶縁中の相続人がいても適切な手続きを
相手の所在が分かっている場合は、手紙・電話・弁護士を活用 して連絡を取る
相手の所在が不明な場合は、住民票・戸籍の附票を取得し、必要に応じて不在者財産管理人を選任
相続人が7年以上生死不明の場合は、失踪宣告を申し立てる
話し合いがまとまらない場合は、遺産分割調停・審判を活用する
絶縁状態の相続人がいる場合、トラブルが長期化しやすいため、早めに弁護士に相談することが重要です。
横浜で相続トラブルを防ぐためのポイント
相続は一生に何度も経験するものではないため、トラブルを未然に防ぐためのポイントを知らない方が多いです。特に 絶縁中の相続人 がいる場合、スムーズに手続きを進めるためには慎重な対応が求められます。ここでは、横浜での相続トラブルを回避するためのポイントを解説します。
遺産分割協議が終わるまでは遺産に手を付けない
相続財産は 遺産分割協議が完了するまで相続人全員の共有財産 です。そのため、相続手続きが終わる前に 勝手に遺産を処分したり、使い込んだりしない よう注意が必要です。
具体例:横浜市のKさん(78歳)が亡くなり、長男Lさんと次男Mさんが相続人になったケース
Lさんは、遺産分割協議が終わる前にKさんの銀行口座から預金を引き出して使ってしまった
これが発覚し、Mさんが 「遺産の使い込み」として法的手続きを取る ことになった
このように、遺産を勝手に処分すると、他の相続人との関係が悪化し、争いが激化する可能性があります。
相手とのやり取りは冷静に進めることが重要
絶縁中の相続人と話し合う際、感情的になってしまうと、協議が進まなくなるリスクがあります。
対策:
書面でのやり取りを基本とする(証拠が残るため、後々のトラブルを防げる)
第三者を交える(弁護士や専門家が間に入ることで、冷静な話し合いが可能になる)
必要以上に刺激しない(相手の権利を無視する発言は避ける)
具体例:
LさんとMさんは10年以上疎遠だったが、遺産分割の話し合いをメールで行い、冷静に進めることができた
Lさんが感情的になりそうだったため、弁護士を代理人に立て、スムーズに解決できた
弁護士に依頼するメリットとタイミング
絶縁中の相続人との話し合いが困難な場合、弁護士に依頼するのが有効です。
弁護士に依頼するメリット:
代理交渉ができる → 直接のやり取りを避けられる
法的に適切な手続きを進められる → 遺言書の有効性や遺留分問題などを整理できる
トラブルを未然に防げる → 遺産分割協議書の作成・チェックも対応可能
具体例:
Mさんが「Lとは話をしたくない」と考え、弁護士に代理人を依頼
弁護士がLさんと交渉し、遺産分割協議を円滑に進めることができた
まとめ|横浜で相続トラブルを防ぐために
相続手続きが終わるまでは遺産に手を付けない
相手とのやり取りは冷静に、できれば書面で行う
話し合いが難しい場合は弁護士に依頼するのが有効
絶縁中の相続人がいる場合、感情的にならずに適切な手続きを踏むことが重要です。
まとめ|横浜の弁護士に相談して円滑な相続を
相続は家族の関係性が強く影響する問題であり、特に 絶縁中の相続人 がいる場合、トラブルに発展しやすいです。
本記事では、以下のポイントについて解説しました。
絶縁していても相続権は失われない → 法律上、親子関係がある限り相続権は維持される
遺言書・相続人廃除・相続欠格の活用 → 絶縁した相続人に遺産を渡さないための方法
遺産分割協議でのトラブル → 遺産の配分や連絡が取れない相続人による問題
相続手続きの進め方 → 相手の所在調査や家庭裁判所を利用する方法
相続トラブルを防ぐためのポイント → 感情的にならず冷静に対応し、弁護士を活用する
横浜では、相続をめぐるトラブルが多発しており、早めの対策が重要です。
弁護士に相談するメリット
法的な手続きをスムーズに進められる
絶縁中の相続人と直接話をせずに済む
遺産分割協議を適正に進め、争いを防げる
「相続の話し合いが難航しそう」「絶縁中の相続人と関わりたくない」 という方は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
円滑な相続を実現するためにも、専門家のアドバイスを活用し、トラブルを未然に防ぎましょう。
「絶縁していても相続権はある?横浜の弁護士が相続の疑問を解決」でした!
弁護士 大石誠
横浜市中区日本大通17番地JPR横浜日本大通ビル10階 横浜平和法律事務所
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