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相続人が判断能力を欠く場合、特別代理人は活用できるか?

  • 執筆者の写真: 誠 大石
    誠 大石
  • 2024年3月6日
  • 読了時間: 4分

更新日:3月10日


認知症や精神障害の家族がいて遺産分割に困っていませんか? 特別代理人制度と成年後見人制度の違いを解説します。費用や手続き、メリット・デメリットを比較し、あなたに合った方法を選びましょう。


1.遺産分割がスムーズにいかない…そんな時は?

ご家族が認知症や精神的な病気で判断が難しい場合、遺産分割の手続きは複雑になります。

他の相続人が認知症や精神障害等により、判断能力を欠く場合には、遺産分割協議を有効に成立させることができません。

このような状況で、遺産分割協議を進めるためには、特別代理人と成年後見人という2つの制度があります。

よくある対応策としては、家庭裁判所に申立てをして、成年後見人を選任してもらうという手段になります。もっとも、この場合には、遺産分割協議が成立した後も、一生、被後見人が財産管理を行うことになります。

このときの後見人の報酬を節約したいという意向から、特別代理人による対応をご相談される場合があります。


2.特別代理人と成年後見人、どっちを選ぶべき?

特別代理人を選ぶメリットは、遺産分割に特化しているため、手続きが早く、費用も抑えられることです。

一方、成年後見人は、一生涯にわたってその人をサポートしますが、費用も合計で考えると高額になる可能性があります。


3.家庭裁判所での判断

家事事件手続法第19条1項は、「裁判長は、未成年者又は成年被後見人について、法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことができない場合において、家事事件の手続が遅滞することにより損害が生ずるおそれがあるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、特別代理人を選任することができる。」としています。


どちらの制度を選ぶかは、家庭裁判所の判断によって決まります。特別代理人を選べるケースは、法律で明確に定められていない部分があり、裁判所によって判断が異なる場合があります。

家庭裁判所によっては、特別代理人の選任を認めず、成年後見人の選任を求めるという運用をしている場合もあります。

もっとも、条文の「法定代理人がない場合」の解釈として、以下のような指摘があります。


「民事訴訟では、成年被後見人でない者であっても、事理弁職能力を欠く常況にあってまだ後見開始の審判を受けていない者や相続人不明の相続財産について相続財産管理人が選任されていない場合にも、特別代理人を選任し得ると解釈されているが、この点は、家事事件の手続においても、同様であると解される。」

(金子修編著『逐条解説家事事件手続法』63ページ)


他方で、「損害を生ずるおそれがあるとき」の解釈として、以下のような指摘もあります。

「法定代理人の選任等を待っていては家事事件の手続または審判の効力の発生が遅れ、そのために未成年者もしくは成年被後見人に、またはこれらの者が審判を受ける者となるべきものとなる裁判所の判断を欲する者の侵害が生じるおそれがあるときを意味する。」

(金子修編著『逐条解説家事事件手続法』63ページ)


他方で、このような指摘もあります。

「後見開始の申立てを促しても、後見開始の申立てがされず、その結果、成年後見人の選任まで至らなかった場合には、調停委員会としては、時機を見計らって、「なさず」とせざるを得ません。遺産分割事件は、一般的には、「手続が遅滞することにより損害を生じるおそれがあるとき」とは認め難いですから、特別代理人(家事法19条1項)が選任されることは難しいと考えられます。調停委員会としては、「なさず」を避けるために、当事者に対し、後見開始の申立てをするように説得するしかありません。」

(山城司『Q&A遺産分割事件の手引き』77ページ)


4.まとめ

相続人が判断能力を欠く場合、特別代理人は活用できるか?についての解説でした。

遺産分割は、ご家族にとって大きな出来事です。専門家である弁護士に相談することで、スムーズに手続きを進めることができます。


大石誠

 
 

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