横浜の弁護士が解説|遺留分減殺請求と遺留分侵害額請求の違いとは?
- 誠 大石
- 9月29日
- 読了時間: 8分
はじめに
相続に関するトラブルは年々増加傾向にあり、特に遺言書や生前贈与によって一部の相続人の取り分が大きく減らされるケースでは、「遺留分」の制度が重要な役割を果たします。横浜でも高齢化や不動産価値の上昇により、相続財産をめぐる争いが複雑化しており、遺留分に関する正しい理解が求められています。
かつては「遺留分減殺請求」という制度によって現物の返還を求めることができましたが、現在は法改正により「遺留分侵害額請求」という金銭的な請求方法へと一本化されました。この変更により、相続人や受遺者、受贈者などの関係者にとって、法的対応が大きく変わることになります。
横浜の弁護士が解説|遺留分減殺請求と遺留分侵害額請求の違いとは?
この記事では、横浜の弁護士の視点から、旧制度と現行制度の違いや注意点をわかりやすく解説し、相続トラブルを未然に防ぐためのポイントをお伝えします。
横浜で相続トラブルが増加中?遺留分の基本を知ろう
近年、横浜市内では不動産価格の高騰や高齢化の進展に伴い、相続トラブルの相談件数が増加傾向にあります。特に問題となりやすいのが「遺留分」を巡る争いです。被相続人の生前に贈与や遺言で特定の相続人や第三者に多くの財産を渡してしまうと、他の相続人が最低限保証されている「取り分」を確保できなくなるケースが出てきます。
このような場合、法的に相続人に認められているのが「遺留分」です。遺留分とは、法定相続人のうち、兄弟姉妹を除く者(配偶者・子・直系尊属など)に保障される最低限の財産の割合のことを指します。例えば、相続人が子ども一人であれば、遺留分は相続財産の1/2となります。
つまり、どれだけ被相続人の意思が尊重されるとしても、遺留分を侵害するほどの贈与や遺言は無制限に認められるわけではありません。この制度があることで、残された家族が経済的に極端に不利な状況に陥ることを防ぐ役割を果たしています。
横浜のように不動産相続が関係するケースでは、遺留分を巡って「家を出ていった子には一切相続させたくない」「長男にすべて任せたい」という意志があっても、他の相続人が遺留分を主張すれば、法的に一定の取り分を確保することが可能です。これが争族につながる背景となっているのです。
遺留分減殺請求(旧法)の特徴とその問題点
2019年の民法改正以前、遺留分が侵害された相続人は「遺留分減殺請求権」を行使することで、遺贈や贈与を受けた相手に対して現物の返還や価額の返還を求めることができました。この制度は、遺留分を侵害する行為があった場合に、その行為の効力を「減殺(げんさい)」、つまり法律上無効にするという性質を持っていました。
減殺請求は「形成権」として位置づけられ、一度権利を行使すれば、侵害された範囲において自動的に遺贈や贈与の効力が縮減されます。これにより、相続人は現物そのもの、あるいはその価額に見合う部分を取り戻すことができました。たとえば、横浜の不動産を第三者に遺贈していた場合でも、遺留分を主張することでその不動産の持分や価値の一部を請求できたのです。
しかしこの制度には大きな課題もありました。現物を対象とする物権的返還を前提としていたため、すでに不動産が第三者に転売されていた場合などには、法律関係が複雑になり、取引の安定性が損なわれる恐れがありました。また、相続人が複数いる場合には、どの相続人がどの財産に対してどれだけの減殺請求をするかという按分の問題が生じ、実務上の整理が困難でした。
このような理由から、減殺請求制度は現代の多様な財産構成や相続事情にそぐわない面があるとされ、法改正の大きな要因となったのです。
遺留分侵害額請求(現行法)の仕組みとメリット
2019年の民法改正により、「遺留分減殺請求権」は廃止され、現在は「遺留分侵害額請求権」として、金銭による支払いを求める債権的制度へと変更されました。これにより、相続人は原則として現物を取り戻すのではなく、遺留分相当額の金銭を請求するという形になりました(民法1046条)。
この変更の最大のポイントは、制度の「物権的」性質から「債権的」性質への転換です。以前のように遺贈や贈与された財産そのものを返還させるのではなく、金銭によって清算する方式となったことで、法律関係が格段にシンプルになりました。たとえば、横浜の不動産が第三者に売却されていた場合でも、今ではその物件自体の返還を求めるのではなく、評価額に応じた金銭を請求すれば足ります。
さらに、現行法では、請求を受けた側(受遺者・受贈者)に対して家庭裁判所が支払いの猶予を与えることもできる制度(民法1047条)が新設され、実務上の柔軟性も高まりました。たとえば、大きな財産を相続して一括で支払えない事情がある場合でも、期限付きでの分割払い等が認められる可能性があります。
この制度改正により、相続人・受遺者・第三者間の法的安定性が向上し、取引や不動産の流通におけるリスクが減少したと評価されています。横浜のように都市部で不動産相続が頻繁に行われる地域では、実務上も非常に有効な制度変更といえるでしょう。
両制度の違いを弁護士が解説!実務での注意点
遺留分減殺請求(旧法)と遺留分侵害額請求(現行法)は、名称だけでなく制度の根本が大きく異なります。ここでは、横浜で多くの相続案件に関わる弁護士の視点から、実務で特に注意すべき点を解説します。
まず最大の違いは、「現物返還」と「金銭請求」という請求手段の違いです。旧法では、遺留分を侵害された相続人が、対象財産そのものの返還(たとえば不動産や預貯金)を請求できるという物権的な仕組みでした。しかし現行法では、財産そのものではなく、それに見合う金銭の支払いを求める形になっています。これにより、物件の転売や所有者の変更などがあっても、請求がスムーズに行えるようになりました。
次に重要なのが、時効・除斥期間の扱いです。どちらの制度でも、「相続開始および侵害を知ったときから1年以内」の消滅時効と、「相続開始から10年以内」の除斥期間という二層構造が基本となっています。しかし、旧制度では現物を巡る交渉が長期化しやすく、期間内に手続きを完了させるのが難しいケースも多くありました。現行制度では金銭請求となるため、時効管理も比較的シンプルになっています。
また、旧法では複数の相続人や受遺者がいる場合、返還対象の按分方法や遺産分割との調整が必要でしたが、現行法では基本的に金銭で処理されるため、こうした手続きの煩雑さが軽減されています。とはいえ、相手方との合意が必要な場面も多いため、実務上は専門家のアドバイスが不可欠です。
横浜のように財産構成が複雑な都市部では、どちらの制度に基づく請求かによって対応方法が大きく異なるため、注意が必要です。
横浜で遺留分に関する相談が必要なケースとは?
遺留分に関する問題は、相続が発生した直後だけでなく、数ヶ月から数年経ってから浮上するケースもあります。横浜のように不動産や金融資産が多様化している地域では、相続人間の利害がぶつかりやすく、遺留分をめぐるトラブルが起きやすい状況にあります。ここでは、どのようなケースで弁護士への相談が有効かを紹介します。
まず、遺言書や生前贈与によって、自分の取り分が極端に少ないと感じた場合は、早急に専門家へ相談すべきです。「家はすべて長男に譲る」といった遺言がある場合でも、他の相続人には遺留分が認められる可能性があるため、泣き寝入りする必要はありません。実際、横浜市内でもこうした相談が増加しており、早期の法的対応が重要です。
また、相続人間で交渉が難航している場合も、弁護士のサポートが大きな助けになります。感情的な対立が激しくなりやすい相続の現場では、第三者として冷静かつ中立な立場から交渉を進める弁護士の役割が非常に重要です。特に、法改正後の制度を正確に理解し、適切な請求手続を取るには専門知識が欠かせません。
さらに、相手方が遺留分侵害額の支払いに応じない、あるいは遺産の内容が不明確であるといった場合には、裁判所を通じた調停や訴訟を視野に入れる必要があります。そのためにも、早めに弁護士へ相談し、適切な対応方針を立てることが望ましいのです。
このように、遺留分に関する問題は法的な判断が分かれるケースも多いため、自己判断せずに専門家の力を借りることがトラブルの予防と早期解決につながります。
まとめと結論
相続における「遺留分」は、家族間の公平性を保つための重要な制度です。旧法である遺留分減殺請求から、現行の遺留分侵害額請求への法改正により、請求方法は物から金銭へと大きく変化しました。これにより、相続トラブルへの対応がより柔軟かつ迅速になった一方で、制度の理解不足による混乱も少なくありません。
横浜のように財産の種類や価値が多様な都市部では、遺留分に関する正確な知識と適切な対応が求められます。特に、不動産を含む相続や複数の相続人が関係する場合は、法的トラブルの火種となりやすく、後々大きな争いに発展することもあります。
相続問題は感情が絡むため、自力で解決しようとするとかえって関係が悪化してしまうケースも多く見られます。そんな時こそ、専門知識と冷静な対応ができる弁護士のサポートが必要です。
当事務所では、横浜エリアを中心に多数の相続案件を取り扱っており、遺留分をめぐる法的トラブルにも精通しています。遺言書の内容に納得がいかない、贈与が不公平だと感じている、あるいは請求を受けて対応に困っているなど、どのような状況でもお気軽にご相談ください。
遺留分の問題は、知識と行動の早さがカギです。トラブルが深刻化する前に、ぜひ横浜の法律専門家にご相談ください。
弁護士 大石誠
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