実家を売りたい相続人と住み続けたい相続人の対処法【横浜の弁護士が解説】
- 誠 大石

- 5月16日
- 読了時間: 21分
はじめに
相続が発生したとき、実家を「売却して現金で分けたい」と考える相続人がいる一方で、「思い出のある実家に住み続けたい」と考える相続人がいることがあります。
特に神奈川県では、横浜市・川崎市・藤沢市・鎌倉市・茅ヶ崎市・相模原市など、地域によって不動産価格や売却しやすさに差があります。そのため、実家を売るか、誰かが住み続けるかという問題は、単なる感情の対立だけでなく、相続分・代償金・固定資産税・修繕費などの金銭問題に発展しやすいのが実情です。
実家に住み続けたい相続人がいる場合、すぐに「売る」「売らない」の二択で考えるのではなく、代償分割、使用貸借、賃貸借、換価分割、共有の解消など、複数の解決策を比較することが大切です。
この記事では、実家を売りたい相続人と住み続けたい相続人が対立した場合の対処法を、弁護士の視点からわかりやすく解説します。
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実家を売りたい相続人と住み続けたい相続人が対立する理由
相続した実家をめぐるトラブルは、相続人それぞれの立場が大きく異なることで起こります。
たとえば、遠方に住んでいて実家を使う予定がない相続人は、「早く売却して現金で相続分を受け取りたい」と考えやすいでしょう。一方、被相続人と同居していた相続人や、今後も実家を生活の本拠にしたい相続人は、「売却されると住む場所がなくなる」「親の家を残したい」と考えることがあります。
このように、実家相続では、経済的利益と生活の安定、さらに家族の思い入れがぶつかりやすいのです。
実家への思い入れと経済的利益がぶつかりやすい
実家は、預貯金のように簡単に分けることができません。
現金であれば、法定相続分や遺産分割協議の内容に応じて比較的分けやすいですが、不動産は一つの財産です。そのため、誰かが取得すれば他の相続人が不公平感を抱きやすく、売却すれば住み続けたい相続人が生活上の不利益を受ける可能性があります。
「長男が親と同居していたから実家を取得したい」
「他の兄弟は実家を使わないので売却したい」
「介護をしていた相続人が住み続けたい」
「空き家になる前に処分したい」
こうした事情が重なると、感情的な対立になりやすくなります。
神奈川県の不動産価格が高い地域では相続分の差が問題になりやすい
神奈川県内でも、横浜市や川崎市の駅近エリア、湘南エリア、鎌倉・逗子・葉山などの人気地域では、実家の評価額が高くなることがあります。
実家の価値が高い場合、住み続けたい相続人がその不動産を取得すると、他の相続人に支払う代償金も高額になりやすくなります。
たとえば、実家の評価額が4,000万円で、相続人が子2人だけの場合、片方が実家を取得するなら、もう片方に対して2,000万円相当の代償金を支払う必要が出てくることがあります。
もちろん、実際の金額は遺産全体の内容、預貯金の有無、不動産評価の方法、寄与分や特別受益の主張などによって変わります。しかし、実家の価値が高いほど、「住み続けたいが代償金を払えない」という問題が起きやすくなります。
固定資産税・修繕費・管理費の負担を誰がするかで揉める
実家に住み続ける相続人がいる場合、固定資産税、火災保険料、修繕費、庭木の管理費、老朽化対策などの費用を誰が負担するかも重要です。
住んでいる相続人だけが利益を受けているように見える一方で、所有者が共有であれば、他の相続人にも一定の負担が生じる可能性があります。
この点を曖昧にしたまま共有状態を続けると、後になって、
「住んでいる人が全部払うべきだ」
「共有者なのだから全員で負担すべきだ」
「勝手にリフォームした費用は認めない」
「家賃を払ってほしい」
といった争いになりかねません。
■ところが遺産分割協議が終わるまでの間、家賃請求ができません…詳しくはこちらで解説しています
相続した実家は相続人全員の同意がなければ売却できない
実家を売りたい相続人がいる場合でも、相続人の一人が単独で実家全体を売却することはできません。
相続人が複数いる場合、遺産分割が終わるまでは、実家は相続人全員の共有に近い状態になります。また、遺産分割後に共有名義にした場合も、実家は共有不動産として扱われます。
共有不動産を売却するには、共有者全員の同意が必要です。そのため、一人でも売却に反対する相続人がいる場合、任意売却によって実家全体を処分することはできません。
遺産分割前は相続人全員で実家を承継している状態になる
相続が発生すると、被相続人の財産は相続人に承継されます。
相続人が複数いる場合、遺産分割が成立するまでは、実家を誰が単独で取得するかは確定していません。そのため、実家を売却するにも、誰かが住み続けるにも、相続人全員で方針を決める必要があります。
「自分は法定相続分を持っているから、自分の判断で売れる」と考える方もいますが、実家全体を売るには他の相続人の同意が必要です。
共有不動産の売却には共有者全員の同意が必要
共有不動産については、各共有者が持分を持っています。
自分の共有持分だけを第三者に売却することは理論上可能ですが、実家全体を売却するには共有者全員の同意が必要です。
たとえば、兄弟2人で実家を2分の1ずつ共有している場合、兄が売却に賛成していても、弟が反対していれば、実家全体を任意に売却することはできません。
実家の売却では、不動産会社との媒介契約、売買契約、登記手続などに共有者全員の協力が必要になります。そのため、反対者がいる場合は、まず話し合いによる合意形成を目指すことになります。
1人でも反対する相続人がいる場合に勝手に売却できない理由
共有不動産は、共有者全員の権利が関係する財産です。
誰か一人が勝手に売却できると、他の共有者の所有権を害することになります。そのため、売却のように不動産の権利関係を大きく変更する行為については、共有者全員の同意が必要とされています。
実家を売りたい相続人から見ると、「反対している相続人のせいで何も進まない」と感じるかもしれません。しかし、住み続けたい相続人にも生活の本拠や居住利益があるため、法的には慎重な調整が必要になります。
実家に住み続けたい相続人がいる場合の主な解決策
実家に住み続けたい相続人がいる場合、代表的な解決策は次の4つです。
①住み続けたい相続人が実家を取得し、他の相続人に代償金を支払う「代償分割」
②共有状態や他の相続人の所有を前提に、無償で住み続ける「使用貸借」
③住み続ける相続人が他の相続人に賃料を支払う「賃貸借」
④いったん共有のままにして、利用や費用負担を取り決める方法
どの方法が適切かは、実家の評価額、他の遺産の有無、住み続けたい相続人の資力、相続人同士の関係性によって変わります。
代償分割|住み続けたい相続人が実家を取得し代償金を支払う方法
実家に住み続けたい相続人がいる場合、最も典型的な解決策が代償分割です。
代償分割とは、一人の相続人が実家を取得し、その代わりに他の相続人へ代償金を支払う方法です。
たとえば、相続人が兄と妹の2人で、兄が実家に住み続けたい場合、兄が実家を取得し、妹に相続分に応じた代償金を支払う形が考えられます。
この方法であれば、兄は実家に住み続けることができ、妹は実家を売却しなくても金銭的な相続分を受け取ることができます。
ただし、代償分割には次の注意点があります。
・実家の評価額をどう決めるか
・代償金を一括で払えるか
・分割払いにする場合の期限や担保をどうするか
・住宅ローンが残っている場合にどう処理するか
・固定資産税や修繕費を誰が負担するか
代償金の支払い条件は、遺産分割協議書に明確に記載することが重要です。
使用貸借|実家に無償で住み続ける場合の注意点
使用貸借とは、無償で物を使用させる契約です。
相続人の一人が実家に住み続けたいが、すぐに代償金を支払えない場合、他の相続人が一定期間の居住を認める形で使用貸借を検討することがあります。
たとえば、
「母の死後も長男がしばらく実家に住む」
「売却までの間、同居していた相続人が無償で住む」
「代償金の準備ができるまで一定期間居住を認める」
といったケースです。
ただし、使用貸借を口約束で済ませるのは危険です。
いつまで住めるのか、固定資産税を誰が払うのか、修繕費は誰が負担するのか、売却する場合にいつ退去するのかを決めておかないと、後で深刻なトラブルになります。
使用貸借を選ぶ場合は、少なくとも次の点を合意書にしておくべきです。
・使用を認める期間
・固定資産税や保険料の負担者
・水道光熱費や修繕費の負担者
・大規模修繕を行う場合の同意方法
・売却や代償分割に移行する場合の退去時期
・相続人の一人が亡くなった場合の扱い
賃貸借|住み続ける相続人が他の相続人に賃料を支払う方法
住み続けたい相続人が実家を独占的に使用する場合、他の相続人に賃料相当額を支払う方法もあります。
これは、共有者間で賃貸借契約に近い形を作る方法です。
たとえば、実家を兄弟2人で共有し、兄だけが実家に住む場合、兄が妹に対して妹の持分に応じた賃料相当額を支払うことが考えられます。
この方法は、住み続けたい相続人がすぐに実家を取得できない場合や、将来の売却まで一時的に共有を維持する場合に利用されることがあります。
ただし、賃料を受け取ると税務上の問題が生じることもあるため、必要に応じて税理士にも確認するとよいでしょう。
共有のままにする方法|将来のトラブルに注意
実家をすぐに売却せず、誰かが住み続けることも認めつつ、名義は共有のままにする方法もあります。
しかし、実務上、共有のままにする方法は慎重に考える必要があります。
共有状態を続けると、次のような問題が起こりやすくなります。
・売却や建替えに全員の同意が必要になる
・固定資産税や修繕費の負担で揉める
・住んでいる相続人と住んでいない相続人で不公平感が出る
・共有者の一人が亡くなると、さらに相続人が増える
・連絡が取れない共有者が出てくる
・最終的に共有物分割請求や競売に発展する
「とりあえず共有にする」という判断は、問題の先送りになりがちです。
共有にする場合でも、利用条件、費用負担、将来売却する条件、買取りのルールなどを文書化しておくことが大切です。
実家を売却したい相続人がいる場合の解決策
実家を売却したい相続人がいる場合、まず検討されるのは換価分割です。
換価分割とは、実家を売却して現金化し、その売却代金を相続人で分ける方法です。
実家を使う相続人がいない場合や、代償金を支払える相続人がいない場合には、換価分割が公平な解決になりやすいといえます。
換価分割|実家を売却して売却代金を相続人で分ける方法
換価分割では、相続人全員で実家を売却し、売却代金から諸費用を差し引いた残額を相続分に応じて分けます。
たとえば、実家を3,000万円で売却し、仲介手数料や登記費用などを差し引いた残額を兄弟で2分の1ずつ分けるような方法です。
換価分割のメリットは、実家を現金に変えることで公平に分けやすい点です。
一方で、住み続けたい相続人がいる場合には、その相続人の生活環境を大きく変えることになります。そのため、退去時期、引越し費用、一定期間の居住猶予などを含めて話し合う必要があります。
売却価格の決め方|不動産査定・路線価・固定資産税評価額の違い
実家を売却するか、代償分割にするかを決める際には、不動産評価が重要になります。
不動産の評価には、主に次のような基準があります。
・不動産会社の査定価格
・実際の売却見込価格
・相続税評価額
・固定資産税評価額
・不動産鑑定士による鑑定評価
代償分割では、「実家をいくらと評価するか」によって代償金の額が大きく変わります。
住み続けたい相続人は低めに評価したいと考え、売却したい相続人は高めに評価したいと考えることがあります。そのため、複数の不動産会社から査定を取る、不動産鑑定士に依頼する、評価時点を明確にするなどの工夫が必要です。
神奈川県の実家売却で注意したい地域差と不動産評価
神奈川県内では、地域によって不動産の流動性が大きく異なります。
横浜市や川崎市の駅近物件は買い手が見つかりやすい一方で、駅から遠い住宅地や築年数が古い戸建てでは、売却に時間がかかることもあります。
また、鎌倉市や逗子市、葉山町などでは、景観・道路・建築制限などが価格に影響することがあります。相模原市や県西部では、土地は広くても買い手が限定されるケースもあります。
そのため、神奈川県で実家相続を考える場合は、単に相続税評価額だけで判断するのではなく、実際に売れる価格や売却期間も考慮することが大切です。
代償分割を選ぶ場合に確認すべきポイント
実家に住み続けたい相続人がいる場合、代償分割は有力な解決策です。
しかし、代償分割は「住み続けたい相続人が実家をもらう」という単純な話ではありません。代償金の額や支払い方法をきちんと決めないと、後から支払いトラブルが起きる可能性があります。
代償金をいくらにするか
代償金は、実家の評価額と各相続人の相続分をもとに決めます。
ただし、必ずしも単純に法定相続分どおりに計算するとは限りません。他に預貯金がある場合、介護への貢献がある場合、生前贈与を受けていた相続人がいる場合などは、全体の事情を踏まえて調整することになります。
代償金を決める際には、次の資料を確認しましょう。
・不動産登記事項証明書
・固定資産評価証明書
・不動産会社の査定書
・相続税評価額の資料
・住宅ローン残高証明書
・リフォーム履歴や修繕費の資料
感情的な主張だけでなく、客観的な資料をもとに話し合うことが重要です。
代償金を一括で支払えるか、分割払いにするか
代償金が高額になる場合、住み続けたい相続人が一括で支払えないことがあります。
その場合は、分割払いを検討することもあります。ただし、分割払いにする場合は、支払期限、遅延損害金、期限の利益喪失、担保設定などを慎重に決める必要があります。
たとえば、
・毎月いくら支払うのか
・何年で完済するのか
・支払いが遅れた場合にどうするのか
・抵当権を設定するのか
・公正証書を作成するのか
といった点を明確にしておきましょう。
口約束だけで分割払いにすると、「払うと言った」「聞いていない」という争いになりやすいため、遺産分割協議書に具体的に記載することが大切です。
■代償金を捻出できない場合の解決方法はこちらで解説
住宅ローン・抵当権・固定資産税の負担をどうするか
実家に住宅ローンが残っている場合、代償分割はさらに複雑になります。
不動産の名義を取得する相続人がローンも引き継げるのか、金融機関の承諾が必要か、抵当権をどうするかを確認する必要があります。
また、実家を取得する相続人は、今後の固定資産税、火災保険料、修繕費も負担することになります。
代償金だけでなく、取得後の維持費も支払えるかを現実的に検討しなければなりません。
代償金の支払いを遺産分割協議書に明記する重要性
代償分割を行う場合は、遺産分割協議書に次の内容を明記しましょう。
・誰が実家を取得するのか
・他の相続人にいくら代償金を支払うのか
・支払期限はいつか
・振込先はどこか
・分割払いの場合の回数と期限
・支払いが遅れた場合の扱い
・登記手続への協力義務
遺産分割協議書の内容が曖昧だと、名義変更や代償金請求の場面で問題になります。
特に神奈川県内の不動産で評価額が高い場合、代償金も高額になりやすいため、弁護士に相談して文案を整えることをおすすめします。
使用貸借で実家に住み続ける場合の注意点
使用貸借は、住み続けたい相続人にとっては負担が少ない方法です。
しかし、他の相続人から見ると、「なぜ一人だけ無償で実家に住めるのか」という不満につながりやすい方法でもあります。
そのため、使用貸借を選ぶ場合は、必ず条件を明確にする必要があります。
口約束だけでは将来トラブルになりやすい
親族間では、「しばらく住んでいていいよ」「落ち着いたら話し合おう」といった口約束で済ませてしまうことがあります。
しかし、相続人の関係が悪化したり、共有者の一人が亡くなったり、売却の話が出たりすると、口約束では対応できません。
使用貸借の期間や条件が曖昧だと、退去を求められたときに争いになりやすくなります。
使用期間・固定資産税・修繕費の負担を決めておく
使用貸借で実家に住み続ける場合は、少なくとも以下の内容を決めておきましょう。
・いつからいつまで住めるのか
・期間満了後に更新できるのか
・固定資産税は誰が払うのか
・通常の修繕費は誰が払うのか
・大規模修繕は誰の同意で行うのか
・火災保険料は誰が負担するのか
・売却する場合の退去時期
実家に住んでいる相続人が固定資産税を支払っていたとしても、それだけで当然に実家を取得できるわけではありません。
費用負担と所有権の帰属は別問題として整理する必要があります。
他の相続人が持分を売却した場合のリスク
共有状態のまま使用貸借を続けていると、他の相続人が自分の共有持分を第三者に売却するリスクがあります。
共有持分が第三者に渡ると、その第三者から共有物分割請求をされる可能性があります。そうなると、親族間の話し合いでは済まず、裁判手続に発展することもあります。
「家族だから大丈夫」と考えて共有を放置するのではなく、できるだけ早い段階で実家の最終的な帰属を決めることが重要です。
話し合いで解決できない場合は遺産分割調停を検討する
相続人同士の話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を検討します。
遺産分割調停は、家庭裁判所で調停委員を介して相続人同士が話し合い、遺産の分け方について合意を目指す手続です。
遺産分割調停とはどのような手続きか
遺産分割調停では、相続人全員が当事者となり、実家を誰が取得するのか、売却するのか、代償金をいくらにするのかなどを話し合います。
調停委員が間に入るため、当事者同士で直接感情的に言い合うよりも、冷静に整理しやすいというメリットがあります。
また、不動産の評価資料、預貯金資料、相続人の事情などを提出しながら、現実的な解決案を探っていきます。
調停で代償分割・換価分割・共有分割を話し合う流れ
実家の遺産分割調停では、主に次のような分割方法が検討されます。
・代償分割
住み続けたい相続人が実家を取得し、他の相続人に代償金を支払う方法です。
・換価分割
実家を売却し、売却代金を相続人で分ける方法です。
・共有分割
実家を相続人の共有にする方法です。ただし、将来の紛争を残しやすいため、慎重に検討する必要があります。
調停で合意が成立すれば、調停調書が作成され、その内容に基づいて名義変更や代償金の支払いを進めることができます。
調停が成立しない場合は、審判手続に移行し、家庭裁判所が遺産の分割方法を判断します。
神奈川県内の家庭裁判所で相続トラブルを解決する場合
神奈川県内で遺産分割調停を行う場合、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所などが関係します。
横浜家庭裁判所をはじめ、川崎、相模原、横須賀、小田原など、地域によって利用する裁判所が異なります。
実家が神奈川県内にある場合でも、相続人の住所地によって申立先が変わることがあるため、事前に確認が必要です。
また、調停では不動産評価や代償金の支払能力が重要になるため、申立前に資料を整理しておくことが大切です。
遺産分割後に共有名義で揉めた場合の共有物分割請求
すでに遺産分割が終わり、実家が相続人の共有名義になっている場合は、遺産分割調停ではなく、共有物分割請求が問題になることがあります。
共有物分割請求とは、共有者が共有状態の解消を求める手続です。
共有物分割請求とは
共有者は、共有状態を解消するために共有物分割を求めることができます。
話し合いで共有解消ができればよいですが、協議がまとまらない場合は、裁判所に共有物分割訴訟を提起することになります。
実家の共有物分割では、次のような解決方法が考えられます。
・現物分割
不動産を物理的に分ける方法です。ただし、戸建て住宅では現実的でないことが多いです。
・代償分割
共有者の一人が実家を取得し、他の共有者に金銭を支払う方法です。
・換価分割
実家を売却し、代金を共有持分に応じて分ける方法です。任意売却ができなければ、競売になる可能性もあります。
裁判所が現物分割・代金分割・代償分割を判断する場合
共有物分割訴訟では、裁判所が不動産の性質、共有者の希望、取得希望者の支払能力、公平性などを考慮して分割方法を判断します。
実家に住み続けたい相続人がいる場合でも、代償金を支払う能力がなければ、代償分割が認められにくくなる可能性があります。
一方で、売却を希望する相続人がいても、住み続けたい相続人が適正な代償金を支払えるのであれば、代償分割による解決が検討されることもあります。
競売になるリスクと早めに弁護士へ相談すべき理由
共有物分割訴訟が進むと、最終的に競売による換価分割になる可能性があります。
競売になると、市場価格より低い価格で売却されるリスクがあります。また、住み続けていた相続人も退去を迫られる可能性があります。
そのため、共有物分割請求に発展する前に、任意売却、持分買取り、代償分割、賃料支払いなどの選択肢を検討することが重要です。
弁護士が解説|実家相続で揉めないために決めておくべきこと
実家相続で揉めないためには、感情論だけで話し合うのではなく、条件を整理して書面化することが大切です。
特に、実家を売りたい相続人と住み続けたい相続人がいる場合は、次の点を早めに決めましょう。
不動産評価の基準を相続人全員で共有する
まず、実家の評価額をどう見るかを決める必要があります。
売却価格を基準にするのか、不動産会社の査定を基準にするのか、固定資産税評価額や相続税評価額を参考にするのかによって、代償金の額が変わります。
相続人ごとに都合のよい評価額を主張すると、話し合いは進みません。複数の査定を取得し、評価の根拠を共有することが重要です。
居住する相続人の負担内容を明確にする
実家に住み続ける相続人がいる場合は、その人がどこまで費用を負担するのかを明確にしましょう。
特に、以下の費用は争いになりやすい項目です。
・固定資産税
・都市計画税
・火災保険料
・修繕費
・リフォーム費用
・庭や外構の管理費
・自治会費
・水道光熱費
住んでいる相続人が負担するのか、共有者全員で負担するのか、支出前に同意が必要かを決めておくことが大切です。
遺産分割協議書に売却・居住・代償金の条件を残す
実家相続で合意ができたら、必ず遺産分割協議書を作成しましょう。
特に代償分割や使用貸借を含む場合は、口約束で済ませてはいけません。
遺産分割協議書には、次のような内容を入れることが考えられます。
・実家を取得する相続人
・代償金の金額
・代償金の支払期限
・分割払いの条件
・実家に住み続ける期間
・固定資産税や修繕費の負担
・売却する場合の手続
・登記手続への協力義務
弁護士が関与することで、後日の紛争を防ぐ内容に整えやすくなります。
感情的な対立になる前に第三者を入れて話し合う
実家相続では、長年の家族関係や介護の負担、親との同居歴などが影響します。
そのため、相続人だけで話し合うと、過去の不満が噴き出してしまい、冷静な協議が難しくなることがあります。
早い段階で弁護士を入れることで、
・法的な選択肢を整理できる
・代償金の考え方を説明できる
・感情的な対立を避けやすくなる
・遺産分割協議書を正確に作成できる
・調停や審判に進むべきか判断できる
といったメリットがあります。
まとめ|実家を売りたい相続人と住み続けたい相続人がいる場合は早めの整理が重要
相続した実家をめぐって、売りたい相続人と住み続けたい相続人が対立することは珍しくありません。
しかし、共有不動産である実家は、相続人の一人が勝手に売却できるものではありません。一方で、住み続けたい相続人も、他の相続人の相続分を無視して無条件に居住を続けられるわけではありません。
解決策としては、主に次の方法があります。
・住み続けたい相続人が実家を取得し、他の相続人に代償金を支払う代償分割
・一定期間、無償で住み続ける使用貸借
・住み続ける相続人が賃料を支払う賃貸借
・実家を売却して売却代金を分ける換価分割
・共有状態を解消する共有物分割請求
・話し合いが難しい場合の遺産分割調停・審判
特に神奈川県では、地域によって実家の評価額や売却可能性が大きく異なるため、不動産評価と代償金の調整が重要になります。
実家に住み続けたい相続人がいる場合は、「売るか、売らないか」だけで対立するのではなく、代償金、居住期間、費用負担、将来の売却条件を具体的に整理しましょう。
相続人同士で話し合いが進まない場合や、代償金・共有名義・使用貸借の条件で揉めている場合は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
神奈川県で実家相続にお悩みの方は、相続不動産の評価、遺産分割協議書の作成、遺産分割調停、共有物分割請求まで見据えて、専門家のサポートを受けながら解決策を検討しましょう。
以上、「実家を売りたい相続人と住み続けたい相続人の対処法【横浜の弁護士が解説】」でした。
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【追記】
税理士・司法書士・行政書士の先生に依頼したのに、相続が止まったままではありませんか?
手続は進んでも話し合いが進まない。相続が止まるのには理由があります。
「止まった相続を終わらせる」という考え方はこちらにも掲載しました。




