兄弟姉妹には遺留分がない|請求されても断れる理由と4つの対処法を弁護士が解説
- 誠 大石

- 2月9日
- 読了時間: 11分
更新日:4月1日
はじめに
「兄弟姉妹に遺留分はあるのか?」「兄から遺留分を請求すると言われたが、応じないといけないのか?」「兄弟姉妹しか相続人がいないと思っていたが、後から認知された子の話が出てきた」
相続の現場では、このあたりの誤解が非常に多いです。結論を先に言います。
民法1042条は、遺留分を持つのは『兄弟姉妹以外の相続人』だと定めています。したがって、兄弟姉妹には遺留分はありません。兄弟姉妹からの遺留分請求は、原則として認められません。 裁判所の手続案内でも、遺留分侵害額請求の申立人は「遺留分を侵害された者(兄弟姉妹以外の相続人)」とされています。
ただし、ここで雑に理解すると危険です。兄弟姉妹に遺留分がないのはそのとおりですが、兄弟姉妹が相続人になる場面と、そもそも兄弟姉妹が相続人ですらない場面は別です。たとえば、後から認知された子が判明した場合、子は第1順位の相続人なので、兄弟姉妹は相続人から外れます。政府広報は、法定相続人となる子には養子や法律上の婚姻関係にない間に生まれた子も含まれると案内しており、法務省も嫡出でない子の相続分が嫡出子と同等になったと説明しています。
この記事では、
兄弟姉妹に遺留分がない根拠
甥姪の代襲相続と遺留分の関係
認知された子がいる場合の相続順位
兄弟から遺留分請求を受けたときに拒否できるか
遺留分がなくても取り得る別の手段
を、検索ユーザーの疑問に即答する形で整理します。現行記事にも「兄弟姉妹には遺留分がない」「遺言無効や寄与分など別ルートがある」という骨格はありますが、以下では条文根拠と例外整理を前に出しています。
▲遺留分侵害額請求の入門編はこちらで解説

まず結論。兄弟姉妹には遺留分はない
結論から言うと、兄弟姉妹には遺留分はありません。つまり、被相続人が遺言などで兄弟姉妹に一切の財産を渡さないとしても、それは法律上問題ないということです。
遺留分とは、民法で認められた「相続人が最低限受け取ることができる財産の取り分」のことです。遺留分が認められているのは、被相続人の「直系卑属(子や孫など)」と「直系尊属(親など)」、および「配偶者」に限られています。兄弟姉妹はこの対象に含まれないため、遺留分の請求(遺留分侵害額請求)はできません。
この制度は、故人の意思を尊重しつつも、配偶者や子どもといった近親者の生活を守るために設けられたものであり、兄弟姉妹についてはその保護の対象外とされているのです。
したがって、被相続人が遺言で「全財産を長男に相続させる」「世話になった第三者に全財産を遺贈する」と書いていても、兄弟姉妹は遺留分侵害額請求でそれを崩すことはできません。
民法1042条は、遺留分の帰属を「兄弟姉妹以外の相続人」としており、裁判所も遺留分侵害額請求を申し立てられるのは「兄弟姉妹以外の相続人」だと案内しています。
ここで大事なのは、「兄弟姉妹も相続人にはなり得るが、遺留分権利者ではない」という点です。
なぜ兄弟姉妹には遺留分がないのか
遺留分制度の趣旨と対象者
遺留分とは、被相続人(亡くなった方)の遺言や生前贈与があっても、一定の相続人が取り戻せる「最低限の取り分」のことです。民法は以下の人にのみ遺留分を認めています。
相続人の種類 | 遺留分の有無 |
配偶者 | あり |
子・孫(代襲相続人) | あり |
直系尊属(父母・祖父母) | あり(子がいない場合) |
兄弟姉妹・甥姪 | なし |
兄弟姉妹が対象外とされているのは、「被相続人の財産形成に対する貢献や生活依存度が、配偶者・子・親に比べて一般的に低い」という立法上の判断によります。感情的な納得しやすさとは別に、法律はこの線引きを明確にしています。
「相続人」と「遺留分権利者」は別物
よくある誤解として、「相続人なら遺留分もある」と思いがちですが、これは間違いです。兄弟姉妹が法定相続人になる場面(子も親もいない場合)でも、遺留分は認められません。つまり遺言で「全財産を第三者へ」と書かれていれば、兄弟姉妹はそれを法的に覆す手段として遺留分請求を使うことはできません。
遺留分がなくても取れる手段——4つの選択肢
「遺留分がない=何もできない」ではありません。状況によっては以下の手段が残っています。それぞれの有効性と限界を理解した上で、自分のケースに当てはまるかを確認してください。
手段① 遺言の無効を争う
遺言そのものに法的な問題がある場合、遺言の無効確認を求めることができます。無効になりうる典型例は次のとおりです。
【遺言が無効になりうるケース】
・遺言書の形式が整っていない(自筆証書で日付や署名が抜けているなど)
・作成時点で遺言者が認知症等で判断能力(意思能力)を欠いていた
・詐欺・強迫によって作成させられた
・公正証書遺言でも、遺言能力がなかったことが立証できる場合
ただし、遺言の無効を主張するには「判断能力がなかった」ことを立証する必要があり、医師の診断書や当時の状況の証拠が不可欠です。感情的な「おかしい」だけでは裁判所は動きません。
▲遺言書に納得がいかず、遺言の無効と遺留分を同時に解説した記事はこちら
手段② 遺産分割協議で話し合う
遺言がある場合でも、相続人全員が合意すれば遺言と異なる内容の遺産分割ができます(遺言の内容を事実上変更する合意)。受遺者(遺言で財産をもらった人)が同意してくれれば、遺言にかかわらず兄弟姉妹に財産が渡る形にすることは可能です。ただしこれは相手の「任意の同意」が前提であり、法的強制力はありません。
手段③ 寄与分を主張する
被相続人の財産の維持・増加に特別に貢献した(介護・療養看護・事業への貢献など)場合、「寄与分」として法定相続分よりも多くの財産を取得できる可能性があります。ただし寄与分は「特別の貢献」が必要であり、通常の親族間の助け合い程度では認められません。また、遺言がある場合は寄与分の主張が制限される場面もあります。
手段④ 不当利得・使途不明金を追及する
遺言とは別に、相続財産が正当な理由なく他の相続人に流れていた(生前に不正に引き出された、管理を任された者が着服したなど)場合は、不当利得返還請求や損害賠償請求が使える可能性があります。これは遺留分の問題ではなく別の法的根拠ですが、実務では遺留分と合わせて検討されることがあります。
兄弟姉妹間の相続トラブルでよく見るパターン
横浜での相談実務で頻繁に見る兄弟姉妹間の相続トラブルには、いくつかの典型パターンがあります。
トラブルのパターン | 有効な対応の方向性 |
「親の遺言で全部が長男へ」→自分は何ももらえない | 遺言の有効性を確認。任意での話し合いも検討 |
親が認知症になった後に作られた遺言が出てきた | 遺言作成時の意思能力を医療記録等で確認→無効主張も |
長年、一人で親の介護をしてきたのに財産ゼロ | 寄与分の主張を検討。証拠(日誌・医療費領収書等)の整理が先決 |
相続直前に親の預金が大量に引き出されている | 使途不明金・不当利得の追及を検討 |
遺言で全額が愛人や第三者に遺贈されている | 遺言の有効性・意思能力を確認 |
実は“兄弟姉妹の遺留分”ではないケースはありますか?
例1 認知された子がいるケース
被相続人に子はいないと思っていたが、後から認知された子が判明したケースです。政府広報は、法定相続人となる子には法律上の婚姻関係にない間に生まれた子も含まれると案内しており、法務省も2013年改正で嫡出でない子の相続分が嫡出子と同等になったと説明しています。
具体例
被相続人に配偶者と兄がいるため、「兄も相続人だ」と思っていたところ、死亡後に認知された子の存在が分かったとします。この場合、子は第1順位の相続人なので、兄弟姉妹は相続人から外れます。これは兄弟に遺留分がないという問題以前に、兄弟がそもそも相続人ではないという整理になります。
例2 子が先に亡くなっていて孫がいるケース
被相続人の子が先に亡くなっていて、その子に子ども、つまり孫がいる場合、その孫は子の代襲相続人として相続人になり得ます。子の系統は兄弟姉妹と違い、遺留分の対象になり得ます。つまり、孫には遺留分があり得るが、甥姪にはないということです。現行の関連記事とも相性が良い内部リンクポイントです。
例3 養子がいるケース
政府広報は、法定相続人となる子に養子も含まれると説明しています。したがって、「実子がいないから兄弟姉妹が相続人だ」と思っていても、養子がいれば兄弟姉妹は相続人ではありません。これも、兄弟姉妹の遺留分以前に、相続順位の問題です。
内容証明で「兄弟として遺留分を請求する」と来たら、まず何をすべきですか?
原則:法的根拠がないため拒否できる
本当に兄弟姉妹としての立場からの遺留分請求であれば、法的には認められないため、拒否できます。内容証明郵便が届いた場合も、感情的に返答するのではなく、まず以下の順で確認してください。
1 戸籍を確認する
裁判所は、遺留分侵害額請求の手続で、被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍、子や代襲者が死亡している場合の戸籍などを必要書類として挙げています。つまり、誰が本当の相続人かは戸籍で詰めるのが基本です。
2 相手の立場を確認する
相手は本当に兄弟姉妹なのか。それとも、実は認知された子、養子、代襲相続人など、別の立場なのか。ここを誤ると、結論を誤ります。
3 書面の請求原因を読む
「遺留分請求」と書いてあっても、実際には遺言無効や不当利得返還が主眼のことがあります。タイトルではなく中身を見るべきです。
4 期限のある論点が混じっていないか確認する
相手に遺留分がないとしても、こちらが反論や別手続をとる必要がある場合があります。不用意に放置するのは悪手です。
よくある質問FAQ
兄弟姉妹に遺留分はありますか?
ありません。民法1042条は遺留分を持つ人を「兄弟姉妹以外の相続人」としており、裁判所の手続案内でも同じ整理です。
兄弟から遺留分請求を受けたら、拒否できますか?
本当に兄弟姉妹としての立場からの遺留分請求であれば、遺留分請求としては争える可能性が高いです。ただし、遺言無効や不当利得など別の主張が混じっていないか確認が必要です。
甥姪には遺留分がありますか?
ありません。甥姪は兄弟姉妹の代襲相続人として相続人になることがありますが、兄弟姉妹に遺留分がないため、甥姪にも遺留分はありません。
認知された子がいたら、兄弟姉妹はどうなりますか?
認知された子は法律上の子として相続人になります。子は第1順位なので、兄弟姉妹は相続人から外れることがあります。
養子がいたら、兄弟姉妹は相続人ですか?
養子も子として扱われるため、養子がいれば兄弟姉妹は相続人にならないのが通常です。
弁護士に相談すべきタイミング
「遺留分がないから諦めるしかない」と自分で判断してしまう前に、一度弁護士に相談することをおすすめします。遺留分以外の手段が残っているかどうかは、具体的な事実関係を確認しないと判断できないからです。
【こんな場合は早めに相談を】
□ 遺言書の内容に不自然さ・不審点がある(作成時期・状況・内容の偏り)
□ 親が認知症だった時期に遺言が作成されている
□ 長年の介護や生活支援など、特別な貢献があった
□ 相続直前に預金残高が大きく減っている、不審な資金移動がある
□ 他の相続人(受遺者)が話し合いに応じない
遺留分がない以上、法的に強制できる手段は限られます。しかし「何が使えるか」の選択肢を正しく把握した上で動くことと、最初から諦めることは全く違います。まずは相談だけでも、早めに動くことが重要です。
まとめ:兄弟姉妹には遺留分はないが、トラブル回避には配慮が必要
兄弟姉妹には法的に遺留分が認められていないため、遺言で財産を渡さないとされても、それを覆すことはできません。ただし、実際の相続現場では誤解や感情的対立が起きがちです。遺言書の作成段階での配慮や、相続手続き時の丁寧な説明が、円満な相続には不可欠です。
相続について不安がある場合は、早めに専門家に相談し、正しい知識と手続きを備えることをおすすめします。
以上、兄弟姉妹には遺留分がない|請求されても断れる理由と4つの対処法を弁護士が解説でした。
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ご自身の家族関係でどうなるか、記事を読んだだけでは分かりにくいこともあります。弁護士に確認するのが一番確実です。
弁護士 大石誠
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