【神奈川の弁護士が解説】遺産分割前に相続税の納付資金を確保する方法
- 誠 大石

- 5 日前
- 読了時間: 20分
はじめに
神奈川で相続が発生したものの、相続人同士の話合いがまとまらず、被相続人名義の預貯金を引き出せない――。
このような状況で特に問題となるのが、相続税の納付資金です。
相続税は、原則として、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告し、納付しなければなりません。遺産分割協議が終わっていなくても、申告・納付期限が延長されるわけではありません。未分割のまま期限を迎える場合には、原則として法定相続分などに従って取得したものと仮定し、相続税を計算して申告・納付する必要があります。
しかし、相続財産の大部分が不動産や自社株であり、現金は被相続人名義の口座に入ったままというケースでは、相続人自身に納税資金がないことがあります。
このような場合に検討できる制度の一つが、家事事件手続法200条3項に基づく「預貯金債権の仮分割の仮処分」です。
この制度を利用すると、遺産分割調停・審判の終了前であっても、家庭裁判所の判断により、遺産に属する特定の預貯金債権の全部または一部を、申立人に仮に取得させてもらえる可能性があります。
本記事では、神奈川で遺産分割がまとまらず、相続税の納付資金を確保できない方に向けて、制度の要件、申立ての流れ、民法909条の2との違い、未分割申告の注意点を解説します。
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神奈川で家事事件手続法200条3項を利用して相続税の納付資金を確保する重要ポイント
預貯金債権の仮分割が認められる要件
家事事件手続法200条3項による預貯金債権の仮分割が認められるためには、主に次の要件を満たす必要があります。
第1に、遺産分割の調停または審判が申し立てられていることです。
第2に、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁、その他の事情により、申立人などが遺産に属する預貯金債権を行使する必要があることです。
第3に、預貯金を仮に取得させることによって、他の共同相続人の利益を害しないことです。
ここで重要なのは、家庭裁判所に申し立てれば自動的に払戻しが認められるわけではないという点です。
家庭裁判所は、資金が必要となる理由、必要額、支払期限、申立人の手元資金、遺産全体の金額、他の相続人の取得見込みなどを考慮し、仮分割の必要性と相当性を判断します。
遺産分割調停・審判の係属が必要となる理由
家事事件手続法200条3項の仮処分は、遺産分割事件を「本案」とする保全処分です。
そのため、単独で預貯金の仮分割だけを申し立てることはできません。遺産分割調停または審判が家庭裁判所に係属していることが前提となります。
まだ遺産分割調停を申し立てていない場合には、遺産分割調停と預貯金債権の仮分割の仮処分を同時に申し立てることを検討します。
遺産分割調停は、相続人同士で遺産の分け方について話合いがつかない場合に利用する手続です。原則として、相手方となる相続人のうち一人の住所地を管轄する家庭裁判所、または相続人全員が合意した家庭裁判所に申し立てます。
神奈川県内の相続であっても、被相続人の住所だけで申立先が決まるとは限りません。相手方の住所や事件の状況を確認し、管轄裁判所を判断する必要があります。
相続税納付の必要性を家庭裁判所へ説明する方法
相続税の納付資金を確保する目的で仮分割を求める場合には、単に「相続税が払えない」と主張するだけでは不十分です。
なお、相続税は、被相続人が生前に負担していた借金などの「相続財産に属する債務」ではなく、相続によって財産を取得する相続人自身に課される税金です。
したがって、家事事件手続法200条3項に例示されている「相続財産に属する債務の弁済」ではなく、主として「その他の事情」による預貯金行使の必要性を説明することになります。
実務上は、少なくとも次の事実を具体的な資料によって説明する必要があります。
①相続税の申告・納付期限がいつ到来するのか、②申立人が納付すべき相続税の概算額はいくらか、③申立人が保有する預貯金や換金可能な資産はいくらか、④不足する納税資金はいくらか、⑤民法909条の2による払戻しや自己資金だけでは不足する理由、⑥仮分割を認めても他の相続人の利益を害さない理由です。
具体的には、税理士が作成した相続税額の試算表、相続税申告書案、納付書、預貯金残高証明書、申立人自身の預金通帳、不動産評価資料、遺産目録などを提出することが考えられます。
家庭裁判所に伝えるべきなのは、「相続税が発生する」という抽象的な事実ではなく、「いつまでに、いくら必要で、他の方法ではいくら不足するのか」という具体的な資金需要です。
神奈川の弁護士が解説する具体的な申立てケース
例えば、次のようなケースを考えます。
被相続人が、預貯金6000万円と神奈川県内の不動産1億円を残して亡くなり、相続人は長男と二男の2人だったとします。
長男と二男は、不動産の取得者や生前贈与の評価をめぐって対立しており、遺産分割協議が成立していません。
長男が納付すべき相続税の概算額は1200万円ですが、長男の手元資金は200万円しかありません。被相続人の預貯金は一つの金融機関に集中しているため、民法909条の2による払戻額は最大でも150万円です。
この場合、長男には約850万円の資金不足が残ります。
そこで、長男は遺産分割調停を申し立てるとともに、家事事件手続法200条3項に基づき、預貯金のうち850万円を仮に取得させるよう申し立てることが考えられます。
もっとも、家庭裁判所が850万円全額の仮分割を認めるとは限りません。長男の相続分、既に取得している財産、特別受益の有無、不動産の評価、二男の取得見込みなどを踏まえ、二男の利益を害さないかが審査されます。
預貯金債権の仮分割を申し立てる実務フロー
相続税の概算額と10か月の申告・納付期限を確認する
最初に確認すべきなのは、相続税の申告・納付期限と、各相続人が納付する相続税の概算額です。
相続税の期限は、原則として、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。遺産分割が終わっていないことを理由に期限が延長されるわけではありません。
そのため、仮分割の申立てを検討するときは、税理士に依頼して、未分割状態を前提とした相続税額を早期に試算してもらう必要があります。
遺産の評価や相続人の範囲が確定していない段階では、家庭裁判所に対して必要額を具体的に説明できません。
預貯金残高と法定相続分を調査する
次に、被相続人名義の預貯金について、金融機関名、支店名、口座番号、相続開始時点の残高、現在の残高を調査します。
遺産分割調停の申立てに際しても、預貯金通帳の写しや残高証明書など、遺産に関する証明書の提出が求められます。
同時に、戸籍を収集して相続人を確定し、各相続人の法定相続分を確認します。
ただし、法定相続分だけを見ればよいわけではありません。特別受益、寄与分、既に一部取得している遺産などが問題となっている場合には、申立人が最終的に取得できる金額が法定相続分相当額を下回る可能性もあります。
遺産分割調停・審判と仮分割の仮処分を申し立てる
遺産分割事件がまだ係属していない場合には、遺産分割調停と仮分割の仮処分を併せて申し立てます。
遺産分割調停の申立てには、申立書、事情説明書、相続関係を証明する戸籍、相続人の住民票または戸籍附票、預貯金や不動産などの遺産資料が必要です。
仮分割の申立書では、対象となる金融機関と預貯金債権を特定し、仮に取得したい金額を明示します。
そのうえで、相続税の納付期限、納付予定額、申立人の資力、資金不足額、他の資金調達方法の有無、他の相続人に与える影響を説明します。
家庭裁判所の決定後に金融機関で払戻しを受ける
家庭裁判所が仮分割を認めると、申立人は、対象となる預貯金債権の全部または一部を仮に取得します。
その後、家庭裁判所の決定書類や戸籍、本人確認書類など、金融機関が指定する資料を提出して払戻しを受けます。
必要書類や金融機関内での確認手続は金融機関によって異なります。家庭裁判所の決定が出た後も、直ちに口座へ入金されるとは限らないため、事前に金融機関へ必要書類と処理方法を確認しておくことが重要です。
確保した資金で相続税を期限内に納付する
払戻しを受けた資金は、申立ての際に説明した目的に従って、相続税の納付に充てます。
相続税を納期限までに納付できなければ、原則として、法定納期限の翌日から完納する日まで延滞税が発生します。
仮分割によって資金を取得した場合には、納付書や領収証などを保管し、実際に相続税の納付へ使用したことを説明できる状態にしておくことが望ましいでしょう。
家事事件手続法200条3項を利用する際の注意点
他の共同相続人の利益を害さない範囲とは
仮分割を認めるためには、他の共同相続人の利益を害しないことが必要です。
例えば、申立人が最終的に取得できると見込まれる遺産額を大幅に超えて預貯金を取得すると、他の相続人が本来取得できる財産が不足する可能性があります。
そのため、家庭裁判所は、預貯金だけでなく、不動産、有価証券、既に分割された財産、特別受益なども含め、遺産全体の状況を確認します。
申立ての段階で遺産の全体像が明らかになっていない場合や、申立人の具体的相続分が大きく争われている場合には、仮分割が認められる範囲が限定される可能性があります。
法定相続分が仮分割額の絶対的な上限とは限らない
家事事件手続法200条3項には、民法909条の2のような「預貯金額の3分の1に法定相続分を乗じた金額」や「金融機関ごとに150万円」という明確な上限は定められていません。
したがって、法定相続分が条文上の機械的・絶対的な上限になっているわけではありません。
例えば、相続財産全体の維持に必要な費用や、相続財産に属する債務を代表して弁済する場合には、支出によって共同相続人全員が利益を受けるため、申立人個人の形式的な法定相続分だけでは判断できないことがあります。
一方で、相続税は各相続人自身の納税義務です。そのため、申立人自身の相続税を納付する目的で、最終的な取得見込みを超える金額まで当然に仮分割が認められるわけではありません。
実務上は、法定相続分や具体的相続分の見込みが重要な判断材料になります。法定相続分を超える仮分割を求める場合には、他の相続人の利益を実質的に害しない特別な事情を、より慎重に説明する必要があります。
預貯金以外の不動産や自社株には利用できない
家事事件手続法200条3項が対象としているのは、遺産に属する預貯金債権です。
不動産を仮に取得して売却したり、自社株を換価したりするために、同項を直接利用することはできません。
遺産の大部分が不動産や自社株で、預貯金がほとんどない場合には、延納・物納、相続人自身の借入れ、不動産の一部分割や任意売却など、別の方法を検討する必要があります。
相続税は金銭による一括納付が原則ですが、一定の要件を満たす場合には延納を申請でき、延納によっても金銭納付が困難な場合には物納が認められる可能性があります。
審理期間を考慮して早めに申立てを準備する
仮分割の申立てをしても、家庭裁判所が即日で判断するわけではありません。
裁判所は、申立書と資料を確認し、必要に応じて追加資料を求め、他の相続人から意見を聴取することがあります。
また、決定後には金融機関側の手続も必要です。
そのため、相続税の納付期限の直前になってから申立てを開始すると、期限までに資金を確保できない可能性があります。
遺産分割協議の長期化が予想され、自己資金だけでは相続税を納付できないことが判明した時点で、弁護士と税理士に相談することが重要です。
弁護士によるよくある質問と申立て対策
「相続税の納付期限が近いことだけで認められますか」という質問がありますが、期限が近いという事情だけでは足りません。納付税額、手元資金、不足額、他の調達手段を具体的に示す必要があります。
「他の相続人が反対していても申し立てられますか」という質問については、反対されていても申立て自体は可能です。ただし、家庭裁判所は反対理由も踏まえて必要性と他の相続人への影響を判断します。
「仮分割を受けると、最終的な遺産分割で有利になりますか」という質問については、仮分割はあくまで暫定的な資金確保の手続です。仮分割を受けたことによって、申立人が最終的に取得する遺産額そのものが増えるわけではありません。
民法909条の2と家事事件手続法200条3項の違い
裁判所を利用しない預貯金払戻し制度の上限額
民法909条の2は、各共同相続人が、家庭裁判所を利用せずに、金融機関へ直接払戻しを請求できる制度です。
払戻可能額は、原則として、次の計算式によります。
相続開始時の預貯金債権額 × 3分の1 × 払戻しを求める相続人の法定相続分
ただし、同一の金融機関から払い戻せる金額は、相続人一人当たり150万円が上限です。
例えば、一つの金融機関に3000万円の預金があり、相続人が子2人の場合、計算上は500万円となります。
3000万円 × 3分の1 × 2分の1 = 500万円
しかし、金融機関ごとの上限が150万円であるため、実際に単独で払い戻せるのは150万円までです。
相続税の納付額が大きい場合の制度選択
葬儀費用や当面の生活費など、必要な金額が150万円以内であれば、まず民法909条の2による払戻しを検討することが現実的です。
裁判所への申立てが不要であり、遺産分割調停が係属していなくても利用できるからです。
一方、相続税の納付額が数百万円、数千万円となる場合には、民法909条の2による払戻しだけでは不足することがあります。
その場合には、まず民法909条の2によって確保できる金額を確認したうえで、不足額について家事事件手続法200条3項の仮分割を申し立てることを検討します。
2つの制度を使い分ける際の判断基準
判断基準となるのは、主に必要額、期限、遺産分割事件の係属状況、他の相続人への影響です。
必要額が比較的少なく、早期に資金を確保したい場合には、民法909条の2が適しています。
必要額が150万円を大きく超え、既に遺産分割調停・審判が進んでいる場合や、これから調停を申し立てる必要がある場合には、家事事件手続法200条3項を検討します。
ただし、家事事件手続法200条3項では、資金の必要性と他の相続人の利益を害さないことについて、家庭裁判所の審査を受けなければなりません。
未分割のまま相続税を申告する場合の税務手続
未分割申告では適用できない相続税の特例
相続税の申告期限までに遺産分割が成立していない場合でも、相続税の申告と納付は必要です。
未分割の場合には、原則として、各相続人が民法上の相続分などに従って財産を取得したものとして税額を計算します。
ただし、当初の未分割申告では、分割されていない財産について、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などを適用できません。
その結果、最終的な遺産分割後よりも、当初申告時の納付税額が高くなることがあります。
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申告期限後3年以内の分割見込書を提出する重要性
遺産分割後に配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などを適用する予定がある場合には、当初の相続税申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付することが重要です。
この書面には、遺産が未分割となっている理由や、今後の分割見込みなどを記載します。
国税庁も、これらの特例を後から適用するための手続として、相続税申告書とともに分割見込書を提出するよう案内しています。
なお、申告期限から3年を経過しても、遺産分割調停・審判などのために分割できない場合には、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請」が必要となる場合があります。
遺産分割成立後に更正の請求を行う流れ
遺産分割が成立した結果、実際の取得額に基づく相続税が当初申告額より少なくなる場合には、更正の請求を行います。
更正の請求は、原則として、分割があったことを知った日の翌日から4か月以内に行う必要があります。
一方、実際の分割に基づく税額が当初申告額より多くなる場合には、修正申告が必要です。
遺産分割が成立しただけで、税務署が自動的に税額を計算し直して還付してくれるわけではありません。税理士に分割内容を速やかに共有し、期限内に必要な税務手続を行うことが重要です。
弁護士と税理士が連携すべき場面
預貯金債権の仮分割を相続税の納付に利用する場合、弁護士と税理士の連携が不可欠です。
弁護士は、遺産分割調停、仮分割の申立て、他の相続人との交渉を担当します。
税理士は、相続財産の税務評価、相続税額の試算、未分割申告、分割見込書の提出、遺産分割後の更正の請求や修正申告を担当します。
家庭裁判所への申立てでは、税理士が作成した相続税額の試算資料が、資金の必要性を裏付ける重要な資料となります。
反対に、税理士が申告準備を進めていても、遺産分割や預貯金の払戻しをめぐって相続人間に対立がある場合、税理士だけでは解決できません。早い段階で弁護士を交えて手続を設計する必要があります。
預貯金債権の仮分割を活用するメリット
遺産分割前でも相続税の納付資金を確保できる
最大のメリットは、遺産分割が成立する前であっても、相続税の納付資金を確保できる可能性があることです。
遺産分割調停は、対立の内容によっては長期化します。しかし、相続税の10か月という期限は、調停の進行を待ってくれません。
仮分割は、遺産分割そのものの結論を待たずに、期限のある資金需要へ対応するための手段となります。
延滞税や納付遅延のリスクを抑えられる
相続税を納期限までに納付できなければ、原則として延滞税が発生します。
預貯金の仮分割によって期限内に納税資金を確保できれば、延滞税や滞納処分などのリスクを抑えられます。
ただし、仮分割の申立てをしたこと自体によって、相続税の納付期限が延長されるわけではありません。
生活費・葬儀費用・相続債務の支払いにも対応できる
家事事件手続法200条3項は、相続税の納付に限った制度ではありません。
条文上、相続財産に属する債務の弁済や、相続人の生活費の支弁が必要となる場合が例示されています。葬儀費用、医療費、施設利用料、固定資産税、賃貸不動産の維持管理費などについても、具体的事情によっては預貯金を行使する必要性が認められる可能性があります。
ただし、支出の性質、金額、緊急性、誰が負担すべき費用なのかによって判断は異なります。
横浜・川崎・相模原など神奈川周辺にも当てはまるポイント
家事事件手続法200条3項は全国共通の制度であり、横浜、川崎、相模原、横須賀、小田原など、神奈川県内の相続にも適用されます。
ただし、どの家庭裁判所に申し立てるかは、単に不動産や預貯金が神奈川県内にあるかだけでは決まりません。
遺産分割調停については、原則として、相手方のうち一人の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意した家庭裁判所が申立先となります。
神奈川県内の相続であっても、相手方が県外に住んでいる場合には、県外の家庭裁判所が管轄となる可能性があります。
神奈川で預貯金債権の仮分割を検討すべきケース
相続人同士の対立で遺産分割が進まないケース
不動産の評価、生前贈与、預貯金の使い込み、寄与分などをめぐって相続人が対立している場合、遺産分割は短期間では終わらないことがあります。
相続税の納付期限までに遺産分割が成立しない可能性がある場合には、未分割申告と納税資金の確保を並行して検討する必要があります。
相続財産はあるが手元に納税資金がないケース
不動産や自社株などの資産は多いものの、相続人本人が自由に使える現金を持っていないケースです。
「遺産が多いのだから相続税を払えるはず」と考えられがちですが、遺産分割前の不動産や自社株は、相続人一人の判断では換金できないことがあります。
相続財産の金額と、納付期限までに実際に動かせる資金は別の問題です。
相続税の申告期限が迫っているケース
申告期限まで数か月しかなく、遺産分割協議の成立が見込めない場合には、早急な対応が必要です。
税理士に未分割申告の準備を依頼すると同時に、弁護士が調停と仮分割の申立てを準備する必要があります。
申告期限直前になってからでは、家庭裁判所の審理や金融機関の払戻手続が間に合わない可能性があります。
預貯金の払戻しについて他の相続人が反対しているケース
相続人全員が同意すれば、遺産分割前でも、金融機関所定の手続によって預貯金を払い戻せる場合があります。
しかし、他の相続人が払戻しに反対している場合には、全員の同意を前提とする通常の解約手続は進みません。
民法909条の2の上限額だけでは不足する場合には、遺産分割調停と家事事件手続法200条3項の仮分割を検討する必要があります。
まとめと結論(神奈川で相続税の納付資金に悩む方へ)
遺産分割が終わっていなくても、相続税の申告・納付期限は、原則として被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月です。
被相続人名義の預貯金を引き出せず、相続人自身にも十分な資金がない場合には、次の制度を検討します。
比較的少額であれば、民法909条の2による金融機関からの直接払戻しを検討します。
必要額が大きく、民法909条の2では不足する場合には、遺産分割調停・審判を申し立てたうえで、家事事件手続法200条3項による預貯金債権の仮分割を検討します。
ただし、仮分割は、相続税が発生するという理由だけで当然に認められる制度ではありません。
納付期限、相続税額、手元資金、不足額、遺産全体の状況、申立人の取得見込み、他の相続人への影響を、客観的な資料によって説明する必要があります。
相続税の納付期限が迫ってからではなく、遺産分割が長期化する可能性が判明した時点で、弁護士と税理士に相談することが重要です。
弁護士に相談する理由とお問い合わせ情報(神奈川エリアに対応)
遺産分割調停と仮分割申立てを一体的に進められる
預貯金債権の仮分割は、遺産分割調停・審判が係属していることを前提とする制度です。
そのため、仮分割だけでなく、遺産の範囲、評価、特別受益、寄与分、分割方法など、遺産分割事件全体を見据えて手続を進める必要があります。
弁護士に依頼することで、遺産分割調停の申立てと仮分割の申立てを一体的に設計できます。
必要性を裏付ける資料の収集と申立書作成を任せられる
家庭裁判所に仮分割の必要性を認めてもらうためには、相続税額、納付期限、申立人の資力、遺産総額、他の相続人への影響を整理しなければなりません。
弁護士は、どの事実が法的に重要なのかを整理し、預貯金残高証明書、税額試算、遺産目録、資力資料などを用いて申立書を作成します。
特に、法定相続分を超える金額を求める場合や、特別受益・寄与分などが争われている場合には、申立内容を慎重に組み立てる必要があります。
税理士と連携して相続税申告・納付まで対応できる
仮分割の申立ては家庭裁判所の手続ですが、その目的が相続税の納付である以上、税務手続との連携が欠かせません。
弁護士と税理士が連携することで、相続税額の試算、未分割申告、申告期限後3年以内の分割見込書、仮分割の申立て、納税、遺産分割成立後の更正の請求または修正申告まで、一連の流れを整理できます。
神奈川で遺産分割が止まり、相続税の納付資金を確保できずにお困りの方は、申告期限が迫る前にご相談ください。
遺産分割事件の状況、相続税の納付期限、預貯金残高などを確認し、民法909条の2による払戻し、家事事件手続法200条3項による仮分割、延納・物納などの選択肢を検討します。
■税理士の先生に相談しているのに相続が止まったら、どうすべき?
以上、「【神奈川の弁護士が解説】遺産分割前に相続税の納付資金を確保する方法」でした。
『止まった相続を終わらせる弁護士』大石誠
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【追記】
税理士・司法書士・行政書士の先生に依頼したのに、相続が止まったままではありませんか?
手続は進んでも話し合いが進まない。相続が止まるのには理由があります。
「止まった相続を終わらせる」という考え方はこちらにも掲載しました。



