遺留分の金額はどのように計算されますか?相続トラブルを防ぐための基本知識
- 誠 大石

- 2024年8月8日
- 読了時間: 3分
遺言書で特定の相続人にすべての財産を残すといった内容が記されていた場合、他の相続人は何ももらえないのでしょうか?実は、相続人には法律で最低限保証された「遺留分(いりゅうぶん)」という権利があり、この遺留分の金額がどのように計算されるのかは、相続実務で非常に重要なポイントとなります。
今回は、遺留分の基本的な意味から、具体的な計算方法、注意点まで、わかりやすく解説します。
結論:遺留分の金額は、相続財産の総額と法定相続分に基づいて計算される
遺留分は、法定相続人のうち、一定の者に認められた「最低限の取り分」です。金額は、被相続人が残した全財産(一定の贈与を含む)の評価額を基準として、法定相続分の一定割合で算出されます。
遺留分の計算方法
具体的には、以下の手順で計算します。
1. 遺留分の対象となる財産を算出する(遺留分算定の基礎財産)
= 被相続人の遺産 + 生前の贈与分(一定条件下) − 債務
2. 遺留分の割合を確認する
遺留分を請求できるのは配偶者、子、直系尊属(父母など)です。
兄弟姉妹には遺留分がありません。
割合は以下の通り:
- 配偶者と子:相続財産の1/2(この1/2を法定相続分に応じて分ける)
- 直系尊属のみが相続人:相続財産の1/3(これを法定相続分に応じて分ける)
3. 実際の遺留分額を計算する
たとえば、配偶者と子1人が相続人で、相続財産の合計が6,000万円の場合:
- 遺留分割合:1/2 → 3,000万円が遺留分全体
- 配偶者と子で法定相続分は各1/2 → 各1,500万円が遺留分額となる
よくある誤解
- 「遺言書があれば遺留分は無視できる」
→ これは誤りです。遺言書の内容が遺留分を侵害していれば、相続人は「遺留分侵害額請求(旧・遺留分減殺請求)」を行うことができます。
- 「現物(不動産など)での請求ができる」
→ 現行法では、遺留分の請求は原則「金銭」で行うのが基本です。不動産など現物で返還を求めることはできません。
実務での注意点
- 遺留分を主張するには、相手に対して「遺留分侵害額請求」の意思表示(内容証明郵便など)を行う必要があります。
- 請求には相続開始と遺留分侵害を知った時から1年以内という時効があるため、速やかな対応が必要です。
- 贈与や生命保険など、一見相続財産に含まれないものも、遺留分の対象になるケースがあるため注意が必要です。
- 生前贈与は「相続開始前10年以内の贈与」が対象となるなど、評価に関するルールもあります。
士業の支援でリスクを減らす
遺留分の計算や請求手続きは、一般の方にとって非常に複雑です。行政書士や弁護士などの専門家に相談することで、正確な計算やトラブル防止が可能になります。
弁護士は遺留分侵害額請求の交渉や訴訟にも対応可能であり、司法書士は相続登記手続きを通じて遺留分に関する調整をサポートできます。相続税が絡む場合は税理士との連携も有効です。
まとめ:遺留分は正しく理解して早めの対処を
遺留分は、法定相続人に保障された最低限の権利です。計算方法を理解しておくことで、遺言書の有無にかかわらず適切な対応ができます。相続人間の無用なトラブルを避けるためにも、遺留分を巡る対応は早めに、そして正確に進めることが大切です。
弁護士 大石誠
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