【メモ】身分行為による遺言の撤回
- 誠 大石
- 5月20日
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「身分行為が含まれるとして、遺言による財産処分行為がその後の生前身分行為と抵触するものとして撤回を認めるべきかどうかは問題である。終生の扶養を受けることを前提として養子縁組をしたうえ、その所有不動産の大半を養子に遺贈する旨の遺言をした者が、その後養子に対する不信の念を強くしたため、協議離縁をし、法律上も事実上も扶養を受けないことにした場合、その離縁により遺贈は撤回されたものであるとした最高裁判決がみられる。
これに対しては、撤回される行為とこれに抵触する行為とは同種のものであることを要し、例えば、先の遺言養子が後の生前養子により撤回されることは認められるが、異種の場合は撤回を擬制すべきものではないとする批判もみられる。」
(新版注釈民法(28)〔補訂版〕406ページ)
最判昭和56年11月13日民集35巻8号1251頁
「ところで、民法1023条1項は、前の遺言と後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を取り消したものとみなす旨定め、同条2項は、遺言と遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合にこれを準用する旨定めているが、その法意は、遺言者がした生前処分に表示された遺言者の最終意思を重んずるにあることはいうまでもないから、同条2項にいう抵触とは、単に、後の生前処分を実現しようとするときには前の遺言の執行が客観的に不能となるような場合のみにとどまらず、諸般の事情より観察して後の生前処分が前の遺言と両立せしめない趣旨のもとにされたことが明らかである場合をも包含するものと解するのが相当である。そして、原審の適法に確定した前記一の事実関係によれば、Dは、上告人らから終生扶養を受けることを前提として上告人らと養子縁組したうえその所有する不動産の大半を上告人らに遺贈する旨の本件遺言をしたが、その後上告人らに対し不信の念を深くして上告人らとの間で協議離縁し、法律上も事実上も上告人らから扶養を受けないことにしたというのであるから、右協議離縁は前に本件遺言によりされた遺贈と両立せしめない趣旨のもとにされたものというべきであり、したがつて、本件遺贈は後の協議離縁と抵触するものとして前示民法の規定により取り消されたものとみなさざるをえない筋合いである。」