1、4つの遺産分割の方法とは?
遺産分割の在り方について、民法906条は、「遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」としています。
遺産を分割する具体的な方法としては、①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割の4つがあります。
①現物分割
個々の相続財産の形状や性質を変更することなく分割する方法です。
「不動産①は相続人Aが取得する」「横浜銀行B支店の定期預金・普通預金は、相続人Cが取得する」といった形の分割も含まれます。
②代償分割
一部の相続人にその相続分を超える相続財産を現実に取得させ、その代わりに、相続分に満たない遺産しか取得しなかった他の相続人に対して債務を負担させる分割方法です。
相続人間で代償金によって、お互いの取得額の清算する遺産分割の方法です。
③換価分割
遺産の全部又は一部を売却等により換価して、その代金を配分する方法です。
例えば、不動産などの相続財産を売却し、得られた代金を法定相続人で分配する方法です。
④共有分割
物権法上の共有とする分割です。例えば、不動産(遺産)を、相続人で共有名義にするという分割方法です。
2、審判による遺産分割の優先順位
遺産分割は、遺言書があれば遺言書の方法が最優先され、
遺言書がない場合には、相続人同士で遺産分割協議による分割を試み、
それでも話し合いがまとまらない場合には、「遺産分割審判」といって裁判所による分割
がなされます。
裁判所は、①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割の順で優先順位をつけて、遺産分割を試みます。
というのも、④共有分割は、「遺産共有」から、「物権の共有」となるだけで、問題の解決を棚上げし、あるいは問題の解決を先送りとするだけですので、優先順位の低い遺産分割の方法です。
例えば、大阪高決平成14年6月5日【遺産分割審判に対する抗告事件】は、以下のように指摘しています。
「遺産分割は,共有物分割と同様,相続によって生じた財産の共有・準共有状態を解消し,相続人の共有持分や準共有持分を,単独での財産権行使が可能な権利(所有権や金銭等)に還元することを目的とする手続であるから,遺産分割の方法の選択に関する基本原則は,当事者の意向を踏まえた上での現物分割であり,それが困難な場合には,現物分割に代わる手段として,当事者が代償金の負担を了解している限りにおいて代償分割が相当であり,代償分割すら困難な場合には換価分割がされるべきである。
共有とする分割方法は,やむを得ない次善の策として許される場合もないわけではないが,この方法は,そもそも遺産分割の目的と相反し,ただ紛争を先送りするだけで,何ら遺産に関する紛争の解決とならないことが予想されるから,現物分割や代償分割はもとより,換価分割さえも困難な状況があるときに選択されるべき分割方法である。」
としています。
①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割の順序で検討すべきだといえます。
3 最後に
関連して、よくあるご質問に、「法定相続分で分割する場合には、遺産分割協議は不要ですよね?」というものがあります。
不動産を法定相続分で登記(法定相続登記)する場合に限って、確かに、遺産分割協議は不要ですが、この場合でも不動産を共有名義にするだけですので、結局は、その不動産をどのように分けるか?という問題は解決することができません。
以上、「4つの遺産分割の方法と、その優先順位とは?」でした。
相続人間で遺産分割の方法や内容について合意ができず困っているという場合は、ぜひ、ご相談ください。
弁護士 大石誠
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