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横浜の弁護士が解説!民事信託で空き家処分を円滑に進めるポイント

  • 執筆者の写真: 誠 大石
    誠 大石
  • 3月22日
  • 読了時間: 15分

はじめに

「親が住んでいた実家が空き家になったけど、どう処分すればいいのかわからない…」「相続人全員の同意が必要と言われたけど、なかなか話がまとまらない…」

このような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか?

相続した不動産、特に「実家」の処分は、多くの人にとって難しい問題です。相続人全員の合意が必要になったり、認知症リスクがあったりと、スムーズに進まないケースが少なくありません。

そこで注目されているのが 「民事信託(家族信託)」 です。この仕組みを使えば、相続後の空き家処分が驚くほどスムーズになります。

例えば、通常の相続では相続人全員の合意が必要ですが、民事信託を利用すれば 特定の相続人(受託者) が単独で売却を進めることができます。また、認知症になった場合でも売却できる仕組みを事前に整えておけるため、将来的なトラブルも防ぎやすくなります。

本記事では、横浜の弁護士 の視点から、「民事信託を活用した空き家処分のメリットと注意点」についてわかりやすく解説します。空き家問題で悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。


民事信託とは?基本的な仕組みを解説

「民事信託」と聞くと、なんだか難しそうに感じるかもしれません。しかし、基本的な仕組みはシンプルです。

たとえば、横浜市に住むAさん(80歳)は、自宅を長男に相続させたいと考えていました。しかし、認知症になった場合や、相続後にスムーズに売却できるかが不安でした。

そこで、生前に長男を「受託者」とする民事信託を設定しました。すると、Aさんが亡くなった後、長男が単独で家を売却できるようになり、相続手続きが大幅に簡略化されたのです。

こうしたケースで活用できるのが「民事信託(家族信託)」です。

では、具体的にどのような仕組みなのでしょうか?


民事信託(家族信託)とは?

民事信託とは、自分の財産(家・土地・預貯金など)を、信頼できる家族に託し、管理・運用してもらう仕組みです。

「信託」と聞くと投資信託などを思い浮かべるかもしれませんが、ここでいう信託は「相続・財産管理のための仕組み」です。

特に、空き家の処分をスムーズに進めるために使われるケースが増えています

例えば、

  • 相続発生後、すぐに家を売却したい場合

  • 認知症になったとき、家の管理や売却を家族に任せたい場合

  • 相続人が複数いるが、手続きを簡単にしたい場合

このような状況で、民事信託は非常に有効です。


信託の基本的な登場人物と役割

民事信託には、以下のような登場人物がいます。

役割

説明

具体例(横浜在住のBさんの場合)

委託者

財産を信託する人

Bさん(空き家の所有者)

受託者

財産を管理する人

長男Cさん(家を管理・売却する役割)

受益者

信託財産の利益を受ける人

Bさん(生前)、Cさん(Bさん死亡後)

つまり、Bさんは 生前に信託契約を結び、長男Cさんに自宅を託します。その結果、Bさんが亡くなった後、長男Cさんが遺産分割協議なしで家を売却できるというわけです。

また、Bさんが生きている間はBさん自身が住み続けることも可能です。このように、民事信託を活用すれば、生前・死後の財産管理を柔軟にコントロールできるのです。


民事信託を活用するメリット

民事信託を活用すると、相続発生後の空き家処分がスムーズになります。特に 「相続人の合意が必要」「相続登記が必要」「認知症リスクがある」などの問題を解決できるのが大きなメリットです。

たとえば、茅ヶ崎市内に住むDさん(70代)は、亡くなった夫の実家(横須賀市)を管理していました。しかし、自分が高齢になり、いずれ売却したいと考えていました。この場合、民事信託を利用することで、Dさんが亡くなった後も家族がスムーズに売却できるように準備 しておくことができます。

では、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?


相続人全員の合意なしで売却可能

通常、相続が発生すると、不動産を売却するためには 相続人全員の同意が必要になります。たとえば、親の家を兄弟3人で相続した場合、売却するには3人の合意が必要です。

しかし、民事信託を活用すれば、受託者(長男など)の判断だけで売却できるようになります。

具体例:川崎市のEさんの場合

川崎市のEさん(80代)は、川崎市内に持ち家がありました。長男と次男が相続人ですが、次男は海外在住で連絡が取りづらい状況。

通常なら 相続発生後、次男の同意が取れるまで売却がストップしますが、Eさんは生前に長男を受託者とする民事信託を設定。その結果、Eさんの死後、長男の判断だけで速やかに売却できました。

「相続人が複数いると話し合いが難航する」というケースでは、この仕組みが非常に有効です。


相続登記の手間が不要

通常、相続が発生すると、不動産を売却する前に相続登記(名義変更)を行う必要があります。しかし、民事信託を活用すると、受託者がそのままの名義で売却できるため、相続登記を省略できます。

具体例:横須賀市のFさんの場合

横須賀市在住のFさん(70代)は、横須賀市内の家を所有していました。亡くなった後、その家を売却して現金を子どもたちに分配したいと考えていましたが、相続登記に時間がかかることを心配していました。

そこで、長女を受託者とする民事信託を設定。その結果、Fさんが亡くなった後、長女は相続登記を待つことなく、そのままの名義で速やかに売却し、兄弟間で分配できました。

「売却までに時間がかかると、不動産の価値が下がるかもしれない」と心配な場合も、この方法が役立ちます。


認知症リスクへの対応が可能

最近、認知症による財産凍結の問題が注目されています。

親が認知症になると、家を売るには成年後見制度を利用しなければならず、裁判所の許可が必要になります。

しかし、民事信託を設定しておけば、親が認知症になっても、受託者(子どもなど)が売却の判断を行うことが可能になります。

具体例:藤沢市のGさんの場合

藤沢市のGさん(75歳)は、藤沢市内のマンションを所有していました。最近、認知症の兆候があり、将来的に売却が難しくなるのではないかと心配していました。

そこで、長男を受託者とする民事信託を設定。その結果、Gさんが認知症になった後も、長男が裁判所の手続きを経ることなくスムーズに売却できました。

「認知症対策」としても、民事信託は非常に有効です。


配偶者居住権の影響を調整可能

最近の民法改正で、「配偶者居住権」が認められるようになりました。これは、たとえば父親が亡くなった後、母親がその家に住み続けられるようにする仕組みです。

ただし、この制度があると、母親が亡くなるまで家を売却できないという問題が生じることがあります。そこで、信託契約の中で「配偶者が亡くなった後に売却する」ルールを決めておくことで、スムーズな処分が可能になります。

具体例:鎌倉市のHさんの場合

鎌倉市のHさん(80代)は、鎌倉市内の一軒家に住んでいました。

亡くなった後、配偶者が住み続けることは想定していましたが、いずれ売却して子どもたちに現金を分配したいと考えていました。

そこで、信託契約の中で

配偶者が生存中は住み続けられる

配偶者が亡くなった後、長男が売却して売却益を兄弟で分配するというルールを設定。

その結果、配偶者の生活を守りつつ、売却のタイミングを適切にコントロールすることができました。


まとめ:民事信託のメリット

相続人全員の合意なしで売却可能 → 遺産分割協議が不要

相続登記の手間が不要 → スムーズに売却可能

認知症リスクへの対応 → 財産の凍結を防げる

配偶者居住権とのバランスを取れる → 売却タイミングを調整可能

特に、横浜・川崎・藤沢などの都市部では 不動産価格が変動しやすいため、早期の売却が有利です。民事信託を活用することで、空き家を放置せず、適切なタイミングで売却できる仕組みを整えておくことが大切です。


民事信託を活用する際の注意点

民事信託は空き家処分をスムーズに進めるための有効な手段ですが、注意点を理解しておかないと、かえってトラブルの原因になることもあります。

例えば、三浦市に住むIさん(70代)は、自宅を長男に管理してもらうために民事信託を設定しました。しかし、次男が「長男ばかりが有利な契約ではないか?」と不満を抱き、後々トラブルに発展してしまいました。

こうした問題を避けるためにも、民事信託のリスクを理解し、適切な対策を講じることが大切です。


他の相続人の不満やトラブルリスク

民事信託では、通常「受託者(財産を管理する人)」を特定の相続人に指定します。

しかし、この設定によって 「不公平だ」「なぜ長男だけが財産を管理するのか?」という不満が出ることがあります。

具体例:川崎市のJさん一家の場合

Jさん(80代)は、川崎市中原区に一軒家を所有していました。長男を受託者とする民事信託を設定し、家の管理・売却を任せることにしました。

しかし、Jさんが亡くなった後、次男と長女が 「長男が勝手に家を売ってしまった!」と反発。信託契約に 売却益の分配ルールを明記していなかったため、兄弟間で争いになってしまいました。

対策:

  • 信託契約書の中で、売却後の分配ルールを明確に記載する

  • 事前に家族会議を開き、全員が納得した上で信託を設定する

家族全員が納得できる形で信託を設計することが、後々のトラブル回避につながります。


受託者の責任と負担が大きい

民事信託では、受託者が財産の管理・売却を担うため、責任が重いという側面があります。

例えば、建物の修繕が必要な場合、受託者が対応しなければなりませんし、適正な価格で売却しないと他の相続人からクレームが出る可能性もあります。

具体例:横須賀市のKさんの場合

横須賀市のKさん(77歳)は、横須賀市にある家を長男に管理してもらうため、民事信託を設定しました。

しかし、Kさんが亡くなった後、長男は売却活動を進めたものの、なかなか買い手がつかず、固定資産税や維持費がかさむ状況に…。

最終的に、早く処分するために相場よりも 安い価格で売却しましたが、これに対して次男と三男が 「適正な価格で売ったのか?」と不満を抱き、トラブルになりました。

対策:

  • 信託契約内で「合理的な価格で売却する」と明文化する

  • 売却期間を設け、「◯ヶ月以内に売れなければ、最低価格で売却可能」とルールを決める

  • 受託者に過度な負担がかからないよう、信託の目的を明確にする

受託者は「財産を守る責任」を負うため、事前に十分な話し合いが必要です。


買い手が見つからない場合の対応

不動産市場の状況によっては、すぐに買い手が見つからない こともあります。

特に 横浜・川崎などの都市部では売却しやすい ですが、郊外や築年数の古い物件では売却が難しくなることがあります。

具体例:藤沢市のLさんの場合

藤沢市のLさん(82歳)は、藤沢市内にある実家を民事信託で長女に託しました。

しかし、築50年以上の古い家だったため、なかなか買い手がつかず、最終的に更地にしてから売却することになりました。

このように、売却までに想定以上の時間や費用がかかるケースもあるため、事前に対策を考えておく必要があります。

対策:

  • 「一定期間売れなければ、○○円以上で売却する」といったルールを設定

  • 「リフォームや更地にする選択肢も考慮する」ことを契約に盛り込む

  • 地元の不動産会社と事前に相談し、売却プランを立てる


信託契約の設定費用がかかる

民事信託を利用するには、契約書の作成費用や登記費用が必要になります。一般的に、30万~50万円程度 の初期費用がかかることが多いです。

具体例:茅ヶ崎市のMさんの場合

茅ヶ崎市在住のMさん(75歳)は、茅ヶ崎市にある実家を民事信託で長男に管理してもらうことを考えていました。

しかし、司法書士や弁護士に相談したところ、契約書作成・登記費用を含めて約40万円の費用がかかる ことが判明。

Mさんは、「そこまで費用をかけるべきか?」 と悩みましたが、結果的に 「将来的な相続トラブルを防ぐための投資」と考え、契約を進めました

対策:

  • 弁護士や司法書士に相談し、適正な契約内容を作成する

  • 信託の目的に応じて、必要最低限の設定にすることでコストを抑える


まとめ:民事信託を活用する際の注意点

相続人の不満を防ぐため、分配ルールを明確にする

受託者の責任と負担を軽減する工夫をする

売却の見通しを立て、契約にルールを盛り込む

信託契約の費用を事前に把握し、納得の上で進める

民事信託は便利な制度ですが、適切に設計しないとトラブルの原因になります。横浜・川崎・藤沢など、神奈川県内で空き家の処分を検討している方は、専門家と相談しながら、最適な形で活用することが重要です。


【横浜の弁護士が解説】民事信託の具体的な活用例

ここまで、民事信託のメリットや注意点について解説してきました。「なるほど、便利な仕組みなんだな」と思っても、実際にどんな場面で役立つのかイメージしにくいかもしれません。

そこで、横浜・川崎・藤沢など神奈川県内で実際に起こり得るケース をもとに、民事信託の活用例を3つ紹介します。


ケース① スムーズな売却が必要な場合

状況

横浜市港北区に住むNさん(75歳)は、一戸建てを所有しています。

相続人は長男と次男の2人ですが、次男は海外に住んでおり、すぐに売却の相談ができるかわからない状況です。

Nさんは、自分が亡くなった後に家が放置されるのを避けるため、民事信託を活用することにしました。

信託の設定

長男を受託者に指定(管理・売却の権限を持つ)

Nさんが存命中は居住可能

Nさんが亡くなった後か、老人ホームの資金捻出が必要となった場合は、長男がすぐに売却できる

結果

Nさんが亡くなった後、長男は 次男の帰国を待つことなく、スムーズに売却を進めることができました。

通常であれば、相続人全員の合意が必要なため売却までに時間がかかりますが、民事信託によって 遺産分割協議を省略し、即時売却できました。

➡「相続人が遠方にいる」「売却まで時間をかけたくない」場合に有効な手段です。


ケース② 配偶者居住権を考慮した場合

状況

川崎市幸区に住むOさん(78歳)は、妻(75歳)と一緒に暮らしています。

Oさんは、自分が亡くなった後も 妻が安心して住み続けられるようにしたい と考えていますが、その後の空き家処分もスムーズに行いたいと考えています。

信託の設定

受託者は長男(管理・売却の権限を持つ)

Oさんが亡くなった後も、妻が引き続き居住できる(配偶者居住権を考慮)

妻が亡くなった後、長男が売却するルールを設定

結果

Oさんが亡くなった後、妻は変わらず自宅に住み続けることができました。

そして、妻が亡くなった後は、長男が速やかに売却を進め、兄弟で公平に分配しました。

➡「配偶者の住まいを守りつつ、将来的な売却も考慮したい」場合に最適 です。


ケース③ 売却代金の分配を明確化する場合

状況

藤沢市に住むPさん(80歳)は、築40年の一戸建てを所有しています。相続人は3人の子ども(長男・次男・長女)ですが、「家を売るタイミングで揉めるのでは?」 と心配していました。

信託の設定

長男を受託者に指定し、売却を担当

Pさんが亡くなった後、速やかに売却する

売却益を「長男40%・次男30%・長女30%」で分配するルールを明確化

結果

Pさんが亡くなった後、長男は 事前に決められた割合で売却益を分配し、相続トラブルを防ぐことができました。もし遺産分割協議をしていたら、売却益の分け方で揉める可能性がありましたが、事前にルールを決めていたためスムーズに解決しました。

➡「売却後の分配方法を明確に決めておきたい」場合に最適です。


まとめ:民事信託の活用例

スムーズな売却が必要な場合 → 海外在住の相続人がいてもすぐ売却できる

配偶者居住権を考慮する場合 → 配偶者の住まいを守りつつ、将来の売却を確保

売却代金の分配を明確にする場合 → 事前に決めておくことで相続トラブルを防止

特に 横浜・川崎・藤沢などの都市部では、不動産市場の変動が大きいため「適切なタイミングで売却できる仕組みを整えておく」ことが重要です。


まとめ – 空き家処分に民事信託を活用するポイント

空き家の処分は、相続手続きの中でも特に時間がかかり、トラブルが起きやすい部分です。「相続人全員の合意が必要」「相続登記が終わるまで売却できない」「認知症になったら財産が凍結される」など、スムーズに進めるにはさまざまなハードルがあります。

民事信託を活用すれば、こうした問題を解決し、空き家を速やかに売却できる仕組みを整えることができます。

今回紹介したポイントをおさらいすると、

相続発生後、すぐに売却できる仕組みを作れる

認知症になっても、家族が売却手続きを進められる

配偶者が住み続ける場合でも、売却のタイミングを調整できる

売却益の分配ルールを事前に決めて、相続トラブルを防げる

など、多くのメリットがあります。


空き家の民事信託を検討するなら弁護士に相談を

「民事信託が空き家の処分に役立つのは分かったけれど、実際に契約を結ぶとなると不安がある…」という方も多いのではないでしょうか?

確かに、民事信託はとても便利な制度ですが、契約の内容によっては相続人同士のトラブルを招いたり、意図しない結果を生んでしまうリスクもあります。たとえば、「受託者にどこまでの権限を与えるか」「売却益の分配をどうするか」など、慎重に決めなければならない点がいくつもあります。

こうしたリスクを防ぐためにも、弁護士に相談しながら契約を設計することが重要です。

特に、横浜や川崎などの都市部では、不動産市場が流動的であるため、売却のタイミングや信託の設計によって大きな差が生じることがあります。「相続が発生してから慌てる」のではなく、「早めに専門家と相談して、最適な形を整えておく」ことが、家族にとっても最善の選択となるでしょう。

空き家の処分や民事信託について気になることがあれば、まずは一度、相続や不動産に詳しい弁護士に相談してみてください。

横浜の弁護士が解説!民事信託で空き家処分を円滑に進めるポイントでした!


弁護士 大石誠

横浜市中区日本大通17番地JPR横浜日本大通ビル10階 横浜平和法律事務所

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横浜の弁護士が解説!民事信託で空き家処分を円滑に進めるポイントでした

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