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単身高齢者の賃貸契約|神奈川で安心して住むための死後事務委任とは

執筆者の写真: 誠 大石誠 大石

はじめに


単身高齢者の賃貸契約は難しい?死後事務委任で安心を確保

「老後は気軽に賃貸暮らしを楽しみたい」そう考える高齢者の方は多いかもしれません。しかし、現実には 高齢者の賃貸契約は簡単ではない のが実情です。

特に横浜市や川崎市のような都市部では、 単身高齢者の入居を断る賃貸物件が多い という問題があります。その理由の一つが、「万が一のときに、誰が契約を解約し、部屋を片付けるのか?」という不安です。

賃貸オーナーにとっては、入居者が亡くなった後に 契約をどう処理するかが大きな課題 になります。相続人がすぐに手続きをしてくれればよいのですが、相続人が見つからなかったり、対応を拒否されたりすると、部屋が長期間空いたままになり、経済的な損失を被る可能性があります。

こうした問題を解決する方法として、「死後事務委任契約」 という仕組みが注目されています。これは 生前に第三者と契約を結び、万が一のときに賃貸借契約の解約や残置物の処分を任せる制度 です。

「そんな契約があるなんて知らなかった!」と思われる方も多いかもしれませんが、実は 国土交通省も推奨する方法 で、きちんとしたモデル契約条項も公表されています。


『単身高齢者の賃貸契約|神奈川で安心して住むための死後事務委任とは』

本記事では、横浜市や川崎市で 高齢者が安心して賃貸契約を結ぶためのポイント を、弁護士の視点から詳しく解説します。


2. 賃貸オーナーの不安とリスク


賃貸オーナーが懸念する「解約手続き」と「残置物処理」

単身高齢者が賃貸住宅に住む場合、入居者本人だけでなく 賃貸オーナー(大家)にも大きなリスク があります。

特に、入居者が亡くなった場合、オーナーが直面するのは 「契約の解約手続き」と「部屋の片付け(残置物処理)」 です。通常、賃貸借契約は 借主が死亡しただけでは自動的に終了しません。そのため、契約を正式に解約し、部屋を原状回復するには、相続人の対応が必要になります。


相続人が対応してくれれば問題なし。でも…

入居者に相続人がいて、すぐに手続きを進めてくれれば問題ありません。しかし、現実には次のようなケースが発生しやすいのです。

  1. 相続人が不明、または連絡が取れない

    • 相続人が遠方に住んでいる

    • 家族関係が希薄で、そもそも相続人が誰かわからない

    • 相続人がいるかどうか調査するだけで時間がかかる

  2. 相続人が手続きを拒否する

    • 借金などの関係で相続放棄を選択した場合、部屋の契約解除に非協力的になることがある

    • 相続人に経済的・精神的な余裕がなく、対応が遅れる

  3. 相続人がいない場合の法的手続きが大変

    • 相続人がいない場合、オーナーは 家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を申し立てる必要がある

    • 清算人が決まり、実際に賃貸借契約が解約されるまでには 数か月~1年以上 かかることも

こうした事態になると、オーナー側は いつまでも次の入居者を募集できず、賃貸経営に大きな支障 をきたします。また、部屋の中に家具や荷物が残ったままの状態では、勝手に処分することもできません。


「孤独死=事故物件」というリスク

もう一つの問題は、「孤独死による事故物件化」です。もし入居者が 部屋の中で亡くなり、長期間発見されなかった場合、その物件は 心理的瑕疵(かし)物件 として扱われ、家賃の値下げや長期の空室リスクが生じます。

オーナーにとっては、こうしたリスクをできるだけ回避したいところです。そこで有効なのが、次に解説する 「死後事務委任契約」 の活用です。


3. 死後事務委任契約とは?


死後事務委任契約とは?

「死後事務委任契約」とは、生前に信頼できる第三者と契約を結び、自分が亡くなった後の事務手続きを任せる制度 です。

通常、賃貸借契約の解約や部屋の片付け(残置物処理)は相続人が行います。しかし、相続人がいない場合や、手続きをしてもらえない場合、オーナーにとって大きな問題となります。このような事態に備え、 事前に「死後事務委任契約」を締結しておけば、契約で指定した受任者(弁護士や管理業者など)が正式な手続きを行うことが可能 となります。

この契約を活用することで、

入居者は「自分が亡くなった後の手続きがスムーズになる」という安心感

オーナーは「相続人不明や手続き遅延によるリスクを回避できる」というメリットがあります。


国土交通省も推奨するモデル契約条項

死後事務委任契約の必要性が高まる中、国土交通省は「死後事務委任契約」に関するモデル契約条項を公開 しています。



このモデル契約条項では、次のような内容を定めることが推奨されています。

🔹 契約内容の明確化

 死後にどのような手続きを委任するのか(賃貸契約の解約・残置物の処理など)


🔹 受任者(手続きを行う人)の指定

 誰が手続きを担当するのか(弁護士・管理業者・居住支援法人など)


🔹 費用の確保

 手続きを行うための費用をどう負担するか


このように、事前にしっかり契約を結んでおけば、亡くなった後の賃貸借契約の解約や部屋の片付けがスムーズに進みます。


死後事務委任契約でできること

死後事務委任契約では、主に以下のような手続きを委任できます。

賃貸借契約の解約

部屋の明け渡し・残置物の処理

公共料金や未払い費用の精算

死亡届の提出や埋葬手続き(必要に応じて)

特に 「賃貸借契約の解約」 と 「残置物の処理」 は、オーナーが最も懸念する部分です。この契約を締結しておけば、入居者が亡くなった場合でも、スムーズに手続きが進むため、オーナー側の負担も大幅に軽減されます。


死後事務委任契約は、単身高齢者が安心して暮らせる住まいを確保するための重要な手段です。次に、この契約を 具体的にどのように活用すればよいのか を解説します。


4. 死後事務委任契約の活用方法


死後事務委任契約はどんな場合に有効?

死後事務委任契約は、特に 単身高齢者が賃貸住宅に住む場合に有効 です。高齢者の方が賃貸契約を結ぶ際、オーナーから 「万が一のときに誰が手続きをするのか?」 という点を懸念されることが多く、入居を断られるケースも少なくありません。

しかし、「死後事務委任契約を結んでいる」 ということを事前にオーナーに伝えれば、亡くなった後の契約解約や残置物処理が確実に行われることが保証されるため、オーナーも安心できます。


死後事務委任契約の具体的な活用手順

では、実際にこの契約をどのように活用すればよいのでしょうか?

基本的な手順は次の通りです。

  1. 契約の締結(入居前・入居時)

    • 入居を検討している高齢者が、弁護士や管理業者などと死後事務委任契約を締結

    • 賃貸借契約と同時に締結するのが理想的

  2. オーナーに契約の存在を伝える(必要に応じて)

    • 必須ではないが、オーナーに対して「死後事務委任契約を結んでいる」ことを伝えれば、入居審査がスムーズになる場合がある

  3. 万が一のときの対応(入居者の死亡)

    • 受任者(弁護士や管理業者など)が、契約に基づいて賃貸契約の解約手続きを行う

    • 残置物の処分を適切に進め、部屋をオーナーに返還

この流れを確立することで、オーナーは 「契約解約の遅延」や「残置物処理の負担」 を回避でき、入居者も 「自分の死後に迷惑をかける心配がない」 という安心感を得ることができます。


誰が受任者になれるのか?

死後事務委任契約を結ぶ際に 重要なのが「誰を受任者にするか」 です。

国土交通省のモデル契約条項でも、適切な受任者について言及されています。


🔹 推定相続人(子ども・親族)

 相続人がいる場合、最も自然な選択肢です。ただし、高齢の親族の場合、対応が難しくなることも


🔹 弁護士・司法書士

 専門家として契約を適切に処理できますし、法的知識が豊富で、トラブル回避に強い


🔹 管理業者・居住支援法人

 賃貸物件の管理を担当しているため、スムーズな対応が可能です。ただし、オーナーの利益を優先しすぎないよう、公正な対応が必要


⚠️ オーナー自身が受任者になることは基本的にNG!

 オーナーと入居者は賃貸借契約で利益相反の関係にあるため、契約の公平性を確保する観点から、オーナーが死後事務の受任者になることは 避けるべき です。


死後事務委任契約に含めるべき内容

契約を結ぶ際には、以下のポイントを明確に定めておくことが重要です。

賃貸借契約の解約手続き(家主への通知、解約届の提出)

残置物の整理・処分(遺品整理業者の手配など)

公共料金・未払い費用の精算(水道光熱費、家賃など)

葬儀や火葬、納骨に関する手続き(必要に応じて)

特に「残置物の処分」については、契約に 「適切に処理する方法」 を明記しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。


死後事務委任契約を活用することで得られるメリット

🔹 高齢者のメリット

「自分が亡くなった後に迷惑をかけることなく、賃貸契約を整理できる」

「オーナーの不安を解消できるため、入居審査が通りやすくなる」


🔹 オーナーのメリット

「入居者が亡くなった後の手続きをスムーズに進められる」

「相続人不明や手続きの遅延による空室リスクを防げる」

このように、死後事務委任契約を適切に活用すれば、単身高齢者とオーナー双方にとってメリットのある仕組み を作ることができます。


5. 死後事務委任契約を活用する際の注意点


注意点① すべてのケースで有効とは限らない

死後事務委任契約は便利な制度ですが、すべてのケースで有効とは限りません。特に次のような場合には、契約が無効と判断される可能性 があります。

🔹 相続人がいる場合、契約の有効性が争われることがある

 死後事務委任契約によって、相続人の権利が制限されるケースがあります。相続人が契約内容に異議を唱えた場合、トラブルになる可能性


🔹 民法90条・消費者契約法10条に違反するケースも 

 不当に入居者に不利な契約 であると判断された場合、無効となることがあります。国土交通省のモデル契約条項を参考にし、適切な契約内容にすることが重要。実際に契約を締結する際には、弁護士に相談しながら進めるのが安心 です。


注意点② 受任者の選定は慎重に

前章でも説明したように、受任者(契約を実行する人)の選定は 非常に重要 です。特に次の点に注意しましょう。


オーナー自身を受任者にするのは避ける

信頼できる弁護士・管理業者・居住支援法人を選ぶ

 特に管理業者が受任者になる場合、オーナー側の利益を優先しないよう注意

報酬や費用の取り決めを明確にする

 受任者に対する報酬を契約書に明記しておくことで、後々のトラブルを防ぐ

「誰に何を委任するのか?」を明確にし、納得できる契約を結ぶことが大切です。


注意点③ 死後の費用をどう確保するか?

死後事務委任契約を実行するには、一定の費用がかかります。例えば、以下のような支出が考えられます。

💰 賃貸契約の解約手続き費用(事務手数料、郵送費など)

💰 残置物の処理費用(遺品整理業者の料金)

💰 未払いの公共料金や家賃の清算

💰 受任者への報酬

この費用を誰がどのように負担するのかを 事前に決めておかないと、契約が実行されない可能性 があります。


📌 費用確保の方法

  1. 契約時に一定額を預託する(弁護士・管理業者に預ける)

  2. 生前に信託契約を活用する(遺言信託など)

  3. 生命保険の死亡保険金を指定する(受任者を受取人に設定)

契約が実際に機能するよう、費用の準備方法を決めておくことが重要 です。


注意点④ 賃貸借契約書との整合性を確認する

死後事務委任契約を結ぶ際には、賃貸借契約書の内容とも矛盾がないか確認 しましょう。

例えば、賃貸借契約書に

❌ 「借主が死亡した場合、契約は即時終了する」と記載がある場合、死後事務委任契約による解約手続きが不要となる可能性があります。

📌 事前に確認すべきポイント

死亡時の契約終了条件はどうなっているか?

残置物の処理に関する条項はあるか?

契約解除の方法が明確に定められているか?

万が一、賃貸借契約書と死後事務委任契約の内容に矛盾がある場合は、どちらが優先されるかトラブルになる可能性 があります。

事前に弁護士にチェックしてもらい、契約内容を適切に調整することが大切 です。


まとめ:死後事務委任契約は慎重に活用を


死後事務委任契約は、単身高齢者と賃貸オーナーの双方にメリットがある

ただし、相続人の権利との兼ね合いや契約の適法性をしっかり確認することが重要

費用の確保や受任者の選定を適切に行わないと、契約が実行されないリスクもある

賃貸借契約書の内容との整合性をチェックし、矛盾がないようにする

死後事務委任契約を適切に活用すれば、高齢者が安心して賃貸住宅に住める環境が整います。しかし、不適切な契約を結んでしまうと、逆にトラブルを招く可能性もあるため、慎重に進めることが重要 です。


6. まとめ:神奈川で安心して住むために


横浜市や川崎市のような都市部では、単身高齢者が賃貸住宅を借りる際のハードルが高いのが現状です。特に「万が一のときに誰が契約を解約し、部屋を片付けるのか?」という問題が、賃貸オーナーにとって大きな懸念となっています。


「死後事務委任契約」 は、こうした不安を解消するための有効な手段の一つです。この契約を活用することで、高齢者は安心して住まいを確保でき、オーナーも契約解除の遅延や空室リスクを防ぐことができます

ただし、契約を適切に活用するには、

相続人の権利との調整

受任者の慎重な選定

費用の確保

賃貸借契約書との整合性

など、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。

神奈川県で安心して賃貸住宅に住むためには、契約内容を慎重に検討し、弁護士など専門家のアドバイスを受けることが大切 です。次の章では、具体的にどのようなサポートを受けられるのか、弁護士に相談するメリットについて解説します。


7. 弁護士に相談するメリットとお問い合わせ


「死後事務委任契約を活用したいけれど、どう進めればいいかわからない…」そんなときは、弁護士に相談するのが最も確実な方法 です。

死後事務委任契約は法律的に複雑な部分が多く、契約の内容によっては

相続人の権利を侵害するリスク

契約が無効と判断される可能性

賃貸借契約書と矛盾が生じる問題

などが発生することもあります。


弁護士に相談すれば、適法かつ実効性のある契約を作成 でき、入居者とオーナー双方にとって最適な解決策を提案してもらえます。

契約の適正性をチェック(民法・消費者契約法に違反しないか)

賃貸借契約との整合性を確認(オーナーとのトラブルを未然に防ぐ)

受任者の選定や費用の準備方法をアドバイス(適切な管理業者・居住支援法人の紹介)

神奈川県(横浜市・川崎市)で死後事務委任契約を活用し、安心して賃貸住宅に住みたい方は、ぜひ一度弁護士に相談してみてください。


弁護士 大石誠

横浜市中区日本大通17番地JPR横浜日本大通ビル10階 横浜平和法律事務所

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電話:〔045-663-2294


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