【神奈川県対応】弁護士が解説する成年後見制度のリアルと対策方法
- 誠 大石
- 4月10日
- 読了時間: 12分
この記事で分かること
神奈川県で増加する認知症と資産凍結の実情
成年後見制度(法定後見・任意後見)の違いと仕組み
弁護士が見た、実際のトラブル事例とその対処法
早期に備えるための具体的な手続きとポイント
神奈川県で成年後見制度を活用する際の相談先
高齢化が進む神奈川県で注目される成年後見制度とは
「もし、親が急に認知症になってしまったら…」そう考えたことはありませんか?高齢化が進む現代、特に高齢者人口の多い神奈川県では、認知症に伴う「資産凍結」の問題が深刻化しています。突然、親名義の銀行口座が使えなくなったり、介護施設の契約や医療手続きがスムーズにできなくなる――そんなケースが、実際に数多く発生しているのです。
こうした事態を防ぐ制度として、今あらためて注目されているのが「成年後見制度」です。これは、判断能力が低下した方に代わって、財産の管理や契約などを支援する制度で、「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。
本記事では、神奈川県の実情や最新統計データをもとに、弁護士の視点から成年後見制度の仕組み・メリット・注意点をわかりやすく解説していきます。大切なご家族の「もしも」に備え、早めの対策を検討したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
神奈川県での成年後見制度の利用実態
神奈川県は全国でも高齢者の割合が高い地域のひとつであり、認知症の発症率やそれに伴う法的トラブルも増加傾向にあります。
こうした背景から、成年後見制度の利用ニーズが年々高まっているのが実情です。
統計から見る神奈川県の後見制度利用状況
最高裁判所が公表した最新の統計資料(令和6年版)によれば、成年後見制度の開始理由のうち、認知症が占める割合は全国で約61.9%にのぼります。
これは、約10件中6件以上が「認知症による判断能力の低下」がきっかけであることを示しています。
神奈川県も例外ではなく、特に80歳以上の高齢者人口の割合が顕著な地域(横浜市、川崎市、相模原市など)では、後見制度の利用率が非常に高い傾向にあります。
加えて、令和6年時点で成年後見制度の利用者数は全国でおよそ25万人。
神奈川県内でも、家庭裁判所を通じて年間数千件単位での後見開始申立てが行われていると推定され、もはや制度は一部の人だけのものではありません。
高齢者人口が多い神奈川だからこそ必要な備え
神奈川県では、地域差はあるものの高齢単身世帯や認知症高齢者の増加が大きな社会問題となっています。中でも、子どもが県外に住んでいる、親が一人暮らしをしている、といったケースでは、本人の意思が確認できなくなった瞬間に金融機関が口座を凍結し、生活費の引き出しや医療費の支払いが困難になるという事例が少なくありません。
このような場面で頼りになるのが、成年後見制度です。判断能力が失われたあとでも、後見人を通じて財産管理や契約が可能になるため、本人や家族の生活基盤を守るうえで非常に重要な役割を果たす制度といえるでしょう。
また、神奈川県内では自治体や地域包括支援センター、司法書士・弁護士会などが連携し、後見制度に関する相談窓口を設ける動きも広がっています。
これは制度の普及が進む一方で、利用者が複雑な手続きや制度の違いに戸惑うケースが多いためです。
成年後見制度とは?法定後見と任意後見の違い
成年後見制度とは、判断能力が低下した人(例えば認知症の高齢者など)を支援するために設けられた法的な制度です。本人の代わりに、財産管理や契約行為を行う「後見人」を選任し、生活の安定と法的トラブルの防止を図るのが主な目的です。
この制度には大きく分けて「法定後見」と「任意後見」の2つがあり、それぞれに仕組みや使い方が異なります。
ここでは弁護士の視点から、それぞれの制度の特徴と違いをわかりやすく解説します。
弁護士が解説する法定後見の仕組みと注意点
法定後見制度は、すでに本人の判断能力が低下した状態になったあとに、家庭裁判所に申し立てをして開始される制度です。申し立てを受けた家庭裁判所が、本人の状況や申立人の意見を踏まえて後見人を選任します。
主な特徴:
申立件数は年間約2万8,000件(全国統計)
選任される後見人の約8割以上が弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門職
一度始まると、原則として本人が亡くなるまで継続する(途中解約は原則不可)
この制度の大きな利点は、判断能力が既に失われていても申立てが可能であり、口座凍結後でも後見人がいれば生活費や医療費の支払いを行える点です。
また、後見人には「取消権」が与えられるため、詐欺や悪質商法の被害から本人を守る法的手段としても有効です。
一方で、後見人に専門職が選ばれた場合には月額2~5万円程度の報酬が発生し、これが本人の財産から支払われる点には注意が必要です。また、裁判所の監督下に置かれるため、自由な資産運用や大きな財産移動は制限されることもある点も押さえておくべきでしょう。
任意後見でできる柔軟な資産管理とは
任意後見制度は、本人の判断能力がまだ十分にあるうちに、自ら信頼できる後見人(任意後見人)を選び、将来のために契約を結んでおく制度です。
つまり、「もし認知症になったら、この人に自分の代わりを任せたい」と自分の意思で決めておける事前の準備型制度と言えます。
主な特徴:
判断能力があるうちに契約する必要がある(遅れると使えない)
後見人を自分で選べる(家族、親族、信頼できる知人、専門家など)
財産管理の内容や範囲を契約書に具体的に定めることが可能
実際に任意後見が「開始」されるのは、後見監督人が選任された後(家庭裁判所の関与あり)
この制度の大きなメリットは、自分の希望を反映した形で資産管理を行ってもらえるという点です。
「この人なら安心して任せられる」と思える相手を選び、その人に必要な範囲で管理を任せることができるため、柔軟性が非常に高い制度といえるでしょう。
また、任意後見契約には弁護士など専門家の関与が推奨されており、契約内容に将来の医療・介護・不動産管理・銀行取引などに関する詳細な指示を盛り込むことも可能です。
注意点:
判断能力があるうちに契約しないと利用できない
任意後見が実際に効力を持つためには、後見監督人の選任が必要で、ある程度の手続き時間と費用がかかる
曖昧な契約内容にしてしまうと、将来トラブルや誤解を招く恐れがある
したがって、任意後見を検討する際は、専門家による契約内容のチェックや助言を受けることが非常に重要です。契約の質が、その後の支援の質を大きく左右するといっても過言ではありません。
神奈川で実際に起こる成年後見の事例と対応策
制度の説明だけでは、なかなか自分ごととして捉えづらい成年後見制度。
しかし、神奈川県内では実際に多くの家庭が資産凍結や判断能力の低下によるトラブルに直面しており、その解決手段として成年後見制度が活用されています。
ここでは、弁護士として相談を受けた具体的なケースをもとに、対応策や注意点をわかりやすく解説します。
弁護士が見た資産凍結のリアルなトラブル
ある日、横浜市在住の60代女性Aさんから、「母の銀行口座が突然凍結され、生活費が引き出せなくなった」という相談がありました。
90代の母親は軽度の認知症で一人暮らし。通帳や印鑑も把握していたにもかかわらず、銀行側が窓口対応時に認知症の疑いを感じ取り、リスク回避のために凍結を実施したとのことでした。
このようなケースでは、たとえ家族であっても本人の口座から自由にお金を引き出すことはできません。
結果的に、家庭裁判所に法定後見の申立てを行い、弁護士が後見人に就任。無事、生活費や介護サービス費用の支払いが可能となりましたが、後見が始まるまでの2カ月間は金銭面で非常に厳しい状況だったといいます。
この事例からもわかるように、認知症による資産凍結は突然やってくる現実的なリスクであり、家族であっても事前に準備をしていなければ、すぐには対応できません。
早期対策で防げるトラブルとその方法
このようなトラブルを回避するには、やはり「任意後見制度による事前の備え」が最も効果的です。
たとえば、川崎市に住む70代男性Bさんは、将来的な認知症リスクを見越して、元気なうちに息子との間で任意後見契約を締結しました。
契約内容には、不動産の賃貸管理、医療契約、銀行取引の方針などが具体的に盛り込まれており、いざ認知機能が低下した際にも、混乱することなく息子がスムーズにサポートを開始できたそうです。
このように、本人の意思が明確なうちに準備しておくことで、資産の保護だけでなく家族間のトラブル防止にもつながります。特に神奈川県のように高齢者単身世帯が多いエリアでは、信頼できる第三者や家族との任意後見契約は非常に有効です。
また、制度の内容や手続きが複雑に感じる方には、弁護士や司法書士など専門家への相談が安心です。例えば契約書の文言をどうするか、万が一後見人が途中で辞退したらどうするかなど、具体的な運用まで視野に入れて設計することで、より安全で確実な備えができます。
神奈川県民が今すぐ考えるべき成年後見対策のポイント
成年後見制度は、「いつか必要になるかもしれない」ではなく、「いざという時にすぐに使えるようにしておく」ことが重要です。
特に高齢者の多い神奈川県では、判断能力の低下に伴うトラブルや資産凍結がすでに多発しており、備えの有無が生活の安心感を大きく左右します。
ここでは、神奈川県民が押さえておくべき具体的な対策のポイントを、弁護士の視点からご紹介します。
任意後見のタイミングと契約の進め方
任意後見は、「判断能力があるうちに」契約をしておかなければ使えません。「まだ元気だから大丈夫」と思っていても、認知症はある日突然始まる可能性があります。そのため、元気な60代〜70代のうちに備えておくのが理想です。
契約の基本的な流れ:
任意後見人(家族、知人、専門家など)を選定
公証役場で「任意後見契約公正証書」を作成
判断能力が低下した時点で、家庭裁判所に後見監督人の選任申立て
任意後見人が契約に基づいて財産管理を開始
任意後見契約では、「どこまで任せるか」「どのように管理するか」を具体的に取り決めることができます。
たとえば、「不動産は売却しないで管理だけしてほしい」「医療や介護の内容はこのように進めてほしい」など、本人の希望を明確に残すことができる点が大きな魅力です。
ただし、契約内容が不明瞭だと、後になって親族間での争いや実務上の混乱を招くことがあります。専門家によるチェックを受けることで、安心かつ実効性のある契約にすることができます。
法定後見の申立て手続きと必要書類
判断能力の低下がすでに見られる場合には、速やかに法定後見の申立てを行う必要があります。特に、銀行口座の凍結や医療・介護契約の停止などが発生している場合には、法定後見の開始が唯一の対処手段となるケースも多いです。
申立ての基本的な流れ:
家庭裁判所への申立書提出(本人の住所地の管轄)
医師の診断書(判断能力の評価が必要)
本人や申立人の戸籍謄本・住民票などの添付書類
審理・審問のうえ、後見人の選任
後見開始の審判確定(およそ1〜2カ月程度)
後見人には、家族が選ばれることもありますが、神奈川県内の実情としては専門職(弁護士、司法書士等)が選任される割合が約80%以上を占めています。
これは、家庭裁判所が中立性・専門性を重視しているためで、必ずしも「家族=後見人」とはならない点に注意が必要です。
法定後見は「最後の砦」であり、万が一のときにも安心できる制度ですが、報酬や管理の制約があることを理解した上で利用することが大切です。
神奈川県民にとって、成年後見制度は「いつか使うもの」ではなく、“今から考えるべき生活防衛策”です。任意後見と法定後見、それぞれの使いどころを見極め、自分や家族に最適な対策を取っていくことが、将来の安心につながります。
まとめと結論|成年後見制度は「もしも」の備え
成年後見制度は、判断能力が低下したときに「自分の代わりに大切なことを決めてくれる人」を法的に決めておく仕組みです。特に認知症による資産凍結や契約トラブルが増えている今、神奈川県のような高齢化が進む地域では、もはや他人事ではありません。
法定後見は、判断能力が失われた後の“緊急対応”に強く、任意後見は元気なうちに契約を結んでおく“事前予防策”として有効です。
それぞれにメリット・デメリットがあるからこそ、自分や家族にとってどちらが適しているかを、早い段階から検討することが重要です。
将来の不安に備えるには、「早すぎるかな?」と感じるくらいでちょうどいいのです。制度を正しく理解し、活用することで、自分の財産と尊厳、そして家族の安心を守ることができます。
神奈川県で成年後見制度を相談するなら弁護士へ
成年後見制度は、本人の人生や家族の生活に深く関わる重要な制度です。しかし実際には、「何から始めたらよいかわからない」「法定後見と任意後見、どちらを選べばいいのか判断できない」と悩まれる方が少なくありません。
そんな時こそ、法律と家庭事情の両面を理解している弁護士に相談することが大切です。弁護士なら、後見制度の選び方はもちろん、必要書類の準備、公正証書の作成サポート、裁判所への申立て手続きまで、一貫してサポートが可能です。
また、神奈川県内には地域に根差した法律事務所が多数あり、地元の事情に詳しい弁護士による柔軟な対応が期待できます。制度のことを「調べるだけ」で終わらせず、ぜひ一歩踏み出して、信頼できる専門家にご相談ください。
あなたとご家族の安心を守るために、早めの行動が未来を変える第一歩になります。
【神奈川県対応】弁護士が解説する成年後見制度のリアルと対策方法でした!
弁護士 大石誠
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