●適用法
法の適用に関する通則法第36条「相続は、被相続人の本国法による。」⇒準拠法は韓国民法
準拠法は韓国民法であるものの、日本に居住し、財産が日本にある場合、相続放棄の管轄は、日本の家庭裁判所になる(韓国民法を前提に。被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所)。
※韓国に債務があるときは、韓国の家庭裁判所に対して相続放棄の手続を取る必要がある。
●相続人の範囲・順位
第1順位 直系卑属
「卑属」がポイント。子が相続放棄をしても、孫がいる場合には孫に相続権が発生する。
孫まで相続放棄をして初めて第2順位が相続人となる。
⇒孫の有無まで確認する必要がある。
第2順位 直系尊属
第3順位 兄弟姉妹
※配偶者がいるときは、配偶者が優先して、単独で相続人となる。
第4順位 四親等内の傍系血族
日本法と異なり、おじ・おば・いとこも相続人となる。四親等内の傍系血族が複数人いる場合、親等の近い者が先順位となる。
※配偶者がいるときは、配偶者が優先して、単独で相続人となる。
配偶者
第1順位、第2順位の者がいるときは、その相続人と同順位で相続人となる。
第1順位、第2順位の者がおらず、かつ、第3順位以下の者がいる場合、配偶者【のみ】が相続人となる。
●法定相続分
配偶者の相続分は、直系卑属・直系尊属の5割を加算する。
例えば、子ども3人+配偶者の組み合わせでは、子:子:子:配偶者=1:1:1:1.5 の割合になる。
また、直系尊属1人+配偶者の組み合わせでは、親:配偶者=1:1.5 の割合となる。
●相続放棄の起算点
日本法とは異なり、厳格に判断される。
「相続発生の事実と自己が相続人であることを知った日から起算して3か月以内」である。
死亡を知り、時間を経て相続債務が判明したような場合に起算点を動かせない。
なお、韓国民法においても熟慮期間の期間伸長の申立てが可能だが、どの程度の期間伸びるかは裁判所の判断による。
●相続人確定
韓国では戸籍制度が違憲・廃止となったため、相続人確定にあたっては「家族関係証明書」という書類が必要。
委任状があれば領事館にて取得可能(これは職務上請求ではない)
また家裁には家族関係証明書を日本語訳したものを提出する必要がある。
●二次相続対策
被相続人が自己の相続について日本法を準拠法とする旨の遺言を作成すると、相続放棄を含む相続は日本法が準拠法となる。
⇒日本での生活が長い、日本で生まれ育った韓国籍の方は、日本法を準拠法とする旨の遺言書を作成することが極めて重要
その他、同様に、被相続人に適用される相続法を選択できる国の例としては、ドイツ、イタリア、スイスがある。
●中国法との相違点
中国は、財産の存在する国によって複数の国の法律が適用される(相続分割主義)を採用している。
在日の中国籍の方が亡くなった場合、日本の遺産は日本法で処理される。
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