相続した不動産は、売るか貸すかだけでは決められない
- 誠 大石

- 4 日前
- 読了時間: 5分
相続した不動産をどうするか。
これは、想像以上に難しい問題です。
「とりあえず残しておこう」「貸せば家賃が入るだろう」「不動産会社から売却を勧められた」
こうした理由で方針を決めることもあります。しかし、十分に検討しないまま決めてしまうと、あとから後悔する可能性があります。
相続した不動産の扱いは、単純な「売却か賃貸か」という二択ではありません。
私が大切だと考えているのは、次の二つを分けて考えることです。
一つは、不動産そのものの可能性です。
もう一つは、相続人や家族の状況です。
不動産として収益が見込めるか。管理の負担はどれくらいあるか。相続人は何人いるのか。家族は将来、その不動産を使う予定があるのか。
こうした点を整理したうえで、総合的に判断する必要があります。
売却したほうがよい不動産
売却を検討しやすいのは、空き家のまま使う予定がない場合です。
遠方にあって管理が難しい。老朽化しており、大きな修繕費がかかる。相続人が複数いて、共有を続けたくない。
このような場合は、売却によって問題を整理できることがあります。
売却の大きなメリットは、不動産を現金に換えられることです。
現金になれば、相続人の間で分けやすくなります。固定資産税や修繕費、日常的な管理の負担からも離れられます。
特に、相続人が複数いる場合は、現金化することで公平に分けやすくなります。
一方で、一度売却すれば、その不動産から将来得られたかもしれない家賃収入や値上がり益は得られません。
今売るべきかどうかは、現在の価格だけでは判断できません。周辺の将来性や需要も含めて考える必要があります。
賃貸に向いている不動産
駅から近く、周辺の賃貸需要が安定している。築年数が比較的新しい。あるいは、すでにリフォームされている。
このような不動産は、賃貸を検討しやすいといえます。
将来、自分や家族が使う可能性がある場合も、すぐに売らず、賃貸しながら保有する考え方があります。
ただし、注意しなければならないことがあります。
賃貸に向いている不動産は、売却した場合にも比較的高い価格がつきやすい傾向があります。
そのため、不動産会社から「今なら高く売れます」と言われただけで、売却を決めるのは早いかもしれません。
本当に比較するべきなのは、今売却した場合の手取り額と、保有を続けた場合に得られる利益です。
保有する場合は、家賃の総額だけを見てはいけません。
固定資産税、管理委託費、修繕費、保険料、空室期間などを差し引き、実際にいくら残るのかを確認する必要があります。
家賃が月十万円入るとしても、毎月十万円がそのまま利益になるわけではありません。
設備が故障することもあります。入居者が決まらない期間もあります。入居者とのやり取りや、管理会社との調整も必要です。
賃貸を始めるということは、単に不動産を持ち続けることではありません。
相続人が、賃貸経営者になるということです。
この認識を持たずに始めると、想像していた以上に負担を感じることがあります。
すぐに決めないという選択肢
売却にも賃貸にも、すぐには決められないことがあります。
家財の整理が終わっていない。相続人の間で話し合いがまとまっていない。将来、実家に戻る可能性がある。思い出があり、まだ売る決心がつかない。
このような状況で、無理に結論を出す必要はありません。
一定期間、専門業者に空き家の管理を依頼する方法もあります。
定期的な換気や通水、清掃、郵便物の確認などを任せながら、家族で考える時間を確保します。
相続した直後は、気持ちの整理がついていないこともあります。その段階では、「売るのと貸すのは、どちらが得か」という議論だけでは、答えが出ないこともあります。
ただし、空き家管理を選ぶ場合には、期限を決めておくことが重要です。
いつまでに方針を決めるのか。その間に、価格査定や賃料査定、修繕費の見積もりなど、何を確認するのか。
ここを決めずに保留すると、空き家管理が単なる問題の先送りになってしまいます。
判断するための三つの質問
相続不動産の扱いに迷ったときは、三つの質問を確認すると考えやすくなります。
一つ目は、保有を続けて、本当に利益が出るかということです。
想定家賃だけでなく、空室や税金、管理費、修繕費まで含めて収支を計算します。
将来売却するときに、買ってくれる人がいるかという出口も考えておく必要があります。
二つ目は、将来、その不動産を使う予定があるかということです。
「いつか使うかもしれない」という理由だけでは、保有を続ける根拠としては弱いと考えています。
誰が、いつから、どのように使うのか。
そこまで具体的に決まっていなければ、利用しない不動産の維持費だけを払い続けることになるかもしれません。
三つ目は、家族全員が理解し、納得しているかということです。
不動産は、現金のように簡単には分けられません。
誰が管理するのか。費用を誰が負担するのか。売却するときは誰が判断するのか。
こうした点を決めないまま共有すると、後から意見が合わなくなることがあります。
さらに相続が発生すれば、所有者の人数が増え、売却や活用が難しくなる可能性もあります。
なんとなく残すことが、最も危険
相続不動産には、売却、賃貸、空き家管理という選択肢があります。
どれか一つが、必ず正しいわけではありません。
感情だけで決める必要はありません。しかし、数字だけで決める必要もないと思います。
大切なのは、不動産としての採算性と、家族の将来設計を分けて整理することです。
収益が見込める不動産でも、家族が管理を負担に感じるのであれば、売却したほうがよい場合があります。
反対に、すぐに売ったほうが得に見えても、将来の利用予定や家族の思いを考えれば、一定期間残す判断もあります。
最も避けたいのは、明確な理由がないまま、なんとなく残し続けることです。
維持費や管理負担は、結論を出さない間にも発生します。
売るのか、貸すのか、しばらく管理するのか。
それぞれのメリットとリスクを整理し、家族にとって後悔の少ない選択をすることが大切です。
『止まった相続を終わらせる弁護士』大石誠
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