家族信託か任意後見か?横浜で弁護士が教える判断基準と注意点
- 誠 大石
- 8月18日
- 読了時間: 10分
更新日:8月20日
認知症による資産凍結リスクと、生前対策の必要性(横浜の事例を交えて)
「親が認知症になったら、銀行口座って使えなくなるの?」「不動産を売るにも、成年後見が必要って本当?」——
こうした不安の声は、横浜で相続や老後対策の相談を受ける中でも、よく耳にします。高齢化が進むいま、親の財産や生活をどう守るかは、まさに“我が事”として向き合うべきテーマです。
なかでも「家族信託」と「任意後見制度」は、認知症による資産凍結を防ぐ代表的な対策。いずれも有効な制度ですが、その仕組みや目的は大きく異なります。
「うちの場合、どちらを選ぶべき?」「併用するべきケースってあるの?」と迷う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、横浜の弁護士として多数の相談を受けてきた経験をもとに、家族信託と任意後見制度の違いや、それぞれの選び方について、わかりやすく解説します。
あなたやご家族にぴったりの選択ができるよう、具体的な判断基準や注意点もお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
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横浜での家族信託と任意後見制度の基礎知識
まずは、「家族信託」と「任意後見制度」がそれぞれどんな制度なのか、その基本的な仕組みと目的を押さえておきましょう。
【家族信託とは?仕組みと活用シーンを弁護士が解説】
家族信託とは、信頼できる家族に自分の財産の管理を託す制度です。契約により、親(委託者)の財産を子どもなどの家族(受託者)が管理・運用し、親自身や配偶者などが利益(受益)を受け取る仕組みです。
例えば、横浜市内にある自宅不動産を信託財産として設定すれば、将来親が認知症になっても、受託者である子が柔軟に売却や運用ができるため、資産が凍結される心配がなくなります。
また、家族信託は契約自由の原則により、財産の引き継ぎ方法や管理のルールを柔軟に設計できるのも魅力です。不動産の売却資金をどう使うか、孫世代への相続に備えた受益権の設定など、希望に合わせた設計が可能です。
【任意後見制度とは?家庭裁判所の関与と代理権の範囲】
一方、任意後見制度は、将来の判断能力の低下に備えて、本人が元気なうちに「誰に」「どこまで任せるか」を決めておく制度です。
公証役場で任意後見契約を結んでおき、実際に本人の判断能力が低下した段階で家庭裁判所に申立てを行い、任意後見監督人が選ばれた時点で契約が発効します。
任意後見人は、本人の代理人として、財産管理はもちろん、介護サービスの契約や施設入所手続き、医療同意などの「身上監護」まで幅広く対応できます。
横浜市のように高齢者向け施設が豊富な地域では、身上監護の必要性が高まる場面も多く、任意後見制度のニーズが年々高まっています。
ただし、制度発効後は家庭裁判所の監督が継続的に行われ、任意後見人は報告義務を負うなど、手続き面や運用面では一定の負担があります。
このように、家族信託と任意後見制度は、いずれも「認知症による資産凍結を防ぐ」という目的を持ちながらも、その仕組みや柔軟性、関与者の範囲が大きく異なります。
家族信託と任意後見制度の違いとは?
家族信託と任意後見制度は、いずれも将来の財産管理に備えるための制度ですが、その仕組みや使い方にはさまざまな違いがあります。ここでは、弁護士の視点から、両制度を9つのポイントで比較しながら解説していきます。
【財産管理の柔軟性や費用面での違い】
まず注目すべきは「財産管理の柔軟性」です。
家族信託では、受託者に財産の所有権が移るため、契約の設計次第で不動産の売却や賃貸、金融商品の運用など、柔軟な資産活用が可能になります。横浜のような都市部で、自宅不動産の活用を視野に入れた生前対策を検討している方には大きなメリットです。
一方、任意後見制度では、任意後見人はあくまで本人の「代理人」です。財産の所有権は本人のままであり、リスクのある投資や不動産売却には慎重な判断が求められます。基本的には「財産を減らさず守る」ことに重きを置いた制度といえるでしょう。
費用面でも違いがあります。家族信託は契約時に公正証書作成費用や登記費用などが発生し、初期費用として20〜60万円程度が一般的です。ただし、その後の継続費用はほとんどかかりません。
一方、任意後見制度は初期費用が比較的安価(15〜20万円程度)ですが、後見が開始されると、任意後見監督人への報酬(1〜3万円/月)が継続的に発生します。長期的に見れば家族信託の方がコストパフォーマンスが高い場合もあります。
【裁判所の監督有無・身上監護の対応範囲】
制度の運用における監督体制も異なります。
家族信託は、裁判所の関与が原則ありません。当事者(委託者・受託者・受益者)の間で合意し契約を締結すれば、以後の管理も家族内で完結できます。信頼関係がある家族間で、柔軟かつスムーズに財産管理を行いたい場合には適した制度です。
一方で、任意後見制度は、家庭裁判所の監督が必須です。後見が開始されると、任意後見監督人による定期的な報告・確認が行われるため、制度の透明性と安心感がある反面、手続きや報告義務の煩雑さがデメリットとなることもあります。
また、対応範囲にも差があります。家族信託では、身上監護(介護契約、医療同意、施設入所手続きなど)に関する代理権は含まれていません。これらの対応が必要な場合は、家族が本人の意思を代弁する必要があり、限界を感じる場面もあります。
対して、任意後見制度では、任意後見人がこうした身上監護の代理権を持てるため、包括的なサポートが可能です。横浜の高齢者施設や病院との調整もスムーズに進めやすいのが利点です。
【弁護士が見た実務でのメリット・デメリット】
横浜で実際に相談対応を行ってきた弁護士の立場から見ると、制度の選択は「何を重視するか」によって大きく変わります。
たとえば、親の自宅を将来的に売却し、施設費用に充てる予定がある場合や、不動産を家族間でスムーズに引き継ぎたいという希望がある場合は、家族信託の方が柔軟かつスピーディーに対応できます。
逆に、身寄りが少なく、信頼できる家族が近くにいない、あるいは本人の生活支援が今後必要になる可能性が高いケースでは、任意後見制度の方が適しています。特に、施設選定や医療判断を任せる必要がある場合、任意後見人の存在が心強いサポートになります。
重要なのは、「両制度に優劣があるわけではない」という点です。それぞれの制度には役割があり、家族の事情や本人の希望に合わせて選択・併用することが最も効果的な方法です。
横浜での家族信託・任意後見制度の選び方
ここまで、家族信託と任意後見制度の違いについて詳しく見てきました。では、実際にどちらを選ぶべきか。横浜で多くのご相談を受けてきた弁護士として、状況に応じた選び方のポイントをご紹介します。
【弁護士が教える「目的別」の判断ポイント】
まずは、何を優先したいのかを明確にすることが重要です。以下のような目的別に整理してみましょう。
- 柔軟な財産管理を重視したい → 家族信託
不動産の売却や、資産の組み替えなど、本人の判断能力低下後も積極的な運用が必要な場合は、柔軟性の高い家族信託がおすすめです。
- 身上監護(介護契約、施設入所手続きなど)も任せたい → 任意後見制度
財産管理だけでなく、生活面の支援も必要と考えるなら、任意後見制度の方が適しています。
- 費用をできるだけ抑えたい → 家族信託
初期費用はかかりますが、長期的な維持費用は少なく済みます。一方、任意後見制度では、毎月監督人への報酬がかかります。
- 家庭裁判所の関与や書類提出が煩わしい → 家族信託
自立した家族同士での管理を希望する場合、家族信託の方が手続き面での自由度が高くストレスも少ないです。
- 頼れる親族が近くにいない → 任意後見制度
近くに信頼できる家族がいない場合には、専門職を任意後見人に選任できる任意後見制度が向いています。
【実際の横浜での相談事例と対応例】
例えば、横浜市港北区に住む60代の女性が、高齢の父親の不動産管理に悩んでご相談にいらっしゃったケースでは、「将来的に自宅を売って施設費用に充てたい」との希望がありました。このような場合、認知症による資産凍結を避けるため、家族信託の活用を提案し、契約から登記までを支援しました。
一方、横浜市戸塚区に住む独身の男性が「自分に身寄りがなく、将来の介護や医療手続きが不安」と相談されたケースでは、任意後見契約を締結し、弁護士が任意後見人候補者となるスキームをご提案。安心して老後を迎えられる体制を整えることができました。
このように、家族構成や資産状況、将来の希望によって、選ぶべき制度は異なります。「制度ありき」ではなく、「目的ありき」で判断することが、失敗しない選択の第一歩です。
家族信託と任意後見制度の併用という選択肢
「家族信託か任意後見か、どちらを選べばいいのか迷ってしまう…」という方に知っておいていただきたいのが、両制度を併用するという選択肢です。それぞれの制度のメリットを活かし、足りない部分を補い合うことで、より万全な備えが可能になります。
【両制度を併用すべきケースとその注意点】
たとえば、以下のようなご希望がある場合には、併用が非常に効果的です。
- 不動産の売却や資産運用など、柔軟な財産管理をしたい
- かつ、入院や施設入所など身上監護にも備えたい
このようなケースでは、財産面は家族信託で対処し、生活面の支援は任意後見制度でカバーするという形を取ることで、隙のない老後対策ができます。
ただし注意点もあります。弁護士として特にお伝えしたいのが、「受託者と任意後見人を同一人物にしないこと」です。これは利益相反の問題が生じるため、原則として避ける必要があります。
たとえば、親の財産を管理する立場(受託者)と、その親を代理する立場(任意後見人)を同じ人にしてしまうと、「自分を自分で監督する」という矛盾が生じ、適正な管理が難しくなります。
解決策としては、任意後見人を家族以外の第三者(例えば弁護士)に依頼し、受託者とは分けることが一般的です。これにより、制度が互いに干渉せず、うまく機能する体制を整えることができます。
【 弁護士によるサポートの重要性】
家族信託と任意後見制度の併用は、制度設計や契約内容に注意が必要な場面が多く、専門的な知識が欠かせません。横浜でも、信託契約と後見契約を一体的に設計するご相談が増えており、法律実務に精通した弁護士の関与が安心につながります。
両制度の「いいとこ取り」をした併用プランは、ご家庭のニーズにあわせたオーダーメイドの対策が可能です。「うちの場合どうすれば?」と迷ったら、一度専門家に相談することをおすすめします。
まとめと結論
家族信託と任意後見制度は、どちらも認知症による資産凍結を防ぐために有効な制度ですが、その目的や使い方は大きく異なります。
家族信託は、資産の柔軟な管理・承継を重視したい方に適しており、一方の任意後見制度は、財産管理と身上監護をバランスよく行いたい方に向いています。
横浜のように不動産価値が高く、高齢化が進む地域では、将来を見据えた準備の必要性がますます高まっています。制度の選び方ひとつで、老後の安心感やご家族の負担が大きく変わる可能性があります。
大切なのは、「制度に自分を合わせる」のではなく、「自分たちの希望や事情に合った制度を選ぶ」ことです。
もし判断に迷ったり、不安があったりする場合は、法律の専門家である弁護士に一度ご相談ください。最適な制度設計を一緒に考えることが、将来への一番の備えになります。
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家族信託や任意後見制度は、制度自体が複雑なうえ、契約内容によって実現できることが大きく変わります。そのため、画一的な情報や一般論だけで判断するのは非常に危険です。
横浜エリアに精通した弁護士であれば、地域特有の不動産事情や介護環境も踏まえたうえで、ご家庭ごとの背景や希望に合わせた制度設計をご提案できます。
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家族信託か任意後見か?横浜で弁護士が教える判断基準と注意点でした!
弁護士 大石誠
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