top of page

遺言で「全財産を一人に相続させる」と書かれていても遺留分は請求できる?

  • 執筆者の写真: 誠 大石
    誠 大石
  • 6月29日
  • 読了時間: 4分

親が作成した遺言書に「全財産を長男に相続させる」「妻にすべてを遺贈する」と書かれていた場合、他の相続人はまったく財産を受け取れないのでしょうか。この疑問は、相続トラブルの現場で非常によく見られます。


特に、介護をしていた子どもだけが優遇されていたり、再婚家庭で前妻の子が除外されていたりすると、「遺言があるから何も請求できない」と誤解してしまうケースがあります。しかし、相続には「遺留分」という制度があり、一定の相続人には最低限保障された取り分があります。


ここでは、遺言で全財産を特定の人に渡す内容になっていても、遺留分を請求できるのかについて、制度の基本から実務上の注意点までわかりやすく解説します。


結論:一定の相続人は遺留分を請求できます


結論から言うと、遺言で「全財産を一人に相続させる」と書かれていても、兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分を請求する権利があります。


遺留分とは、法律上保障された最低限の相続分のことです。被相続人は原則として自由に遺言を書くことができますが、その自由にも一定の制限があります。


例えば、相続人が「妻と子2人」の場合、配偶者と子にはそれぞれ遺留分があります。仮に「全財産を長男に相続させる」という遺言があっても、妻や他の子は自分の遺留分に相当する金銭を請求できます。


なお、現在の民法では、遺留分侵害額請求は「金銭請求」とされています。以前のように不動産の共有状態になるわけではなく、侵害された分をお金で支払ってもらう形になります。


遺留分の割合はどう決まる?


遺留分は、相続人の構成によって割合が決まります。


一般的には、相続財産全体の2分の1が遺留分の対象となり、それを各相続人の法定相続分に応じて分けます。


例えば、相続人が妻と子2人の場合を考えてみましょう。


法定相続分は、

・妻:2分の1

・子2人:各4分の1


となります。


このケースで全体の遺留分は財産の2分の1なので、

・妻の遺留分 → 4分の1

・子それぞれ → 8分の1


が最低限保障されることになります。


一方、兄弟姉妹には遺留分はありません。そのため、「全財産を長男へ」とする遺言によって兄弟姉妹が何も取得できなくても、遺留分侵害額請求はできません。


よくある誤解:「遺言があれば絶対」というわけではない


相続では、「公正証書遺言があるから覆せない」「遺言が最優先だから請求できない」という誤解が非常に多く見られます。


確かに、遺言は強い効力を持ちます。しかし、遺留分制度は法律上の権利であり、遺言より優先して保護されます。


また、「生前にたくさん援助を受けていたから遺留分はない」と思われることもありますが、それだけで当然に権利が消えるわけではありません。特別受益や生前贈与との関係は個別具体的に判断されます。


さらに、遺留分は自動的にもらえるものではありません。請求の意思表示をしなければ権利を失う可能性があります。


実務での注意点:請求期限に要注意


遺留分侵害額請求には時効があります。


具体的には、

「遺留分を侵害する遺言や贈与があったことを知った時から1年」

で権利が消滅します。


また、相続開始から10年が経過した場合も請求できなくなります。


そのため、遺言内容を知った後に放置してしまうと、請求できたはずの権利を失うことがあります。


実務では、まず内容証明郵便などで請求意思を明確に伝え、その後に協議や調停へ進むケースが一般的です。


また、不動産が中心の相続では、「評価額をどう算定するか」で大きく争いになることもあります。相続税評価額なのか、時価なのかによって金額が変わるため、専門的な判断が必要になる場合があります。


士業としての支援内容


遺留分の問題は、感情的な対立が激しくなりやすい分野です。


行政書士は、遺言書作成支援や相続人調査、遺産分割協議書作成などのサポートを行います。また、弁護士は遺留分侵害額請求そのものの代理交渉や訴訟対応が可能です。


税理士が必要になるケースも少なくありません。特に、不動産や自社株が含まれる場合は、評価方法や相続税との関係が重要になります。


相続は「法律」「税務」「感情」の3つが複雑に絡むため、早い段階で専門家に相談することで、不要な争いを防ぎやすくなります。


まとめ


遺言で「全財産を一人に相続させる」と書かれていても、配偶者や子など一定の相続人には遺留分が認められています。


つまり、遺言があるからといって必ずしも他の相続人が何も受け取れなくなるわけではありません。


ただし、遺留分は自動的に支払われるものではなく、自ら請求する必要があります。また、1年という短い期限があるため、遺言内容に納得できない場合は早めの確認と対応が重要です。


相続は一度争いになると家族関係にも大きな影響を与えます。不安や疑問がある場合は、相続に詳しい専門家へ早めに相談することをおすすめします。


弁護士 大石誠

横浜市中区日本大通17番地JPR横浜日本大通ビル10階 横浜平和法律事務所

【今すぐ相談予約をする】

電話:〔045-663-2294

横浜の弁護士が解説|人身傷害保険の死亡保険金は相続財産に含まれる?

bottom of page