弁護士が教える別荘地管理費負担リスクと対策【速報】
- 誠 大石
- 7月1日
- 読了時間: 8分
更新日:7月1日
はじめに
神奈川県内の別荘地を相続・取得した所有者の皆様にとって、管理費の負担増と「負動産化」は大きな懸念です。
2025年6月30日、最高裁第一小法廷は別荘地の未払い管理費について、不当利得返還請求が認められる判決を相次いで言い渡しました。
利用の有無に関わらず全区画の基盤的機能維持に寄与する管理業務は、契約締結の有無を問わず支払い義務を課すとされたのです。
本記事では、神奈川県の所有者が知っておくべき最新判例のポイントと、想定されるリスク・対策を弁護士視点で解説します。
別荘地管理費の最高裁判決の概要
2025年6月30日、最高裁第一小法廷は不当利得返還請求事件で、別荘地管理費の支払義務があると判断しました。
いずれも栃木県那須塩原市所在の多数区画からなる別荘地を対象に、区画所有者が管理契約を締結せず管理費を滞納したことに対し、未契約者にも基盤的機能維持の利益が及ぶとして、管理費相当額の返還を命じています。
これら判決でポイントとなったのは、
別荘地全体の基盤的機能維持の重要性
道路・側溝の維持管理、防災・景観保全、ゲート管理・パトロール等の業務は、区画所有者全員にとって欠かせない共通利益をもたらす。
非契約者だけを排除できない実情
実務上、管理組合や管理業者が「契約をしていない区画」だけを除外して管理することは困難であり、土地利用の有無にかかわらず一律に利益供与がなされている。
法律上の原因なく利益を受けたと評価
管理費を支払わない所有者は、契約関係がないにもかかわらず、上記管理業務による利益を享受しているため、「不当利得」(民法703条)に該当する。
損失の発生要件の充足
管理費収受が財源として予定されている以上、未払いが生じると管理業者・管理組合側に実質的な損失が発生するため、返還請求が認められる。
契約自由の原則との整合性
いわゆる「契約自由」の観点を侵害せず、実態として利益を受けている以上、管理費の請求は正当かつ必要な救済手段と判断された。
──の5点です。
今後、神奈川県内の別荘地においても同様の理論が当てはまる可能性が高いといえます。
また、県内に限らず、別荘地を所有している場合には、予期せぬ管理費が発生する可能性があるといえます。
事例紹介:不当利得返還請求事件のポイント(弁護士解説)
・【事例1】区画取得後に無契約・無支払いで放置 → 平成28年7月~令和3年6月分36,000円×区画数を不当利得として返還命令。
・【事例2】相続で取得も契約未締結 → 面積加算分を含む過去分管理費を請求、契約自由原則を侵害しないと判断。
・弁護士見解:神奈川県内の管理組合・業者が同様の管理形態であれば、相続人や新規取得者も返還請求リスクが顕在化します。
別荘地が「負動産」となるリスク
神奈川県内の別荘地であっても、実際に利用しないまま維持管理コストだけが積み重なると「負動産」化する恐れがあります。
人里離れた山間部や交通利便性が低いエリアでは、売却・賃貸需要が薄いため、固定資産税・都市計画税に加え、共益管理費・道路維持費など毎年まとまった支出が続きます。
また、利用者が少ないと管理組合の負担が増大し、管理費率の見直しや追加徴収が起こる可能性も高いです。相続後に手を入れず放置すると、草木の繁茂や建物の老朽化が進み、さらに資産価値を下げる悪循環に陥ります。
相続した神奈川別荘地で発生するコストと法的責任
相続人には、被相続人が未払いだった管理費や、今後発生する共益管理費の支払い義務が連帯して及びます。
最高裁判決は「利用の有無にかかわらず管理業務の利益を受けている」と判断したため、契約未締結でも過去分請求を免れません。
固定資産税評価額が低くても、管理費は区画数・面積に応じた定額または面積按分で算出され、放置すると数十万円単位の負担増が見込まれます。相続前に財産調査を行い、管理組合との契約状況や未払い額を把握することが肝要です。
解約できない別荘管理契約
別荘地の管理契約を既に結んでいる場合、これを解約するという方法もあり得ますが、実は、解約が制限されたという事例も存在します。
東京高等裁判所平成28年1月19日判決は、以下の点を指摘しています。
契約の性質 本件管理契約は準委任契約に基づいているが、全体管理業務(道路、排水路、公園の維持等)が含まれており、受任者(被控訴人)の利益も目的に含まれている。よって、単純な準委任契約ではないと判断されています。
解除権の制限 判決は管理契約の解除権を放棄したとは認めず、解除は無効とされました。管理契約は、物件所有者にとって全体管理が必要不可欠であり、契約解除を認めると全体管理の質が低下するリスクがあるため、解除は許されないとされています。
契約終了と死亡 委任契約が死亡により終了するという所有者らの主張は認められませんでした。契約は委任者の死亡によって自動的に終了するわけではなく、所有者らの死亡後も支払い義務が継続するという判断が下されました。
このように、別荘管理契約は、一般的な委任契約と比べて解除権が制限されていたり、死亡によって契約を終了させることが困難です。
予期せぬ管理費請求への法的対策
最高裁判決を受け、管理契約の有無にかかわらず管理費支払義務が認められるリスクが明確化しました。
特に相続直後の所有者は、過去分の未払い額が膨らんでから対策を講じると負担が大きくなりがちです。
そこで、早期に現状を把握し、法的手続きを活用して負担を最小化することが重要です。以下では、管理契約の確認・見直しと相続関連の法的選択肢を解説します。
管理契約の確認・解除方法と注意点(弁護士の視点)
1. 契約書・規約の入手:管理業者や管理組合から最新の「共益管理契約書」・「管理規約」を取り寄せ、費用体系や更新・解除条件を確認。
2. 売却の検討:利用予定がなければ、売却するなど、早期に手放して、予期せぬ管理費の請求がされないようにすべきか、検討が必要です。所有し続ける場合には、管理契約の締結も検討しましょう。
相続放棄・限定承認の法的プロセスとメリット
1. 相続放棄:家庭裁判所に申述し、相続開始後3か月以内に全ての相続財産を放棄。管理費未払い責任も免れるが、他の資産も失う点に注意。
2. 限定承認:相続財産の範囲内で負債を返済する方法。申述後は管理費や固定資産税の負担額が判明してから手続き可能で、不足額以上の負担を避けられます。
3. 手続き上のポイント:いずれも弁護士と相談のうえ、期限管理と必要書類(戸籍謄本・相続関係説明図)を正確に準備することが成功の鍵です。
売却・賃貸と家族信託を活用したリスクヘッジ
管理費負担の解消には、別荘地を市場流通に乗せるか、信託スキームを組成する方法が有効です。売却により一括で資金化すれば将来の管理コストを完全に回避できますし、賃貸運用では管理費を賃料収入で相殺可能です。
一方で、家族信託を活用すると、所有権と管理権を受託者に移しつつ、利益配分や処分条件を柔軟に設定でき、将来世代への承継を見据えた資産管理が実現します。
短期賃貸(民泊)活用の法的ポイント
- 宿泊業法・旅館業法の適用可否と届出・許可要件を確認
- 建物用途地域の制限、周辺住民との合意取得
- 賃貸契約書に管理費負担条項・損害賠償条項を明記し、トラブルを予防
家族信託による別荘地管理の仕組み解説
- 信託設計:委託者(所有者)→受託者(信頼できる家族・専門家)→受益者(将来の相続人)
- 信託契約で管理費支払義務や売却権限を明確化し、信託口座で収支を一元管理
- 信託登記による第三者対抗要件の充足で、外部からの請求リスクを抑制
まとめと今後の対策(神奈川県所有者向け)
神奈川県の別荘地所有者は、最高裁判決後の過去分管理費請求リスクを軽減するため、まず管理契約の現状を把握しましょう。その上で、早期に手放すか、管理費を分担するかの検討が必要です。
相続発生後は、相続放棄・限定承認の選択肢を弁護士とともに比較し、最適な手続きを選びましょう。売却・賃貸運用や家族信託は、中長期的なコスト削減と資産活用の両立を実現します。
弁護士への相談メリットとお問い合わせ方法(神奈川県対応)
当事務所では、別荘地管理契約の精査から相続手続き、信託設計までワンストップでサポート可能です。神奈川県内の案件実績多数。初回相談は無料ですので、管理費トラブルや相続対策でお悩みの方は、以下の連絡先までお気軽にご連絡ください。
以上、「弁護士が教える別荘地管理費負担リスクと対策【速報】」でした!
弁護士 大石誠
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