遺留分とは?相続分との違いをわかりやすく解説|遺言書があっても取り戻せる権利とは
- 誠 大石

- 6月1日
- 読了時間: 5分
「遺留分」と「相続分」は、どちらも相続に関係する言葉ですが、意味や役割は大きく異なります。特に、遺言書が作成されている場合や、特定の相続人だけに財産を集中させる内容になっている場合には、この違いを理解しておくことが重要です。
実際に、「父が全財産を長男に相続させると遺言を書いていた」「兄弟の一人だけが多額の生前贈与を受けていた」といったケースでは、遺留分の問題が発生することがあります。
この記事では、「遺留分とは何か」「相続分とはどう違うのか」を、法律の基本から実務上の注意点までわかりやすく解説します。
相続分と遺留分の違いとは?
結論からいうと、「相続分」は本来受け取れる相続財産の割合、「遺留分」は最低限保障される取り分です。
相続分とは、民法で定められた法定相続分や、遺産分割協議によって決まる財産の配分割合を指します。例えば、配偶者と子ども2人が相続人の場合、配偶者が2分の1、子どもがそれぞれ4分の1ずつというのが法定相続分です。
一方、遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された「最低限の取り分」です。被相続人が遺言によって自由に財産を処分できるとはいえ、まったく相続できない相続人が出てしまうと不公平になるため、法律で最低限の権利が保護されています。
つまり、相続分は「本来の取り分」、遺留分は「最低保障」と考えると理解しやすいでしょう。
遺留分が認められる人は誰?
遺留分が認められるのは、配偶者、子ども、直系尊属(父母など)です。
反対に、兄弟姉妹には遺留分はありません。
例えば、「全財産を長男に相続させる」という遺言があった場合でも、配偶者や他の子どもは遺留分を主張できます。しかし、兄弟姉妹が相続人であるケースでは、遺留分を請求することはできません。
また、遺留分の割合は相続人の構成によって異なります。
一般的には、法定相続分の2分の1が遺留分となります。たとえば、子ども1人の法定相続分が100%なら、その半分の50%が遺留分です。
遺留分はどうやって請求するのか
遺留分を侵害された場合には、「遺留分侵害額請求」という手続きを行います。
以前は「遺留分減殺請求」と呼ばれていましたが、2019年の民法改正により制度が変更されました。現在は、財産そのものを取り戻すのではなく、原則として金銭で請求する仕組みになっています。
例えば、不動産を特定の相続人が取得した場合でも、その不動産の共有持分を直接取得するのではなく、侵害された遺留分相当額をお金で請求する形になります。
なお、この請求には期限があります。
「遺留分が侵害されていることを知ってから1年以内」に請求しなければならず、さらに相続開始から10年が経過すると原則として権利が消滅します。
よくある誤解
遺留分については、「遺言があれば絶対に従わなければならない」と誤解されることがあります。
しかし、遺言書があっても遺留分を完全に排除することはできません。法律上保護された権利であるため、一定の相続人は最低限の財産を請求できます。
また、「生前贈与なら問題ない」と考える方もいますが、一定期間内の生前贈与は遺留分計算の対象になる場合があります。特に、相続人への特別な贈与や、相続開始前10年以内の贈与などは注意が必要です。
さらに、「相続放棄をした人にも遺留分がある」と誤解されるケースがありますが、相続放棄をすると相続人ではなくなるため、遺留分も主張できません。
実務で注意すべきポイント
遺留分の問題は、感情的な対立につながりやすいのが特徴です。
特に、不動産が中心の相続では、「現金がなくて支払えない」というトラブルがよく発生します。遺留分侵害額請求は金銭支払いが原則であるため、不動産を取得した相続人が資金準備に苦労することも少なくありません。
また、遺言書を作成する際に遺留分への配慮が不足していると、かえって家族間の争いを招くことがあります。
そのため、生前の段階から、財産内容や相続人間のバランスを踏まえた設計が重要になります。
専門家に相談するメリット
遺留分の問題は、法律・税務・不動産評価など複数の知識が関係するため、専門家への相談が有効です。
行政書士は遺言書作成のサポートや相続手続の書類作成支援を行い、弁護士は遺留分侵害額請求などの交渉や訴訟対応を担当します。また、税理士は相続税対策や財産評価について助言を行います。
特に、相続人間の関係が複雑な場合や、不動産・自社株など評価が難しい財産が含まれる場合には、早めに専門家へ相談することでトラブル防止につながります。
まとめ
相続分は「本来の取り分」、遺留分は「最低限保障された取り分」という違いがあります。
遺言書があっても、一定の相続人には遺留分が認められており、侵害された場合には金銭請求が可能です。一方で、請求期限や計算方法には専門的なルールがあるため、誤った理解のまま進めると不利益を受けることもあります。
相続は家族間の問題でもあるため、法律だけでなく感情面への配慮も重要です。将来的な争いを避けるためにも、遺言書の作成や遺産分割について不安がある場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
弁護士 大石誠
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