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相続人不存在とは?相続財産清算人・特別縁故者・国庫帰属までの手続をまとめて解説(FAQ)

  • 執筆者の写真: 誠 大石
    誠 大石
  • 2025年5月6日
  • 読了時間: 8分

更新日:2月12日

身寄りのない「おひとりさま」の増加や、相続人全員の相続放棄などにより、「相続人がいない(相続人不存在)」ケースは珍しくなくなりました。相続人がいないと、故人の財産はそのまま誰かが自由に処分できるわけではなく、家庭裁判所の関与のもとで清算手続が進み、最終的に国庫に帰属することもあります。

期限・費用・必要書類を知らないまま動くと、取り返しがつかないこともあるため、全体像をFAQで整理します。


結論:相続人不存在のとき、財産は「清算→分与→国庫帰属」が原則

Q. 相続人不存在とは?

A. 法定相続人(配偶者・子・親・兄弟姉妹等)がいない場合、または法定相続人がいても全員が相続放棄した場合をいいます。


Q. 財産は最終的にどうなる?

A. まず「相続財産清算人」が選任され、債務や受遺者への対応を含めて清算します。清算後に残った財産は、一定の要件を満たす「特別縁故者」に分与され得ます。

それでも残れば国庫に帰属します。


Q. 遺言書がある場合でも相続人不存在の手続きが必要ですか?

A. 遺言書で全財産の受遺者が指定されている場合は不要です。

一方、遺言で一部の財産のみ遺贈されている場合は、残りの財産について相続人不存在の手続きが必要になる可能性があります。


制度の仕組み:相続財産清算人の選任から公告・清算まで

Q. 誰が手続きを始めるの?

A. 相続財産清算人の選任を申し立てることができるのは、利害関係人(債権者、特別縁故者、特定受遺者など)または検察官です。故人にお金を貸していた方、内縁の配偶者、療養看護をしていた方などが利害関係人として申し立てるのが一般的です。

自治体や民生委員に申立権があるわけではありません。


Q. 手続の流れと期間感は?

A. 大まかには

①清算人の選任→②公告(相続人捜索・債権者等の申出)→③弁済・換価など清算→④特別縁故者の申立て→⑤国庫帰属、です。

法改正で公告の組み方が整理され、制度上の最短は約10か月程度が目安ですが、実務では財産調査や不動産処分の難航で2〜3年かかることもあります。


Q. どこに申し立て、何が必要?

A. 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。

戸籍(被相続人の出生から死亡まで、父母の戸籍等)、住民票除票(または戸籍附票)、財産資料(不動産登記・残高証明等)、利害関係を示す資料(契約書、関係を示す戸籍等)が基本です。


Q. 費用はどれくらい?

A. 申立ての印紙・切手・官報公告料に加えて、最大のポイントが「予納金」です。

清算人の報酬や実費に充てられ、概ね数十万円〜(事案により増減)となることがあり、原則として申立人の負担です。

予納金は、清算人の報酬や手続費用に充てるもので、被相続人の流動資産(預貯金等)が十分にあれば減額・不要になることもあります。逆に相続財産に現金等が少ない場合は高額になる傾向があります。予納金は申立人が負担する点に注意が必要です。


Q. 相続財産清算人とは何をする人ですか?

A. 相続財産清算人は、相続財産法人の代表者として以下の業務を担います。

・相続財産の調査・財産目録の作成

・相続財産の管理・保全

・債権者・受遺者への公告と弁済

・相続人捜索の公告

・清算後の残余財産の国庫帰属手続き

・定期的な家庭裁判所への報告


Q. 誰が相続財産清算人に選ばれるのですか?

A. 法律上の資格制限はありませんが、公平・中立な管理が求められるため、弁護士や司法書士が選任されることが多いです。申立人が候補者を推薦することもできますが、最終的な選任権は家庭裁判所にあります。


特別縁故者:申立てできる人・期限・税務の注意

Q. 特別縁故者って誰?

A. 民法に定められた特別縁故者の3つの類型は以下のとおりです。

①被相続人と生計を同じくしていた者 — 内縁の配偶者、事実上の養子、仕送りを受けていた人など

②被相続人の療養看護に努めた者 — 献身的に介護・看護をしていた人(職業として行っていた場合は原則非該当だが、報酬の範囲を超える献身があれば例外的に認められる可能性あり)

③その他被相続人と特別の縁故があった者 — 生活資金を援助していた人、師弟関係にあった人、長期にわたり介護を行ってきた施設法人など

個人だけでなく、事情により法人・団体が認められる可能性もあります。


Q. どんな場合に認められないのですか?

A. 以下のケースでは、特別縁故者としての財産分与は認められません。

①法定相続人が存在する場合:そもそも特別縁故者制度の前提を欠きます

②遺言で全財産の受取人が指定されている場合:遺言内容が優先されます

③通常の親戚づきあいの範囲にとどまる場合:従姉の養子が申し立てたものの、生前の交流が通常の親戚づきあいを超えるものではないとして否定された事例もあります。

④遺言偽造等の不正行為があった場合:東京高裁平成25年4月8日決定では、内縁の夫が遺言を偽造していたことを理由に分与が認められませんでした

⑤債務の弁済で財産がなくなった場合:分与すべき残余財産がなければ手続きは終了します


Q. いつまでに申し立てる?

A. 「相続人捜索の公告期間」が満了してから3か月以内が原則です。ここを過ぎると、分与の道が閉ざされ、残余財産は国庫帰属に進みやすくなります。


Q. 財産の全部をもらえますか?

A. 必ずしも全部とは限りません。家庭裁判所が、申立人と被相続人の縁故の内容・程度、財産形成への貢献度などを総合的に考慮して、分与の範囲を決定します。

複数の特別縁故者が申し立てた場合は、それぞれの縁故の程度に応じて分配されます。

分与されなかった残余財産は国庫に帰属します。


Q. 税金はかかる?

A. 分与を受けた財産は、原則として相続税の課税対象(遺贈に準じた扱い)になります。法定相続人がいないため基礎控除の算定や2割加算など、一般の相続と計算が変わる点があるので、取得前後で税務確認が重要です。


墓じまい・葬儀費用:清算人でも「勝手に払えない」ことがある

Q. 相続財産清算人の「権限」とは何ですか?なぜ許可が必要なのですか?

A. 相続財産清算人の権限は、原則として保存行為と性質を変えない範囲での利用・改良行為に限定されています(民法953条・28条・103条)。

財産の処分や第三者への支払い等の「権限外行為」を行う場合は、家庭裁判所の許可(権限外行為許可)が必要です。


Q. 権限外行為許可が必要な行為の具体例は何ですか?

A. 熊本家庭裁判所の清算人向け説明文書によれば、主な権限外行為は以下のとおりです。

・​不動産の処分(売却・建物取壊しを含む)

・動産の売却・譲渡・贈与・廃棄(自動車の売却・廃車手続を含む)

・ゴルフ会員権・株券等の売却

・永代供養料の支払い、墓地などの購入費用

・訴訟の提起、訴えの取下げ、訴訟上の和解、調停

・立替金の支払いや被相続人が生前ならば謝礼したであろう人への謝金支払い


Q. 清算人なら葬儀費用や墓じまいを払える?

A. いいえ。清算人の権限は原則として保存行為の範囲に限られ、墓じまい費用や永代供養料、葬儀費用の支出、不動産売却などは「権限外行為」として家庭裁判所の許可が必要になることがあります。許可なく支払うと、法的に問題となる可能性があります。


Q. 清算人選任前に立て替えた葬儀費用は?

A. 立替金として相続財産から精算できる余地はありますが、これも許可が必要となる場面があるため、領収書等の証拠を揃えて裁判所手続で整理するのが安全です。


Q. 葬儀費用・祭祀費用の支出が許可される判断基準は?

A. 以下の要素を総合的に考慮して判断されます。

・​被相続人と祭祀を行った(行おうとする)者との関係

・被相続人の生前の意思

・相続財産および負債の額

・祭祀法事の内容

・そのために必要とされる費用

・近隣地域の社会通念

社会的に相当と認められる範囲の費用であれば、相続財産からの支出が許可される場合があります。

逆に、華美すぎる葬儀や、被相続人との関係が薄い者が行った法事の費用は認められにくいといえます。


よくある誤解:ここでつまずきやすいポイント

・「遺言があれば相続人不存在の手続は不要」→全財産を包括遺贈している等のケースは別ですが、一部遺贈だと残余財産で清算手続が必要になることがあります。

・「相続放棄したから墓じまい義務もゼロ」→祭祀財産は相続とは別枠で、承継者や状況により整理が必要です。

・「困ったら役所がやってくれる」→申立権限・予納金負担の観点から、民間側で動く必要が出ることがあります。


士業としてできる支援:早期整理と生前対策がカギ

相続人不存在は、戸籍収集・利害関係の組み立て・財産調査・家庭裁判所提出書類など、事実と証拠の積み上げが重要です。行政書士は戸籍等の収集、関係資料の整理、申立書類作成の支援、死後事務委任契約や遺言作成支援などで実務をサポートできます。裁判所手続の代理や紛争対応、不動産売却を伴う判断が重い局面では、弁護士・司法書士等との連携が有効です。


まとめ:期限と費用を先に押さえ、必要なら早めに専門家へ

相続人不存在では、清算人選任から公告、債務整理、特別縁故者分与、国庫帰属まで一本道で進みます。

ポイントは

①申立権者(利害関係人か)

②予納金を含む費用設計

③特別縁故者の申立期限(3か月)

④権限外行為の許可の要否、です。

将来の国庫帰属を避けたい場合は、公正証書遺言で受遺者を指定する、死後事務委任契約を結ぶ、遺言執行者を定めるなど、生前対策が極めて有効です。

状況が複雑なほど、早めの相談が結果的に時間と費用の節約につながります。


弁護士 大石誠

横浜市中区日本大通17番地JPR横浜日本大通ビル10階 横浜平和法律事務所

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