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横浜で遺産分割|前提問題・付随問題と民事訴訟の注意点

  • 執筆者の写真: 誠 大石
    誠 大石
  • 8月1日
  • 読了時間: 22分

はじめに

遺産分割調停を申し立てれば、相続に関するトラブルを家庭裁判所がすべて解決してくれる―そのように考えている方は少なくありません。


しかし、家庭裁判所における遺産分割調停・審判の主な目的は、相続人と遺産の範囲が定まっていることを前提として、誰がどの財産を取得するのかを決めることです。


「そもそも誰が相続人なのか」「問題となっている不動産は本当に遺産なのか」「遺言書は有効なのか」といった争いは、遺産分割の前提となる問題です。話合いで解決できない場合、遺産分割とは別に民事訴訟や人事訴訟を行わなければならないことがあります。

また、使途不明金、葬儀費用、遺産管理費用、相続開始後の賃料などは、相続人にとっては遺産分割と一緒に解決したい問題です。しかし、法律上は遺産分割そのものとは異なる「付随問題」として扱われる場合があります。


本記事では、「横浜で遺産分割|前提問題・付随問題と民事訴訟の注意点」と題して、横浜で相続問題に直面している方に向けて、遺産分割における前提問題と付随問題、民事訴訟などの別手続が必要となるケースについて、弁護士が解説します。

※本記事は一般的な法律情報を提供するものです。個別の事案では、相続開始時期、証拠、当事者の主張などによって結論が異なります。


横浜の遺産分割調停・審判では何を決めるのか

家庭裁判所の遺産分割手続で中心となるのは、被相続人が死亡時に所有していた遺産を、共同相続人の間で具体的に分けることです。

たとえば、横浜市内に被相続人名義の自宅、賃貸不動産、預貯金、有価証券などがある場合、各財産を誰が取得するのかを話し合います。

不動産を長男が取得し、他の相続人に代償金を支払う「代償分割」、不動産を売却して代金を分ける「換価分割」など、財産の性質や相続人の生活状況に応じた分割方法を検討します。

裁判所が案内する遺産分割手続でも、相続人の範囲、遺言書の有無・効力、遺産の範囲、遺産の評価、特別受益・寄与分、具体的な分割方法という順序で検討が進められています。


遺産分割調停と遺産分割審判の違い

遺産分割調停は、家庭裁判所の調停委員会が相続人双方の話を聞き、合意による解決を目指す手続です。

調停で合意するためには、原則として当事者全員の同意が必要です。一人でも合意しない相続人がいれば、調停を成立させることはできません。

一方、遺産分割の前提に争いがなく、財産の評価、特別受益、寄与分、分割方法などについて合意できない場合、調停は不成立となり、原則として審判手続に移行します。審判では、裁判官が提出された資料などをもとに分割方法を判断します。


家庭裁判所の機能と市民の期待にはギャップがある

相続人の立場からすれば、親族間で起きた相続紛争を家庭裁判所でまとめて解決したいと考えるのが自然です。

ところが、遺産分割審判が取り扱う中心的な問題は、現在存在する遺産を誰に取得させるかという点です。

遺言書の有効性、既に作成された遺産分割協議書の有効性、相続人が使い込んだ金銭の返還、葬儀費用の負担などは、必ずしも遺産分割審判の対象になりません。

そのため、遺産分割調停を申し立てたものの、「この問題は別の訴訟で解決してください」といわれ、想定していた一括解決ができないことがあります。

このような制度上の違いが、家庭裁判所で実際に解決できることと、市民が家庭裁判所に期待する機能とのギャップを生じさせています。


遺産分割における「前提問題」とは

前提問題とは、具体的な遺産分割を行う前に明らかにしておかなければならない法律問題です。

代表的なものとして、次の問題があります。

  1. 相続人の範囲

  2. 遺産の範囲

  3. 遺言の効力や解釈

  4. 既になされた遺産分割協議の効力

これらが確定しなければ、「誰と誰の間で」「どの財産を」分けるのかが決まりません。


誰が相続人なのかという争い

戸籍上の相続関係に争いがなければ、相続人の範囲は戸籍によって確認できます。

しかし、次のような主張がある場合は、戸籍を確認するだけでは解決できません。

  • 戸籍上の父と実際には親子関係がない

  • 養子縁組が無効である

  • 婚姻が無効である

  • 認知の有効性に争いがある

  • 相続欠格や相続人廃除が問題となっている

親子関係、婚姻、養子縁組などの身分関係について深刻な争いがある場合は、遺産分割の前に人事訴訟や所定の家事手続によって、その関係を確定させる必要があります。

相続人が一人増減すれば、法定相続分だけでなく、遺産分割手続に参加しなければならない当事者も変わります。そのまま遺産分割を進めても、後に手続をやり直さなければならない可能性があります。


何が遺産なのかという争い

遺産分割の対象となるのは、原則として被相続人に帰属し、分割時に存在している財産です。

たとえば、登記名義は被相続人であるものの、別の親族が購入資金を全額支払った不動産について、実質的な所有者が争われることがあります。

反対に、長男名義の預金や不動産について、実際には被相続人の財産であり、名義を借りていただけだと主張される場合もあります。

具体的には、次のような財産が問題となります。

  • 被相続人名義の不動産

  • 親族名義の預貯金、いわゆる名義預金

  • 同族会社の株式

  • 被相続人と親族が共有していた不動産

  • 生前に売却または贈与された財産

  • 相続開始前後に引き出された預貯金

ある財産が被相続人の所有なのか、別の人の所有なのかについて合意できない場合、遺産分割の前に民事訴訟で所有関係を確定させる必要が生じます。裁判所が自ら金融機関や不動産を網羅的に調査し、隠れた遺産を探し出してくれるわけでもありません。遺産の存在を主張する側が、取引履歴、登記事項証明書、契約書などの裏付け資料を提出する必要があります。


遺言書の効力や解釈をめぐる争い

遺産分割の方法を指定する有効な遺言書がある場合、原則として遺言書の内容に従って財産を承継させます。

しかし、次のような事情があると、遺言書の有効性が争われます。

  • 遺言書の筆跡が本人のものではない

  • 遺言作成時に認知症などで遺言能力がなかった

  • 自筆証書遺言の方式を満たしていない

  • 他人から強制されて作成した疑いがある

  • 複数の遺言書が存在する

  • 遺言書の文言の意味が不明確である

遺言書が有効か無効かについて相続人間で合意できない場合、原則として遺言無効確認訴訟などの民事訴訟によって確定させたうえで、遺産分割を進めることになります。

なお、家庭裁判所で行う自筆証書遺言の検認は、遺言書が有効であることを保証する手続ではありません。検認を受けた遺言書についても、遺言能力や筆跡などを理由として有効性が争われることがあります。


既になされた遺産分割協議の効力

相続人の一人が遺産分割調停を申し立てたところ、他の相続人から「遺産分割協議は既に成立している」と主張されることがあります。

これに対し、申立人が次のように反論するケースがあります。

  • 遺産分割協議書の署名や押印は自分のものではない

  • 認知症で内容を理解できない状態だった

  • 相続財産を隠されていた

  • 詐欺や強迫によって署名させられた

  • 相続人の一部を除外して協議していた

有効な遺産分割協議が既に成立していれば、原則として同じ遺産について改めて遺産分割を行うことはできません。

したがって、遺産分割協議の成立や有効性について重大な争いがある場合には、遺産分割協議無効確認訴訟などの民事訴訟によって解決しなければならないことがあります。


前提問題は家庭裁判所だけで確定できるとは限らない

「前提問題は家庭裁判所では一切判断できない」と説明されることがありますが、厳密には注意が必要です。

家庭裁判所が、遺産分割を進めるための前提として、相続人や遺産の範囲について一定の判断をする場面はあります。

しかし、当事者間の対立が深く、遺産の所有関係や遺言の効力を確定的に解決する必要がある場合には、民事訴訟や人事訴訟による解決が必要です。

裁判所の案内でも、相続人の範囲や遺産の範囲について合意できない場合は、先に人事訴訟や民事訴訟で解決すべき場合があり、その際には遺産分割調停を取り下げたり、「調停をしない」とする決定によって終了したりすることがあると説明されています。


前提問題について考えられる訴訟

具体的には、次のような訴訟が考えられます。

  • 遺産確認請求訴訟

  • 所有権確認請求訴訟

  • 遺言無効確認請求訴訟

  • 遺産分割協議無効確認請求訴訟

  • 不当利得返還請求訴訟

  • 損害賠償請求訴訟

  • 親子関係不存在確認請求訴訟

  • 養子縁組無効確認請求訴訟

ただし、提起すべき訴訟は、相手方の主張や保有している証拠によって異なります。

たとえば、「不動産は遺産である」と確認する訴訟と、「不動産の所有権が自分にある」と確認する訴訟とでは、当事者や請求内容が異なる可能性があります。

相続人全員を訴訟の当事者にする必要があるケースもあるため、訴訟を提起する前に、誰を被告とし、何を判決で確定させるべきかを整理することが重要です。


別訴の提起先は必ず横浜地方裁判所とは限らない

横浜家庭裁判所で遺産分割調停を行っているからといって、別訴も必ず横浜地方裁判所に提起するとは限りません。

身分関係に関する人事訴訟は家庭裁判所が扱います。金銭請求に関する民事訴訟は、請求額や管轄の定めによって地方裁判所または簡易裁判所となる可能性があります。

また、相手方の住所、不動産の所在地、合意管轄の有無などによって、横浜以外の裁判所が管轄となる場合もあります。

横浜地方裁判所・横浜家庭裁判所のウェブサイトでも、神奈川県内の地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所について、それぞれ申立書の提出先一覧が案内されています。


遺産分割における「付随問題」とは

付随問題とは、相続に密接に関係しているものの、本来の遺産分割審判の対象とは別に解決すべき問題をいいます。

代表的なものには、次のような問題があります。

  • 使途不明金

  • 葬儀費用

  • 遺産管理費用

  • 遺産から生じた賃料などの収益

  • 相続債務

  • 同族会社の経営権

  • 老親の扶養や介護

  • 墓、仏壇、位牌などの祭祀承継

相続人にとっては、いずれも遺産分割と一緒に解決したい重要な問題です。

しかし、調停で話合いがまとまらず審判に移行した場合、これらの付随問題については、原則として審判で判断してもらえない可能性があります。

裁判所も、調停手続では柔軟な話合いにより、葬儀費用、相続債務、使途不明金、祭祀承継などを含めた全体的解決が可能である一方、審判では原則として取り扱えないと案内しています。


使途不明金は前提問題か付随問題か

使途不明金とは、被相続人名義の預貯金から多額の金銭が引き出されているにもかかわらず、その使い道が明らかになっていない問題を指します。

もっとも、「使途不明金」という独立した法律上の請求権があるわけではありません。誰が、いつ、どのような権限で引き出したのかによって、法的な位置づけが変わります。


相続開始前の引き出し

被相続人が死亡する前に預金が引き出されている場合、まず、被相続人本人が引き出したのか、家族が委任を受けて引き出したのか、無断で引き出したのかを確認します。

被相続人の生活費、医療費、施設費などに使用されていれば、原則として返還の問題は生じません。

一方、相続人の一人が無断で自分のために使用していた場合、被相続人がその相続人に対して不当利得返還請求権や損害賠償請求権を有していた可能性があります。

相続開始時にその請求権が存在していたのであれば、その請求権の帰属や金額が問題となります。ただし、引き出された現金そのものが当然に遺産分割の対象へ戻るわけではありません。


相続開始後の引き出し

被相続人の死亡後、遺産分割前に相続人の一人が預金を引き出した場合も、引き出した金額が当然に遺産分割の対象となるとは限りません。

ただし、民法906条の2は、遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合、共同相続人の同意によって、処分された財産が遺産分割時にも存在するものとみなす仕組みを設けています。処分した者が共同相続人である場合には、その処分者本人の同意を要しないとされています。

もっとも、この規定を利用できるかどうかは、処分時期、処分者、対象財産、他の相続人の同意などによって判断されます。

民法906条の2による処理が難しい場合には、引き出した相続人に対する不当利得返還請求や損害賠償請求を別途検討することになります。


使途不明金では証拠の整理が重要

使途不明金を主張する場合は、単に「兄が預金を使い込んだはずだ」と述べるだけでは不十分です。

少なくとも、次の事項を整理する必要があります。

  • 金融機関名と支店名

  • 口座の名義と番号

  • 引き出し年月日

  • 引き出し金額

  • ATM、窓口、振込などの取引方法

  • 引き出した人物

  • 説明されている使途

  • 領収書や請求書などの裏付け資料

金融機関の取引履歴、払戻請求書、被相続人の入院・入所期間、介護記録、クレジットカード明細などを照合することで、誰が何のために使用したのかを検討します。


葬儀費用と香典の問題

葬儀費用は、当然に遺産分割の対象になるわけではありません。

誰が葬儀を主宰したのか、どのような規模の葬儀だったのか、被相続人の生前の希望があったのか、他の相続人が葬儀内容に同意していたのかなどによって、負担者をめぐる考え方が分かれることがあります。

香典についても、一般的な遺産と同じように扱われるとは限りません。葬儀費用に充てることを前提として受領したのか、喪主個人への贈与と考えるのかなどが問題になります。

裁判所の案内では、葬儀費用や香典は原則として遺産分割の対象ではないものの、相続人全員が合意すれば調停の中で話し合うことができるとされています。

実務上は、葬儀費用の領収書、香典帳、葬儀会社との契約書などを提出し、遺産から支出するのか、相続人間で分担するのかを調停で話し合うことがあります。


固定資産税や修繕費などの遺産管理費用

相続開始後、遺産分割が終わるまでの間にも、不動産の固定資産税、火災保険料、管理費、修繕費などが発生します。

横浜市内の実家が空き家になっている場合には、庭木の剪定、建物の補修、残置物の処分、防犯対策などの費用が必要になることもあります。

これらの遺産管理費用は、原則として被相続人が死亡時に有していた遺産そのものではなく、相続開始後に発生した費用です。

そのため、遺産分割審判の中で当然に清算されるとは限りません。相続人全員が合意すれば調停で一緒に精算できますが、合意できなければ、立替金請求などの別問題として解決しなければならない場合があります。

費用を負担した相続人は、領収書、振込記録、請求書だけでなく、支出の必要性が分かる写真や修繕前後の記録も保管しておくことが重要です。


遺産から生じた賃料などの収益

被相続人が賃貸不動産を所有していた場合、死亡後も賃料が発生します。

相続開始後、遺産分割までに生じた賃料債権は、賃貸不動産そのものとは別の財産として、原則として各共同相続人が相続分に応じて取得するとした最高裁判例があります。後の遺産分割で不動産を一人が取得しても、それ以前に発生した賃料の帰属が当然に変更されるわけではありません。

したがって、賃貸不動産を管理している相続人が賃料を受領している場合は、次の事項を整理する必要があります。

  • 月ごとの賃料収入

  • 管理会社への手数料

  • 固定資産税

  • 修繕費

  • 火災保険料

  • 借入金の返済

  • 各相続人へ既に分配した金額

相続人全員が合意すれば、遺産分割調停の中で賃料収支も含めて最終的な取得額を調整できます。

合意できない場合は、賃料の分配や管理費用の精算について、民事訴訟などの別手続が必要になる可能性があります。


相続債務は遺産分割の対象になるのか

被相続人の借入金などの金銭債務は、原則として相続開始によって法定相続分に応じて相続人に承継され、遺産分割の対象にはならないとされています。

相続人間で「長男が借金をすべて負担する」と合意することはできますが、その合意は基本的に相続人間の内部的な取り決めです。

債権者が同意していなければ、他の相続人が債権者から請求を受ける可能性があります。特定の相続人だけに債務を引き受けさせたい場合は、債権者との関係も含めて処理する必要があります。

また、借金が多い可能性がある場合は、遺産分割よりも先に相続放棄や限定承認を検討すべきことがあります。相続放棄には期間制限があるため、早い段階で対応方針を決めることが重要です。


同族会社の経営権は遺産分割で解決できるのか

被相続人が同族会社を経営していたケースでは、相続問題と会社経営の問題が重なります。

遺産分割の対象となるのは、被相続人が所有していた会社の株式です。代表取締役や取締役という地位そのものが、株式と同じように相続されるわけではありません。

そのため、株式を誰が取得するかを決めるだけでなく、次の問題も検討する必要があります。

  • 株式の評価額

  • 議決権の割合

  • 株主名簿の記載

  • 取締役や代表取締役の選任

  • 会社に対する貸付金

  • 個人保証

  • 事業用不動産の所有関係

後継者が会社の株式を取得しても、他の相続人に支払う代償金を準備できなければ、遺産分割はまとまりません。

反対に、株式を複数の相続人で分散して取得すると、株主総会の意思決定が難しくなり、経営権争いへ発展する可能性があります。

同族会社が関係する遺産分割では、相続法だけでなく、会社法、税務、企業価値評価を含めた対応が必要です。


墓や仏壇などの祭祀承継

墓地、墓石、仏壇、位牌、系譜などの祭祀財産は、一般的な相続財産とは異なる基準で承継されます。

したがって、祭祀財産は原則として通常の遺産分割の対象にはなりません。

被相続人による指定がなく、慣習も明らかでなく、親族間で祭祀承継者を決められない場合は、遺産分割とは別に家庭裁判所へ祭祀承継者指定の申立てを行うことがあります。

「墓を守る人が遺産を多く取得すべきだ」という考え方が家族内にあっても、祭祀承継者であることだけを理由として、当然に遺産の取得割合が増えるわけではありません。

もっとも、調停では、祭祀承継や今後の墓地管理費用も含め、相続人全員の合意による総合的な解決を目指すことは可能です。


付随問題を遺産分割調停で一緒に解決する方法

付随問題は遺産分割審判で判断されないことがありますが、調停で相続人全員が合意すれば、一体的に解決できる場合があります。

たとえば、次のような調整が考えられます。

  • 預金を引き出した相続人の取得額から一定額を控除する

  • 葬儀費用を遺産から支出する

  • 固定資産税を立て替えた相続人へ精算金を支払う

  • 賃料収入と管理費用を計算して最終取得額を調整する

  • 墓を承継する相続人へ一定の財産を取得させる

  • 相続債務を負担する相続人の取得財産を調整する

ただし、一部の問題だけ合意しても、最終的な調停条項が成立しなければ解決にならないことがあります。

付随問題を調停に持ち込むときは、単に不満を述べるのではなく、「請求額」「法的根拠」「証拠」「具体的な解決案」を整理することが重要です。

付随問題に固執することで遺産分割全体が進まなくなる場合は、遺産分割を先に成立させ、金銭請求だけを別訴にする方法も検討します。


横浜で想定される遺産分割トラブルの具体例

横浜市内の自宅が本当に遺産か争われたケース

父名義の横浜市内の自宅について、長男が「購入資金は自分が負担したので、実質的には自分の財産だ」と主張したとします。

他の相続人がこれを否定し、父の遺産であると主張している場合、遺産の範囲について合意がありません。

この状態では、自宅を誰が取得するかという分割方法を決める前に、自宅の所有者を確定する必要があります。

購入資金の出所、住宅ローンの返済者、登記に至った経緯、固定資産税の負担者などを検討し、必要に応じて民事訴訟を提起します。


死亡後に預金が引き出されたケース

父の死亡後、同居していた長女が預金口座から500万円を引き出していたとします。

長女は「葬儀費用、病院代、父の未払費用に使った」と説明していますが、領収書は一部しか残っていません。

この場合、まず引き出しごとに使途と証拠を確認します。

正当な支出と認められる金額、長女が保管している金額、使途を説明できない金額を分けたうえで、民法906条の2による処理、調停での取得額調整、不当利得返還請求などを検討します。


同族会社の株式をめぐるケース

父が横浜市内で会社を経営し、全株式を所有していたとします。

長男は会社を引き継ぐことを希望していますが、他の相続人は、株式を取得する代わりに高額な代償金を支払うよう求めています。

この場合、非公開株式の評価、会社の財務状況、長男の代償金支払能力、議決権の確保などを検討しなければなりません。

会社の株式評価について合意できなければ、遺産分割手続内で鑑定が必要となることがあります。裁判所の案内でも、非公開株式の評価額について合意できない場合は、鑑定を行うことがあるとされています。


横浜の弁護士が解説する遺産分割を長期化させないポイント

争点を3つに分類する

遺産分割の相談を受けた際、弁護士は問題を大きく次の3つに分類します。

第一は、遺産分割審判で判断してもらえる問題です。遺産の評価、特別受益、寄与分、具体的な分割方法などが中心です。

第二は、相続人の範囲、遺産の範囲、遺言や遺産分割協議の有効性などの前提問題です。

第三は、使途不明金、葬儀費用、管理費用、遺産収益などの付随問題です。

この分類をしないまま調停を申し立てると、数回の期日を重ねた後で別訴が必要と判明し、解決までの期間が長くなる可能性があります。


財産資料を早期に集める

遺産分割では、主張だけでなく客観的な資料が重要です。

戸籍、遺言書、不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金の残高証明書、取引履歴、有価証券の資料、生命保険に関する資料などを収集します。

同族会社の株式がある場合は、株主名簿、決算書、法人税申告書、定款なども確認します。

家庭裁判所がすべての遺産を探してくれるわけではないため、申立て前から財産調査を進めることが重要です。


別訴の順番を検討する

前提問題があるからといって、必ず最初から遺産分割調停を申し立ててはいけないわけではありません。

話合いによる解決の可能性がある場合は、調停で遺産の範囲などについて協議する方法もあります。

一方、遺言書の無効や不動産の帰属について対立が激しく、合意の見込みがない場合には、先に民事訴訟を提起したほうが効率的なケースがあります。

遺産の一部について争いがなく、他の財産だけが争われている場合は、一部分割が適切かどうかも検討します。

どの手続を先に行うかは、証拠の内容、請求金額、時効、相続人間の関係、遺産の管理状況などを踏まえて決める必要があります。


横浜の遺産分割に関するよくある質問

①前提問題に争いがあっても遺産分割調停を申し立てられますか

申立て自体が可能な場合でも、前提問題について合意できなければ、民事訴訟や人事訴訟による解決を求められることがあります。

その場合、遺産分割調停を取り下げたり、調停を終了したりすることがあり、当然に審判へ移行するとは限りません。


②遺言書が無効だと思う場合は何をすべきですか

遺言書の原本、作成時の医療記録、介護記録、筆跡資料、遺言作成に関与した人物などを確認します。

遺言能力が問題となる場合は、遺言作成日当時の認知機能や意思疎通の状況が重要です。証拠を確認したうえで、遺言無効確認訴訟を提起すべきか検討します。


③死亡後に引き出された預金は遺産に戻せますか

引き出し時期、引き出した人物、使途、相続人の同意などによって異なります。

民法906条の2によって遺産分割の中で考慮できる場合もあれば、不当利得返還請求や損害賠償請求が必要となる場合もあります。


④葬儀費用を多く支払った分、遺産を多く取得できますか

葬儀費用を多く支払ったという理由だけで、当然に相続分が増えるわけではありません。

ただし、相続人全員が合意すれば、遺産分割調停の中で葬儀費用を精算し、最終的な取得額を調整することができます。


⑤介護をした相続人は必ず寄与分を受けられますか

介護をしたというだけで、必ず寄与分が認められるわけではありません。

介護の内容や期間、被相続人の要介護状態、介護サービスの利用状況、財産の維持・増加との関係などから、通常の親族間の協力を超える特別な貢献があったかを判断します。


⑥民事訴訟中も遺産分割調停を進められますか

前提問題の訴訟結果が遺産分割に影響する場合、訴訟が終わるまで調停や審判の進行が事実上止まることがあります。

争いのない遺産だけを先に分割できるかなど、事件全体の進め方を検討する必要があります。


まとめ|横浜の遺産分割では手続の使い分けが重要

遺産分割調停・審判は、相続に関するあらゆる紛争を一度に解決する手続ではありません。

相続人の範囲、遺産の範囲、遺言や遺産分割協議の効力などの前提問題について争いがある場合は、民事訴訟や人事訴訟による解決が必要になることがあります。

使途不明金、葬儀費用、遺産管理費用、賃料収入、相続債務、祭祀承継などの付随問題は、相続人全員が合意すれば調停で一体的に解決できる可能性があります。

しかし、合意できない場合は、遺産分割審判とは別の手続を選ばなければならないことがあります。

横浜で遺産分割問題に直面した際は、最初に争点を「遺産分割の本体」「前提問題」「付随問題」に整理することが重要です。


横浜の遺産分割・相続訴訟は弁護士へご相談ください

遺産分割調停を申し立てた後で別訴が必要と分かると、解決までに長い時間を要する可能性があります。

特に、次のような事情がある場合は、早い段階で弁護士へ相談することをおすすめします。

  • 相続人の範囲に争いがある

  • 遺言書の有効性に疑問がある

  • 遺産分割協議書の署名や押印に争いがある

  • 不動産や同族会社株式の帰属が争われている

  • 多額の使途不明金がある

  • 相続人の一人が遺産を開示しない

  • 葬儀費用や管理費用の負担で対立している

  • 遺産分割と民事訴訟を並行して進める必要がある

弁護士に相談することで、家庭裁判所で解決すべき問題と、民事訴訟・人事訴訟などで解決すべき問題を整理できます。

横浜で遺産分割調停、遺言無効確認訴訟、遺産の範囲を確定する訴訟、使途不明金の返還請求などにお悩みの方は、証拠が失われたり、問題が複雑化したりする前にご相談ください。


『止まった相続を終わらせる弁護士』大石誠

横浜市中区日本大通17番地ゲートテラスヨコハマ10階 横浜平和法律事務所

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電話:〔045-663-2294


横浜で遺産分割|前提問題・付随問題と民事訴訟の注意点

【追記】

税理士・司法書士・行政書士の先生に依頼したのに、相続が止まったままではありませんか?

手続は進んでも話し合いが進まない。相続が止まるのには理由があります。

「止まった相続を終わらせる」という考え方はこちらにも掲載しました。


 
 
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