top of page

横浜で相続放棄を考えている方へ|弁護士が語る単純承認の落とし穴

  • 執筆者の写真: 誠 大石
    誠 大石
  • 5月6日
  • 読了時間: 10分

更新日:5月9日

はじめに

「相続放棄すれば、親の借金は引き継がなくて済む」と安心していませんか?

相続放棄は、被相続人(亡くなった方)の財産や借金を一切受け継がないという有効な手段ですが、実はちょっとした行動が「相続放棄のつもりが、単純承認になってしまう」落とし穴になることがあります。


特に横浜市のように相続件数の多い地域では、葬儀後の慌ただしい中で、知らず知らずのうちに相続放棄ができなくなるケースが少なくありません。たとえば、「遺品を整理してあげただけ」「通帳を一時的に引き出しただけ」…そんなつもりでも、法律上は相続を承認した=借金も引き継ぐと判断されてしまうことがあるのです。


この記事では、横浜で相続放棄を考えている方向けに、弁護士の視点から「単純承認に該当する行為」「セーフな行為」「実際の判例」などを分かりやすく解説していきます。

「放棄したつもりだったのに…」と後悔しないために、ぜひ最後までご覧ください。


【今すぐ相談予約をする】

電話:〔045-663-2294


横浜での相続放棄と単純承認の基本知識

相続放棄と単純承認――この2つの違いを正確に理解することが、相続トラブルを防ぐ第一歩です。

まず、相続放棄とは、相続人が被相続人の財産や借金を一切受け継がないという法的手続きです。家庭裁判所に対して申述(申し出)を行うことで成立し、相続開始から3か月以内に手続きする必要があります。この期間を「熟慮期間」といい、その間に相続するか否かを判断しなければなりません。


一方で、『単純承認』とは、すべての相続財産(プラスの資産もマイナスの借金も)をそのまま引き継ぐ意思を示すことです。ただし、意思を示さなくても、ある行動を取っただけで「承認した」とみなされるケースがあります。これが法定単純承認で、民法第921条に定められています。


横浜でも、葬儀後の片付けや遺品整理の流れでこの「単純承認」に該当してしまい、相続放棄が認められなくなる事例が多発しています。特に多いのが、相続放棄をするつもりでいながら遺産を一部処分してしまったパターンです。


知らなかったでは済まされないのが相続法の怖いところ。次の章では、実際に単純承認と判断された具体例をご紹介します。


弁護士が見た単純承認に該当する行為の具体例

「たったこれだけで単純承認になるの?」

そう驚かれることも少なくありません。以下に、弁護士として実際に相談を受けた事例や、裁判所が単純承認と判断した代表的な行為をいくつか紹介します。


■ 債権の回収

被相続人が生前に貸していたお金を、相続人が「返してほしい」と取り立てて受け取った場合、それは相続財産の一部を処分したとされ、単純承認に該当します。


■ 経済的価値のある遺品の処分

和服・洋服・バッグ・指輪など、経済的価値があるとみなされる遺品を第三者に譲渡した場合も、単純承認とされました。


■ 遺産分割協議への参加

他の相続人と遺産の配分を話し合い、自らの取り分を前提に協議した時点で、財産を受け取る意思があったと判断され、単純承認になります。


■ 被相続人の財産権を主張する訴訟行為

たとえば、被相続人が借りていた物件について「借家権は私が引き継いだ」として訴訟を起こした場合、それも相続財産の処分と見なされます。


■ 株主権の行使・家賃収入の受領

相続した会社の株で議決権を行使したり、賃貸物件の家賃振込先を自分の口座に変更して受け取ったりした場合も、相続財産を処分したと見なされるのです。


■ 相続財産の隠匿

財産的価値のある遺品を大量に持ち帰ったり隠したりする行為は、債権者に対する背信的行為とされ、単純承認が擬制されてしまいます。


横浜のケースでもよくあるのが、「遺品整理のつもりで高価なものを処分した」ケースです。実際には、それが高額な骨董品や宝飾品だった場合、法律上は単純承認と見なされ、放棄の権利を失ってしまいます。

こうした落とし穴を避けるには、相続開始後の行動一つ一つに注意を払うことが不可欠です。


単純承認に該当しない行為と注意点

ここまで読むと「何も触らない方がいいのか」と不安になる方もいるかもしれませんが、すべての行為が単純承認に該当するわけではありません。実際には、「相続財産の処分」に該当しない行為も多くあります。

以下に、代表的な「セーフな行動」として裁判所が認めた例を紹介します。


■ ボロ衣類など価値のない遺品の譲渡

すでに経済的価値を失っている古着を他人に譲渡しただけでは、相続財産の処分には当たりません。


■ 少額の金品の受領

例えば、警察から返された財布や現金2万円程度の受け取りも、社会通念上、相続財産とまでは評価されず、単純承認にはなりません。


■ 形見分け

親族間で行う、故人を偲ぶための形見分けは、法律上の「処分」には該当しません。


■ 無償貸与

遺品を無償で貸し出すような行為も、対価が発生していないため、経済的処分行為とは認められません。


■ 生命保険金の受け取り

保険金は、相続人固有の財産として扱われるため、請求・受領しても相続放棄を妨げません。


■ 保険金での債務弁済

自分が受け取った保険金で故人の借金を返済しても、自己の財産を使用したにすぎず、相続財産の処分にはなりません。


■ 共済金に関する問い合わせ

給付金の支払い可否を確認するための問い合わせ行為も、「相続財産の調査」として認められています。


■ 相続を知らずにした行為

被相続人の死亡を知らずに財産を処分してしまった場合は、単純承認の要件である「認識」が欠けているため、適用されません。


注意点として大事なのは、「経済的価値の有無」「対価の発生」「故人の意思を踏まえた行動かどうか」といった観点で判断されるということです。

横浜でも、「仏壇や墓石を買ったことで相続放棄が無効になるのでは」と不安になる相談がありましたが、実際にはその出費が社会通念上妥当なものであれば、放棄を妨げる行為にはならないと判断された事例があります。

心配な場合は、事前に弁護士に相談することで、リスクを未然に防ぐことができます。


弁護士の視点から見た「誤解しやすい行為」

実務に携わっていると、相続放棄を考えていたにもかかわらず、本人に自覚がないまま単純承認となってしまったケースにたびたび遭遇します。

ここでは、特に誤解されやすい代表的な行為を取り上げ、注意点を解説します。


■ 遺産分割協議への「軽い参加」

「とりあえず話だけでも…」というつもりで遺産分割協議に出席し、自分の取り分について同意してしまうと、それだけで相続分を前提にした行為とみなされ、単純承認が成立する可能性があります。


■ 葬儀費用の支払いに故人の預金を使う

横浜のある相談者は、被相続人の通帳を使って葬儀費用を支払いました。「故人のための支出だから問題ない」と思いがちですが、使い方や金額によっては相続財産を処分したと判断されかねません。この点は、社会通念上の妥当性や自己負担の有無がカギになります。


■ 遺品の整理・処分

整理業者に依頼して大量の遺品を処分したところ、経済的価値のあるものが含まれていたため、結果として単純承認となったケースもあります。特に、美術品やブランド品、骨董品などは注意が必要です。


■ 他人への譲渡や売却行為

「捨てるのはもったいないから」とリサイクルショップに遺品を売った場合、それがたとえ数千円の収入であっても、財産の処分と判断されることがあります。


これらの行為はいずれも「ついうっかり」や「善意」で行われることが多いですが、法律上は厳格に判断されるため、知らなかったでは済まされません。

弁護士として強調したいのは、行動を起こす前に、必ず専門家に相談すること。相続放棄の意思があるのであれば、なおさら、初動での慎重な判断が重要です。


横浜の弁護士が語る|相続放棄を成功させるためのポイント

相続放棄は、一定の手続きを踏めば有効に成立します。しかし、少しでも誤った行動をとると単純承認とみなされ、結果として借金まで背負うことになりかねません。ここでは、相続放棄を「確実に成功させる」ための重要なポイントを、弁護士の視点から整理します。


■ 1. とにかく「触らない」が基本

相続放棄を考えている段階では、相続財産に一切手をつけないことが鉄則です。預金を下ろす、遺品を譲る、形見を受け取る…すべてが単純承認と判断される可能性があります。


■ 2. 相続開始を確認したら、すぐに専門家へ相談

「親が亡くなった」と聞いたら、まずすべきは感情的な整理ではなく、法的なタイムリミットの把握です。相続放棄の熟慮期間(3か月)はすぐに過ぎます。初動を誤らないためにも、早期に弁護士に相談しましょう。


■ 3. 相続放棄の申述書は正確に

家庭裁判所へ提出する申述書に不備があると、手続きが無効になったり、再提出が求められたりします。必要書類や記載内容については、専門家のチェックを受けるのが確実です。


■ 4. 他の相続人との連絡にも注意

「みんなで分割の話をしよう」と言われても、放棄の意思があるなら協議には参加しないようにしましょう。会話内容や書面への署名が単純承認とみなされるリスクがあります。


■ 5. 葬儀や供養は自己資金で

どうしても葬儀や供養を行う必要がある場合は、自分のお金で支払うようにしましょう。被相続人の資金を使った場合、それが「財産の処分」とされるおそれがあります。


横浜では高齢化が進み、相続に関する相談が急増しています。特に不動産や賃貸物件の相続をめぐるケースは複雑になりやすいため、経験豊富な弁護士のサポートが心強い味方になります。


まとめと結論(横浜の住民向け)

相続放棄は、借金などの負債を引き継がないための重要な手段ですが、単純承認の落とし穴には細心の注意が必要です。


横浜のように人口が多く、相続に関する相談が日常的に発生している地域では、「知らないうちに相続したことにされていた」というトラブルが実際に起きています。特に、葬儀後の慌ただしい時期に行う遺品整理や、他の相続人との話し合いには注意が必要です。


この記事で紹介したように、

- 債権の回収や高価な遺品の処分

- 相続分を前提とした遺産分割協議への参加

- 被相続人の財産を前提とした訴訟の提起や賃料の受領

などの行為は、単純承認とみなされ、相続放棄が無効となってしまいます。


一方で、

- 価値のない遺品の処分

- 形見分け

- 自己資金による葬儀費用の支払い

など、法律上「処分」とは認められない行為もあります。


大切なのは、相続開始直後からの「判断と行動」です。放棄を考えているなら、できるだけ早く専門家に相談し、不要なリスクを回避しましょう。

横浜であれば、地域事情に詳しい弁護士に依頼することで、より的確なアドバイスを受けられます。

後悔しない相続のために、正しい知識と備えを持っておくことが何よりの防衛策です。


弁護士に相談する理由とお問い合わせ情報(横浜エリアに対応)

相続放棄をスムーズに、そして確実に進めるためには、専門的な知識と経験を持つ弁護士のサポートが非常に有効です。以下のような理由から、早期の相談をおすすめします。


■ 法定単純承認のリスクを回避できる

民法第921条に基づく単純承認の該当行為は、一般の方にとって判断が難しいことが多くあります。弁護士であれば、依頼者の行動が「処分」に該当するか否かを的確に判断し、リスクを未然に防ぐことが可能です。


■ 家庭裁判所への申述手続きを正確に代行

書類作成から提出まで、経験豊富な弁護士が代行することで、手続きミスや期限切れのリスクを減らせます。申述が却下される事態を防ぎ、安心して手続きを進めることができます。


■ 相続人間のトラブルにも対応

相続放棄を選ぶことで、他の相続人との関係が複雑になることもあります。弁護士に相談することで、法的根拠に基づいた円満な対応が可能になります。


■ 地元・横浜に根ざした対応が可能

地域事情に精通した弁護士であれば、横浜市内や神奈川県内の家庭裁判所の運用傾向を踏まえたスムーズな対応が可能です。また、オンライン相談や訪問相談にも対応している事務所もあります。


「自分が単純承認になっていないか心配」「放棄したいけど、もう何かしてしまったかも…」という方も、まずはお気軽にご相談ください。

放棄できるはずの相続で負債を背負わないよう、正しい選択をお手伝いします。


横浜で相続放棄を考えている方へ|弁護士が語る単純承認の落とし穴でした!


弁護士 大石誠

横浜市中区日本大通17番地JPR横浜日本大通ビル10階 横浜平和法律事務所

【今すぐ相談予約をする】

電話:〔045-663-2294


横浜で相続放棄を考えている方へ|弁護士が語る単純承認の落とし穴

 
 

最新記事

すべて表示
【メモ】調停における貸金庫の取扱い

「遺産分割調停では、相続人の一人が代表で貸金庫の開扉及び財産の保管をすることに他の相続人が合意すれば、中間合意調書を作成の上、任意に委任状を提出してもらい開披させることになる。この協力が得られない時は、保全処分により財産の管理者を定めて(家事法200条)、貸金庫の開扉にあた...

 
 
bottom of page