はじめに
「小規模企業共済金」は、個人事業主や中小企業経営者にとって大切な備えですが、相続の場面になると「遺産に含まれるの?」「相続税はどうなるの?」といった疑問が湧いてきます。こうした疑問を放置してしまうと、遺産分割の際にトラブルになったり、思わぬ税金が発生することもあります。
実は、小規模企業共済金は民法上の遺産ではない一方で、相続税法では「みなし相続財産」として課税の対象になります。この違いを正しく理解することで、相続に伴うトラブルを未然に防ぎ、手続きもスムーズに進めることが可能です。
この記事では、神奈川の弁護士として、小規模企業共済金の民法上と相続税法上の扱いの違いをわかりやすく解説し、具体的な対応策をお伝えします。難しい法律の話も、なるべく親しみやすく説明しますので、安心して読み進めてくださいね!
小規模企業共済金とは
「小規模企業共済金」とは、個人事業主や中小企業経営者が廃業や退職後の生活資金を確保するための制度で、中小企業基盤整備機構が運営しています。加入者が毎月一定額を積み立て、必要な時に共済金として受け取れる仕組みになっています。将来への備えとして多くの事業者に利用されており、「退職金代わり」としての役割も果たしています。
共済金の種類は、受け取り理由によっていくつかに分かれています。
例えば、廃業や死亡による「共済金A」、会社等役員の死亡・65歳以上での退職などによる「共済金B」、その他準共済金などがあります。これらの種類によって税法上の取り扱いが異なるため、適切な知識が必要です。
契約者の死亡時に給付される共済金は、民法上の遺産とは扱われず、遺族が法律で定められた順位に従って受け取ります。一方で、相続税法では「みなし相続財産」とされ、税金が課される場合があるため注意が必要です。
小規模企業共済金は遺産に含まれるのか?
「小規模企業共済金」は、民法上の遺産には含まれません。
これは、一見すると遺産のように思える共済金が、法律上では「遺族固有の権利」として扱われるためです。
共済金を受け取る権利は、民法の相続規定に基づいて分配されるのではなく、小規模企業共済法に定められた独自のルールに基づきます。
具体的には、遺族が法律で定められた範囲と順位に従い共済金を受け取ります。その順位は以下の通りです:

【画像の出典はこちら:契約者の死亡(会社等役員) | 小規模企業共済】
このため、共済金は遺産分割協議や遺言の対象にはならず、法定相続分のような形では配分されません。代わりに、同順位の遺族が複数いる場合は、等分で支給されることが原則です。
一方で、相続税法上では「みなし相続財産」として扱われ、相続税の申告対象となります。つまり、民法と税法で取り扱いが異なる点を理解することが重要です。この違いを把握しておかないと、思わぬトラブルや税務上の問題が生じる可能性があります。
相続税上のみなし相続財産とは
「小規模企業共済金」は、民法上の遺産ではありませんが、相続税法上では「みなし相続財産」として課税の対象になります。
この「みなし相続財産」とは、被相続人の死亡を原因として取得する財産であり、死亡保険金や死亡退職金がこれに該当します。共済金も同様に、受給権者が被相続人の死亡により受け取る場合、このカテゴリーに入ります。
相続税の計算時には、みなし相続財産に特有の「非課税枠」が適用されます。この非課税枠は、「500万円 × 法定相続人の数」で計算され、相続税を軽減する仕組みです。ただし、この非課税枠を使えるのは、相続で財産を取得した法定相続人だけです。相続放棄をした人や遺族以外の人には適用されないため、注意が必要です。
また、共済金の分配後に受給権者がその一部を他の相続人に譲渡した場合、譲渡された金額が贈与税の対象になる可能性があります。この点を見落とすと、受給権者と譲渡先の双方が課税リスクに直面することになります。
共済金の受け取りや分配は、税務の面で複雑な要素が多いため、専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
神奈川での相続トラブルの実例
小規模企業共済金を巡る相続では、受給権者が複数いる場合にトラブルが発生しやすいです。
例えば、共済金を受け取った一人の受給権者が他の相続人に一部を譲渡しましたが、この行為が贈与税の課税対象となり、予期せぬ税負担が発生しました。事前に税法上のリスクを把握していれば回避できた問題です。
また、別の事例では、税理士が「民法上の相続財産にならないこと」、弁護士が「税法上のみなし相続財産になること」を相互に理解していなかったため、かえって紛争が激化した事例もありました。
こうしたトラブルを避けるには、遺族間で早めに話し合いを行い、全員の合意を得て代理人を選定することが重要です。
また、遺産分割協議書を作成する際には、共済金の分配について明記することで、贈与税の課税リスクを軽減できます。
弁護士が解説!共済金を巡る具体的な対応方法
小規模企業共済金を巡るトラブルや課税リスクを回避するためには、適切な手続きと専門家の助言が重要です。
以下に、具体的な対応方法を弁護士の視点からご紹介します。
1. 代理人の選定を円滑に進める方法
共済金の請求には、受給権者が1人の代理人を選定し、手続きを進める必要があります。これをスムーズに行うためには、早期に遺族全員で話し合う場を設けることが重要です。
2. 遺産分割協議書に共済金の扱いを明記
共済金は遺産分割の対象ではありませんが、遺族間で合意のうえ分配を行う場合には、遺産分割協議書に明記することが有効です。これにより、贈与税の課税対象になるリスクを抑えられます。また、代償分割を用いることで、他の相続財産とのバランスを取る方法もあります。
3. 税務申告を正確に行う
相続税法上の「みなし相続財産」として申告が必要な共済金について、税理士と連携して正確に対応することが不可欠です。非課税枠の適用や課税対象外とされるケースを確認し、余分な税負担を防ぎましょう。
4. 専門家への相談をためらわない
相続や税務は法律の専門知識が必要な分野です。トラブルが発生する前に弁護士や税理士に相談することで、安心して手続きを進めることができます。
特に、相続に詳しい弁護士、税理士に相談することが重要です。
「民法上の相続財産にならないことを理解している税理士さん、税法上のみなし相続財産になることを理解している弁護士さんなど、民法と相続税法での取り扱いの違いを理解している専門家に相談することが重要です。
まとめと弁護士への相談のすすめ
小規模企業共済金は、民法上の遺産ではなく、相続税法上は「みなし相続財産」として扱われる特殊な財産です。
この扱いの違いを正しく理解しておくことで、遺産分割や税務申告におけるトラブルを未然に防ぐことができます。また、代理人の選定や遺産分割協議書の作成といった手続きも、スムーズに進めるためには早期の話し合いと適切な対応が求められます。
共済金に関する手続きは、法律や税務の専門知識が欠かせません。少しでも疑問や不安がある場合は、ぜひ弁護士に相談してください。専門家に依頼することで、必要な手続きや税務申告を正確かつ効率的に進めることができるほか、家族間のトラブルを防ぐ大きな助けとなります。
神奈川の相続に詳しい弁護士であれば、地域特有の事情も踏まえて適切なサポートを提供できます。ぜひお気軽に相談し、安心して手続きを進めましょう。
以上、「小規模企業共済金の相続税と遺産分割の違い【弁護士が説明】」でした!
弁護士 大石誠
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