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【寄与分とは?】神奈川の遺産分割で注意すべき法的ポイントを弁護士が解説

  • 執筆者の写真: 誠 大石
    誠 大石
  • 5月3日
  • 読了時間: 10分

更新日:20 時間前

はじめに

遺産分割の話し合いをしていると、「私は親の介護をずっとやってきたのに、他の相続人と同じ取り分なんて納得できない…」という声を耳にすることがあります。こうしたケースで問題になるのが「寄与分(きよぶん)」という制度です。

寄与分とは、ある相続人が他の相続人に比べて特別に被相続人の財産の維持や増加に貢献していた場合に、その分を相続割合に反映させるための仕組みです。特に神奈川県のように高齢者が多く、介護や看護に関わる家族が多い地域では、この寄与分が遺産分割の大きな争点になることも珍しくありません。

この記事では、神奈川県の弁護士として実際の相談事例をふまえながら、寄与分とはどんな制度なのか、どうやって主張するのか、そして注意点は何かをわかりやすく解説していきます。


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遺産分割における「寄与分」とは?

「寄与分」という言葉はあまり耳慣れないかもしれませんが、相続手続きの中では重要な役割を果たします。民法第904条の2に定められており、簡単に言えば「特別に頑張った人には、ちょっと多く分けてあげましょう」という制度です。

たとえば、長男が親の介護を何年も続け、その結果、施設に入れずにすみ、財産が目減りしなかったという場合。その長男の行動が被相続人の財産の維持に貢献していたと認められれば、寄与分が認められる可能性があります。

神奈川県でも、高齢者世帯の増加とともにこうした争いが増えており、家庭裁判所での調停や審判に発展することも少なくありません。

寄与分の主張には、事実関係の裏付けや法律的な整理が求められるため、適切な準備が不可欠です。


この寄与分が主張しやすいケースには以下のようなパターンがあてはまります。

① 労務提供型(療養看護型)

この類型は、被相続人の療養・看護・介護といった身体的・生活的支援を長期間にわたり、無償で提供した場合に該当します。典型的な行為としては、通院時の付添い、入院中の世話、日常生活の補助(食事・排泄・清掃等)などがあり、これらを継続的かつ集中的に行っていたことが評価の対象となります。

ただし、これらの行為は一般的に親族間で期待される扶助義務の範囲に留まる可能性があるため、相続人間の公平を修正するに足る「特別の寄与」であったと認定されるには、通常を超える労力・時間・継続性が求められます。

また、介護保険制度のサービス(ホームヘルパーやデイケア等)を併用していた場合には、その貢献の独自性や必要性が相対的に低下する可能性があるため、寄与分としての評価には慎重を要します。


② 経済的寄与型(出資・金銭提供型)

この類型は、被相続人の生活や事業に対して資金の提供を無償で行い、それによって財産の維持または増加に貢献した場合に該当します。例えば、医療費や生活費の支援を長期間にわたり継続して行った場合、または被相続人が取得する不動産の購入資金を援助した場合などが典型です。

この類型で特に重要なのは、「無償性」の立証です。資金の提供が貸付であった場合は寄与分としての評価はなされませんし、贈与であったと評価される場合でも、既に完結した一方的な処分行為とみなされるため、寄与分としては争いの余地があります。よって、金銭提供の趣旨、継続性、目的の明確性などが寄与分認定の可否において重要な要素となります。


③ 事業従事型(家業従事型)

この類型は、被相続人が営む家業(農業、自営業、商売など)に長期間、無報酬もしくは著しく低廉な報酬で従事した場合に該当します。使用人を雇えば相応の人件費がかかる業務を、身内が無償で行っていた場合、その分の財産的利益が被相続人に帰属していると評価されます。

一方で、親族が家業に従事することは伝統的に多くみられるため、単に「手伝っていた」程度では、寄与分としての評価を受けることは困難です。したがって、実質的に専従的な従事であったか、どの程度の業務を担っていたか、報酬が支払われていなかった事実など、就労形態の具体性と経済的貢献の立証が極めて重要です。


④ 財産管理型(不動産・金融資産の管理型)

この類型は、被相続人が保有していた財産(例:不動産、有価証券、預貯金等)を、相続人が無償で管理・維持し、資産の損耗を防いだり、安定的な収益を確保したことにより、財産の減少を防ぎ、結果として相続財産を維持・増加させた場合に該当します。具体的には、税務申告の代行、契約の更新、修繕・賃貸管理などが挙げられます。

しかし、被相続人の代理人や受任者としての事務処理の範囲に留まる場合は、通常の管理義務の履行とみなされるため、寄与分とは評価されません。また、報酬を受け取っていた場合や、契約に基づく職務であると判断された場合は、原則として寄与行為には該当しません。


このような類型化がされますが、いずれにしても、①期間の長さ、②行為の内容の専門性・経済的効果、③無償性の程度を基準にされます。


寄与分が認められるための4つの要件と判断基準

寄与分を主張するためには、単に「手伝った」「世話をした」というだけでは足りません。

法律上、いくつかの厳格な要件を満たす必要があります。ポイントとなるのは次の4つです。

  1. 特別の寄与行為があったこと(通常の扶養や介護を超える程度の貢献)

    またこの寄与行為は相対的に判断されます。他の相続人が同等の寄与をしている場合には「特別」とはいえません。

  2. 寄与が無償で行われたこと(報酬などを受け取っていない)

    寄与があっても、報酬を得ていたり、生前贈与や遺言などによって寄与の対価や補償が与えられている場合には認められません。

  3. 財産の維持または増加に具体的な効果があったこと

  4. これらの行為と財産の変動に因果関係があること


たとえば、介護のために自分の仕事を辞めて、無償で親の世話を長年続けた場合には、「特別の寄与」と認められる可能性があります。しかし、週に数回訪れて話し相手になった程度では、難しいかもしれません。

また、寄与分は相続開始前の行為が対象となります。相続が発生してからの対応は寄与には該当しません。このように、実際の判断には法律的な知識と証拠が不可欠です。神奈川県の家庭裁判所でも、寄与の具体性や金銭換算できるかどうかといった観点で、慎重に審理が行われます。


寄与分に関する、よくある誤解

🔸よくある誤解①:

「介護や看病をしたら必ず寄与分が認められる」

誤りです。

介護や看病は「寄与行為」として典型ですが、単に家族として当然期待される範囲(扶養の延長線)での行為では寄与分には該当しません。たとえば、同居して食事を作った・通院に付き添った程度では寄与分として認められないケースが多く、“特別の寄与”が求められます。


🔸よくある誤解②:

「被相続人の財産が増えていれば、その分を寄与分として請求できる」

誤りです。財産が増えたことと、相続人の寄与行為との因果関係が必要です。たとえば「父の農業を手伝っていたが、実際には赤字だった」場合、財産形成には寄与していないため寄与分は認められません。


🔸よくある誤解③:

「寄与分は当然に考慮される」

誤りです。寄与分は主張・立証しない限り、当然には考慮されません。相続人の一人が寄与分を主張しても、他の相続人が争えば、家庭裁判所での寄与分調停・審判手続が必要になります。


🔸よくある誤解④:

「介護した子に多めに相続させるために、寄与分を使うべきだ」

一部正しいが注意が必要。実際には、寄与分の制度は被相続人の意思ではなく、客観的な事実・貢献に基づくものです。被相続人の意思を尊重したいのであれば、遺言書や家族信託の設計のほうが確実です。


🔸よくある誤解⑤:

「寄与分を主張すれば必ずもらえる」

誤りです。寄与分は主張しても、裁判所が認めなければゼロ評価も珍しくありません。特に、無償の介護や無届での金銭支出などは「家族間の自然的行為」とされ、認められない傾向があります。


神奈川の弁護士が解説|寄与分の申立て方法と注意点

寄与分を主張するには、まず遺産分割の調停や審判の場で「寄与分を認めてほしい」と申し立てる必要があります。これは家庭裁判所での正式な手続きで行い、民法第904条の2および家事事件手続法第192条に基づいています。

申立ては、寄与をした相続人本人から行う必要があり、その相手方は他のすべての共同相続人です。提出時には、どのような寄与行為を、いつ、どのように行ったのかを具体的に説明し、それを裏付ける資料(診療記録や日誌、費用明細など)があると効果的です。

注意点として、寄与分の申立てには裁判所が定める期間制限があります。この期間を過ぎてしまうと、どれだけ貢献があっても却下されることがあるため、早めの対応が重要です。

また、申立てたからといって必ずしも寄与分が認められるわけではなく、相続人同士の合意や裁判所の判断が必要です。神奈川県の家庭裁判所でも、寄与分に関する審理は丁寧に行われる傾向があるため、弁護士と相談しながら、戦略的に主張を組み立てることが求められます。


特別の寄与(民法1050条)との違いと選択のポイント

「寄与分」と似たような制度に「特別の寄与」(特別寄与料)がありますが、これは2019年の法改正で新設された制度です。

違いの大きなポイントは、寄与分が相続人だけに認められるのに対し、特別の寄与は相続人でない親族(たとえば長男の妻など)にも請求権があることです。

寄与分は遺産分割の割合に影響を与える制度ですが、特別の寄与は「特別寄与料」という金銭請求の形で扱われます。たとえば、嫁が長年にわたり被相続人の介護をしていたような場合に、相続人に対して金銭を請求できるという制度です。

また、特別寄与には請求期限が設けられており、相続開始および相続人を知ったときから6ヶ月以内、または相続開始から1年以内に行使しなければなりません。この期限を過ぎると、権利は消滅してしまいます。

寄与分と特別の寄与のどちらを選ぶべきかは、当事者の立場によって異なります。相続人であれば寄与分の主張が可能ですが、相続人以外の場合は特別寄与料の請求を検討すべきでしょう。

制度の選択を誤ると、正当な貢献が評価されないこともあるため、早めに弁護士に相談することをおすすめします。


まとめと結論|神奈川県で寄与分を主張する際の注意点

遺産分割で「寄与分」を主張することは、相続人間の公平を実現するための大切な手段です。ただし、認められるためには法的な要件をクリアし、具体的な証拠をそろえる必要があります。主張のタイミングや方法を誤ると、せっかくの貢献が評価されないリスクもあるため注意が必要です。

神奈川県内でも高齢化が進み、介護をめぐる相続トラブルが増加しています。自分や家族の貢献が正しく評価されるよう、早い段階で専門家に相談し、的確な対策を講じることが大切です。


神奈川県対応の弁護士に相談するメリットとご案内

寄与分や特別の寄与に関する問題は、法律の専門知識と実務経験が必要です。神奈川県に詳しい弁護士であれば、地元の家庭裁判所の運用傾向や地域事情を踏まえた具体的なアドバイスが可能です。

「これって寄与分に当てはまるの?」「証拠として何が必要?」といった素朴な疑問にも丁寧に対応できるのが、地域密着の弁護士の強みです。初回相談を無料で実施している事務所もありますので、まずは気軽に相談してみることをおすすめします。

当事務所では、神奈川県全域に対応し、相続・遺産分割に関する豊富な実績があります。お困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


以上、【寄与分とは?】神奈川の遺産分割で注意すべき法的ポイントを弁護士が解説でした!


弁護士 大石誠

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