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【メモ】遺言公正証書の存在を告げないことと相続欠格事由

  • 執筆者の写真: 誠 大石
    誠 大石
  • 3月24日
  • 読了時間: 2分

更新日:3月28日

「相続人による遺言書の破棄・隠匿行為が「相続に関して不当な利益を目的とする」ものでないときは、5号に言う相続欠格者にあたらない。このように判例は、5号については二重の故意を必要とする立場を採用しているものと言える。通説も、二重の故意を要求している。他方、偽造・変造・破棄・隠匿を限定解釈することにより対応する方向を是とする見解もある。」

(詳解相続法 潮見 42ページ)


「遺言書の破棄又は隠匿行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、これを遺言に関する著しく不当な干渉行為ということはできず、このような行為をした者に相続人となる資格を失わせるという厳しい制裁を課することは、同条5号の趣旨に沿わない」

(最判平成9年1月28日民集51巻1号184頁)


「本条5号は、有効な遺言であることを前提として、被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者を欠格とする。本条5号の偽造等の行為は、「相続に関する遺言」に対して行われたことを要する。」

「「隠匿」とは、被相続人が作成した遺言書の発見を妨げるような状態におくことをいう。判例は、原本が公証人役場に保管されている公正証書遺言については、共同相続人の1人が公正証書遺言の存在を他の相続人に告げなかったことをもって、本条5号の隠匿に該当しないとした(最判平成6年12月16日判時1518号15頁)」

(逐条ガイド相続法 41ページ~42ページ)


「判例は、相続に関する遺言書又はこれについてされた訂正が方式を欠き無効である場合に、遺言書の意思を実現させる趣旨で方式を具備させ、有効な遺言書又はその訂正としての外形を作出する行為はこれにあたらないとし(最判昭56.4.3民集35巻431ページ-反対意見がある。)、また、相続に関する遺言書を破棄または隠匿したとしても、相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときはこれに当たらないとしている(最判平9.1.28民集51巻184ページ)」

(司法協会「親族法相続法講義案」(七訂補訂版)230ページ)

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