相続税
主たる納税者Aさんと、連帯納付義務者であるBさんがいる場合
「主たる納税者の納税義務について生じた時効の完成猶予・更新(中断)の効力は、連帯納付義務に及ぶと解されています。これは、連帯納付義務は、主たる納税者の納税義務を担保するために課された特殊な義務であり、主たる納税義務が消滅しない限り、それを担保するために存続することから、主たる納税義務から独立して、時効期間の進行を認めるべきではないという考え方に基づくものです。つまり、民事上の時効における主債務と保証債務の関係と同様に解されているということです。」
(永吉啓一郎「民事・税務上の「時効」解釈と実務 ~税目別課税判断から相続・事業承継対策まで~」 2019年6月発行 262ページ)
国税不服審判所裁決 平成22年11月4日
「(3) 連帯納付義務について
イ 相続税法第34条第1項は、相続人が二人以上いる場合に、各相続人に対し、自らが負担すべき固有の相続税の納税義務のほかに、他の相続人の固有の相続税の納税義務について、当該相続により受けた利益の価額に相当する金額を限度として連帯納付義務を負担させる旨規定している。この連帯納付義務は、内部負担がなく、本来の納税義務(租税債務)を担保するため、相続人に課された特殊な義務であり、租税債権が消滅しない限り、これを担保するために存続するものと規定されている点等を考慮すると、担保される租税債権と別個に時効消滅することは法の予定するところではないというべきであり、同様の趣旨から、独立の時効消滅を認めていない民法第457条第1項が類推適用されるべきである(平成14年2月15日大阪高裁判決、最高裁平成14年9月13日第二小法廷決定)。したがって、本来の納税義務者に対して生じた時効の中断の効力は、連帯納付義務者にも及ぶと解するのが相当であり、また、連帯納付義務が、相続税徴収の確保を目的として、相続人に課された特殊な義務であることからすれば、本来の納税義務者に対する徴収の猶予の効果は、連帯納付義務者にも及ぶと解するのが相当である。
ロ これを本件についてみると、本件滞納者に係る本件滞納国税に係る徴収権は、上記(2)のとおり、時効中断等の効力が生じ消滅時効は完成しておらず、上記イのとおり、本件滞納者について生じた時効の中断及び停止の効力は請求人にも及ぶから、本件督促処分の時点において、請求人の連帯納付義務に係る国税の徴収権についても、消滅時効は完成していない。」
参考(抜粋)
(連帯納付の義務等)
第三十四条 同一の被相続人から相続又は遺贈(第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産に係る贈与を含む。以下この項及び次項において同じ。)により財産を取得した全ての者は、その相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税について、当該相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として、互いに連帯納付の責めに任ずる。ただし、次の各号に掲げる者の区分に応じ、当該各号に定める相続税については、この限りでない。
(後略)
2 同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者は、当該被相続人に係る相続税又は贈与税について、その相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として、互いに連帯納付の責めに任ずる。
大石誠