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執筆者の写真誠 大石

【メモ】調整型の職務と、職務規程の関係

「弁護士は、裁判外において、いまだ紛争が顕在化していない複数人間の利害を調整するために職務遂行(調整役)を依頼される場合がある。たとえば、二当事者間の契約締結にあたって、いずれの代理人にもならないが、双方から依頼を受けて契約が締結されるよう、当事者の利害を調整するような場合である。そのほかに、離婚を含めた夫婦関係の調整、遺産分割協議の調整、共同事業その他の法律関係の清算に伴う金銭の分配調整等がある。このような複数当事者間の利害の調整役は、当事者の代理人として行うものではないから、双方代理となるものではないし、本条1号や本条2号の利益相反となるものではない。利害調整が成功すれば厳しい対立関係に入ることを避けることができるから、当事者にとってもメリットが大きいといえる。当然のことながら、調整役の弁護士は、すべての当事者に対する関係で公平かつ公正でなければならず、すべての当事者から信頼を得ていなければ、調整約の任務を果たすことはできない。

 しかし、調整が失敗して、当事者間の利害の対立が鮮明になった場合は、弁護士は速やかに調整役を辞するべきである。そして、その後は、いずれの当事者の代理人にもなることができないと解すべきである。

 弁護士が調整役を引き受けることが適正であると評価されるためには、

①調整役を依頼される時点においてその後の利害関係の顕在化のおそれが少ない、調整役就任に適切な事案であること、

②調整を依頼される弁護士が当事者のいずれかと特別な利害関係がないこと、あるいは一定以上の利害関係がある場合は他の当事者にそれが開示されること、

③調整役がいずれの当事者の代理人となるものでもないことがすべての当事者に理解されていること、

④弁護士費用についてはすべての当事者が平等に負担すべきことを十分に説明し、すべての当事者の理解を得たものであること、

⑤利害対立が顕在化して調整が失敗した場合は、調整役を辞任し、以降いずれの当事者の代理人にもならないこと、

⑥調整の過程においては、全当事者立会いの上協議を行うことを原則とすること、

⑦ ①~⑥の調整役の趣旨・構造を全当事者が理解し、かつ調整を経た契約等に参加するか否かの選択の自由が全当事者に補償されていること等の基準が満たされる必要があろう。」

(「解説 弁護士職務基本規程 第3版」81ページ~82ページ)

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