共有物分割と遺産分割の対比
共有関係の解消の方法は、①現物分割、②換価分割、③価格賠償(代償分割)
現物分割;
共有不動産を共有持分の割合に応じて物理的に分ける方法
一般的に優先して選択される分割類型である
通常は建物については適用できず、土地に適用することが多い
換価分割;
共有不動産を第三者に売却し、売却代金を共有持分の割合に応じて分ける方法
消去法・受け皿的に選択される分割類型である
判決による換価分割では競売を用いるため売却金額が安くなる傾向がある
価格賠償(代償分割);
共有不動産を共有者1名だけの単独所有にし、取得した者は他の共有者に代償金を支払う方法
取得希望者がいる場合には、優先的に選択をする
【裁判所による選択基準のポイント】
1、価格賠償 価格賠償を希望する共有者が存在する場合、その要件充足性を検討する
※最判平成8年10月31日民集50巻9号2563頁は、全面的価格賠償の要件を満たす限りは、現物分割が可能であっても全面的価格賠償を選択できるとしたもの
※価格賠償にあたっては、現物分割が不可能か、あるいは相当ではないこと(著しく価格を損するおそれがあること)を要件としていない
2、現物分割 1が認定されない場合、現物分割の要件充足性を検討する
3、換価分割 2が認定されない場合、換価分割を選択する
遺産分割事件の場合、現物分割、代償分割、換価分割の順序で検討される
⇔共有物分割事件の場合、代償分割、現物分割、換価分割の順序で検討される
価格賠償(代償分割)の優先順位が異なるが、換価分割が補充的な位置付けとなるのは同様である。