口頭で伝えた遺言は効力がありますか?認められるケースと無効になるケースを解説

口頭で伝えた遺言は効力がありますか?認められるケースと無効になるケースを解説

「もしものときに備えて、家族に口頭で遺言を伝えておけば大丈夫なのか?」と疑問に思う人は少なくありません。特に、急な病気や高齢になったときなど、「書面を作る時間がないかもしれない」と考える方も多いでしょう。しかし、日本の法律では遺言の方式が厳格に定められており、口頭で伝えただけでは原則として法的な効力が認められません。ただし、例外的に口頭の遺言が認められるケースも存在します。本記事では、口頭遺言の効力や認められる条件、実務上の注意点についてわかりやすく解説します。

目次

原則として口頭の遺言は無効。ただし例外的に「危急時遺言」が認められる

日本の民法では、遺言は法律で定められた方式で作成しなければ効力が認められません。一般的な遺言には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」などがあります。

そのため、単に家族や知人に口頭で「財産は長男に任せる」「この土地は娘に渡したい」などと伝えただけでは、法的な遺言としては基本的に無効になります。

ただし例外として、死が差し迫った緊急事態においては「危急時遺言(ききゅうじゆいごん)」という特別な方式の遺言が認められています。この制度を利用すれば、口頭の意思表示を基に遺言が成立する可能性があります。

口頭遺言が認められる「危急時遺言」の条件

危急時遺言は、民法976条で定められている特別な遺言方式です。主に以下の条件を満たす必要があります。

まず、遺言者が病気や事故などにより死亡の危険が迫っていることが前提となります。単に高齢であるという理由だけでは認められません。

次に、証人が3人以上必要です。遺言者が口頭で遺言内容を伝え、そのうちの1人が内容を筆記します。その後、筆記した内容を遺言者と証人に読み聞かせ、内容が正しいことを確認します。

さらに、証人全員が署名・押印を行う必要があります。そして、この遺言は作成後20日以内に家庭裁判所で「確認手続」を受けなければ効力を持ちません。

このように、口頭での意思表示だけで遺言が成立するわけではなく、かなり厳格な条件が設けられている点が特徴です。

よくある誤解:家族が聞いていれば遺言になるわけではない

よくある誤解として、「家族全員が聞いていたのだから遺言として認められるはず」という考えがあります。しかし、法律上はそのような扱いはされません。

例えば、次のようなケースです。

・父が亡くなる前に「この家は長男にやる」と言った

・親族の前で財産分配の希望を話していた

・入院中に家族へ相続の希望を伝えた

このような場合でも、法定の方式を満たしていなければ遺言としての効力は認められません。その結果、遺産は法律で定められた「法定相続」に従って分配されることになります。

実務での注意点:トラブルを防ぐには正式な遺言書が重要

実務上、口頭の遺言は相続トラブルの原因になることが多いです。

例えば、兄弟の一人が「父はこう言っていた」と主張しても、他の相続人が納得しなければ争いになる可能性があります。また、証拠が残らないため裁判でも認められにくいのが現実です。

そのため、将来の相続トラブルを防ぐには、正式な遺言書を作成しておくことが重要です。特に公証役場で作成する「公正証書遺言」は、形式不備による無効リスクが低く、紛失や改ざんの心配も少ない方法として広く利用されています。

士業としての支援内容

遺言書の作成では、内容の書き方や法的要件を誤ると無効になる可能性があります。そのため、弁護士などの専門家に相談することで、法的に有効な遺言書を作成するサポートを受けることができます。

例えば、以下のような支援が可能です。

・自筆証書遺言の作成サポート

・公正証書遺言の原案作成

・相続トラブルを防ぐ遺言内容の設計

・財産整理や相続人調査

特に相続人が多い場合や財産が不動産中心の場合には、専門家の関与によってトラブル防止につながるケースが多くあります。

まとめ

口頭で伝えた遺言は、原則として法的効力がありません。例外として危急時遺言という制度はありますが、証人の確保や家庭裁判所の確認など厳格な条件が必要です。

そのため、将来の相続を確実に実現したい場合には、自筆証書遺言や公正証書遺言など正式な方式で遺言書を作成しておくことが重要です。遺言の内容や作成方法に不安がある場合は、弁護士など専門家に相談することで、円滑な相続対策を進めることができるでしょう。

弁護士 大石誠

https://ooishimatoko.threeways-labo.jp

この記事の著者

弁護士 大石誠 神奈川県弁護士会

止まった相続を終わらせる弁護士

横浜を活動拠点として、遺産分割、遺留分、相続不動産問題などの相続・終活案件に注力して取り扱っています。年間約200件の相続・終活相談に対応、毎年約20回の相続相談会を実施しています。税理士、司法書士、不動産会社等と連携しながら、問題解決に向けて丁寧に取り組みます

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