
- 概念相続分の譲渡とは、相続人が有する「遺産全体に対する割合的持分(包括的持分)」や法律上の地位を、他の相続人や第三者に譲渡する行為をいいます。
- 具体的財産の譲渡との違い相続分の譲渡は、遺産の個別の財産(特定の不動産や預金債権など)を移転するのではなく、あくまでも「包括的持分」を移転する点が特徴です。
- 民法第905条(趣旨)民法上、相続人は自己の相続分を譲渡することが認められています。
- 裁判例
- 東京高等裁判所昭和28年9月4日決定「相続分の譲渡は、共同相続人の一人として有する一切の権利義務が包括的に譲受人に移り、譲受人は遺産分割に関与する地位を得る。」
- 和歌山家庭裁判所昭和56年9月30日審判「遺産分割前の相続分の譲渡は、何等の要式も必要なく、通知や登記がなくとも他の相続人に対抗し得る。」
- 時期
- 相続分の譲渡は「遺産分割前」であることが要件とされています。
- 方式
- 法律上は口頭でも書面でも有効で、民法上の特段の方式は定められていません。
- 有償・無償も問われません。
- 他の相続人への通知
- 他の相続人への通知は法律上の要件とはされていません(ただし、実務上は紛争防止のために書面を作成するなどの対応が望ましいといえます)。
- 東京高等裁判所昭和28年9月4日決定相続財産に属する個別的財産(個々の物または権利)に関する権利の移転ではないから、各種個別的権利(物権債権鉱業権その他工業所有権といわれる類)の変動について定められる対抗要件の諸規定の、なんらかかわるところではない。
- 和歌山家庭裁判所昭和56年9月30日審判「遺産分割前の相続分の相続人間における譲渡は何等の要式も必要でなく、また譲渡の通知もしくは登記等がなければ当事者以外の共同相続人にその効力を主張し得ないものではないと解すべきであり、遺産分割前の相続分の譲渡が共同相続人間で有効になされた以上は、その後他の相続人に二重に譲渡行為がなされてもそれは無効である。」
- 譲渡人(元の相続人)の地位
- 譲渡人は相続分を譲渡することで、遺産分割手続から離脱します(全部譲渡の場合)。
- 譲受人の地位
- 譲受人は相続分を承継し、遺産分割手続に参加することができます。
- 譲受人が第三者であれば、遺産分割の協議に新たに参加する立場となります。
- 対抗要件の不要説(多数説・裁判例)
- 相続分の譲渡は個別的権利の移転ではなく包括的持分の移転のため、登記などの対抗要件を具備する必要はないとするのが判例・多数説です(東京高決昭28.9.4、和歌山家審昭56.9.30)。
- そのため、二重譲渡が生じた場合は先に譲渡された方が優先され、後から譲渡されても無効とされています。
- 対立する見解
- 一方で、通知や登記などの公示手段がなければ、他の相続人との関係で紛争の原因になりやすいことから、対抗要件を要求すべきという見解も存在します。
- 実務上は紛争防止の観点から、契約書の作成や他の相続人への通知を行い、譲渡の事実と時期を明確化しておくことが望ましいといえます。
弁護士 大石誠
【今すぐ、電話で相談予約をする】


